2023年度北区予算に対する反対討論と組み替え動議に対する賛成討論―福島宏紀
2023年3月22日 | 福島宏紀
私は、ただいま上程された第24号議案、2023年(令和5年)度東京都北区一般会計予算、および第25号議案、2023年(令和5年)度東京都北区国民健康保険事業会計予算に対する反対討論を行います。
新年度予算において、区立小・中学校の学校給食費完全無償化、大規模水害避難支援計画の策定及び要支援者に対する個別避難計画の作成、EVを導入したコニュニティバスの新規路線試験運行、高齢者あんしんセンターによる見守りが必要な方へのアウトリーチ、学力パワーアップ講師や学級経営支援員、教員事務補助員の増員などについては、住民要望の反映として評価いたします。しかし、以下3点の理由から一般会計予算に反対いたします。
基金を積み増す一方、暮らし・営業への支援は不十分
第1の理由は、過去最大の予算規模となった財源を基金に積み増す一方、区民の暮らし、中小業者の営業に対する支援が不十分にとどまっていることです。
内閣府は17日、「社会意識に関する世論調査」の結果を発表しましたが、「日本が悪い方向に向かっている分野」に、「物価」と答えた人が前回調査の38%から70%へと大幅に増え、調査開始以降最高になりました。
わが会派が、この間、独自に取り組んだ区民アンケートでは、最も力を入れてほしい施策の第1位は物価高騰対策、第2位は各種保険料の負担軽減でした。アンケートでは、次のような声が寄せられています。
「飲食店をしていますが、コロナで、外食をひかえる方も多く、客足が遠のいていますので、小さい店舗で頑張っているところへ少しお力添えが欲しいと思っています」。
「所得制限で、娘の児童扶養手当が停止になりました。働けば働くほど手当はなくなり税金が増える。1回でもいいので、児童扶養手当にかわる物価高騰への手当や、高校生活支援の手当はできないものでしょうか。」
41年前の第二次オイルショック以来といわれる物価高騰に直面している今こそ、この切実な声に区政が正面からこたえるべきではないでしょうか。
新年度予算は2000億円に迫る過去最大規模に。主要5基金は今年度末約750億円、うち財政調整基金は約195億円と順調に積み上がり、さらに新年度も、区は新庁舎整備基金に20億円、まちづくり基金に10億円を積み増すとしています。
こうした財源を、私たちが提案した非課税世帯や一定の範囲の納税者に広げた「物価高騰対策給付金」の支給や、23区中18区が実施・計画している補聴器補助の実施に、新年度予算で踏み切ることは可能だったのではないでしょうか。暮らし応援の予算への転換を求めます。
「行革」路線に固執する姿勢
第2の理由は、外部化などを基軸とする「行革」路線に固執する姿勢です。
2005年に策定され、改定を重ねてきた経営改革プランの下で、職員の削減や非正規化、指定管理者制度の拡大などが推し進められてきました。その結果、コロナ禍の下での保健所体制のひっ迫や、保育士の給与格差の拡大など、弊害が生じています。
現在、北区は、20年の長期方針となる北区基本構想の改定作業に着手しています。本来ならば、区政運営のあり方を評価・検討し、これまでの経営改革プランと、それに基づく「行革」路線そのものを見直すことが必要ですが、基本構想審議会では十分な議論が保障されず、区長は新年度に向けた所信で、「経営改革プランに基づき、不断の行政改革を推進していく」と表明しています。
総括も反省もなく、「行革」路線を推し進めることは認められません。
大型開発を優先し、住民合意を欠くまちづくりの進め方
第3の理由は、超高層マンション誘致の大型開発を優先し、住民の合意形成への努力を欠くまちづくりの進め方です。
十条駅西口に続き、赤羽一丁目市街地再開発、URとの土地一体活用によるゲートウェイ形成など、区は主要駅前に次々と、民間事業者と一体となってタワーマンションを呼び込む開発計画を推し進めています。
会派が取り組んだ区民アンケートには、「北区に高層ビルマンションは似合わない」「住民を立ち退かせる計画に理不尽を感じる」などの意見が多数寄せられていますが、タワーマンション型のまちづくりは、巨額の税金を投入し、民間大企業に頼って進める大型開発が特徴です。駅前の一等地に建設される数百から一千戸規模の分譲マンションは一戸あたり億の単位に近い高値で売られ、参加企業に多額の利益をもたらします。
