2019年第4回定例会個人質問―本田正則
2019年11月27日 | 本田正則
本日は、区内で今後事業化が検討される滝野川地域の都市計画道路について質問します。
質問に先立って、都市計画道路をめぐる問題点について触れておきます。
都市計画道路は、高度経済成長期における都市の拡大を前提に決定されたものが多く、計画決定後、長期間が経過し、その必要性に変化が生じつつある道路もあることから、国土交通省は全国に、都市計画道路の見直しを助言しています。
これを受けて、現在、東京都は各種都市計画道路の必要性の検証をおこない、年内には「東京における都市計画道路の在り方に関する基本方針」を決定する予定です。しかしながら、東京以外の道府県が、距離や路線数で2割、3割の計画削減を行っているのに対し、東京では2000年以後、廃止されたのは、わずか1.4%、今回の検証作業でも、まともな見直しをおこなわず、ほとんどの路線を温存しようとしています。しかも東京都の場合、戦災復興のために計画された路線が、未着手のままかなりの数残っており、これらも含めていったんつくると決めた道路は、何があっても、どれだけお金がかかっても、計画は変更しないというのが、東京都の姿勢です。
では、北区はどうでしょうか。北区はこの間、東京都が都市計画決定した路線を、ほぼ無条件に受け容れ、住民への十分な説明も同意もないまま、事業化を認めてきました。
とりわけ、「木密不燃化10年プロジェクト」として、たった10年間で全線を完成させるとした区内4つの特定整備路線では、大量の住民を立ち退かせ、太田道灌ゆかりの稲付城跡にトンネルを掘ったり、公園の草っぱら広場までつぶす計画を、住民合意もないまま強引に事業化へと導きました。
こうした中で、地権者をはじめ、地元住民らが怒りをもって抗議し、志茂と赤羽西の補助86号線、十条の73号線をめぐっては、事業認可取り消しを求める住民訴訟が起こされています。
先日の、志茂86号線の控訴審では、原告の住民代表が、「私たちは、国および東京都が正しさを示すことができない限り『不屈』の精神を持ち、世代が何代にもわたり、数百年たとうとも、この道路計画と戦い続ける覚悟です」と陳述しましたが、住民のこの決意は、道路建設ありきの東京都の方針を鵜呑みにし、道理のない道路計画を強要してきた北区にも向けられたものであります。
一方で、すでに必要性を失っている道路、住民にとって利益にならない都市計画道路について、地元の自治体が声をあげ、見直しを求めることによって、東京都に計画を変更させることができるという事例も生まれています。
北区の西ヶ原から豊島区の駒込へと続く補助81号線は、特定整備路線の候補区間に選定された時、地元の町会・自治会や計画線にかかるお寺などからの反対の声を受けて、花川区長が東京都に見直しを要望、北区内のほとんどの区間が候補路線から除外されました。
また、北区、荒川区、台東区にまたがる補助92号線では、台東区の粘り強い求めに応じ、東京都が路線のほぼ半分にあたる都市計画の廃止手続きに入っています。
東京都が、都市計画のあり方についての基本方針案を出し、今後、事業化に向けた検討などが始まるこの時期にこそ、北区が不要な道路、問題のある都市計画道路の廃止、見直しを求めるべきです。
そこで以下、個別の道路計画について、質問いたします。
1、明治通り、本郷通りの拡幅計画の廃止・見直しを
大きな第1の質問では、明治通り、本郷通りという2つの幹線道路の拡幅計画の廃止・見直しを求めます。
(1)中小工場などに影響を与える明治通りの拡幅計画の見直しを
まず、明治通りです。問題となる路線は、溝田橋交差点から、京浜東北線に並行する形で堀船、昭和町、田端新町を通って、荒川区の宮地交差点を終点とする環状5号線の2と呼ばれる区間です。
すでに都道として供用されていますが、両側それぞれ約3mずつ、幅員27mに拡幅する計画です。しかし、明治通りの交通量は減っており、渋滞もありません。従って、拡幅は不要です。
