2020年度北区予算に対する反対討論と組み替え動議に対する賛成討論
2020年3月24日 | 野口まさと
私は、日本共産党北区議員団を代表して、ただいま上程されました第23号議案、2020(令和2)年度東京都北区一般会計予算、第24号議案、東京都北区国民健康保険事業会計予算及び、第26号議案、東京都北区後期高齢者医療会計予算に対する反対討論を行います。
一般会計予算について
初めに、一般会計予算についてです。
新年度予算案に盛り込まれた、大規模水害への対応強化、小・中学校給食費の負担軽減、区内2ヵ所目の区営シルバーピアと、重度障害にも対応する障害者グループホームの開設、LGBT相談窓口の開設、待機児解消に向けた学童クラブの増設等は、住民要望の反映として評価いたします。
しかしながら、以下に述べる4点の理由で、一般会計予算に反対します。
第1の理由は、経営改革プラン2020に示された、区民負担増とサービス削減の「行革」路線です。
新年度は、新たな基本計画の下での区政運営が行われる年となります。これまで北区が進めてきた行財政改革は、「経営改革」という名の通り、企業的発想に立って経済効率を追い求める方針に立脚したものでした。私たちは今回の基本計画の改定を機に、職員削減、外部化、受益者負担、公共施設の削減を柱とする「行革」路線の転換を求めましたが、策定された新基本計画でも、これまでの方針の踏襲となりました。
その第1は、職員定数です。人口増に伴う保育園の増設などにより、この5年間で北区の職員は計画を160人上回って増加しました。新年度も職員数は49人の増加です。現時点でまだまだ保育所の拡充や子ども放課後対策、児童相談所の整備などの需要も多く、施策の充実には、北区が責任をもって職員の確保や育成を行うことが重要であるにもかかわらず、北区はさらに職員を削減する5年間の定数管理計画を示しました。
第2は、外部化路線です。指定管理者制度の導入や外部委託を推し進めることで、働く人の賃金が押し下げられてきましたが、新たな経営改革プランでも、なお外部化が主軸とされています。区政運営にかかる経費を削減することで官製ワーキングプアを増やしてしまうようでは、とても「改革」などとは言えません。
第3は、区民サービス削減と徴収強化です。新しい経営改革プラン2020には、77歳喜寿の高齢祝い品の廃止や、高齢者福祉サービスの削減、ふれあい館の統廃合など区民サービスのさらなる削減方針が盛り込まれました。これ以上区民に我慢を強いる施策を進めることはやめるべきです。
さらに、教育の機会均等を保障するものとして、生活保護を利用している世帯でも加入と保有が認められている学資保険まで差し押さえる強制徴収の一層の強化は問題です。予算審議では、滞納分を支払わなければ解約すると、支払いを促すための材料として扱われ、それでも支払われない場合は換価され未納分に充当されてしまう状況であることがわかりました。滞納とは無関係な子どもの将来を奪うことはあってはなりません。即刻改めることを要求します。
区民負担増とサービス削減を強いる「行革」路線から、区民本位の行財政改革へ、抜本的な転換を求めるものです。
第2の理由は、区民の暮らしを応援する施策や、貧困・格差解消に向けた抜本的な対策が不十分にとどまっていることです。
主要5基金の残高は今年度も過去最高を更新し597億円となりました。高まった財政対応力を活用して、所得の再分配機能を発揮し、貧困・格差の解消を図ることは自治体の基本的な役目です。
ところが、私たちが命に関わる問題と提案した低所得者のエアコン設置助成にすら、前向きな姿勢は見られませんでした。北区では、昨年10名もの熱中症による死者が区内で出ていますが、荒川区では制度を実施したことが大きく寄与し、熱中症死者数を減らしています。北区での熱中症死者は23区の人口比率ではワーストワンである現状に鑑みれば、このような命を守る施策にこそ予算を投じるべきではないでしょうか。
区民の暮らしを応援し、貧困・格差を解消するために、積み上げた基金を区民に振り向けるよう求めます。
第3の理由は、住民の声に真摯に耳を傾けようとしない、まちづくりの姿勢です。
