2022年度決算に対する反対討論-ながいともこ
2023年10月6日 | ながいともこ
私は、日本共産党北区議員団を代表して、ただいま上程されました令和4年度東京都北区一般会計決算、東京都北区国民健康保険事業会計決算、東京都北区後期高齢者医療会計決算に対する反対討論を行います。
昨年度の予算執行において、区独自に対象を拡大した、くらし応援臨時給付金をはじめ各種給付金の支給、福祉事業所に対する慰労金の支給、児童相談所等複合施設の開設準備、パートナーシップ宣誓制度の創設や女性支援の拡充、コミュニティバス新規路線導入などは、住民要望の反映として評価いたします。
しかしながら、以下の理由から、一般会計決算の認定に反対します。
一般会計決算の認定
第1の理由は、コロナ禍、物価高騰の中で200億円の財調基金を積み上げながら、暮らし・営業を支援する手立てが不十分にとどまったことです。
3年目に入ったコロナ禍に加え、急激な物価高騰が区民生活と中小業者に影響を及ぼしています。消費者物価は昨年12月に、第2次オイルショック以来40年ぶりの上昇率を示し、今年に入ってからも食料品や生活用品などの値上がりが続いています。物価高騰に加え、電気ガス料金の値上がりは深刻です。今まで支払えていたはずの公共料金の支払いまで回らなくなり、生活資金がショートしてしまう状況も見受けられます。
こうしたなか、区は原則非課税世帯のみの給付金事業を北区独自に住民税均等割のみ課税世帯や課税者の扶養親族のみの世帯まで対象拡大したことは、多くの区民を励ましました。しかしながら、その一方で、年金生活者の方からは「わずかながらでも税金を納めていても低所得、年金も減らされ物価高騰で苦しい」また、非正規雇用の方からは「働けば働くほど税金は増え、税金や保険料を納めるために働いているようなもの、一体、何のために働いているのか分からなくなる」などの声もいただいており、課税世帯のなかでも、実質賃金や年金収入が物価高騰に追いつかず苦しい生活を強いられているなど、支援するべき区民がまだまだいます。
また、区内の事業者からは、「業務用冷蔵庫やエアコンの使用が増え、電気料金の値上げで乗り切れるかどうか不安」「物価高騰で店舗家賃の支払いが厳しくなった」など、コロナ禍に続く原材料や光熱費の高騰で、廃業や倒産に追い込まれる事業者も増え続けています。
北区の財政調整基金は、2022年度の予算編成時に残高134億円まで活用するとしていましたが、取り崩すどころか、逆に当初予算比22億円、残高見通しからは66億円も積み増し、年度末で200億円にもなっています。これだけの財源があれば、わが会派が提起した非課税の壁を突破し、区民の半数程度まで独自に対象を広げる給付金の支給、中小企業・飲食店などへの直接支援も実現可能だったはずです。景気の上振れなどで予想以上に歳入が増えたというなら、基金への積み立てに回すのではなく、思い切った暮らし・営業支援に充てるべきです。
第2の理由は、区民サービスにも重大な影響を及ぼす指定管理者制度などの「行財政改革」を、抜本的な検証ぬきに、さらに推し進める予算執行であったことです。
区が体系的な総合「行革」計画、経営改革プランを策定した2005年以来、職員定数削減、外部化、受益者負担を基軸とした新自由主義の「行革」路線が区政運営の中心に据えられてきました。
多様な主体が担う新たな公民連携のしくみとして導入された指定管理者制度は、保育園を皮切りに、児童館、体育施設、北とぴあをはじめとする会館など、そして昨年度からは公園・児童遊園の分野にまで広げられ、導入施設数は現在まで152に達しています。
岩淵保育園では、不適切な保育の実態がモニタリング報告でも妥当性審査でも明らかにならず、これを告発しようとした当事者の声が、東京都による特別指導検査に至るまで共有されないまま見過ごされてきました。区は、事前に情報提供を受けていたにもかかわらす、事態打開に動かなかった初動での対応の不十分さを認めましたが、その後も詳細な調査を実施するに至っていません。
飛鳥山公園、清水坂公園では、直営と同じシルバー人材センターが清掃業務を受託していますが、指定管理導入後には人員が半分、日数が3分の2、人件費が3分の1から4分の1に減らされていた事実が明らかになりました。私たちの会派にも現場で働く職員から「これだけ減らされたら全て清掃するのは無理。手の回らないところは、いっそのこと立ち入り禁止にしてほしい」という声が寄せられており、働く人の処遇が清掃業務の質の低下につながることが明らかになりました。
区は、指定管理者制度を導入するメリットについて「民間のノウハウを活用し、経費を削減しながらサービスの向上を図ることができる」としていますが、そのしわ寄せは、働く職員の人件費カットという形であらわれているのが現実です。こうした問題から目を背けたまま、区内すべての公園・児童遊園に指定管理の導入を拡大していくことは認められません。
今議会で議決となる新基本構想にあわせ、経営改革プランも新たに改定されることになります。これを機に、区が推し進めてきた「行革」路線を全面的に検証し、抜本的に見直すことを求めます。