一方、敷地を確保するために、居住者や商店などの事業者に転居を迫り、日照や風害など周辺環境にも大きな影響を与えます。住民からは、景観が様変わりし、まちの魅力が失われていくのではないかという不安も寄せられています。
こうした大規模な開発は、一度進み始めれば後戻りができないだけに、住民合意が極めて重要ですが、市街地再開発計画は権利者の3分の2が賛同すれば発動する、強権的な仕組みとなっています。また、まちづくり協議会が地域住民に非公開となっている場合があり、議論が見えにくいとの意見も出ています。
全国の開発事案に長年関わってきたNPO法人「区画整理・再開発対策全国連絡会議」の事務局長は、以下のように語っています。
「今日の再開発は、『魅力的なまちづくり』『公共の福祉』などといいながら、民間企業の描いた計画通りに動いています。しかし、地方分権の下、都市計画の決定権限は、かなりの部分で区市町村に移っています。つまり、自治体の姿勢で大きく変わる。頑張りしだいで、かなりの歯止めになります」。
この指摘を受け止め、まちづくりの姿勢を転換するよう求めるものです。
国民健康保険会計予算について
続いて、国民健康保険事業会計予算についての反対討論を行います。
新年度、北区の一人あたりの国民健康保険料は12万757円から13万1333円に、1万576円の値上げになります。加入者の高齢化、医療の高度化、コロナによる医療費増などを理由にかつてない大幅引き上げとなります。
予算審査では、以下3点、指摘しました。
まず第1に、国保料による家計圧迫についてです。
4人家族で、所得約240万円の一般世帯の場合、国保年金課の試算で国保料が26万円、国民年金保険料が1人約20万円、夫婦で40万円になり、保険料は合計76万円となります。所得240万円といえば、国が決めた最低生活費、つまり生活保護基準に相当しますが、その世帯にも容赦なく所得の3割以上の保険料負担がかかることを明らかにしました。
第2は、納めたくても納められない区民と、徴収を担当する区の担当部局との間の苦悩についてです。
昨年末、滞納が続き、区からやむを得ず預貯金の差押えをされた方が、議員団に飛び込んで来ました。2人の子どもが「今年はクリスマスが来なくてもいい」と言ってくれたが、学校に持って行くお金がないという涙ながらの母親からのご相談でした。区の担当者につなぎ、双方がギリギリまで事態の収拾に努力して差押えの一部が解除。家族4人で何とかお正月が迎えられたという話を紹介しました。
第3に、自治体としての努力すべき方向についてです。
どこの自治体でも国保制度の持つ根本的な欠陥を抱えていますが、それでもなお、名古屋市では一般会計からの繰り入れで、加入者全員の均等割を新年度5%減免し、23区水準と比較して10万円近い引き下げを実現しています。特別区長会が、国と都に対して制度の抜本的な改善や財政支援を求めていることは承知をしていますが、保険料負担軽減に向けた北区としての独自の努力を重ねて訴えます。
加えて、区民が大きな不安を持っているマイナンバーカードと保険証の一体化についても、ひとこと触れます。2024年秋頃に保険証が廃止され、紙による「資格確認書」が交付される予定とする国の動向について答弁がありましたが、結果的にはマイナンバーカードの取得強制となるマイナ保険証の導入には、反対の意思を表明します。
なお、介護保険会計予算と後期高齢者医療会計予算には賛成いたします。
6点の要望
最後に、今予算審査を通じて切実さが浮き彫りになった、以下6点を要望いたします。
1、補聴器購入助成を早期に実現すること。
2、新型コロナウイルス感染症は「5類」ありきで公費を縮小せず、必要な対策を継続・強化すること。
3、高齢者、低所得者などへのエアコン購入・修理・電気代の助成をすること。
4、医療、介護、保育などのケア労働者の処遇改善をすること。
5、学童クラブの定員40人を守ること。
6、介護保険の利用料の2割負担に反対すること。
以上、新年度予算に対する会派の態度を申し上げました。
ここで、予算審査最終日における発言について一言しておきます。
公明党議員団は、区内スポーツ団体役員が逮捕されたことについて質疑する中で、個人による不正行為を団体による「組織的な行為」「反社会的組織」などと結びつけ、同団体と協力関係にある日本共産党に対し、「議員としてしっかり襟を正すべき」などと述べました。この発言は、事実をゆがめ、公党であるわが党への誹謗・中傷にあたるものであり、あらためて抗議の意を表明しておきます。
組み替え動議に対する賛成討論
