2025年第2回定例会代表質問―本田正則
2025年6月9日 | 本田正則
私は、日本共産党北区議員団を代表して、区長、教育長に大きく4つ質問いたします。
1、物価高騰と酷暑から区民のくらしを守るために
大きな第1の質問は、物価高騰と酷暑から区民のくらしを守ることについてです。
去る5月21日、日本共産党北区議員団は、山田区長に対し、あらゆる品目に渡る物価の急上昇と、ここ数年続く猛暑から区民のくらしを守る10項目の申し入れを行いました。
(1)消費税を直ちに5%に減税し、インボイス中止を国に求めよ
その第1は消費税廃止をめざし、当面5%減税とインボイス中止を国に求めることです。
消費税は、持続可能な社会保障制度を構築するため、10%への税率引上げに伴う増収分は社会保障財源に活用することとされており、北区でも子育て支援などに関する施策を中心に活用を図り、低所得者への一定の配慮も行っています。
また、インボイス制度については、軽減税率の導入以降、正確な適用税率や消費税額等を伝える手段として必要な仕組みであり、免税事業者へは一定の緩和措置が講じられています。こうしたことから、消費税の減税やインボイス制度の中止を国に求めていくことは考えておりません。
(2)食事を確保できるよう支援の強化を
第2は、区民が必要な食事を確保できるようにするための4項目です。
1、低所得者、高齢者、子育て世帯等に1万円のお米券を配布すること。
2、学校給食の単価は、区の責任において米飯給食の提供を保障し、給食の質を維持する価格に設定すること。
3、私立学校、外国人学校に通う世帯へ、昼食費を支援・補助すること。
4、高齢者会食サービス、子ども食堂やフードバンクの支援団体への支援を拡充することです。
まず、低所得者、高齢者、子育て世帯等に1万円のお米券の配布については、米の価格高騰を含む物価高騰対策として、国ではガソリンの補助を開始したほか、電気、ガスの補助についても開始を決定しました。
また、東京都では水道料金の基本料金を無償化するなど、それぞれ対策が講じられており、区では、20%のプレミアム付区内共通デジタル商品券「しぶさわくんPay」の申し込みを7月から開始し、広く区民の皆さまの生活を支援してまいります。
また、区立小中学校の給食費については、この間の米を中心とした食材費の高騰を踏まえ、給食の質の維持を図る補正予算案を、本定例会に提出しております。
なお、私立学校、外国人学校に通う世帯への昼食費支援につきましては、現段階では考えておりません。
次に、高齢者会食サービス、子ども食堂やフードバンク支援団体への支援を強めること、についてです。
高齢者の会食サービスについては、「シニアふれあい食事会」を実施する団体に対し、食材費を含めた食事会開催経費のほか、事業立上げや多世代交流等開催経費も対象とするなど、適切な補助を実施しています。
引き続き、各団体の活動状況等も踏まえながら、食を通じた高齢者の居場所づくりの充実に努めてまいります。
また、子ども食堂及びフードパントリーについては、今年度から、子ども食堂の運営経費及び配食・宅食形式の運営経費にかかる補助上限額を、1団体当たりそれぞれ5万円引上げました。
また、新たにフードパントリーを立ち上げる団体への補助も適切に実施しています。引き続き、子どもの権利を守り、健全な成長を育むために活動している団体等への支援に努めてまいります。
(3)中小企業・事業者への事業継続支援を
第3は、中小企業・事業者への事業継続支援について、3項目です。
1、介護・障がい・保育施設や、医療機関等に対する物価高騰支援を再実施すること。
2、区内中小事業所に対し、物価高騰対策として光熱水費補助など直接支援を行うこと。
3、銭湯への燃料費補助を引き上げ、高齢者ヘルシー入浴補助券の枚数を増やすことです。
物価高騰支援については、4月から9月までの6か月間を対象に、東京都が直接実施しているほか、保育施設等への支援については、東京都の補助金を活用し、区で実施するための補正予算案を本定例会に提出しています。
