2017年度決算認定に対する反対討論
2018年10月5日 | ながいともこ
日本共産党北区議員団を代表して、2017年度北区一般会計決算および国民健康保険事業会計決算、後期高齢者医療会計決算の認定について、反対討論を行います。
党議員団の予算組み替え提案で実現した区民要求
わが会派は、北区当初予算に対し、4年間で計48項目にのぼる組み替え動議を行ってきました。動議は否決されたものの、少なくとも19項目の提案が次年度予算や補正予算で実現しています。
昨年度は、待機児解消に向けた保育所定員の拡大、就学援助入学準備金前倒し支給、ひとり親家庭の相談窓口設置、子ども食堂への支援、感震ブレーカー設置助成などについて、予算組み替え提案が実ったものとして大いに評価するものです。
区が示す予算案に対し、区民の声に基づく組み替えの提案を行うことは、二元代表制の一翼を担う議会会派として当然の権利であり、区民から選ばれた政党としての責務と考えます。花川区長が、わが会派からの提案を真摯に受け止め、さらなる区民要望の実現にまい進することを要望いたしますが、一般会計決算の認定については、以下に述べる理由から反対します。
過去最高の基金を積み立てながら、区民の暮らしを支える施策は不充分
第1の理由は、過去最高の基金を積み立て、「財政対応力は高まった」としながら、区民の暮らしを支える施策が未だ充分でないことです。
主要5基金は過去最高の548億円となり、区長は「財政対応力は高まっている」と述べていますが、決算審査では、区民の暮らしを支える様々な提案に「検討」、「研究」とする答弁が目立ちました。
しかし、私たちが取り上げた高校入学準備金の創設は、文京区や台東区ではすでに、貸与型の奨学金を給付型にあらためる形で実施されています。区は、北区で試算した場合、2880万円で実現可能と答えました。また、高齢者ヘルシー入浴券委託料を20円引き上げてほしいという要望は、約600万円あれば実現できます。ある区内の銭湯は、「お客さんがあと10人増えてくれれば、やめなくて済むのに」とSNSでつぶやいていますが、区がやる気になりさえすれば、すぐにでも実現できることではないでしょうか。
わが会派が主張するように、150億円を超えて積み上がった財調基金のうち、10~20億円活用するだけでも、多くの要望が実現できます。高まった財政力は区民の暮らしを支えるため積極的に生かすよう求めます。
経営改革プランと公共施設再配置方針に固執する姿勢
第2の理由は、区民にさらなる負担を迫る経営改革プランと、合理性を失った公共施設再配置方針に固執する姿勢です。
最新の北区人口推計では、総人口で今後10年間、年少人口で15年間、人口が増加していくという予測が示されました。総人口がピークとなる2028年には、5年前の推計結果よりも約3万人も増える推計となり、年少人口ではピークとなる2033年で、約1万5000人増える推計となっています。長期的にみれば人口減少は避けられないとはいえ、当面は、区民向けの施設やサービスなどの需要がいっそう高まっていくことは明らかです。
しかし、北区が掲げる「経営改革プラン」は、人口減少を前提として、職員削減、事業の外部化、受益者負担を推し進める計画です。昨年度は、このプランの下で、駐輪場料金値上げなど総額1億円にのぼる料金改定や、区民事務所7分室の全廃が、多くの反対の声を押し切って決定されました。
分室廃止の方針は、昨年の第3回定例会で所管委員会に報告されました。わが会派は、分室の廃止について利用者に周知し、その是非を問うよう求めましたが、区は「まだ決定していないから」といって、利用者に十分知らせないまま、第4回定例会で条例改正してしまいました。区の説明責任が問われます。
また、外部化をめぐっては、指定管理に移行した保育園が、なぜ直営園より低いコストで直営園並みの職員配置ができるのかとの質問に、区は「そこはまさに公使格差だ」と答えました。つまり、外部化によって区はコストを削減できるが、その分、民間事業者の人件費にしわ寄せがきているということです。社会全体の貧困・格差の是正を考えれば、今後は外部化に頼りすぎないよう自制が必要です。
公共施設再配置方針はどうでしょうか。