続いて、「第24号議案 令和5年度東京都北区一般会計予算」の組み替えを求める動議に対する賛成討論を行います。
先ほど提案理由を述べさせていただきました組み替え動議は、緊急で切実、かつ今の区の財政状況ならば十分に実現可能な7事業を提案しています。わが会派に寄せられた1300通を超えるアンケートから区民の声を紹介し、あらためてその意義について申し上げます。
まず第1に、物価高騰対策臨時給付金についてです。
組み替え総額48億円のうち45億円と、事業費の大宗となります。これまでも、コロナ禍や物価高騰に対応する国や区独自の給付金が給付されましたが、住民税非課税や子どもがいる場合等支給対象が狭く、困難をかかえる区民をカバーするまでには至っていません。
区民アンケートの声です。
「私は、非課税ですが娘の扶養になってますので、国の給付金は一度ももらったことはありません。娘の給料もギリギリの生活です。頑張って少しでも多くの給料をもらうようにした人たちには何もなく不公平で不幸すぎます」。
「最低の収入で区民税を課せられている人たちにも、支援給付金等を支給して下さい」。
また、シングルマザーの方からは、「児童扶養手当の所得基準が厳しく、受給できなくなると都営交通無料パスや医療費助成がなくなるのが辛いです。一生懸命働けば働くほど自助努力が要求されるのが辛い」。
こうした方々の声に応えるために、従来の給付金より幅広く、せめて区民の半分の人に届く給付金が必要と考えたものです。
今議会、代表質問、予算特別委員会総括質疑等で一貫して求めましたが、区からは、「現時点では考えていない」とのお答えでした。区民の要望に積極的に応えることを重ねて求めます。
第2に、高齢者等への補聴器助成制度の創設についてです。
先ほども述べた通り、すでに16区で支援が開始されています。わが党が繰り返し求め、住民の議会陳情にも積極的に採択を求めてきたことはご案内の通りです。当初予算で実現されなかったことは極めて残念です。
アンケートの声です。
「難聴外来で、使用している補聴器を新しく買うように勧められたが、13万円のお金を出すことができません。すぐ区役所に電話をして補聴器購入の補助はないのかと聞きましたが、『ない』との返事。ぜひ北区でも、一日も早い補助実現を切に願っています」。名誉挽回、先行区に比してもトップを目指す、より良い制度にして早期に実施すべきです。
第3に、国民健康保険料の均等割5割減額についてですが、保険料の現状と課題については、先ほど詳細に論じました。現在、就学前までの5割減額の対象者を、新年度18歳まで広げて北区独自に実施することを求めます。
第4の、高校・大学生などへの応援支援金について、アンケートの声を紹介します。
「私はひとり親で、私立大学に通学する子がいます。現在20歳で児童扶養手当も終了し、私の収入と奨学金でどうにか学費を支払っています。ただ、私は非常勤公務員として働いているので、来年3月までの契約ですので不安もあります。卒業までちゃんと学費が支払えるよう支援を検討していただきたいです」。
この声に応えて学生達への支援金の実現を求めます。
第5から第7は、住宅困窮者への家賃補助制度、プレミアム付き区内共通商品券追加発行、会計年度任用職員の勤勉手当引き上げです。いずれも物価高騰対策として意義ある施策です。
最後にこれらの組み替えに必要な48億円の財源について申し述べます。
新年度予算は、昨年度比で356億円、22%の増となり、当初予算としては過去最大の約1979億円となりました。この年度末、財政調整基金残高は、当初予算時の見込みより60億円以上増え約195億円、これも至上最高となりました。新年度は、財調基金を約62億円取り崩すとしていますが、これまでの推移を見れば、さらに40億円の活用は十分可能であると考えます。
さらに、10億円を積み増すまちづくり基金については、計上を2億円にとどめ、残りの8億円を加えて組み替えの財源とするものです。
「基金を安易に取り崩すべきではない」とのご指摘もありますが、区民への給付金などは直ちに生活費として消費され、地域経済を潤す税の好循環につながっていくものです。積み上がった基金は、区民の暮らしを応援することを最優先に活用すべきではないでしょうか。
以上組み替え動議の積極的な意義について述べさせていただきました。議場の皆さまのご賛同を心よりお願いし、賛成討論といたします。
以上ををもちまして、日本共産党北区議員団の討論といたします。ご静聴ありがとうございました。