2024年度北区予算に対する反対討論と組み替え動議に対する賛成討論―宇都宮ゆり
2024年3月27日 | 宇都宮ゆり
私は、日本共産党北区議員団を代表して、ただいま上程されました第26号議案、2024(令和6)年度東京都北区一般会計予算及び、第27号議案、東京都北区国民健康保険事業会計予算、第28号議案、東京都北区介護保険会計予算、第29号議案東京都北区後期高齢者医療会計予算の3特別会計予算に対する反対討論を行います。
新年度予算案において、子どもの権利と幸せに関する条例の制定や児童相談所等複合施設の整備、高齢者補聴器購入費用の助成、木造民間住宅耐震化助成の拡充、コミュニティバス新規路線およびデマンド交通実証実験、平和都市宣言記念事業などは、住民要望の反映として評価いたします。
しかしながら、以下の理由から一般会計予算に反対します。
過去最高に並ぶ198億円余の財政調整基金を積み上げながら、非正規雇用や低・中所得層、中小業者などへの直接支援が不十分
第1の理由は、コロナ禍や異常円安、物価高騰が続く中、今年度末、過去最高額に並ぶ198億円余の財政調整基金を積み上げながら、非正規雇用や低・中所得層、中小業者などへの直接支援が不十分にとどまったことです。
総務省によると全国の先行指標となる東京23区の2月の消費者物価指数は前年、同月比2.5%増と、前月より上昇率が拡大しています。食品など日用品の価格上昇が大半を占める結果となっています。
一方、最低賃金はわずかに増えただけで、実質賃金も年金収入も、物価上昇に見合ったものにはならず、区民のくらしの困難が続いている状況です。
ある50代の非正規雇用で働いている女性は、収入だけでは家賃の支払いが困難で、ダブルワークを余儀なくされ、70代の男性も年金収入だけでは暮らしていけず、無理をして働き続けています。こうした方々からは、「非課税ではないが自分達も生活が苦しい。せめて北区で何とか応援してもらえないか」との声を頂いており、北区が独自に臨時給付金を支給し支えるべきと考えます。
中小業者の方々からも、「物価高騰が続く状況の中、業務用冷蔵庫やエアコンの電気代、ガソリン代といった負担が重い」との声を頂いており、コロナ禍に借りた融資の本格的な返済が始まるなか、資材や人件費の高騰で返済ができず廃業の危機に直面している事業者もいます。
新年度予算案において、商店街アドバイザー派遣や借り換え融資の継続などが打ち出され、区として中小企業を応援するという姿勢は評価いたしますが、予算審議では、さらに踏み込んで緊急に区内事業者へ、物価・エネルギー高騰対策のための直接支援を行うことを求めました。
基金については今年度、施設建設基金から新庁舎建設基金へ197億円の積み替え、年度末にはまちづくり基金と施設建設基金にそれぞれ10億円ずつ、応援サポーター基金に9億円と、約29億円を特定目的基金へ積み増しました。それでもなお、今年度末の財政調整基金は過去最高額に並ぶ198億円となっています。新年度には財調基金を約72億円活用する計画ですが、年度末にはなお残額が約145億円となる見通しです。
これだけの財源があれば、わが会派が提案している区民や中小業者への直接支援を実施する事ができるのではないでしょうか。
DXを基軸にした「行財政改革」をさらに深化させようとしている
第2の理由は、DXを基軸にした「行財政改革」を位置づけ、区民の利便性の向上を図るとしながら、総体としての職員削減、外部化、非正規化など、人件費のコストカット、不安定雇用や格差拡大につながる経営改革路線をさらに深化させようとしていることです。
区はこれまで、2005年に策定され、改定を重ねてきた経営改革プランの下で、職員の削減、外部化、受益者負担を基軸とする新自由主義の行財政改革を推し進めてきました。これに対し、今回改定される「経営改革プラン2024」へのパブリックコメントでは、「経営改革プランでは、貧困の解消を第一義に掲げるべきではないか」、「ワーキングプアを解消することが区としての命題である」、「人件費を削ることを目的とした事業の民間への委託化は行うべきではなく、今まで培ってきた公務員としての経験、技能を大切にした運営を考えるべき」との厳しい指摘が寄せられています。
ところが区は、コストカット型の行財政運営により貧困と格差を拡大してきたことには無反省で、「より一層の効果的・効率的な行財政システムの確保と資源の活用が必要になります」と、これまでの「経営改革」をさらに推し進めていく姿勢を示しています。
そのひとつが、予算審議において指摘した指定管理者制度の問題です。飛鳥山公園では、指定管理の導入に伴い、清掃業務を請け負うシルバー人材センターの人員が半分、日数が3分の2に、人件費が3分の1から4分の1に減らされ、「清掃業務の質の低下につながっている」との区民からの指摘があったにもかかわらず、区は、「責任者が常駐するようになり、むしろ良くなった」などと、開き直りともとれる答弁に終始しました。