第3の理由は、「公民連携」のかけ声で、民間大企業の利益に奉仕する駅周辺まちづくりを推し進めていることです。
決算審査では、駅周辺まちづくりについて、さまざまな角度から議論しました。
1つは、誰の立場に立ってまちづくりを進めるかということです。
神宮外苑再開発に象徴されるように、まちの魅力や財産の保全を願う住民と、開発利潤を追求する民間事業者の利害は往々にして対立します。
十条駅西口再開発では、駅前に出現する再開発ビル内の新たな商業施設によって、既存商店街の売り上げや商売の存続に大きな影響が出るおそれがあります。
赤羽一丁目市街地再開発では、赤羽小学校の存置を望む意見が多数ですが、教育環境への影響から赤羽公園の場所に移設する案も浮上。これに対し、地元自治会をはじめ、現在の赤羽公園を残してほしいという声は日に日に大きくなっています。
開発事業者は、駅前の好立地条件を生かして収益性の高いタワーマンションを建設しようとしますが、超高層ビルは景観、環境、防災、将来のメンテナンスなどの課題も指摘されています。住民の中では、タワマン誘致の大型開発ではなく、修復型まちづくりを望む声が根強くあります。
こうした中で、本来なら住民多数の願いに応えるのが行政の役割のはずなのに、国交省が2年前にまとめた「市街地整備2.0」という方針は、次のようにのべています。
「大都市においては」、「市街地整備事業により一定の開発利益が期待でき」、「民間主導の取組をベースとしながら、公共はそのサポートに回り」、「行政機関は…投資主体としての感覚を養うとともに、民間の動きや考え方を受け止め…るべき」。
北区は、現在計画中の複数の駅周辺まちづくりで、この役割を従順かつ全面的に果たそうとしており、タワーマンションを呼び込む大型開発計画によって、民間大企業に最大限の利益をもたらそうとしています。
2つは、まちづくりにはトップダウンではなく、住民合意のための十分な議論の場が不可欠だということです。
赤羽駅東口地区では、まちづくり協議会総会で、幹事会が示した「まちづくり提案」が、議論の末、反対多数で否決となりました。住民合意に至らなかった要因として、「提案」が非公開の幹事会の中でしか議論されてこなかったことがあげられます。取りまとめの段階で、誰もが参加でき、自由に意見が言えるまちづくり懇談会を開催し、十分な議論の時間を保障することが必要ではなかったでしょうか。
エリアマネジメントの中心に、民間の開発事業者を据えようとの動きもありますが、まちづくりを計画し、まちを運営していく協議体の中で、幅広い地域住民の声が反映されるしくみをつくることこそ力を注ぐべきです。
3つは、開発予算の過剰な上昇を避ける歯止めが必要であることです。
区は、いくつもの駅周辺まちづくりを同時並行で進めていこうとしているため今後、まちづくりには莫大な予算が必要となってきます。すでに、年度末補正や新年度予算編成で、10億円単位のまちづくり基金の積み立てが始まっておりこのまま無尽蔵に基金を積み上げていけば、区民の暮らしや営業を支えるための財源にも影響が出かねません。
開発予算の過剰な上昇を避けるためにも、身の丈に合ったまちづくりへと転換するよう求めるものです。
特別会計決算の認定
次に、国民健康保険事業会計についてです。
加入者の多くが低所得者なのに、保険料が他の医療保険よりも高いという「国保の構造問題」は、5年前の都道府県化によっても一向に解決していません。それどころか保険料は高騰し続け、東京都国保運営協議会は一般会計からの法定外繰り入れ解消・削減の加速化を迫っています。繰り入れをやめれば、さらなる保険料の上昇は必至です。払いたくても払えない水準にまで保険料を引き上げてきたことなどから、国保事業会計の認定に反対します。
次に、後期高齢者医療会計についてです。
2008年の制度導入以来、7回にわたる保険料の値上げに加え、スタート時に導入された保険料特例軽減措置もすべて打ち切られました。さらに、昨年10月からは、一定以上所得がある人の医療費自己負担割合が2割となり、受診控えも増加しています。高齢者の生活を圧迫する保険料の値上げ、窓口負担の引き上げなどから、後期高齢者医療会計決算の認定に反対します。
なお、介護保険会計の認定については、賛成することを申し添えます。
3点の要望
最後に、3点の要望をいたします。
第1に、今後の給付金事業については財調基金を活用し、思い切って対象を拡充すること。多子世帯の区独自給付金については、生活保護世帯の収入認定の除外とすること。
第2に、岩淵保育園での不適切保育問題については、北区として責任ある再調査を実施すること。
第3に、十条駐屯地・補給統制部隊の周辺1キロメートルを土地利用規制法の「注視区域」に指定する動きについては、政府の意見聴取に回答する前に住民説明会を開くこと、基本的人権を脅かす住民監視は辞退・拒否すること。
以上をもって、日本共産党北区議員団の反対討論といたします。ご清聴、ありがとうございました。