2023年第3回定例会個人質問―せいの恵子
2023年9月12日 | せいの恵子
私は大きく2つ、子ども・若者支援の更なる拡充と、「身寄り」のない人を支える支援について質問します。
1、子ども・若者支援の更なる拡充を
はじめに、子ども・若者支援の更なる拡充について、3点うかがいます。
(1)子どものこころとからだを守る相談について
1つめは、子どものこころとからだ守る相談についてです。
私はこの間、子ども・若者の相談窓口や居場所づくり、ひきこもりやヤングケアラーについてなど、生きづらさを抱える子ども・若者の支援について質問を重ねてきました。昨年の第2回定例会個人質問では、子ども達の一人一台端末「きたコン」を活用し、子どもが相談できるしくみづくりや、児童館・こどもセンターと連携した相談窓口の設置も提案してきました。
そして今年7月から、夏休みに合わせて、北区でも子どもたちの心とからだを守り相談しやすく、一人ひとりに支援が行き届くようにと、「きたコン」のメッセージ機能を使って、教育総合相談センターに相談できる「子ども相談ポスト」が開始となり、各児童館・子どもセンター・ティーンズセンターでは、「子どもなんでも窓口」が開設されたことを大変うれしく思います。
この様な一人一台端末を利用した相談事業は2021年11月から渋谷区で導入が始まり、1年10か月間で延べ相談件数は約150件、今年度だけでも約40件寄せられるなど相談件数も伸びつつあり、数字以上の効果を感じているようです。
また、北区と同様に7月より本格運用を開始した世田谷区では、試験運用の2週間で230件の相談が寄せられたとのこと。特徴の1つとして相談したい相手を子ども自身が選択でき、例えば担任との関係で悩んでいる場合、それ以外で信頼できる先生や、第三者的な立場の教育委員会に相談することができます。そして、直接相談まではいかず、「まずはフォーム上で悩みを聞いてほしい」と思う場合は、「今はまだ相談したくない」という選択も可能です。
一人一台端末を利用することで、どの子どもが悩みを抱えているか分かるため、相談につながらなくても周囲が注意して見守ることができるなどの利点もあるということです。
夏休みが終わり、2学期がスタートしたこの時期、子どもの自殺が増える傾向があり、人知れず悩み、不登校になってしまう子どもたちも少なくありません。スタートした相談事業が、子どもたちにとって活用しやすく、安心して悩みを共有し相談できるものとなるよう、以下、4点うかがいます。
1、子ども相談ポスト、子どもなんでも窓口の事業開始からの利用状況やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとの連携、また、困難事案は専門家チームが対応するとのことですが、心理士などの専門職も含め、必要な職員研修と体制確保を求めます。
2、職員の研修内容と受講率の目標設定についてはどのようにお考えかお答えください。
3、先に紹介した世田谷区のように、子どもが相談相手、相談内容の扱いやその後の対応を選択し意思を表示できる機会が確保できるようにすることを求めます。
4、今後の事業方針と広報についてもお考えをお聞かせください。
はじめに、子どものこころとからだを守る相談についてです。
区では、本年7月から、全児童館に「子どもなんでも窓口」を開設するとともに、区立小中学生が学習用端末「きたコン」を活用して気軽に相談できる機能としての「子ども相談ポスト」を設置しました。これらの利用状況ですが、子どもなんでも窓口には、幼稚園や保育園のことなど、子育て全般についての保護者からの相談が7月だけで400件以上寄せられている一方、子どもからの相談は30件程度となっており、「子ども相談ポスト」の利用件数は、現時点で「ゼロ」となっています。
いずれも、子どもからの悩みや相談については、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携し、迅速かつ的確な対応ができるよう体制を整備していますが、引き続き、職員には、児童・生徒への適切な支援につながる研修等を実施し、対面ではない状況での相談対応や言葉づかいなども含めた必要な知識や技能を確実に習得させられるよう努めてまいります。
また、相談員や心理士等が相談を受けた際には、これまで同様、相談内容の取扱いや対応については、相談者自身の意思を確認し、適切に対応してまいります。
なお、これらの相談機能は、開始して間もないことから、学校等の協力も得ながら、さらなる利用促進につながる一層の区民周知に努めるとともに、本定例会に提案している補正予算も活用して、相談体制等の充実にもしっかり取り組み、事業を着実に推進してまいります。