なお、区内中小事業所に対する光熱水費補助などの支援については、この間の長引く物価高騰対策として一般財源を活用した中小企業への融資対策を継続して実施しており、考えておりません。
次に、銭湯への燃料費補助の引上げについてです。
公衆浴場への燃料費補助については、燃料費負担が大きい区内公衆浴場を支援するため、公衆浴場組合の要望等を踏まえ、令和7年度から一浴場当たり、一律補助額10万円を標準額60万円としたうえで、ガス、重油のほか雑燃など、燃料形式に応じ燃料費負担と補助額のバランスを最適化する補助制度といたしました。
その結果、燃料費負担の大きいガス式の公衆浴場では、減額となる浴場もありますが、約半数の浴場では燃料費負担に応じて補助額は増額となっています。現段階で燃料費補助額の引上げは考えておりません。
今後も国のエネルギー価格支援や燃料費の動向等を注視してまいります。
次に、高齢者ヘルシー入浴補助券の枚数を増加することについてです。
令和6年度の実績を見ると入浴補助券の申請率は、約17%、また配布した方の利用率は約60%となっており、ここ数年逓減している状況です。
このため現段階において、枚数の拡充は考えておりません。なお、現在入浴補助券のデジタル化等について検討を進めており、区民にも事業者にもより使いやすい制度となるよう改善に向け取り組んでいます。
(4)低所得者世帯への支援について
第4は、低所得世帯への支援について2項目です。
1、生活保護世帯に物価高騰対策支援金、夏季見舞金等を支給すること。
2、生活保護世帯、住民税非課税および均等割のみ課税世帯、高齢者・障がい者・ひとり親世帯等に対し、エアコンの購入・設置・修理費および電気代等の助成を行うこと。
以上10項目の実施について、区長・教育長の答弁を求めます。
次に、低所得者世帯への支援についてのうち、物価高騰対策支援金、夏季見舞金などを支給することについてです。
国は、足下の社会経済情勢等を踏まえた当面2年間の対応として、生活扶助基準の見直しを行い、現行の一人当たり月額1,000円の加算を、令和7年10月から1,500円に金額を引き上げて、臨時的・特例的に支給するとしています。そのため、区独自の生活保護世帯に対する物価高騰対策支援金や夏季見舞金などの支給は、考えておりません。
次に、生活保護世帯、住民税非課税世帯および均等割のみ課税世帯、高齢者・障がい者・ひとり親世帯等に対し、エアコンの購入・設置・修理費および電気代等の助成を行うことについてです。
国が示した生活保護世帯におけるエアコン購入に関する基本的な考え方では、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付の活用が示されており、区においても、生活保護世帯にかかわらずご相談があった際には同資金の貸付をご案内しています。現時点でエアコン購入等の助成導入は考えておりませんが、他区の状況について、調査研究を取り組んでいます。
なお、電気代等の助成については、区ではこれまで特定財源を活用し、物価高騰を踏まえた低所得者等に対する給付を実施してまいりました。今夏に向けても、国による電気・ガス料金負担軽減支援事業が実施予定であることから、区としては電気代等の助成は考えておりません。
2、まちづくり施策の転換を
大きな第2の質問は、まちづくり施策の転換についてです。
(1)山田区政の駅前周辺まちづくりについて
第1に、北区のまちづくり施策の基本姿勢についてです。
山田区長は、7つの政策の1つに「100年先を見据えたまちづくり!」を掲げ、とりわけ、駅周辺のまちづくりを公民連携で進めていくことに力点を置いています。
この政策の具体化としては、タワーマンションの建設を伴う市街地再開発を駅周辺に積極的に呼び込もうという姿勢が見て取れます。現在、再開発ビルが竣工した十条駅西口に続き、赤羽駅東口で赤羽一丁目第一地区市街地再開発が事業化されています。加えて赤羽小学校に隣接した一番街周辺の中央地区でも市街地再開発準備組合が事業の検討に入っています。