加えて、この計画を事業化すれば、大きく2つの問題が発生します。
その1つは、ものづくりを支える金属加工の工場、問屋街を撤退に追い込むことです。
明治通りの両側には、金属機械加工の工場・問屋が立ち並び、東日本各地の工場から注文を受けて、工作機械の受注だけでなく工場レイアウトまでこなしていました。かつては田端機工街と呼ばれたくさんの会社が建ち並んでおり、2001年でも36社ありました。今でも12~3社が近隣で営業していますが、ものづくり産業が厳しい状況に追い込まれています。拡幅計画を残せば、セットバックが必要となり、ますます追い詰めることになります。現実に、拡幅に備えて沿道部分を駐車場にして建て替えた会社もあれば、廃業しマンションになった会社もあります。
2つは、高層マンションの進出で、周辺住民の生活環境の悪化を招くことです。
幅の広い道路は、高度規制が弱まり、現状でも容積率500%、日影規制もなくなり、マンション開発がやりやすくなっています。それでも、高層化して儲けを出すために、明治通り沿道にあった田端中央病院が撤退後、まとまった土地を、同一系列の3社がまとまった土地をわざわざ分筆して、4つのマンションの別個の敷地とすることで、14階、13階の4棟のマンションを建てる建築確認をとりました。我慢ならない北側住民は、建築差し止めの仮処分を申請しました。裁判所は、4棟を1棟とみなしたうえで日影規制を超えない建物とすべきだという住民の主張を認め、7階以上の建築は差し止めるという仮処分命令を出しました。住民の行動がなければ開発できてしまうのです。道路拡幅は、ますます、規制を緩めて生活環境を悪化させ、地元企業を苦しくするのです。
そこで、こうした地域の実情をふまえ、明治通りの環状5の2は新たな拡幅をやめて、計画を廃止とするよう、北区として求めていただきたい。区長の見解を問います。
環状5の2号線、通称明治通りは、現況幅員約21メートルを27メートルに拡幅する計画です。
東京都と特別区等が協働で策定した「東京における都市計画道路の在り方に関する基本方針」においては、計画幅員まで完成していないが、一定の現況幅員がある概成道路として、拡幅整備の有効性を検証する対象路線としました。
今回の検討においては、道路構造条例等に基づき、4車線の評価幅員を車道部で16メートル以上としていますが、現況の車道幅員は、これを満たしていません。
また、明治通りは、骨格幹線道路として、歩行者を含む日常の交通処理や、災害時の緊急輸送道路としての機能確保の観点などから拡幅が必要としております。
区といたしましても、現在の都市計画道路を存続すべきものと考えております。
(2)一里塚・旧古河庭園にかかる、拡幅計画の廃止見直しを
次に本郷通りについてです。問題とするのは、放射10号線として計画されている路線のうち、飛鳥山公園あたりから滝野川会館の前を曲がって駒込駅へと続く区間です。ここも、すでに供用されている現在の幅員を最大5mどちらかに拡げて27mへと拡幅する計画です。
この計画を事業化したら、どんな問題が起きるでしょうか。計画地には、渋沢栄一氏とも縁の深い旧古河庭園や一里塚があり、拡幅によってこれらの貴重な文化財が削られてしまう恐れがあるのです。
旧古河庭園は国指定の名勝ですが、現在の道路を公園側に約4m拡幅する計画になっています。
西ヶ原一里塚も、道路境界が北側の塚ギリギリにかかっており、幹線道路の車道を16m確保し、歩道や自転車道を確保するとなると、塚を壊したり、移動したりということになりかねません。
江戸時代の街道に置かれた一里塚は、道の両脇にそれぞれ塚がありましたが、現在では片側だけになっている一里塚が多いそうです。そうした中、西ヶ原の一里塚は、渋沢栄一氏が地域のみなさんと一緒に運動して、街道の両脇に塚を残しているということで、大変貴重だということです。せっかく渋沢さんが残した一里塚を残すよう北区が努力すべきではないでしょうか?