(2)校内別室での不登校支援について
次に不登校対策についてお聞きします。
北区でも2022年度の不登校調査の結果、小学生が262名、中学生が306名、計569名の不登校児童生徒がいるとお聞きしています。また、不登校調査の基準は、年間30日以上の休みとされていますが、これにあてはまらない「隠れ不登校」とも呼ばれる「不登校傾向」にある子どもたちは、「不登校」にカウントされている子どもたちの3倍以上もいると言われ、割合で言えば、全中学生のうちの10.2%、つまり10人に1人以上の子どもが「隠れ不登校」状態だという統計もあります。
また、不登校の要因は学校・教育委員会の回答で最多は「本人の無気力、不安」とされていますが、不登校の子ども・家族の回答では、「身体の不調」が最も多く、次いで、「先生のこと」「いじめや嫌がらせ」と続きます。これらを見ても原因はひとつではなく複雑に絡み合っていることがほとんどで、ひとつの原因を特定することは大変難しく、不登校支援としても様々な対応が求められていると感じます。
北区ではこの間、教育委員会と東京シューレとの協働事業や、適応指導教室としてのホップ・ステップ・ジャンプ教室の設置などに取り組んできました。
そして今回、一つの支援策として、区立学校において校内の別室であれば登校できる児童・生徒に対し、安心できる居場所を確保するとともに、支援員を配置して不登校の児童・生徒の一人ひとりの状況に応じた支援を行う「校内フリースクール(居場所づくり)」が2023年度は試行的に6校で開始されます。
先日私は、不登校のお子さんがいる保護者の方々から直接お話を伺いました。保護者のみなさんからは、「教室に戻ることを目的とせず、子どもの意思が尊重される場所であってほしい」「校内フリースクールで効果が上がっているところはリラックスできる雰囲気がある。雰囲気作りも大切にしてほしい」「子どもが今のありのままの自分でいいと思えて、安心して過ごせる場所であってほしい」「不登校の子どもは信頼関係が築けるかが重要。年度で指導員が変わってしまうと慣れるまでに時間がかかる。指導員は有償ボランティアという不安定な形ではなく、長期的で安定的な雇用であってほしい」「学習の遅れや抜けがあるので、それぞれの進度にあった学習をしてほしい」などのご意見をお聞きし、それぞれのお子さんたちの個性や特性を大切にし、保護者にとっても様々な意見が言え、反映させられる居場所であることが、今回の校内別室の不登校支援に求められているのだと感じました。
そこで伺います。
1、校内別室に配置される支援員は、不登校に理解があり深い愛情を持ってありのままの子どもたちの受け入れてくれるような方が求められています。支援員はどのような基準で採用され、採用後の研修などは行われるのでしょうか。
2、支援員募集の資格要件では、必ずしも教職経験者の必要はないとのこと。学習機会、学習支援などの学びの確保についてはどのようにお考でしょうか。
3、保護者の方からは、学校に入学する前に校内別室の周知を行ってほしいという声をお聞きしていますがいかがでしょうか。
4、今後、モデル校での事業評価を行い、校内別室配置を全校で行うことを求めます。また、その場合、各学校での教室の確保や児童館との連携についてはどのようにお考えでしょうか。
以上お答え下さい。
本年度、区立小中学校各3校で実施する不登校の児童・生徒等の居場所確保に資する校内の別室に配置する支援員については、書類選考と面接により採用を決定します。選考にあたっては、子どもと接した経験や場面における対応や学習支援の知識や技量などを確認し、採用後の適切な支援につながる必要な助言も行うとともに、採用後には、支援員と学校関係者との連絡会を適宜開催するなど、支援員の知識や技術の向上につながる情報共有等を行ってまいります。
校内別室における学びの保障については、学習用端末「きたコン」の学習支援ソフトの活用や、授業の動画配信による視聴など、個々の状況に応じた学習支援について、適切に対応してまいります。
また、校内別室については、既に、区ホームページ等で広く区民に周知しており、入学説明会等での周知も予定しています。
今後、校内別室を設置する小中学校3校での実施状況と課題をしっかり検証するとともに、他校における教室確保の課題、児童館などの校外の別室確保の課題などを含め、本年度開催している「不登校対応検討会」において、不登校の児童・生徒等への必要な支援のあり方について、検討・整理してまいります。
(3)学校以外に居場所を求める子どもたちと保護者への支援について
次に学校以外に居場所を求める子どもたちと保護者への支援についてです。