区は、5月に開かれた赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画案の説明会で、中央地区の再開発事業について、参加者からの質問に、「タワーマンションが建つとは決まっていない。検討会でも一度も議論していない」と答えたとうかがっています。しかし、区はこれまで市街地再開発準備組合の活動を積極的に支援し、旧第二地区と第三地区の準備組合が合併して中央地区を立ち上げる際には、組合や事業者の企業とともに、区の拠点まちづくり担当課も合同説明会や設立発起人会に参加しています。
そこで、お聞きします。
北区は、駅周辺まちづくりにおいて、タワーマンション建設を呼び込む市街地再開発の事業手法を積極的に採用しようという立場なのでしょうか。お答え下さい。
赤羽駅東口地区については、北区都市計画マスタープラン2020において、高度利用を促進し、住宅を重点的に供給して、居住地としても選ばれる、都市中心拠点としてふさわしい利便性の高いにぎわいのある市街地の形成を図ることを位置づけています。
また、市街地再開発事業を契機とした周辺環境の整備も図ることとしており、既に事業計画認可を受けた赤羽一丁目第一地区に加え、隣接する中央地区においても、市街地再開発準備組合が結成され、再開発事業によるまちづくりの検討が進められています。
区としては、これらの住民主体のまちづくりの取組みをしっかり支援し、東京の北の玄関口にふさわしい、都市機能が集積した、利便性の高い都市中心拠点の形成を図ってまいります。
(2)市街地再開発によるまちづくりの弊害
第2に、市街地再開発の弊害についてです。
まず、十条駅西口の再開発ビルについては、第1回定例会で、野口議員が問題点を指摘しました。1つは、分譲価格が高額で、ごく限られた人しか居住できない建物であること、2つは、新築物件が企業や海外投資家などに買われ、投機・投資の対象とされていること、3つに、多くの商業床が埋まらず、まちのにぎわいの創出になっていないこと、などです。
あれから3か月、この状況は変わったのでしょうか。
先に開かれた第3回住宅対策審議会では、委員から「十条駅に建ったタワーマンションが自宅のベランダから見えるが、夜はあまり電気がついておらず、人が住んでいるように見えない」、「東京都一極集中の中で、上に上に人が住むことで人口が増え、自由主義経済から地価が上がり、マンションの販売価格が上がる」などの発言がありました。また、商業床の状況も「順次、様々な業種のテナントが増えてくるものと考えています」との答弁とは裏腹に、未だ空室となっている商業床が見受けられます。
加えて、多額の税金投入も問題です。この事業には、国と東京都、北区があわせて240億円もの税金を投入、ほんの一握りの高額所得者のために、これほどまでの税金を投入するのは、公共性が問われるのではないでしょうか。一方で2つの不動産デベロッパーは約400戸のマンションの分譲をして投資を回収してあまりある売上げを確保しています。
お聞きします。
十条駅西口再開発は、「にぎわいと安らぎを奏でるまち」という将来像からかけ離れ、企業の利益優先、商業床も埋まらず、住民が住めないまちになってしまったのではないでしょうか。あらためて区の見解をお尋ねします。
次に、十条駅西口再開発についてです。十条駅西口地区第一種市街地再開発事業は、578戸の住居を有するタワー十条と公益施設ジェイトエルを整備したほか、駅前広場、地下駐輪場、都市計画道路などの基盤整備や緑化の推進等により、まちの安全性・防災性の向上に寄与したと捉えています。
また、ジェイトエル、大型商業施設や飲食店等の開設により、まちの利便性が向上し、学生や家族連れなどによる、新たな賑わいが生まれていると認識しています。本年秋には、再開発事業の完了にあわせ、町会・自治会、商店街、地域の大学等で組織した実行委員会が中心となって、まちびらきイベントを開催することになっています。
