2021年第4回定例会個人質問ーせいの恵子
2021年11月23日 | せいの恵子
1、ヤングケアラー支援について
私は大きく2点、ヤングケアラー支援について、若年者を対象としたまちなか保健室やユースクリニックなどの相談支援・居場所づくりについて質問します。
(1)北区のヤングケアラーについての認識を問う
大きく1つ目の質問はヤングケアラー支援についてです。
ヤングケアラーとは、本来であれば大人が担うと想定されているような家族の介護やケア、身の回りの世話を担う18歳未満の子どものことです。
その背景には、少子高齢化、核家族の進展、共働き世帯の増加、家庭の経済状況の変化といった様々な要因があると言われ、そのしわ寄せは、家庭の中で子どもが幼いきょうだいの面倒を見ることや、祖父母の介護を担うこと、親の精神的サポートを行うなどにつながっていると指摘されています。
コロナ下においては、経済的状況の悪化により、介護利用を控えての家庭介護の増加、女性へのDV、うつ病などメンタル面の不調なども増大し、ヤングケアラーへの負担がいっそう増しているのではと危惧されています。
また、ヤングケアラーは子どもの年齢や成熟度からいって負担が重すぎる、それを子どもが担うと想定されていないために他の人に話すことができないなど、「誰にも言えない」との孤独感や、「でも頑張らなければ」との過度な責任感を抱えていることが共通していると言われています。
私は、10月に「介護を担う子どもたち」とのテーマで行われた北区さんかく大学の講座を受講し、成蹊大学教授の澁谷智子さんからお話を伺いました。澁谷智子さんは、「家族の力が以前よりも弱体化していることを考慮しないまま、家族の助け合いに頼る形では、こどもや若者にそのしわ寄せがいき、ヤングケアラーはこどもの権利さえ守られていない現状がある」「ヤングケアラーである前に成長途中にある子どもである」と、こども自身の権利や成長に与える影響を指摘されていました。私自身、そのような子ども達が北区にもいるのではないかと胸が痛みます。
そこで質問します。
まず、北区としてのヤングケアラーに対する認識をお聞かせください。
また、子ども家庭支援センターや学校現場など、現状で家族のケアを担っている子どもを把握し、サポートしている事例があればお示しください。
【答弁】
ヤングケアラーは、子ども自身がヤングケアラーである認識がないこと、家庭内のこととして潜在化しやすく、周囲が気付きにくい等の課題があります。
区における事例として、ひとり親家庭で、保護者の傷病や仕事のために、子どもが家事やきょうだいの世話を担っており、学校や学童クラブ、民生・児童委員等の協力の下、一時保護に至ったケースもあります。
それらの事例から、まずは、地域でかかわる支援者が、ヤングケアラーの視点を持ち、子どもの表情や言動を十分観察し、対応することが重要であると認識しています。
(2)実態調査や研修、広報への取り組みについて
2つめに、ヤングケアラーの実態調査や研修、広報への取り組みについて伺います。
国は、令和2年度に行った「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」の結果を今年4月に公表しました。中高生を対象にしたこの実態調査では、中学2年生の5.7%(約17人に1人)、公立全日制の高校2年生の4.1%(24人に1人)が世話する家族が「いる」と回答。1学級につき1~2人のヤングケアラーがいる可能性があることが分かりました。
また、中2、高2ともにケアの頻度は「ほぼ毎日」が4割強を占め、平日1日あたりのケア時間は平均約4時間で、「7時間以上」と答えた生徒も約1割、協力者がおらず「自分のみ」でケアをしている生徒も1割前後いること、中高生の8割以上が「ヤングケアラー」について聞いたことがないと回答していることも明らかになりました。
近年、複数のヤングケアラー調査でもヤングケアラーの見えにくさが指摘されています。本人が日常的に行う手伝いの延長として捉え自覚できていないこと、同級生や学校に知られることへの抵抗感がある、周囲の大人が家族として当たり前、家庭の問題などと無理解であることなど、様々な要因から社会的認知度が低く、相談につながらない現状が危惧されています。
