【緊急提言】子どもたちにゆとりのある教室と豊かな教育環境を
2019年2月18日 | 政策・提言
はじめに
いま北区では、子どもの人口が急増しています。子どもたちが増えることほど未来に希望のもてることはありません。
日本共産党北区議員団は、未来をになう子どもたちに、ゆとりのある教室と豊かな教育環境を保障するために、緊急の提言をおこなうものです。
1、いま区内の学校施設はどうなっているか
(1)年少人口は今後15年間増加
2018年3月に発表された最新の北区人口推計調査報告書では、総人口で今後10年間、年少人口(0~14歳)で15年間、人口が増加していく傾向が示されました。
人口が増加に転じた2013年との比較で、2019年1月時点での年少人口は、11.3%増となっており、すでに子育て・教育施設が不足し始めています。こうした中で、北区はこの間、認可保育所や学童クラブの増設、定員増に力を入れてきました。
(2)学校施設不足の実例
小中学校でも同様に、教室や校庭など施設不足が予測される状況が生まれています。
昨年開かれた学校施設跡地利活用検討委員会では、旧滝野川第六小跡地の利活用をめぐる議論の中で、滝野川紅葉中の深刻な施設不足の実態が浮き彫りになりました。同校では統合新校舎の改築後わずか6年で生徒数が1.5倍に増え、普通教室が足りなくなり、少人数学習は会議室や生徒会室を使っておこなわざるを得ない状況となっています。
また、王子小学校では、学区域に864世帯の大規模マンションが出現したことで学校一校分にあたる430人の就学前人口が増え、今後数年間で教室が足りなくなることが必至となっています。
こうした事態を受けて、昨年の区議会第4回定例会では、日本共産党北区議員団の本田正則議員の代表質問に対し、教育長が「ここ数年、児童・生徒数が増加し、今後も、当分の間、その傾向が続く見通しであることから、いくつかの学校からは、将来的な教室不足を不安視する声も届いています」、「次年度から直ちに教室が不足することはないものの、引き続き児童生徒の増加が見込まれることから、今後、いくつかの学校では、教室不足が予測される状況にあると考えています」と答弁しています。
(3)学童クラブの移設、放課後子ども総合プラン、複合化による影響
学校施設不足が心配されるのは、人口の増加ばかりが原因ではありません。
この間、北区は児童館の削減・再編にともない学童クラブを小学校内に移すとともに、全小学校での放課後子ども総合プランの実施を進めてきました。本来の学校教育以外にも専用スペースが必要となってきたことから、特別教室やランチルームを転用したり、校庭に放課後棟を建設するなどの措置がとられています。
また、北区公共施設再配置方針に基づいて、条件のある学校では改築の際に周辺の施設を取り込む複合化が進められています。なでしこ小学校や浮間中学校では、ふれあい館や図書館、ティーンズセンターなどとの複合施設になることによって、学校として活用できる敷地面積が縮小しています。
(4)今後の児童・生徒数、教室数の推移
今後、北区内の児童・生徒数、教室数はどう推移していくでしょうか。
東京都が示している平成30年度教育人口等推計によれば、今後の5年間(2019~2023年度)で北区全体の小学校児童数は1740人増加(114.3%)、中学校生徒数は568人増加(113.1%)の予測となっています。
児童・生徒の増加率が大きい順では、小学校で、柳田小(184.7%)、王子小(165.2%)、東十条小(157.3%)、谷端小(143.2%)、滝野川第四小(138.4%)、中学校で、神谷中(160.7%)、田端中(149.3%)、王子桜中(124.7%)、稲付中(123.7%)、飛鳥中(117.3%)などとなっています。
同じく都推計で今後5年間の教室数の増加をみると、大きい順で、小学校では王子小が11教室増えるのを筆頭に、5教室増加するのが、柳田小、東十条小、田端小、4教室増加するのが、王子第二小、滝野川小などとなっています。中学校では、王子桜中、田端中が3教室増、稲付中、赤羽岩淵中、神谷中が2教室増などとなっています。
さらに、北区人口推計による児童・生徒数の増加率をみると、小学生人口(6~11歳)のピークは2030年(平成42年)の1万7569人で、2018年の1万3238人から132.7%の増加、中学生人口(12~14歳)のピークは2035年(平成47年)の8948人で、2018年の6214人から144.0%増加の予測となっています。
これらの推計から、いま対策を講じなければ、今後10~15年のうちに、少なくない学校で深刻な施設不足に陥ることが予想されます。
2、児童・生徒数の増加に対応した学校施設の整備を
(1)学校施設についての実態調査の実施を
普通教室の数や多目的室、新世代学習空間の有無、特別教室の設置状況は、それぞれの学校によって異なります。都教育等人口推計や北区人口推計による児童・生徒数の増加に対して学校施設が充足するのかどうか、一つひとつの学校ごとに精査する必要があります。