再開発事業を契機として、地域住民と再開発事業の関係者等が一体となり、十条地区まちづくり基本構想に掲げる将来像「にぎわいとやすらぎを奏でるまち十条」の実現と、さらなる賑わいの創出が図られることを期待しています。
次に、赤羽駅周辺の再開発についてです。
先にも述べた基本計画案説明会には、2日間でのべ200人が参加し、30人近い参加者から質問や意見が寄せられ、時間がきてもなお、発言を希望する参加者が相次いだと聞いています。
そこでまず、この基本計画案説明会ではどんな意見や質問が出されたのか、その概要についてお答え下さい。
区は、具体的な事業手法や赤羽小学校、赤羽公園など周辺公共公益施設の再編、統廃合などについて一切ふれない基本計画案を提案していますが、説明会では、タワーマンション建設に反対する意見や、赤羽小学校、赤羽公園を現在の位置に残し、緑豊かな樹木を伐採しないよう求める意見が相次いだと聞いています。
いま都内でも、中野サンプラザ跡地再開発の白紙撤回など、資材・人件費の高騰による再開発事業の行き詰まりがみられます。
そこで、策定される赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画の具体化にあたっては、地域住民の意見を最大限反映するとともに、市街地再開発事業によらないまちづくり計画とすることを求めるものです。答弁を求めます。
先月の説明会では、パブリックコメント実施にあわせ、基本計画案の理解を深めていただくことを目的に開催し、2日間で約200名の方にご参加いただき、多くのご質問やご意見をいただきました。
赤羽のまちの課題や魅力についてなど、計画案の内容に関する意見等があった一方、タワーマンションに関することなど、計画案では触れていない内容に関するご意見等も多数いただきました。
なお、意見等の詳細につきましては、所管委員会で報告させていただきます。
基本計画策定後は、土地利用や基盤整備のあり方を定めるガイドライン、重点区域の整備イメージや実現化方策を定める整備計画を策定してまいりますが、今後とも、学識経験者や関係事業者等のほか、区民代表にも参画いただき、会議体で検討するとともに、検討過程では、適時・適切に区民のご意見をお伺いしてまいります。
(3)都市計画マスタープランの改定に向けて
第3に、区が駅周辺まちづくりにおいて、市街地再開発を誘導しようという根拠となっているのが、北区都市計画マスタープラン2020です。
マスタープランでは、北区の将来都市構造として区内に、都市中心拠点、地区連携拠点、生活中心拠点という3段階の拠点を位置づけ、都市中心拠点の赤羽、十条と東十条、王子、田端の駅周辺は、「地域特性に応じた都市集積を促進することにより、各地域の都市活動の中枢を担う拠点として育成する」、「市街地環境の向上に資する適切な高度利用を促進する」とされています。
これを受けて、区が事務局となってまとめた赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画案では、「現状:低層建物が多く、容積率を消化できていない」、「問題点:駅前の商業地域に相応しい土地の高度利用が図られていない」と土地利用状況を分析しています。
つまり、現在の赤羽東口駅前には、利用されていない空間があるので、高層建築で埋める必要がある、駅前の商業地域には高層建物がふさわしい、ということです。
そこでお聞きします。
区は、現在の赤羽駅前が容積率を満たしていないことは問題だと認識しているのでしょうか。いますでに大きなにぎわいを創出している一番街、シルクロード、OK横丁などの飲食店街は、高度利用が図られておらず、駅前商店街としてふさわしくないとお考えですか。区長の見解を問います。