また、ヤングケアラーとして長期に固定化すれば、おかれている状況が深刻であるにもかかわらず、子どもは順応し、他者にSOSを出すことも諦め、無力感を抱いてしまうリスクも指摘されています。
このように、ヤングケアラーの存在に気づき、適切な支援につなげるためには、子ども自身はもちろん、周囲の大人も含めヤングケアラーについての共通認識と知識の向上、その周知への取り組みが早急に求められていると考えます。
おりしも、厚生労働省と文部科学省は令和4年度の概算要求で、自治体に対するヤングケアラーの支援を盛り込みました。その内容は、ヤングケアラーの実態調査、又は福祉・介護・医療・教育等の関係機関、要保護児童対策協議会などの職員が、ヤングケアラーについての研修を行う際、自治体に対して財政支援を行うものです。
そこで質問します。
1つに、先に紹介した国の財政支援も活用し、ヤングケアラーの実態調査及び職員への研修を早期に行うべきだと考えます。見解をお示しください。
2つに、区民への広報・啓発について、ヤングケアラーについての講演会の実施やパンフレットの作成、北区ニュースやホームページ、TwitterやLINEでの発信にも取り組むよう求めます。
【答弁】
ヤングケアラーの実態調査については、国や都において調査が実施されました。区独自の実施につきましては、今後の状況を踏まえ、検討してまいります。
研修については、特別区職員研修所において、ヤングケアラーについての研修が開催されています。
研修の参加は、現在のところ、子ども家庭支援センターや、教育総合相談センターの職員の参加が多く、今後は、関係する職員へ積極的に参加を促し、関係者間で情報共有を図ってまいります。
次に、区民への広報の取り組みについてです。
普及啓発として、東京都がパンフレット等を作成していると聞いており、今後、様々な機会をとらえ配布するとともに、ホームページやツイッター等を利用した発信を検討してまいります。
(3)支援体制の構築について
3つめに、ヤングケアラーの支援体制の構築について伺います。
先に紹介した北区さんかく大学の渋谷智子さんの講義の中で、世界で一番早くヤングケアラーの調査と支援を行ってきたイギリスでは、国民保健サービスのホームページにヤングケアラーの権利、ケアに関する選択肢などが分かりやすく紹介されていること、また、「障害のある全ての人は、子どもに頼らなくても良いよう行政にサポートしてもらう資格があります」と記載されていることも紹介されました。
ヤングケアラー支援は、ケアを必要とする人が精神疾患か認知症か高齢者か幼いきょうだいなのかなどの状況の違い、また、ヤングケアラーが、ある程度自分から希望してケアを行っているか、選択肢がなかったかによっても本人の受け止め方や必要な支援も異なります。
更に、ヤングケアラーである子どもたちが自分の置かれている状況に気づき助けを求められること、ケアなど適切な支援に結びつき利用できるための、総合相談窓口の創設、背景を理解し本人や家族が受け入れられる個々の状況に合わせた支援体制と伴走型のサポートが不可欠です。
そして、食事や学習面のサポート、仲間と悩みを共有し話せる場所があること、ケアから離れてレスパイト出来るサービスの利用など、子どもが子どもらしく成長できる環境づくりにも配慮が欠かせません。
そこで、質問します。
ひとり親家庭や生活保護受給家庭、自宅介護を行っている家庭、障がい児者家庭などは、ヤングケアラーのリスクが高いと考えられます。
北区において、すでに行政と繋がっているこれらの家庭について、学校や教育関係部署、子ども家庭支援センターをはじめとした児童福祉関係部署、介護・障害関係部署などの庁内連絡会議を設置し、情報の共有を行うこと、また医療機関、福祉事業者、地域の民生委員、児童委員、子ども食堂などの民間団体の皆さんとも課題を共有すること。更に、北区としての相談窓口の設置やアウトリーチ体制の構築、ヘルパー派遣やレスパイトなど伴走型の支援の検討をはじめて頂きたいと考えます。区の見解をお示しください。
【答弁】
ヤングケアラーと思われる子どもたちは、支援が必要な子どもや、虐待を受けている子どもと重複することもあり、不登校などをきっかけとし周囲の大人が気付く場合もあります。
区では要保護児童対策地域協議会において、日ごろから関係機関の皆さまと同行訪問や個別ケース会議等を通じて情報共有を行いながら、適切な支援ができるよう活動しています。