予測を超えた人口増加が進む下で、区は足りなくなっている保育園や学童クラブについては、大幅な定員増の対策を講じています。ところが、小・中学校整備方針に照らしても明確に施設が不足している学校については、「直ちに教室が足りなくなることはない」といって対策をとらないばかりか、十条富士見中サブファミリーブロックで5校を3~4校に減らす学校適正配置協議を推し進めようとしています。
また、子ども食堂が区内20ヵ所以上に広がるなど、子供たちの多様な居場所づくりが求められている時に、児童館を最大4割も減らす計画を、そのまま進めようとしています。
公共施設再配置方針は「20年間で施設総量の15%削減」の目標を掲げていますが、この5年の実績は施設が5000㎡増えています。人口が最大となる年に、施設を最大限削減するという目標は、非現実的といわざるを得ません。人口増加に応じて必要な公共施設は整備すべきであり、削減目標は見直すことが必要です。
経営改革プランや公共施設再配置方針など、合理性を失った計画に固執することをやめ、来年度の基本計画改定の時期にあわせて、「行革」プランの抜本的見直しを求めるものです。
まちづくりや学校跡地利活用の分野において、住民合意をないがしろにする姿勢
第3の理由は、まちづくりや学校跡地利活用の分野において、住民合意をないがしろにする姿勢です。
区政のどの分野でも、花川区長が掲げる「区民とともに」の基本姿勢が貫かれることが必要です。ところが区は、まちづくりや学校跡地利活用の分野において、住民の声に真摯に耳を傾けず、住民の理解と納得を得ないまま、ことを進めようとしています。住民合意をないがしろにする姿勢は断じて認められません。
まず、まちづくりの分野ではどうでしょうか。
特定整備路線は、70年前の計画線をそのまま今日の市街地に引き写したことから、住宅地や商店街を追いやり公園、文化遺産などを壊す計画となっています。国交省の指針に従い、無謀な道路計画は、都に見直しを求めるべきです。東京ではこれまで、10年ごとに事業計画を立て、系統的な都市計画道路の整備を進めてきましたが、10年以内に事業化から完成までもっていく脱法的なやり方は、住民無視の計画であり、2020年度までに特定整備路線の全線完成という目標は、すでに破たんしています。
十条まちづくりでは昨年度、多くの地権者が計画に反対、もしくは賛同していない中で、十条駅西口再開発組合が設立となりました。地権者3分の2の設立要件を満たしているかどうかは、現在、住民裁判で争いとなっています。
区は、再開発ビル内につくられる新たな商業施設と既存商店街との関係について、新たなにぎわいの拠点への来街者が増えることによって既存商店街もさらににぎわいが増すなどと主張しています。しかし、私たちが視察した高松丸亀町商店街や赤羽駅構内の商業施設の例からも、新しい商業施設ができれば、既存商店街の売り上げに大きな影響を及ぼすことは必至です。区は、地元商店街から繰り返し出されている要望に正面から応え、新しいにぎわいの拠点における商業床面積の抑制や業種の競合回避などの調整に、直ちに乗り出すべきです。
そして区は、昨年度さらに、埼京線連続立体交差事業と付属街路、補助85号線の拡幅の都市計画決定を推進しました。住民の理解を得ないまま、強権的に事業を推し進めるやり方は、特定整備路線の時と同じです。
まちづくりをめぐって既に4つの住民訴訟が起こされている状況を重く受け止め、諸計画の見直しを求めるべきです。
一方、区民の財産である学校跡地の利活用検討ではどうでしょうか。
今年、5回にわたって開かれた学校施設跡地利活用検討委員会では、旧赤羽台東小、旧滝野川第六小の利活用について検討が行われました。地元住民からは、学校改築が迫る赤羽台西小の建替え代替地の要望や、生徒数が当初想定の1.5倍に増え教室不足となっている滝野川紅葉中学校の教育施設改善のために活用することを求める声が出ましたが、区が示した計画案には、主に区側が必要として提案した児童相談所複合施設や、東京フランス学園への提供が前面に出る形となりました。
児童相談所の学校跡地への誘致計画は、教育委員会内でほぼ固まっていたにもかかわらず、第2回定例会では報告されず、区民に知らされたのは第3回の跡地利活用検討委員会が初めてでした。区民にとって重要な施設だけに、情報提供のあり方に問題を残しました。