北区のマスタープランのみならず、東京都の都市づくりのグランドデザイン、さらには、安倍政権の下で進められたアベノミクスによって東京全体を国家戦略特区に指定し、高度利用を極限にまで緩和する政策によって、都内の駅前という駅前にタワーマンションを呼び込む再開発事業が持ち込まれています。その結果、再開発区域の住民やお店の一部は地域を追われ、周辺では風害やCO2排出など環境が悪化、商店街やまちの魅力が失われるという状況がつくりだされています。
都市中心拠点だから容積率や高さ制限を緩和して、目いっぱいに建物を建てるべきとする計画は、すでに時代に合わない方針であると考えます。まもなく都市計画マスタープラン改定に向けた議論も始まる時期ですが、今から、高度利用方針については抜本的な再検討を行うよう求めるものです。答弁を求めます。
まちづくり基本計画(案)に記載している土地利用状況については、指定容積率等の現況分析をお示ししたものですが、駅前の商業地域における土地利用としては、より効果的な活用が図れると考えています。
赤羽一番街商店街等については、区が実施したアンケート調査でも、「せんべろのまちとして賑わいがある」など「まちの魅力」と捉えた方がいる一方で、「治安や安全・安心面に不安がある」として「まちの課題」と捉えた方も同程度おり、このような魅力と課題の両面があることは、区としても同様の認識を持っています。
そのため、今後の整備計画等の策定にあたっては、この両面を踏まえた検討が必要になると考えています。都市中心拠点における高度利用の方針については、上位計画等との整合等を図りながら、都市計画マスタープラン改定時に検討してまいります。
(4)赤羽駅周辺地区まちづくりは修復型に切り替えるべき
この問題の最後に、では駅前のまちづくりをどのようにすれば良いのかについてです。
赤羽のまちづくり基本計画策定検討会では、当初、市街地再開発によるまちづくりのシナリオと、再開発によらない個別建替え、共同建替えを基本とするシナリオを並べ、どちらがよりよい案なのかを検討していました。都市計画の専門家で土地利用計画や市街地整備に精通している検討会会長からは、まちの更新を考えた時、大きく再開発をするやり方のほかに、部分的に直していく「修復型」があると述べました。
修復型のまちづくりは、市街地再開発に比べ、大きなメリットがあります。
1つに、防災面です。
赤羽では、シルクロードやOK横丁などに木造建築が密集しており、防災性の向上対策は不可欠です。市街地再開発で進めれば、合意形成や都市計画決定、権利変換などに長い時間を要し、その間は災害の危険にさらされることになります。一方で、個別建替え、共同建替えや、リノベーションによる修復型ならば、徐々に災害に強いまちづくりが可能となります。
2つに、コスト面です。
先にものべたように、市街地再開発には多額の税金が投入されます。修復型に切り替えることでコストを抑え、地元の中小建設事業者への仕事も回るようになります。
3つに、いまあるまちの名店や、技術者がいるお店、そしてなじみのまちかどなどそのまちならではの魅力を残すことができることです。
そこで、質問します。
北区のまちづくり、とりわけ駅周辺においては、市街地再開発など大型開発中心のまちづくりから、修復型によるまちづくりに施策の転換を図ることを求めます。区長の見解をお聞かせ下さい。
北区都市計画マスタープラン2020では、土地利用の基本方針において、「都市中心拠点では、各拠点の地域特性に応じた都市機能の集積や市街地環境の向上に資する適切な高度利用を促進する」としています。
区としては、大規模な土地利用転換や市街地再開発事業に向けた動き等の機会を捉えながら、駅周辺のまちづくりに取り組み、品格と先進性のある100年先を見据えたまちづくりを推進してまいります。
3、住宅マスタープランの改定に向けて
大きな第3の質問は、住宅マスタープランの改定に向けてです。
住宅マスタープランは現在改定作業が行われており、7月頃には答申素案が示され、9月頃まで審議会で検討、パブリックコメントをふまえて改定となります。