●区内小中学校の施設について早急に実態調査を実施し、教室などの過不足状況を把握するよう求めます。
●その際、都や区が示す人口推計の値を参考にするとともに、住民基本台帳を活用して学区域ごとの人口を集計し、居住実態から児童・生徒数の伸びを割り出すなど、より正確な人口動向をつかむよう改善が必要です。
(2)「北区立小・中学校整備方針」の改定および「北区立小・中学校長寿命化・改築改修計画」の策定にあたって
先の第4回定例会で教育長は、今後の児童・生徒数の増加に対応した学校施設の整備について、「現在、改定作業中の『北区立小・中学校整備方針』と、新たに策定する『同長寿命化・改築改修計画』において、…特別活動教室の位置づけも含めて、その対応策が示せるように、鋭意検討を進めているところです」と答弁しています。
学校整備方針では、学校を改築する際、備えるべき教室や施設の基準が示されています。しかし実際には、どの教室をどのように使うかは学校長の裁量にまかされており、教室が足りなくなると、本来転用・共用してはならない教室まで活用しなければならない状況です。
●改定される学校整備方針では、将来的な35人・30人学級に対応できる普通教室の整備をはじめ、特別支援教室、特別教室、特別活動教室、校庭などの設置基準を厳格に規定することを求めます。
●長寿命化・改築改修計画は、この基準に基づき、ゆとりある教室や十分な教育環境が確保できる計画とし、児童・生徒数の弾力的受け入れや転用可能な教室の拡大など基準緩和による教室不足対策はとるべきではありません。
(3)学校施設跡地利活用指針の見直しを
2005年に策定された北区学校施設跡地利活用指針では、学校跡地の利活用について、①基本計画実現のための利活用、②区有財産の資産としての活用、③効率的かつ柔軟な利活用と管理運営という方向を示しています。
昨今の傾向としては、区と提携している大学や民間事業者などに売却・貸付する事例が多くなっていますが、広大な敷地と建物を有する学校施設をいったん手放してしまったら、再び手に入れるのは極めて困難です。
そもそも利活用指針は、その前文に「少子化の進行の中、北区における児童・生徒数の減少傾向に伴う学校の小規模化は今後も続くと予想される」と書かれているように、人口減少が前提となっている方針です。今後10~15年にわたり児童・生徒数が増えていくという推計をふまえれば、跡地は安易に売却をせず、不足する学校施設の代替施設として確保しておくことが重要となります。
●学校施設跡地利活用指針は、新しい人口動向をふまえ、学校施設不足に優先的に対応できるよう改定を求めます。
(4)小学校の統廃合・削減方針は再検討を
現在、北区は学校適正配置や施設一体型小中一貫校の整備によって、小学校の統廃合・削減計画を推し進めようとしています。
十条富士見中サブファミリーブロックの学校適正配置協議では、児童数が増加しはじめ、協議開始の当初から対象となる5校全校が当面存続規模に達していたにもかかわらず、荒川小と十条台小を統合する協議会方針が決定されました。
神谷中、神谷小、稲田小を統合する神谷中サブファミリー施設一体型小中一貫校の整備では、当初949人と想定していた児童・生徒数が、直近のワークショップでは最大1630人を見込まなければならない規模にまで膨らんでいます。学校関係者からも「稲田小は第2グラウンドとして残すべき」などの声があがっています。
●これまでの予測をくつがえす人口増加という事態をふまえ、あらためて小学校の統廃合・削減方針を再検討することを求めます。
(5)学校施設整備の予算確保
今後、区内全小中学校の体育館にエアコンを設置していくこともふまえ、ゆとりのある教室と豊かな教育環境を確保していくためには、学校の改築や改修のための十分な予算が必要となります。
●学校改築基金には、計画的かつ十分な積み立てをおこなうことを求めます。
3、公共施設の削減目標見直しを
2013年7月に策定された北区公共施設再配置方針は、今後の人口減少と公共施設更新費用の増大に対応するとして、「今後20年間で施設総量の15%程度の削減」を目標に掲げました。しかし、その後の推移は、人口では減少から増加への転換が起き、北区の財政状況は、花川区長が「財政対応力が高まった」と繰り返すように580億円に達する過去最高の基金(主要5基金)を積み立てるまでに至っています。
この間、北区では区立の認可保育所やシルバーピアを整備してきたことに加え、改築した学校では施設規模が大きくなることなどによって、再配置方針策定以降の公共施設面積は総体として増えており、再配置方針の目標は実態に見合わなくなっているのが現実です。
●今後、過大な削減目標によって、教育環境を保障する学校施設の整備に支障をきたすことのないよう、公共施設再配置方針の施設削減目標を見直すことを求めます。