2020年度決算に対する反対討論-ながいともこ
2021年10月8日 | ながいともこ
私は、日本共産党北区議員団を代表して、ただいま上程されました2020年(令和2年)度東京都北区一般会計決算、東京都北区国民健康保険事業会計決算、東京都北区後期高齢者医療会計決算に対する反対討論を行います。
初めに、一般会計決算についてです。
昨年度は、拡大・減少の波を繰り返す新型コロナウイルス感染症への対応で、前年度にもまして難しい区政運営が求められる年となりました。こうした中、ひとり親家庭への臨時特別給付金、利用料・手数料の見直し検討の中止、大規模水害への対応強化、小・中学校給食費の負担軽減、障害者グループホームを併設した2ヵ所目の区営シルバーピアやLGBT相談窓口の開設等は、区民要望に応えた事業と評価いたします。
しかし、以下3点の理由から、一般会計決算の認定に反対いたします。
高まった財政対応力が十分に活用されず、感染防止対策やコロナ禍における暮らし・営業の支援が不十分
第1の理由は、高まった財政対応力が十分に活用されず、感染防止対策やコロナ禍における暮らし・営業の支援が不十分にとどまったことです。
人口あたりの PCR 検査数が未だ世界で 143 位にとどまり、飲食店への協力金支給も大きく立ち遅れるなど、国や東京都の新型コロナ対策が不十分な中で、自治体独自の役割発揮が求められています。昨年度の予算執行においては、感染拡大防止対策や、影響を受ける区民や事業者を支援するための財源確保が重要な課題となり、日本共産党北区議員団は、7 次にわたる区長への要請や予算組み替え提案で、財政調整基金を大胆に活用し、必要な施策を抜本的に強化することを求めてきました。
議会からの提案や、わが党の要請にもこたえ、地方創生臨時交付金の活用や財調基金の取り崩しで、全庁あげての対策に取り組んだ姿勢は評価できるものです。しかしながら、その内容や規模においては、不十分な水準にとどまったと言わざるを得ません。
例をあげれば、無症状の陽性者が感染を広げるという特徴をもつ新型コロナの対策では、PCR 検査の大規模実施によって感染源を断つことが決定的に重要でした。私たちは、駅頭や繁華街などでの無料検査や、学校の教職員・保育士などを対象にした定期的な行政検査の実施を繰り返し求めましたが、区の対応は、おおむね国や都の施策の範囲内にとどまりました。
また、国や都の支援に上乗せした事業者支援に踏み出す自治体も生まれる中、私たちは制度のはざまで支援が受けられない事業者や、国や都の支援では営業が継続できない飲食店などに対し、区独自の補助金を支給するよう求めましたが、実現には至りませんでした。
さらに、区内の様々な団体・サークルが活動の自粛や中止に追い込まれ、外出を控え続けることで体調を崩す高齢者も多くなったことから、区民施設のキャンセル料負担軽減、利用人数を考慮した施設使用料の減額、補聴器購入やエアコン設置への支援は切実と訴えましたが、予算措置が講じられることはありませんでした。
そうしたもと、年度当初約 183 億円に達していた財調基金は、一定額を取り崩してコロナ対策等に充てたものの、年度末には約 174 億円まで積み戻され、結果として取り崩しは 9 億円程度と、余力を残すものとなりました。
未だ収束が見通せないコロナへの対策に、今こそ高まった財政対応力を活用すべきです。国や都に必要かつ十分な財源措置を求めつつ、暮らし・営業への支援に、さらなる財調基金の活用を求めます。
民間事業者と一体に高層ビルを呼び込み、大型開発を住民合意のないまま推し進める、まちづくりの姿勢
第2の理由は、民間事業者と一体に高層ビルを呼び込み、大型開発を住民合意のないまま推し進める、まちづくりの姿勢です。
北区は、「子育てファミリー層・若年層の定住化」を最重要課題に掲げ、その居住先を確保するために、十条や赤羽の駅前市街地再開発など、民間事業者と一体にタワーマンションを呼び込むまちづくり政策を進めています。
一方で、コロナ禍の長期化にともない、失業や不安定雇用等で収入が減少し、住居確保給付金を利用する方が急増しました。また、老朽化するアパートから立ち退きを余儀なくされた高齢者は、転居先がなかなか見つかりません。庶民には到底手の届かない分譲マンションより、低廉な家賃で安心して住める都営住宅・区営住宅や、区営シルバーピアなどの公共住宅こそ求められています。
また、住宅確保と家賃の低廉化を目的とした住宅セーフティネット制度の活用が期待されていますが、家賃補助のしくみは、いまだに検討段階です。
再開発事業など民間まかせの高層建築の誘導は抑制し、公営住宅の充実や家賃支援、誰もが住み続けられるまちづくりへと転換すべきです。
特定整備路線をめぐっては、今なお区内で認可取り消しを求める3つの住民訴訟が争われています。東京都は事業期間を5年延長させたものの、完成のめどがたつどころか、無理な計画を押し付けられた住民との矛盾は、ますます深まっています。区は、「区民とともに」を掲げながら、住民の声を聞かずに都の計画を追認、住民合意をないがしろに事業を進めるやり方には、改善がみられません。