いま、東京の住宅価格が高騰し、それが家賃に波及して、急激な家賃値上げが引き起こされています。ふつうに働く勤労者が東京に家が持てない、東京に住めないという深刻な事態になっているのではないかと心配になります。
こうした住宅費高騰にも対応できるマスタープランにするため、区長に質問します。
(1)まちづくりと合わせた住宅の供給について
まず、まちづくりと合わせた住宅の供給についてです。
第3回住宅対策審議会に示された小委員会の検討案では、基本目標1の「安全・安心で良質な住まいの確保」で、現行の「★安全・安心な地域づくり★まちづくりと一体となった良質な住宅の供給」を、「防災・減災に資する強靭な都市基盤の整備」へと変更するとしています。
小委員会では、「市街地再開発事業は住宅整備だけでなく、…防災上非常に有効な形になる」との議論もあったとのことですが、2024年の能登半島地震を受けて、木造住宅密集地域をはじめとした木造住宅の耐震化率向上や防火性の確保が重視されていたのに、これでは市街地再開発による分譲住宅の確保を前面に押し出す形になってしまうのではないでしょうか。
強靱化というならば、木造や鉄筋・鉄骨の住宅の個別建替え、共同建替えも含めた住宅の耐震化、防火化の目標を掲げ、促進する手立てを充実させるべきです。
そこで質問です。
「強靱な都市基盤の整備」とは、市街地再開発によるまちづくりを指すものでしょうか。先の質問でも指摘した通り、タワーマンションの誘致では、誰もが入居できる住宅の確保は困難です。市街地再開発によらない住宅確保策をマスタープランに位置づけるべきではないでしょうか。
まず、まちづくりと合わせた住宅の供給についてです。
住宅対策審議会の審議資料でお示しした「強靭な都市基盤の整備」の意味については、これまで「住宅施策の方針」で示していた「安全・安心な地域づくり」の表現が抽象的であったことから、「防災・減災に資する強靭な都市基盤の整備」と表現を明確にしたものです。国や東京都の強靭化に関わる計画でも、まちづくりの強靭化の取組みの一例として、木造住宅密集地域の不燃化事業が取り上げられており、決して特定の都市計画事業だけを示しているものではありません。
また、良質な住宅の確保には、住まう方の世帯構成やライフステージ、ライフスタイル等に合った多様な住宅の供給が必要であると考えており、特定の事業による住宅整備を排除するつもりはありません。
(2)住宅費を軽減する家賃補助制度の抜本的拡充を
2つ目に、住宅費を軽減する家賃補助制度の抜本的拡充を求めます。
東京の住宅費高騰で、「正社員の共働きでも都内の新築マンションは買えない」、「保育所の送り迎えもあるから職住接近の中古マンションを買う予定だったが手が出なくなった」、「子どもが大きくなり広いところへ移りたいが家賃が高すぎる」など切実な声が広がっています。
東京カンテイの試算によれば、23区のマンションで、70㎡の発売平均価格は2024年で1億1181万円と10年間で1.7倍に値上がりし、中古マンションも1.7倍、世帯の年収の倍率は約18倍、築10年マンションでも年収倍率約15倍とされ、「年収の10倍」と言われた80年代末のバブル期をはるかに超えています。賃貸の家賃も、10年間で1.4倍に上昇したとされています。
先ほどもご紹介した政府と東京都の政策で、タワーマンションをセンターコアに乱立させた結果です。投機目的での住宅取得や転売を野放しにしたために、海外を含む投機マネーを呼び込み、住宅を投機の対象にしてしまったことも、拍車をかけました。
「衣食住」というように、住まいは生活の基本であり、憲法25条が保障する生存権の土台です。安心して暮らせる住まいの提供は、食料の安定供給と同様に、政治が国民に果たすべき責任です。
イギリス、ドイツ、フランスなど欧州諸国は、住宅支援制度は、住宅ローン減税と家賃補助の二本立てになっています。行政の住宅支援の柱に、家賃補助制度をすえるべきです。