保育の質や保育士の処遇などの課題が指摘されている保育園の分野でも、指定管理化をさらにすすめるとしています。
すべての公園に指定管理を導入することや、これ以上の保育園に指定管理を広げていくことは中止すべきです。
また、デジタル化の推進にあたっては、「効率化で生まれた人的資源を新たな行政需要への対応や区民サービスにつなげる」としていますが、デジタル技術の活用を、職員の新たなコストカットのツールとして活用することがあってはなりません。
さらに、公共施設マネジメントでは、十条駅西口再開発ビル内へのジェイトエル設置に伴い、上十条図書館を廃止することが提案されました。ジェイトエルでは図書の貸出も行わず、配架蔵書数も現行の3割程度で、図書館の代替施設とはいえないのに、「類似施設の整理・統合」といって施設をなくしてしまうのは、区民サービスの切り下げに他なりません。効果的といいながら区民に必要な施設をなくすことがないよう慎重な検討を求めます。
公民連携で大型再開発中心のまちづくりをすすめる姿勢
第3の理由は、公民連携で大型開発中心のまちづくりをすすめる姿勢です。
区は、十条や赤羽などで、民間企業と一体にタワーマンションを呼び込む駅周辺のまちづくりを計画していますが、タワーマンションは、景観や周囲への環境影響、長周期地震動や浸水による停電など防災面での脆弱性、将来的な廃墟化の恐れなど、さまざまな問題が指摘され、周辺公共施設の再編・統廃合や既存商店街の存続にも影響を及ぼすなど、地元住民からも心配の声があがっています。
また、タワーマンションが建設されても、住居として購入できるのは一握りの高額所得者に限られます。さらに、市街地再開発事業には多額の税金が投入されますが、結果としてゼネコンやディベロッパーなど民間事業者が大きな利益を得る仕組みになっています。
予算審議の中では、学校改築や北とぴあをはじめとした施設の更新需要や、今後想定される建設費の高騰が、北区の財政に大きな負担になるとお聞きしました。にもかかわらず北区は、これらの事業とは別に、今後もさらに駅前再開発などの計画を進めていくために、まちづくり基金の積み増しが必要だとしています。
大型開発中心の駅周辺まちづくりが本当に地域住民のためになるのか、不要不急の事業として計画を見直すべきところはないのか、あらためて検討が必要です。
また、まちづくりを進めるにあたっては、情報公開と住民合意が何よりも大切です。現在、赤羽や東十条駅周辺のまちづくりで検討が進められている諸計画の検討内容を早期に公開することやオンライン配信を積極的に実施するとともに、誰もが参加でき自由に意見を言える懇談会の開催を求めるものです。
なお、予算審議では、赤羽駅東口地区まちづくり協議会総会において、協議会幹事会の「まちづくり提案」(案)が否決されたことに疑義を唱える質疑がありました。
しかし、公開されている協議会の議事録でも、参加者からの活発な討論を受けて、「採択の結果、反対多数で『まちづくり提案』は不承認となった」とされており、協議会発行のまちづくりニュースでも、総会後の幹事会で「『まちづくり提案』の今後の取り扱いをはじめ、今後の協議会・幹事会の運営や活動について、方針を決めるための協議を開始しました」と記されています。
こうしたまちづくり協議会での正式な意思決定をふまえ、現在開かれている赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画策定検討会では、市街地再開発の是非も含めた計画のあり方についての検討が行われているところです。
総会における参加者の発言や民主的な討議の結果を尊重し、さらに広い住民意見を反映させていくことこそ、住民本位のまちづくりの基本であると指摘しておきます。
特別会計への反対理由
次に、特別会計予算についてです。
まず、国民健康保険事業会計についてです。
国保料は毎年引き上がっていますが、新年度、北区の一人あたりの保険料は1万4679円の値上げ、今年度に比べ1.5倍の大幅な引き上げとなります。均等割は昨年度との比較で5500円の値上げです。
予算審議では、4人家族、小学生お子さん2人で、所得約240万円の世帯の例を示して質疑しました。このケースの場合、均等割だけでも約26万円超える保険料となり、これに、国民年金保険料を合わせると約70万円、所得の3割が保険料となることを指摘しました。あまりにも負担が大きいのではないでしょうか。
払いたくても払えない保険料の値上げは認められないことから、国民健康保険事業会計予算に反対するとともに、保険料負担軽減に向けた北区としての独自の努力を求めます。
次に、後期高齢者医療会計についてです。
昨年10月から、一定以上所得がある人の医療費自己負担割合が2割となり、受診控えにつながっています。高齢者の生活を圧迫する保険料の値上げ、窓口負担の引き上げなどから、後期高齢者医療会計予算に反対します。