滝紅中をめぐっては、検討委員会で、地元の自治会やPTAの代表が、具体的な資料も示しながら教室不足や校庭の狭さを訴えていました。にもかかわらず事務局である区は、教室は足りているなどとする教育委員会からの回答を紹介し、教育施設改善の要望は後景へと押しやられることになりました。
このような経過の中で、区が示した跡地利活用計画案に対し、「地元の声が反映されていない」、「丁寧な情報提供がないまま検討委員会が終わってしまった」などの意見が出ているのも無理のないことです。一昨年度の検討委員会で、旧赤羽中跡地に、いきなり都市計画道路事業の代替地という東京都の要望を持ち込み、十分な議論が尽くされないまま利活用案に盛り込んで、地元住民から大きな批判を浴びたやり方が、今回もそのまま踏襲された形です。
わが会派は、学校施設跡地利活用検討委員会のあり方について、(1)検討委員に地元住民を含めること、(2)5回の回数を増やすことをはじめ会議の持ち方を見直すこと、(3)地域説明会の複数回開催と関係課職員の出席、という改善策を提案しましたが、区は「改善すべき点は見当たらない」として、これに応じませんでした。
まちづくりにおいても、学校施設跡地検討においても、住民の声に耳を傾け、住民合意を何よりも大切にする姿勢に立ち戻るよう、強く要望するものです。
安倍自公政権の施策を容認する姿勢
第4の理由は、区民の負担につながる安倍自公政権の施策に批判的立場を持たず、これを容認する姿勢です。
区は、消費税を「社会保障の財源としてふさわしい税金」とし、区民には重い負担を強いる10%増税を歓迎する立場です。
また、要支援者の保険外しや特養ホームの入居者を要介護3以上に限定するなど、3年ごとに改悪が繰り返される介護保険制度についても、区は事実上容認しています。
マイナンバー制度に、今年もシステム改修だけで5200万円超えの支出がされ、導入準備からすでに17億円を越える税金が投じられておりますが、区民には、メリットが実感されていません。北区民意識・意向調査報告書でも、推進を望む声はわずか8.5%です。莫大な費用をかけてマイナンバー制度を推進することは疑問です。
区は特別区とともに、消費税増税に伴う法人住民税の一部国税化や、消費税の生産基準の見直しなど、東京都をねらいうちにした国の税源偏在是正措置に激しく抗議していますが、区民の負担につながる施策にも同じように、国に対してキッパリと意見を述べるべきです。
決算審査を通じての要望
以上が、一般会計決算の認定に反対する理由ですが、あわせて、決算審査を通じて明らかになった点について、以下要望いたします。
1つは、生活保護費横領事件について、全容解明と再発防止に全力をあげ、区民の信頼を回復すること。
2つに、神谷中サブファミリー施設一体型小中一貫校の計画具体化にあたっては、関係住民の合意形成に努めるとともに、児童・生徒数の増加も視野に入れ、十分な教育環境を確保する設計とすること。
3つに、北清掃工場の建て替え工事において、全覆い仮設テントを使用することを東京二十三区清掃一部事務組合に求めること。
4つに、コミュニティバス新規路線を、改定される基本計画の中で具体化すること。
5つに、東京都の補助金も活用し、小・中学校体育館へのエアコン設置を迅速に進めることです。
特別会計への態度
続いて、特別会計についてです。
まず、国民健康保険事業会計と後期高齢者医療会計の認定については、保険料が値上げとなったことなどから反対いたします。
北区の一人あたりの国民健康保険料は、2017年度、金額・率とも、この5年間で最大の値上げ幅となりました。払いたくても払えない保険料は、構造的問題と指摘されていますが、都道府県化にともなう今後の保険料の値上げを抑制することにも最大限の努力が必要です。国や都に対し、必要な財政支援を要請するよう求めます。
決算特別委員会の質疑では、国民皆保険の立場から、加入者の保険証未交付問題の解決を求めました。保険証を持たず手遅れで死亡した全国各地の例を紹介しましたが、北区においてもこれを対岸の火事とすることのないよう対応を求めます。現時点での国保証の未交付は、約4700人と伺っています。事実上の無保険状態を解消するため、とりわけ約500人に届いていない子どもはただちの交付することを重ねて求めます。