新宿区、豊島区には、中堅所得の子育てファミリーを支援する家賃補助制度があります。そして、杉並区は、本年4月1日から、区営住宅の優遇抽選に落選したひとり親、多子世帯を対象に、家賃補助や初期費用補助を始めました。
北区でも、これらの区に続いて、家賃補助を拡充するため、住宅マスタープランに、家賃の直接補助を書き入れることを求めます。区長の答弁を求めます。
家賃助成制度については、住宅セーフティネット法における専用住宅にお住いの世帯を対象に実施しており、区としては、今後とも供給戸数の拡充に努めてまいります。
なお、家賃補助制度の拡充については、多くの課題があると認識しておりますが、住宅マスタープランの改定にあたり、「新たなプランに盛り込むべき施策のあり方」を住宅対策審議会に諮問しておりますので、答申に向けた議論を注視してまいります。
(3)空き家・空き室活用の推進について
3つ目に、空き家・空き室活用の推進について質問します。
小委員会の検討案では、基本目標1「安全・安心で良質な住まいの確保について」で、「空家等の利活用の促進」、「管理不全な空き家等の対策の推進」と記述されています。「北区は使える空家が流通している傾向にある」とし、これを積極的に活用すべきだとする議論も行われています。一方で、使える空き家がどれくらいあるかは調査するに至っていないという質疑もありました。
精神障害の方をサポートしている方にお聞きしたところ、所得の少ない方が多いので、都営、区営住宅に入居できることが一番いいが、せめて空き家を活用するなどして、グループホームやシェアハウスなど福祉的な支援や、サービスも受けながら、低廉な住まいが確保されるといいと話してくれました。
そこで質問です。
空き家・空き室を住居、事務所として提供する取り組みを促進させることを、マスタープランに位置づけて下さい。空き家活用をすすめるにあたっての現状と課題について、区の考えをお示しください。
区では、地域貢献に資する利活用や、シェアハウス等の共同居住型住宅への利活用を促すため、改修費助成事業を創設するなど、空き家の利活用を促進してきました。
助成事業では、これまで障害者グループホームをはじめ、高齢者向け給食宅配サービスの調理室への転用など、複数の利活用のご要望をいただき、北区ニュースやホームページを通じて、現在も空き家の貸主の募集を行っています。空き家の利活用にあたっては、住宅の耐震性能など、適切な物件の確保と、事業に理解いただける所有者の発掘が課題と捉えています。
区といたしましては、引き続き、事業の普及啓発に努めるとともに、関係機関とも連携しながら、本事業の推進に努めてまいります。
(4)居住支援体制の整備に向けてさらなる北区の役割発揮を
4つ目に、居住支援体制の整備に向けてさらなる北区の役割発揮を求めます。
北区は住宅確保要支援者のために、お部屋探しサポート事業として、寄り添い型、お知せ型を実施しています。私はこの寄り添い型を紹介することで高齢者の方の転居先3件成約にこぎ着けました。このあっせんを行う居住支援法人が増え、全体の成約案件が増えれば、大家さんも、高齢者のみなさんももっと利用が高まり変化が作れると思います。
しかし、とりわけ障害者の転居先探しは困難を極めます。家族とともに暮らしている方々が、地域での自立生活に移行する際の部屋探しは、本当に大変です。
居住支援協議会では、さまざまな主体が努力を重ねていますが、小委員会での検討で、「住宅確保要配慮者(本人)、大家、行政、居住支援法人の4つの当事者がWin-Winの仕組みにすることは難しく、全ての当事者が少しずつ我慢しないと成立しないのでは。民間にいかに頼るか、行政は何をするのかが課題」といった声が出されています。まさに、行政の役割発揮が期待されているのです。
私は、住宅確保要配慮者ご本人や、大家、居住支援法人がWin-Winの関係を作れるようにすることこそ行政が果たすべき課題であり、そのためには予算も、人も惜しむべきではないと思います。