次に、介護保険会計についてです。
新年度の介護保険運営において、かねてから要望してきた総合支援事業の報酬単価の改善、すなわち要支援の方への訪問介護などの本体報酬を最低でも国基準とする方針が示されたことは評価いたします。
しかしながら、2024年度の介護報酬改定は物価高騰に見合っておらず、訪問介護の基本報酬は軒並み2~3%引き下げられます。低賃金による職員不足の深刻化、小規模事業所の倒産や休廃業の増加が懸念され、介護関係者から抗議と撤回を求める声があがっています。区としても国に意見をあげ、介護事業所への支援、ヘルパーの確保に全力をあげるよう求めます。
第9期介護保険料については、介護保険給付費準備基金を活用し、保険料の値上げを抑制したものの、第8期に比べ、値上げとなることから、介護保険会計予算に反対します。
結果として、新年度は、国保・後期高齢者医療・介護の保険料トリプル値上げとなります。さらなる徴収強化によって、区民を追い込むような状況を招かないよう配慮を求めます。
予算組み替え動議への賛成討論
続いて、「第26号議案 令和6年度東京都北区一般会計予算」の組み替えを求める動議に対し、賛成討論を行います。
まず第1に、物価高騰対策臨時給付金の支給について6事業です。
現在、国において非課税世帯相当までの給付金の支給、および今後、定額減税の実施がみこまれておりますが、家計急変世帯や課税者に扶養されている収入が少ない非課税者は、実態によっては救済からもれる可能性があります。
北区自身もそうした区民に対し、北区独自給付の実績を持っており、今回も行うべきです。
また、納税者への追加給付では、課税標準額200万円以下で納税者の半分、約10万人は年収でみると世帯で400万円程度、そのうち半分の約5万人は、課税標準額100万円以下で、年収で見ると単身者で200万円程度であり、非正規雇用や年金生活者などの方々にあたります。
国の定額減税は、年収が200万円でも1000万円でも1人4万円の減税であり、非課税世帯相当への10万円給付と比較しても、低・中所得層への上乗せを実施すべきではないでしょうか。
さらに、高齢者や障害者の介護従事者への給付については、給与が全産業の平均に比べて月額7万円も低く、コロナ禍においては、北区独自の慰労金としても支給実績があります。会計年度任用職員への給付は、公務職場からワーキングプアをなくしていくために北区が率先してできる施策です。いずれも多くは女性が担っている職場であり、男女の賃金格差を是正する観点からも意義があります。
中小企業者への直接支援については、杉並区、新宿区で実施している施策を参考としています。
第2に、家賃補助制度については、北区の新年度予算における住宅セーフティネット法にもとづく4万円の家賃軽減住宅が5戸と少ない一方で、区営住宅の応募者数は年間200世帯を超えている実情からみても切実です。
第3に、教育費の負担軽減では、品川区や世田谷区で新年度の新規事業として踏み出したものですが、同様に北区で実施した場合の経費では、新年度予算には未計上で、今後歳入が見込まれる東京都による学校給食費保護者負担軽減のための2分の1の補助額と同程度で実施可能なものです。
第4に、国民健康保険料の18歳までの均等割5割減額は、区長会としてもその実現を国に提言しているものですが、費用としては6500万円であり地方自治体が先行して負担を軽減し、迫力をもって国にせまるべきです。
最後に組み替えに必要な財政調整基金34億円余の活用について申し上げます。
北区の財政運営の実績では、財政調整基金は当初予算案で示された年度末残高と最終の年度末残高を比較すると、令和3年度で72億円、令和4年度では61億円、令和5年度は47億円となっており、結果として財政調整基金はコロナ禍、物価高にもかかわらず過去最高規模が続き、今年度末約198億円にまで積み上がったことは、先に述べた通りです。
また、東京都からの特別区交付金も、ここ数年、年度末での追加交付が最低でも15億円、令和4年度では31億円となりました。更に、新年度予算案には計上されていない、学校給食費や自治体DXの標準化システム導入にかかわる国や東京都からの補助金が、現時点でも約17億円あることが明らかになりました。
こうした状況を総合的に勘案しても、更なる財調基金の一部活用により、区財政が危機に陥ることにはならないどころか、区民のくらしや中小企業への直接支援として振り向けることにより、地域での消費、経済活性化につながる好循環を生みだし、ひいては区財政への収入となってくることにもつながるものです。
以上、組み替え動議の積極的な意義を述べさせて頂きました。議場の皆様のご賛同を心からお願いし、日本共産党北区議員団の討論といたします。ご清聴ありがとうござました。