また、市街地再開発や埼京線連続立体交差事業、鉄道付属街路など十条のまちづくりでは、権利者や影響を受ける地域住民などへ十分な説明が果たされないまま事業認可が行われ、地権者が転居先を確保できないうちに移転を強制されるなどの問題も生じています。再開発による商店街への影響も計り知れません。
あらためて、住民が主役となるまちづくりの姿勢に立ち戻るよう求めます。
なお、決算審議では、北区のまちづくり基金について、再開発事業の工期延長や国からの財政措置見直しをふまえれば、残高は十分であることが明らかになりました。基金へのさらなる積み立ては不要であることを付言しておきます。
経営改革の名で「行革」路線に固執する姿勢
第3の理由は、コロナ禍の下、経営改革の名で「行革」路線に固執する姿勢です。
コロナ禍は、医療体制や保健所のひっ迫、行き届かない検査や補償、収入や性別による格差の顕在化、感染対策よりもGoToキャンペーンやオリンピック・パラリンピックを優先する経済効率優先の行政運営など、さまざまな矛盾を明るみに出しました。
第5波の感染爆発に際し、医療崩壊をまねいておきながらも、陽性者に「原則自宅療養」を強要する政府方針は、その最たるものです。自宅待機中に亡くなってしまう痛ましい事例が連日報道されるなど、容態が急変しても、受け入れてくれる病床がないのではないかなど、国民に不安が広がりました。
北区においても、今年の8月末には自宅待機者が1100人となり、保健所長をはじめ職員の懸命な努力と、北区の全庁的支援体制で何とか乗り切ることができましたが、経過観察や入院調整などの対応に時間がかかるなど、保健所体制のひっ迫は深刻な状態となりました。
こうした問題の大本には、政府・与党が長年にわたって推し進めてきた新自由主義の政治があります。経営改革の名による北区の「行革」路線は、こうした考え方を背景に具体化されてきたものです。
その実態がどういうものだったのか、例えば保健所では、1995年に第2次北区行革大綱、続いて区役所活性化計画が打ち出され、赤羽、王子、滝野川に3か所あった保健所は1か所に、その後人員体制も医師は7名から3名に、保健師などの専門職も削減されてきました。こうした保健所の機能低下が、長期間の経過の中で、いざという時のパンデミックに対応しきれない保健医療体制の脆弱化をもたらしてきたのです。
決算審議の中で、答弁に立った保健所長が、「危機管理できない現状を変え、平時からの保健所体制づくりが必要だった」と述懐したのは印象的でしたが、こうした思いとは相反するように、北区では「行革」路線が推し進められてきたのです。
「行革」路線の柱の一つでもある外部化という点ではどうでしょうか。北区経営改革プランでは、職員定数を削減し、非正規職員への置き換えや指定管理者制度の導入を推し進めてきました。その結果、低賃金、不安定雇用の官製ワーキングプアを広げる結果となっています。
今、転換すべきは、医療・福祉を軽視し、経済効率を最優先してきた新自由主義の「行革」路線です。ところが決算審査で区は、コロナ禍を経てなお、「経営改革プランをさらに推進していく」という姿勢を示しました。
小学校の35人学級が進み始め、不足する教室の拡充が課題となっています。これまでの行き過ぎた適正配置計画も再検証することを含め、「行革」路線を大本から見直すことを強く求めます。
特別会計決算の認定について
次に、特別会計です。
国民健康保険料、後期高齢医療保険料の相次ぐ値上げは、加入者に過酷な負担を強いるものです。よって、国民健康保険事業会計決算と後期高齢者医療会計決算には、いずれも保険料の値上げ等から認定に反対をいたします。
なお、介護保険会計決算には賛成することを申し添えます。
いくつかの要望について
なお、決算審議を通じて、4点の要望を申し添えます。
1つに、新規感染者数が減少している今だからこそ、次の感染拡大に備え、検査体制の充実、医療機関への支援、事業者への補償など、新型コロナ対策を抜本的に強化すること。また、そのための財源措置を国や東京都に求めること。
2つに、待ったなしの地球温暖化防止の課題で、「ゼロカーボンシティ宣言」を行った北区が、温室効果ガス排出ゼロに向けた実効性のある具体的施策に足を踏み出すこと。
3つに、ジェンダー平等社会の実現へ、パートナーシップ宣誓制度の着実な実施をはじめ、保育士・介護従事者などケア労働者の処遇改善、意思決定機関への女性の積極的な登用などに努めること。
4つに、介護保険事業において、3年間で100億円を超える給付費残が発生している原因を明らかにするとともに、適正な保険料、事業計画への改善を図ること。
以上、一般会計及び国保、後期高齢者医療の2特別会計の認定に対する日本共産党北区議員団の反対討論といたします。
ご清聴ありがとうございました。