そこで、今こそ、北区が住まい確保のための公的責任を果たし、物件の確保や居住支援法人への支援、福祉サービスのしくみづくりなど、予算・職員体制を大幅に拡充して推進すべきと考えます。ご答弁ください。
区では、北区居住支援協議会をとおして、区内外の居住支援関係団体の方々と、居住支援策の充実、推進については、協議を行っています。
この2月には、学識経験者や、セーフティネット住宅の提供を受けている都市再生機構、東京都住宅供給公社を新たに会員に迎え、体制の強化と活動の活性化を図っています。
区としましては、住宅部局と福祉部局の連携のもと、協議会会員の一層の相互理解や、区に登録する協力居住支援法人との関係構築を進め、住宅確保要配慮者の方々のニーズに的確に応えていけるよう、努めてまいります。
(5)シルバーピアや公営住宅等の戸数増を
この質問の最後に、シルバーピアや公営住宅等の戸数増を求めます。
住まいは人権、住宅は福祉の立場で、もっとも確実に低廉な安心居住を確保できるのは、やはり区営住宅の戸数を増やすことです。住宅マスタープランの改定の柱にすえるべきと考えますが、区長の見解をお示し下さい。
高齢者住宅を含めた公営住宅は、セーフティネット住宅の中核として、これまでもその役割を果たしてきたと認識しています。
そのため、区も東京都同様に、老朽化の度合い等を勘案しながら、既存の管理戸数を確実に維持し、区営住宅の更新を計画的に進めることが重要だと考えています。住宅確保要配慮者の方々の居住支援については、引き続き、民間賃貸住宅を活用した施策等を実施することにより、重層的に住宅セーフティネット機能の強化を図ってまいります。
4、さらなる教育費無償化を求める
大きな質問の最後に、さらなる教育費の無償化を求めます。
(1)学用品、修学旅行代、標準服の無償化について
教育費の無償化が、教科書に続き、学校給食にひろがり、東京都では今年1月全区市町村の公立小中学校で実現しました。教育の主人公である子どもに、学ぶ権利、教育の機会の平等を保障するため、教育条件の整備をすることは政府と自治体の大きな責任です。しかし、予算上の公教育費の対GDP比は、OECD諸国平均の約7割で、下から2番目ですから、政府に充実を求めるのは当然です。
教育先進都市をめざすというなら、給食費に続いて、学用品・修学旅行代・標準服の無償化について、北区での早期実現を求めます。ご答弁下さい。
国に対しては引き続き、教育活動に係る負担軽減策を求めてまいりますが、北区においては、教育課題の本質と向き合い、保護者負担の軽減と教育現場の課題解決にバランスよく取り組めるものとなるよう、校園長会等と意見を交わしながら、検討を進めたいと考えています。
(2)就学援助基準の引き上げを
就学援助制度は経済的な困難をかかえる子どもに義務教育を保障するための命綱です。ところが、「子どもの貧困」が深刻なときに、政府は制度への国庫負担を廃止し、各地で就学援助の縮小を引きおこしました。
就学援助基準を、現在の生活保護基準の1.2倍から引き上げること。また、各項目の支給額も、物価高騰に見合った水準に引き上げることを求めます。さらに、生活保護の教育扶助の額も同様に引き上げるよう、国に求めて下さい。
あらためて、区長、教育長の答弁を求めて、私の質問を終わります。
北区では、生活保護基準額表の改定毎に試算し、就学援助の認定基準額が下がらないよう運用しており、1.2倍の数値変更は現時点では考えておりません。
しかしながら、国の補助単価や財調単価に準じて上限額を定めている各項目においては、物価高騰への対応を視野に入れながら、現状との乖離を無くすべく他自治体の状況確認などとあわせた見直しの検討を行ってきており、今後も着実な取り組みに務めたいと考えています。
なお、生活保護の教育扶助の引き上げにつきましては、区長部局と連携しながら、引き続き国に求めてまいります。