北区のこれまでのまちづくり施策に対しては、北区基本計画2020(案)に対してのパブリックコメントで、以下のように厳しい意見が相次いでいます。
「王子駅周辺のまちづくりについて、…策定過程に近隣住民の参画の場がなかったのは遺憾である。今後の計画検討にあたっては、北区の都市計画行政が調整役となって、区民・利用者参画によるワークショップを行い、区民意見を反映させる必要がある」
「十条駅周辺のまちづくりについては、…勉強会や他地域事例の視察等を行い、…対立意見を比較しあいながら協議していくことが大切である」
「十条駅付近連続立体交差事業や鉄道付属街路事業…の経緯を知るにつけ、全く、区民とともに進められていません」
「補助73号線、十条西口再開発、補助85号線、埼京線の高架化と何百人の住人を立ち退かせるのですか。…町会で、この大事な問題を取り上げられることなく、皆様の意見を聞くことはありませんでした」
これらは、まちづくりを「区民とともに」の立場で進めてほしいという願いです。しかし、予算審議を通じても、区の姿勢は改まっていません。
1つめは、特定整備路線についてです。住民訴訟が続く特定整備路線では、2020年度中に完成させるという当初の見通しが立たなくなったことで、東京都は事業期間を5年間延長させ、2025年度の全線完成という計画変更を行いました。誰が見ても5年延長しても事業の完成は無理であるにもかかわらず、区はこの計画を追認しています。事業期間を短く設定し、地権者に早期の転出を迫る東京都の事業手法に対し、住民から疑問の声があげられています。また、いつまでも事業が進捗しないことで、道路そのものの必要性についても疑問の声が出されています。
2つめは、十条まちづくりです。埼京線の連続立体交差事業・鉄道付属街路・補助85号線の事業認可が今月行われました。権利者や開発により影響を受ける地域住民に、事業の必要性を十分に説明することもないまま事業認可まで進んでしまったことは、住民裁判となった特定整備路線や十条駅西口再開発での反省点が全く生かされなかったことになります。
3つめには、都心を低空飛行する羽田新飛行ルート問題です。「鬼の音」と幼な子に恐怖を与える騒音・振動に加え、落下物の心配が、北区の試験飛行が行われた地域に加え、他の多くの地域にも影響を及ぼすことが明らかになりました。それでも計画撤回を求める区民の声を一顧だにしない区の姿勢は、区民とともにを掲げる北区のとるべきものではありません。国際航空操縦士協会連合会と、290社が加盟する国際航空運送協会が「3.5度の急角度に懸念」を表明し、1月15日には国交省に要請して警鐘を鳴らすという前代未聞の異常事態となっています。今ならまだ立ち止まって考えなおすことは可能です。国に3月29日からの運用開始をやめること、新ルートの見直しを求めるべきです。
まちづくりでは住民合意を最優先に、合意が得られるまで丁寧に進める姿勢に立ち戻ることを改めて求めます。
なお、予算審議の中で、現在進められている赤羽一丁目市街地再開発に関し、「区長のトップダウンで」との発言もありましたが、区内で4つの住民裁判が起こされているように、住民の理解・合意ぬきのまちづくりがうまくいかないことはすでに証明ずみです。赤羽でも、しっかりと住民の声に耳を傾けながらまちづくりを進めるよう要請しておきます。
第4の理由は、区民に苦難を強いる安倍政権の政策に無批判に追随する姿勢です。
昨年10月に行われた消費税の10%への増税強行は、区民生活と地域経済に計り知れない影響を与えています。増税直後の昨年10~12月期の実質GDPは年率換算でマイナス7.1%となり、区内の商店からも存続の危機を訴える声があげられています。景気対策として行われたプレミアム付商品券については、1月末の時点で、非課税世帯の申請率がわずか29.1%にとどまっていることからも、特に低所得世帯は、消費税増税の影響を大きく受けていると思われます。
また区財政に与える影響についても、不合理な税制改正による影響は、消費税8%時点でマイナス35億円であったものが、今回10%の引き上げによりマイナス54億円とさらに19億円の減収となることがわかりました。
区民や区内産業に対して、さらには区財政にとっても大きな打撃となる消費税増税を、必要な政策であったと容認する区の姿勢では、到底区民生活を守り、区政を安定的に運営することはできないものと指摘します。