今後、区として様々な関係機関の連携を深め、ヤングケアラーも含め、いっそう相談しやすくするとともに、現在実施しているヘルパー派遣等を行う養育支援訪問事業等の活用により、養育困難な子育て家庭を支援してまいります。
2、若年者を対象とした、まちなか保健室やユースクリニックなどの相談支援・居場所づくりについて
大きく2つめの質問は、若年者を対象としたユースクリニックや、まちなか保健室などの相談支援・居場所づくりについてです。
(1)民間団体が取り組む若年女性の居場所事業の広報・啓発を
私はこの間、生きづらさを抱える若年者の相談・支援、居場所づくりについて質問を重ね、荒川区から事業委託を受けているBond project@あらかわの自殺予防事業についてや、改装したバスを活動の拠点にして新宿、渋谷で10代女性限定の夜カフェを運営し、安心して休める場所と食事や物品の提供を行っている一般社団法人Colaboの若年女性の居場所づくりなどを紹介してきました。
今回は更に、一般社団法人若草プロジェクトが運営する、秋葉原にある「まちなか保健室」を訪問した内容についてご紹介させて頂きます。
同法人は、生きづらさをかかえる少女や若い女性たちと、彼女たちを支援する人たち(支援者)とをつなげ、彼女たちの心に寄添う支援を届けるために「つなぐ・まなぶ・ひろめる」の3つの事業を行っています。
その中で、まちなか保健室は、秋葉原駅と御茶ノ水の中間にある古い住宅を改装したふらりと立ち寄れるプライベート保健室です。何もしなくても、ゆっくりするだけでも大丈夫。困った時、もやもやする時は、相談員に相談することもでき、日替わりで行われるヨガやアロマなどのワークショップに参加することもできます。また、飲み物や軽食、Wi-Fi、電源、相談やワークショップなどはすべて無料で利用できます。
コロナ禍では、予約制で1日の定員を7名までとしていますが、中学生から20代前半の女性が様々な場所から訪れています。リラックスできる空間で思い思いの時間を過ごしながら、スタッフに何気なく話し始めた話が相談につながったり、思いのほか深刻な状況にあり、行政につなげる支援を行うこともあるとのこと。
相談体制も充実しており、助産師や婦人科女医、弁護士、精神保健福祉士、心理士などの専門職が対応しています。
利用者の方の中には、私が今まで紹介してきたBond projectや一般社団法人Colaboの事業を並行して利用している場合もあると聞いて、若年女性が安心して利用できる居場所や相談できる窓口が少ないことが改めて感じられました。
スタッフの方々は秋葉原駅周辺で、メイドの衣装を着て働いている女性などにも、まちなか保健室のお知らせリーフレットの配布も行っており、それを受け取り訪れる女性もいる一方で、「受け取らないようにお店側から強く言われているので」とリーフレットを頑なに受け取らない女性もいるとの話もお聞きしました。若年女性が気軽に訪れてリラックスしたり、様々な悩みを相談できる場所はまだまだ少ないのが現状です。
私が今回ご紹介した、一般社団法人若草プロジェクトも、これまでご紹介してきた若年女性支援団体と同様に、東京都若年被害女性等支援モデル事業の委託を受け活動しています。スタッフの方からは、行政に求めることとしてこのような場所があることを多くの若年女性に知ってもらうためにも、リーフレットなどを活用して広報をしてほしいとの意見を伺いました。
様々な相談場所や居場所があるという情報を日常的に知っていることは、困った時に自分の悩みを誰かに相談し、SOSを出しても良いのだというメッセージになるとともに、相談に向かう一歩になるのではないでしょうか。
そこで、質問します。
先に紹介した民間団体が実施している若年女性の相談活動や居場所事業は、東京都の補助事業にもなっているものです。北区としても団体のリーフレットを学校や区民施設に配布するなどして、広く普及・啓発に取り組むよう求めます。
【答弁】
東京都では、様々な困難を抱えた若年女性について、アウトリーチ支援や居場所の提供などを行う、東京都若年被害女性等支援事業を、特定非営利活動法人などの民間団体に事業の一部を委託し実施しているところです。
区といたしましては、実施主体である東京都と連携を図り、ホームページに掲載するなど、広報・啓発に努めてまいります。
(2)若年世代への相談支援体制の取り組みについて
