2023年度決算に対する反対討論-野口まさと
2024年10月5日 | 野口まさと
ただいま上程になりました2023年度東京都北区一般会計決算及び国民健康保険事業決算の認定について、日本共産党北区議員団の反対討論を行います。
昨年度決算においては、区立小・中学校の学校給食費完全無償化。浮間地域でのコミュニティバスの新規路線試験運行。会計年度任用職員への期末手当の支給。不登校対策としての校内別室での受け入れ等については、区民要望に寄り添った施策の実現として評価いたします。
しかしながら、以下の3点の理由から一般会計決算に反対いたします。
200億円を超える財調基金を抱えながら、区民や中小事業者への支援が不十分
第1の理由は、特定目的基金を計画通り積んでも、なお200億円を超える残高となった財政調整基金を抱えながら、区民や区内中小事業者に対する支援が不十分にとどまったことです。
わが会派は2023年予算編成時に、組み換え動議で、課税世帯も対象とした物価高騰対策臨時給付金をはじめとする総額48億円規模の区民生活支援の実現を求めました。決算で財政調整基金の残高が、当初予算の見込みから63億円の増額になったことをみても、十分実現できたと考えます。
区民はこの間、2020年から昨年にいたるまでのコロナ禍、そしてコロナ5類移行前後からの物価高騰により、多くの方が生活困難に直面することになりました。昨年度は、電気ガス代、灯油ガソリン代、食料品、衣料品、電化製品など、生活ほとんどすべての部分にわたってのコスト増で区民は苦しんでいます。
物価高騰の影響はこれだけにとどまりません。年金生活者は、物価上昇に年金額が追い付かないだけでなく、様々な制度での負担軽減制度が利用できなくなるなどの影響もありました。
生活保護世帯にも基準ぎりぎりの方には同様の影響があったと聞いています。
昨年度北区は、区独自に住民税均等割のみ課税世帯や、課税世帯の扶養親族のみ世帯などに対しての給付金支給を行いましたが、それ以外の中低所得層も生活が苦しくなっているのは同じです。とりわけ各種制度の減免対象とならない、境界層の方に寄り添った施策の実施が必要です。
財政調整基金については、「特に大規模災害の発生時の区民生活支援のために必要」との説明でしたが、北区はこの間の災害とも呼べるコロナ禍においても、着実に財調基金を積み増してきました。コロナ禍と同様に、災害とも呼べる物価高騰から区民の暮らしを守るために、今こそ財調基金を活用しての区民・中小事業者への支援策の実施を求めます。
外部化を基軸とする「行革」路線を推進する姿勢
第2の理由は、外部化を基軸とする「行革」路線を推進する姿勢です。
昨年度は、公園管理業務の全面指定管理化に向けて、飛鳥山公園・清水坂公園など一部の公園が先行して指定管理とされた2年目となりました。一昨年度は、シルバー人材センターの清掃業務において、飛鳥山公園・清水坂公園では人員が半分、日数が3分の2、人件費が3分の1から4分の1に減らされましたが、昨年度は最低時給の引き上げで人件費の総額が増えないよう、さらにここから日数が削減されました。
新たに配置された人員がそれを補っているとの説明もありましたが、人件費を削ることと、サービスの向上は到底両立しえないものではないかと思いますし、少なくとも地域の雇用が縮小したことは間違いありません。
このことで、実際に清掃業務にあたる職員など、区民からの苦情もありましたが、区は指定管理者が行ったセルフモニタリング調査等が良好だったことなどをもって、来年度からは指定管理を区内の全公園に拡大します。このような大幅なコストカットにつながる外部化は抜本的に見直すべきです。
区民サービスが向上することは外部化の大前提でなければなりませんが、実際にサービス向上に繋がっているのか、問題が発生していないのかを把握する仕組みに課題はないでしょうか。まずは区民や施設利用者、そこで働いている方の声を聞くことが必要です。
北区が区民、そして北区で働く人を大切にする自治体となるためには、「職員の削減」「外部化の推進」「受益者負担」の柱からなる、北区経営改革路線の見直しが必要です。しかしながら昨年度まとめられた経営改革プラン2024は、この大きな柱が引き継がれたプランとなりました。
タワーマンションを誘致する駅周辺での市街地再開発を推進するまちづくりの方針
第3の理由は、タワーマンションを誘致する駅周辺での市街地再開発を推進するまちづくりの方針です。
質疑の中では、市街地再開発により、まちがよくなるとの北区の考えが示されましたが、逆に超高層のタワーマンションが建設されることによって、デメリットの方が大きくなるとの意見も聞かれます。