国への追随姿勢は、北区基本計画2020の経済認識にもあらわれました。区は、現在の経済状況を「雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が進展する中で、内需を中心とした景気回復が見込まれる」としましたが、これは経済の実態を見ない政府の発表をそのまま使っただけであり、区民感覚からはかけ離れたものです。
なんでも政府の言い分に従うのではなく、区民に苦難を強いる政策には、きっぱりとものをいう立場こそ必要です。
以上、一般会計予算について反対理由を述べました。
特別会計について
次に、特別会計予算についてです。
まず、国民健康保険事業会計予算です。新年度保険料は、昨年の一人あたり年額11万6647円から11万8535円へと1888円の値上げになりました。払いたくても払えない水準の保険料をさらに引き上げる予算は認められないことから反対いたします。加えて、保険料の軽減を図るための法定外繰り入れの解消や、自治体を競わせペナルティまで与える「保険者努力支援制度」には、区として反対を表明するよう求めます。
次に、後期高齢者医療会計予算は、低所得者対策としての保険料軽減特例の段階的廃止により保険料の引き上げとなることから反対します。
なお、介護保険会計予算には賛成することを申し添えます。
反対討論の最後に、予算特別委員会の質疑に関連して、2つのことを指摘させていただきます。
1つは、新型コロナウイルス対策についてです。昨日、日本共産党北区議員団は、花川区長に対し、コロナ対策に関しての2回目の申し入れを行いました。全国一律休校にともなう子どもや家庭への援助、中小業者や労働者、そして教育・医療現場への支援、医療制度の柔軟な運用など、改めて対応をお願いいたします。
2つは、わが党を名指しした不適切な発言についてです。公明党の稲垣浩委員より、2月13日の衆議院本会議での質疑を引用しての公党への中傷ともとれる発言がありました。国会でも解決済みのこの問題が、北区議会でも質疑と関係なく行われたことは問題です。
組み替え動議について
続いて、第23号議案、2020(令和2)年度東京都北区一般会計予算及び、第24号議案、東京都北区国民健康保険事業会計予算の組み替えを求める動議に賛成する討論を行います。
日本共産党北区議員団は、この5年間、昨年からは新社会党所属議員とともに当初予算の組み替えを求めてきました。残念ながら、議会では否決されておりますが、これまでに提案した54項目のうち、年度途中の補正や次年度の新予算などで、部分的に実現したものも含め27項目が実現しています。これらの項目は、区民の切実な要望であり、他の会派・議員の皆さんも一致できる内容だからこそ、北区の施策として実現できたものだと確信しています。
今回の組み替え提案の内容は、先ほど提案理由の説明で詳しく述べられた通りですが、私は、その意義について2つの点を強調したいと思います。
第1は、消費税増税によりGDPが大きく減少し、コロナウイルスがさらなる追い打ちをかける中で、区民の暮らしを支えるために活用できる基金の積極的な活用を行う提案となっている点です。
今区民が直面している危機に対し、北区が財政調整基金を1.7億円取り崩し、コロナ対策の補正予算を速やかに実施に移したことは評価できるものと考えています。私たちが提案している組み換え予算の執行も、区民の不安・心配を解消することに大きく寄与することができるものです。財政調整基金は、将来への備えとともに、まさに今のような危機的状況に対応するために活用するべきものではないでしょうか。
第2に、今回の組み替え提案は、SDGsが呼びかけている新たな課題を前進させるものです。貧困・格差の解消のほか、ジェンダー平等、気候変動と地球温暖化防止、多文化共生社会といったSDGsの分野で、北区にもう一歩前に進めて実現させて頂きたい施策を具体化しました。これらの課題を他自治体に先駆けて行うことで、先進都市となることができるものと考えます。
議場の皆様のご賛同を心よりお願いして、賛成討論と致します。ご清聴ありがとうございました。