次に若年世代への相談支援体制の取り組みについて伺います。
若年女性の相談の中で、生理や妊娠、性感染症などの問題は深刻であるにも関わらず、身近な親や友人にもなかなか相談できないのが現状です。それは、社会的に性に関するタブー感が根強くあることや、包括的性教育の遅れが要因であると考えられますが、産婦人科に行った方が良いかもと考えても、産婦人科に行った経験がないため、どんな診察を受けるか不安、出産する前提での受診でなければ敷居が高いなどの思いは多くの女性が抱いてきたものではないでしょうか。
また、男性でも思春期の体の変化や性行為の正しい知識がなく、パートナーを妊娠させてしまったり、性感染症に罹患してもどうすればいいのか分からないという不安はあるのではないでしょうか。
スウェーデンには医療機関として「若者のためだけにあるクリニック」、ユースクリニックが全土に250ヵ所以上あります。ここには、 助産師、看護師、臨床心理士、産婦人科医などが待機しており、対象年齢約13歳から25歳の若者が無料で訪れ利用することができます。プライバシーが尊重される中で、避妊具の提供や性感染症、妊娠に関する相談やケア、家庭や学校での悩み相談、アルコールや摂食障害など、若者が抱えやすいこころ、からだの問題に幅広く対応してもらえる環境が整っています。
また、若者専用ではありますが、女性専用ではないため、若年男性やカップルでの利用も行われています。そのような環境が性暴力や予期せぬ妊娠、性感染症などの有事に早期の相談、医療につながります。
ひるがえって日本でも、産婦人科を中心としたユースクリニックがこの間注目されています。
私は先日、上野にある婦人科クリニックが立ち上げたユースクリニックの方からお話を伺いました。このユースクリニックは、クリニックの診療とは別に社会貢献の1つとして、婦人科受診のハードルを下げ、若年女性が気軽に相談できる場所として開設されました。相談は看護師などの専門職が対応し、必要があれば婦人科にもつなぐ体制がとられています。
また、来院での相談以外にも500円ワンコインのLINE相談も行っています。夏休みには無料相談を行い、50件以上の相談がある中でも高校生の相談が多かったこと、学歴が高く、知識は持っているがストレス過多の状況にある学生がいる一方、500円の相談料を支払うことが困難な女性もいることなども実態として見えてきたとお聞きしました。そして、若年男性の相談場所が不足している現状があることも指摘されていました。
そこで、質問します。北区として、区内の産科・婦人科医院など医療機関とも連携しながら、若年女性および男性の相談窓口を創設し、定期的に相談できる体制づくりやLINE相談などを拡充することを求めます。
また、生命の安全教育を通してユースクリニックなどの情報も提供し、若年層が自分の性や生殖について、また、性犯罪や性暴力について正しい知識を得て、適切な相談行動も行えるような取り組みの推進を求めます。
以上で私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
【答弁】
北区では、女性の心身にわたる様々な悩みなどに、気軽に安心して相談できる、女性のための健康相談を赤羽健康支援センターで実施しています。
内容としては、妊活、月経、思春期など、様々な悩みについて、女性の産婦人科医による個別相談を行っています。
また、若年の男性につきましても、健康支援センターの健康相談の中で、思春期に関する相談などに対応しています。
今後、若年者でもより相談しやすい体制となるよう工夫してまいります。
なお、ラインなどを活用した若年者の相談については、職員などの実施体制、個人情報の取り扱いに関する安全性の確保なども必要なことから、今後の検討課題とさせていただきます。
次に、若年世代が、性や性犯罪などについて正しい知識を得て、適切な相談行動を行える取り組みの推進についてです。
区は、第6次アゼリアプランで、人権を尊重し健康な生活を実現する地域社会を目標に掲げ、若年層に対するデートDV、性被害防止等に関する意識啓発及び、相談窓口の周知に取り組んでいるほか、性と生殖に関する健康と権利を守る取り組みを進めているところです。
今後につきましても、教育委員会と連携し、若年世代が適切な相談行動が行えるよう、意識啓発に取り組んでまいります。