今回の検証の中で、東京都は、たとえ公園がかかっていたとしても、車線縮小や、幅員縮小は断固考えないというまさに道路ファーストの姿勢を表明しています。公園を避けろと言われれば、反対側に都市計画区域が広がり、立ち退き対象が新たに増えるからとあたかも立ち退き対象になる方々を守るかのような言い方をしますが、渋滞もないのですから、道路幅を縮小すればいいではありませんか。
北区は、本郷通りについても、国の名勝や、貴重な一里塚を守るためにも、拡幅をやめ、現行幅員で整備完了し、都市計画を廃止するよう東京都に提案することを求めますが区長の見解を問います。
放射10号線、通称本郷通りは、現況幅員約21メートルを27メートルに拡幅する計画となっており、明治通りと同様の理由から拡幅の必要性を検証しています。
一方、国指定の名勝である旧古河庭園に接する区間では、都市計画公園区域と重複していることから、今後、関係機関と調整が必要な部分として、都市計画道路および都市計画公園双方の事業化に支障とならないよう、変更する方向性としています。
区としましては、放射10号線、通称本郷通りの事業化が検討される際に、東京都と旧古河庭園や一里塚などについて調整を図ってまいります。
2、補助81・91号線の計画廃止・見直しの提案を
大きな2つ目に、今回の基本方針案では、見直しの検証対象から外れている、補助81号線と91号線について質問します。これらも戦災復興計画で決定されたとされてきた、原図がなく、一度も、住民合意が得られたことのない、73年間未着手の路線です。
(1)補助81号線の特定整備路線候補除外区間の都市計画廃止を求めよ
まず、補助81号線です。先ほど、花川区長が東京都に求め、特定整備路線の候補路線から外れたと紹介した区間ですが、優先整備路線に入っていないので、当面必要性の低い路線です。
区長は、特定整備路線の候補から81号線の除外を求める要望書に、2つの理由をあげました。
1つは、道路で本堂と墓地をとられる無量寺という古刹、おそらく平安時代、遅くとも鎌倉時代から続く古いお寺ですが、このお寺の住職や関係自治会長らが反対署名を積み上げたという事実です。
2つに、地形的な特徴から、周辺環境に大きな影響を及ぼすことです。この路線は急なのり面を斜めにおりていく計画のため、のり面の両側にすでに建っているマンションの玄関先が、道路に面して崖になってしまい、玄関から出られなくなるなどの様々な問題がありました。長期間かけても無理筋の計画です。都のいう必要性だけでは、地元の状況・周辺環境を克服できないことは明らかです。
そこでこの検証の機会に改めて、東京都に、計画廃止を提案していただきたい。答弁を求めます。
ご指摘の区間は、特定整備路線の選定から除外されたものの、広域の道路ネットワークを構成するとともに、避難経路としての役割や本区間周辺の防災上の課題解決のためにも、重要な都市計画道路であると考えております。
区といたしましては、今後とも、必要な都市計画道路の整備を着実に進めるとともに、社会経済情勢の変化や道路に対するニーズをふまえ、東京都と協働で、都市計画道路の必要性について、不断の検証を行ってまいります。
(2)橋梁や高架部分、多くの立ち退きなど莫大な整備費用が必要な91号線の見直しを
次に補助91号線です。これはどんな道路かというと、本郷通りの旧古川庭園前から北側へ延び、京浜東北線を越え、上中里、堀船を通って隅田川の向こう、足立区宮城へと続く路線です。低地の足立区や上中里地域から、高架橋をかけて高台の西ヶ原へと登る大かかりな道路といえばイメージがわくでしょうか。
事業化に当たって、大きな問題は立ち退きの多さと商店街への影響、そして、膨大な整備費用です。
まず、立ち退きです。東京都の都市計画図から地図上で数えて見ると、平塚神社脇で20軒以上、上中里駅から、東北本線、尾久車両基地までの間で70軒以上、そこから明治通りまでで約40軒で、明治通りまででざっと130軒を超えそうです。明治通りから先の部分でも70軒近くが計画にかかり、あわせると200軒前後。膨大な立ち退き軒数です。
次に、商店街への影響です。都電梶原駅から北に延びる区間は、梶原商店街の真ん中を通る道路を両側に拡幅します。いま沿道に建つ商店が、のきなみ撤退させられる可能性があり、そうなれば商店街の存続にもかかわります。
さらに膨大になる工事費用の問題です。延長400mもの高架道路になるのに加え、2ヵ所の鉄道跨線橋、さらに隅田川を渡る橋も作ることになり、用地補償費と工事費用で1000億円はくだらない膨大な予算規模になるのではないでしょうか。
これらの影響を考えれば、このまま計画を推し進めるわけにはいきません。
補助91号線については、これから検証に入るのですから、北区からいったん計画を廃止するよう、東京都に提案していただきたい。ご答弁ください。
補助91号線は幅員15メートル、高架部では幅員27メートルの、足立区と北区を結び、補助81号線につながる広域的な道路です。