私は質疑で、昨年度の執行停止額が、前年度比で半減したことに懸念を表明しました。厚生労働省は昨年夏、やむを得ず保険料を滞納している人に対する、差し押さえ禁止の基準と執行停止に至る生活困窮の基準を通知しました。国会では厚労大臣が、執行停止に関して、「事情に即したきめ細やかな対応が重要。生活困窮の恐れがある場合は差し押さえの対象外とする」と答えています。こうした立場をふまえた対応を求めます。
次に介護保険会計の認定については賛成いたしますが、以下意見を申し上げます。
1つは、発足当時、介護保険の「生みの親」とも評された元官僚が「要支援の方の訪問介護等を市町村事業に移し替えたり、補足給付に資産要件を導入するなどは保険制度から言えば全くの筋違い、団塊の世代にとっては介護保険制度は国家的詐欺になりつつある」と述べています。今こそ、北区が、国・都に対し毅然とした態度を貫く保険者としての使命を果たして下さい。
2つは、介護予防・日常生活支援総合事業についてです。昨年度は、北区独自に事業を開始しましたが、事業者の報酬は国基準を下回るものでした。利用者や介護事業者から厳しい意見が寄せられる中、このほど一定の改善をはかりましたが、今後も現場関係者などからの要望をしっかり受け止め、必要な改善の努力を求めます。
3つは、特養ホームの空きベッドに象徴された介護人材不足の問題です。この喫緊の課題の解決に挑んで下さい。
4つは、第6期事業計画の介護給付費の実績が、計画から約45億円も下回ったことです。要介護に比べ要支援の割合が高い、周辺区に比べて認定が厳しい、保険料が給付実績に見合っていないことなどは、いずれも北区の介護保険制度の信頼を損ねるものとなりますので改善に全力をあげて下さい。
次に、中小企業従業員退職金等共済事業の認定には賛成をいたします。
決算特別委員会・補足質疑における、わが党への誹謗・中傷発言について
最後に、決算特別委員会最終日の補足質疑で行われた、日本共産党に対する誹謗・中傷発言について、私たちの見解を示しておきたいと思います。
公明党の大島議員は、北区の教育委員会、文化振興財団、社会福祉協議会が後援をしている催し物において、政治的とされるチラシが配布されたことをとりあげ、「一生懸命やってきた方たちの思いを踏みにじる…行為…について、私は許すことができない」、「こういうのを挟み込む、…その踏みにじる行為について、糾弾をしているんですよ」と発言しました。
この前段では、日本共産党や、野口将人議員、宇都宮章議員、私、永井朋子の名前も出ていました。また、私たちを目の前にして、「あなたたち」、「おたくたち」との発言もあったので、これは公党である日本共産党への誹謗・中傷であると抗議し、発言の撤回を求めました。
続く理事会の場では、発言の文字おこしを求め、内容を確認しました。大島氏が糾弾の対象しているのは、「一政党」もしくは「一団体」であり、「その政党の勢力を拡大する政治的エゴ」と発言していることから、わが党への非難であることは明確でした。ところが、公明党は「あなたたち」、「おたくたち」とは、野口議員と私、永井のことを指すもので、日本共産党北区議員団への誹謗・中傷という指摘は当たらない、との見解を示しました。この主張の通り受け取れば、北区の後援をうけた催し物に、政治的とされるチラシを持ち込んだのは野口議員と私で、そのことが許せないと主張していることになります。
しかし、野口議員も私も、この催し物の主催者に頼んで、政治的なチラシの配布を依頼したという事実はまったくありません。大島議員は確認もとらず、議会という場で、自らの思い込み、推測によって私たち2人を非難したことになります。
これは、まったく不当な誹謗・中傷に他なりません。さらに、私たちは日本共産党に所属する議員であり、話を個人に移し替えてみても、日本共産党への誹謗・中傷であることには変わりがありません。
私は、日本共産党と野口議員、私に対し、事実に基づかず、根拠のない誹謗・中傷を行ったことについて、大島議員に謝罪を求めるものです。そして、この定例会が終了する前に、あらためて当該の発言を撤回することを求めます。
以上をもって、日本共産党北区議員団の討論といたします。