十条駅西口市街地再開発は、まもなく竣工となりますが、タワーマンションの影響で、周辺地域では突然の強風が吹くなど風害の影響が明らかになっています。このほかにも景観の阻害や大量のCO2排出など環境への影響、災害時の脆弱性、将来的な廃墟化の恐れ、富裕層の節税対策に使われるなど様々な弊害も指摘されるようになってきました。神戸市では、将来的な人口減少を見越して、市街地でのタワマン建設の禁止に踏み切っています。
十条の39階建てタワーマンションの最上階の販売価格は3億円を超えているとも聞いていますが、平均的な収入の世帯にはとても手の出るものではありません。こうした保留床を売却し、市街地再開発で大きな利益を得るのは、参加組合員として事業に参入する大手建設業者やディベロッパーです。経済利益を優先するまちづくりではなく、多様な年齢層、所得層の住民が住み続けられるまちづくりとするべきです。
そして、何よりも建設コストが急激に高騰している今、巨額の税金が使われる市街地再開発計画をこのまま推進し続けてよいのかが問われています。
北とぴあ改修が先送りになったことに代表されるように、建設費の高騰が将来の北区政運営に影を投げかけています。現在の基金残高では心もとないとの北区の見解が示されましたが、大きな予算が必要な事業には優先順位をつけて、まずは学校や区民施設など、区民福祉の向上に資する施策を優先するべきです。巨額な区民の税金投入となる市街地再開発については、財政面からの検証も行い、計画の推進自体を再検討するよう求めます。
なお、赤羽駅東口のまちづくりでは、基本計画策定検討において、住民から再三にわたり直接意見をいえる場の設置が要請されていますが、そうした機会はこれまで一度も持たれていません。まちづくりは、多くの区民の参加と合意を大前提として事業を進めるべきです。
国保会計決算について
次に、国民健康保険事業会計決算についてです。
加入者の多くが低所得者であるにもかかわらず、保険料が他の社会保険よりも高いという国保の構造問題は、2018年に行われた都道府県化によっても一向に解決していません。すでに、多くの加入者にとっては、所得税・住民税・消費税よりも負担が大きいうえ、国民健康保険加入者は、別途国民年金を支払う仕組みとなっていますから、払えない保険料を課すことは、加入者の将来の低年金・無年金にもつながりかねません。
少しでも給与所得のある方は、国民健康保険制度から社会保険制度へ移行させる国の方針の下で、低所得層が取り残されてしまっている今の制度を持続させるには、協会けんぽなどのように、事業主に保険料の一部を負担させる必要があります。国民健康保険制度では、そのためには国による財政支援が必須であり、これがなくしては、国民健康保険制度の存続自体が不可能になっているといっても過言ではありません。
今、東京都国保運営協議会は一般会計からの法定外繰入れ解消、削減の加速化で、独立採算での運用を求めていますが、このような仕組みで苦しむのは低所得者層で、結果としてすでに医療にかかることをあきらめている方も多くいます。
このような現状を打開するために、北区には、国に対して国民健康保険制度の国庫負担割合を抜本的に引き上げることを要請するとともに、一般会計からの法定外繰り入れを継続することを求めます。
また、昨年度は7700万円余の国保料の差し押さえも行われていますが、滞納への対応を納付案内センターに一任するのではなく、滞納者の生活状況などを調べるなどして、必要に応じて生活再建につなげるなどの対応も必要です。さらに区は、介護保険料、後期高齢者医療保険料とあわせ、これまで徴収していなかった国保料の延滞金を来年度から徴収するとしていますが、徴収強化によってさらに追いつめられる区民の増加が懸念されます。
昨年度は、このような中でも保険料の引き上げが行われたことから、国民健康保険事業会決算に反対します。
なお、介護保険会計決算と後期高齢者医療会計決算には賛成することを申し添えます。
いくつかの要望
なお、今決算審査を通じて、以下6点の要望を申し上げます。
1、物価高騰への対応として、区独自の区民向け直接支援を実施すること。
2、高齢者、低所得者などへのエアコン購入、修理、電気代の助成をすること。
3、区内法人・団体に対する運営補助や委託料を、物価・人件費高騰に見合った額に引き上げること。
4、会計年度任用職員については、5年での雇い止めを撤廃し、賃金を引きあげること。
また、特定公契約事業の労働報酬下限額を引き上げると共に、受託事業者には、下限額を遵守させること。
5、国民健康保険料の均等割り減額を18歳以下まで拡大すること。
6、介護要支援者に対するサービスの基本報酬の引き上げや介護保険料の減額を拡充すること。
以上、日本共産党北区議員団の反対討論といたします。