地形的な整備困難性など、実現にはさまざまな課題があると認識していますが、都市部の道路ネットワークを形成し、大規模洪水などの災害時には避難や救急救援活動などを担う重要な役割を果たす都市計画道路と考えています。
区といたしましては、補助81号線と同様に、今後とも必要な都市計画道路の整備を着実に進めるとともに、社会経済情勢の変化や道路に対するニーズをふまえ、東京都と協働で都市計画道路の必要性について、不断の検証を行ってまいります
3、優先整備路線補助92号線について
大きな3つ目に、補助92号線について質問します。
この道路は、滝野川会館前から中里、田端を通り、荒川区西日暮里から、台東区谷中を通って上野の博物館前を通ってJRを跨ぎ越すまで続く路線ですが、少し注釈が必要です。第1に、滝野川会館から田端2丁目までは、すでに事業化されている区間です。第2に、田端1丁目から西日暮里4丁目までは、これから事業化が検討されている区間です。そして、第3に、全路線の半分以上を占める西日暮里3丁目以南の荒川区、台東区の部分は、現在、東京都が都市計画廃止の手続きを進めている区間です。
(1)西日暮里三丁目以南の都市計画廃止手続き決定について区の見解を問う
そこで最初に、西日暮里3丁目以南の廃止手続き決定について北区の見解を問います。
というのは、廃止されるのは荒川区、台東区の部分ですが、同じ92号線でつながっている北区も影響を受けるということで、東京都が北区に対し意見照会をするからです。東京都が、この区間の廃止手続きに踏み切ったのは、歴史的な街並みを残すために台東区から廃止の強い要望が出され、荒川区も同意したからだと思います。この区間を廃止しても、交通量の上からはまったく問題ありません。
そこで、北区はこの道路の都市計画廃止をどのように受け止めているのか。ご答弁ください。
補助92号線の当該区間は、平成16年3月策定の第3次事業化計画において、日暮里・谷中地区の3区間について、都市計画道路の見直し候補区間に選定されました。
同地区の歴史的・文化的資産と緑が存在する地域の特性をふまえた上で、地域における交通・安全・防災の観点から検証した、平成27年12月の都市計画道路の見直し方針と、その後に台東区が進めている同地区の地区計画等によるまちづくりとが整合した都市計画の変更であるととらえています。
今後、これらの計画については、並行して手続きが行われる予定と聞いております。
(2)西日暮里四丁目~田端一丁目の事業化中止、計画廃止について
次に、これから事業化が検討される田端1丁目~西日暮里4丁目にかけての区間の事業化中止、計画廃止を求めることについて問います。
この区間の計画は、田端の区画整理にともなって必要性が謳われてきました。しかし、区画整理は大方が完了し、まだ計画は残っていますが、1丁目部分の事業化の動きはなく、これ以上、進めるべき理由はなくなっています。従って、今では92号線もつくる必要のない道路になってしまいました。
加えて、西日暮里4丁目のみなさんが町会あげて道路建設に反対し、連合町会も荒川区長も強行しないように求めています。西日暮里4丁目の計画が頓挫すれば、北区から先は行き止まりとなり、道路としての意味を持たなくなります。
台東区は1981年から一貫してこの道路建設反対の声を上げ続け、西日暮里3丁目以南の廃止の方向が固まったのですから、田端1丁目から西日暮里4丁目にかけての道路計画も、これ以上長期未着手で放置せず、北区から東京都に廃止を求めるべきです。区長の見解を問います。
北区内の補助92号線の当該区間は、土地区画整理の都市計画決定区域を含むなど、今回、廃止の手続きに入る西日暮里3丁目以南の区間とは市街地状況などの地域特性が異なっております。
区といたしましては、東京における都市計画道路の整備方針第3次および第4次事業化計画においても、当該区間の必要性が検証され、優先整備路線に選定されていることから、事業の推進を図るべきものと考えています。
(3)中里踏切と山手線跨線橋の諸課題について
最後に、中里踏切の解消にともなって事業化の声のある山手線跨線橋の建設について、見解を問います。ここは、92号線の中でも、用地確保は戦時中に終わり、長いこと暫定利用のままでしたが、現在、事業が始まり、山手線の跨線橋の準備設計を、東京都が3年ほど前から続けています。沿道には、新築されているお宅もたくさんあります。
架橋のために新たな立ち退きが発生するようなことがないよう、東京都に働きかけることを求めますが、ご答弁ください。
以上で私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
山手線跨線橋については、現在、東京都において、設計作業を進めている段階で、測量作業を行っていないため、必要な用地については、今後確定していくと聞いております。
区といたしましては、今後とも、山手線跨線橋の整備に関わる情報提供を東京都に求め、状況把握に努めてまいります。