文部科学省によると、不登校の小中学生約24万5000人のうち4割近くが、家庭外で相談員や専門機関などの支援を得られていないとされています。私がお話を聞いた保護者の方も、「子どもが不登校になってから、初めの1年は何とか学校に行かせようとしてがんばっていた。どこに相談してよいのかわからず、自分と同じ当事者に出会い、様々な情報を得られるまでに2年かかった。もっと早く対応ができていればと思う」と話されていました。大変なご苦労があったことに胸が痛みます。
NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワークが、不登校を持つ親を対象に行ったアンケート調査では、不登校の子どもが主に過ごしている場所は自宅が91.3%と圧倒的に多く、次いでフリースクール、保健室・別室登校、教育支援センターとなっています。
そして、不登校をきっかけに収入が減った世帯は36.3%と回答者の1/3を超え、保護者の働き方でも退職した・休職や転職をした人が26%となっています。一方、不登校で収入が減っても給食費代わりの食費、フリースクールなどの会費、通院、カウンセリング費、家で過ごすための学習費などの支出が増え、経済的負担は増しています。
北区でもフリースクール等に通う不登校児童・生徒に対し、東京都から保護者への直接補助(月額2万円)に、北区独自に月額1万円を上乗せしての授業料補助が始まり、保護者からは大変歓迎されています。しかし、先に示したように自宅で過ごす子どもが大半なことからも、不登校の子を持つ保護者からは、経済的負担の軽減を望む声をお聞きしています。
そこで伺います。
1、給食費の代わりになる食費補助や家庭学習での教材費、体験支援など保護者の負担軽減を図る区の支援を求めます。
2、子どもが不登校になってから保護者が相談先とつながるまでには時間を要し、その間、親子で悩み孤立するなど負担が大きくなります。保護者の不安や悩みを軽減するためのワンストップ型窓口の設置や、行き渋り・不登校になってからの対応や相談窓口、フリースクールなどの居場所を含む各種支援情報が掲載されるハンドブックの作成を求めます。
3、子どもたちにも安心して日中過ごせる多様な居場所が必要です。児童館を利用しやすくすることや、大学との連携、不登校支援にとりくむNPO法人や親の会などと協同した居場所づくりも必要だと考えます。
以上区の考えをお示しください。
不登校児童・生徒への支援については、一人ひとりの状況に応じた、安全・安心な居場所の確保と学びの保障に資する取組みを最優先することが重要と考えます。
区は、現在、給食費を無償化しており、一人一台端末「きたコン」の貸与と必要な学習支援ソフトの提供を行って家庭学習環境を整備しているほか、低所得者世帯には、就学援助費による学用品購入費やオンライン学習支援費の支援、フリースクールを利用する不登校児童・生徒の保護者には、東京都の制度も併用した利用料補助による経済的支援を行っています。そのため、不登校の児童・生徒の保護者へのその他の経済的支援は、考えていません。
また、保護者向けには「子育てガイドブック」等により、児童・生徒向けには「きたコン」等による各種相談機関の案内を行うとともに、先にも述べたとおり、本年7月からは、「子どもなんでも窓口」や「子ども相談ポスト」を開設するなど、相談窓口や相談機能の拡充も行ってきています。そのため、ワンストップ型相談窓口の設置や新たなハンドブックの作成については、今後の検討課題とさせていただきます。
さらに、不登校の児童・生徒が安心して過ごせる日中の居場所については、当該児童・生徒の心身の状況や家庭環境など、個々に応じた支援を行える多様な居場所の確保が必要であると考えますので、本年度開催している「不登校対応検討会」において、各種団体・機関と連携した居場所の確保について、既に、検討を行っているところです。
2、「身寄り」のない人を支える支援について
大きく2つめは、「身寄り」のない人を支える支援について質問します。
(1)実態調査やガイドライン作成など課題解決への取り組みを
長引く新型コロナウイルス感染症や物価高騰などにより私自身、生活困窮の相談、なかでも、身寄りのない方からの相談を受けることがとても多くなっています。
Aさんは50代後半の女性で独身、両親を見送り現在は一人暮らしです。体調を崩し仕事が思うようにできず収入も減り、居住している民間賃貸アパートの更新が重なったことで生活が厳しくなりました。Aさんは同時に大家さんから身元保証人の提示も求められていましたが、身寄りがなく民間の保証会社を利用するお金もなく困りはてて相談がありました。
Bさんは70代女性で、夫と死別しひとり暮らし。緊急で入院をすることになったが、病院に保証人を立てるように言われ、遠方にいる姪には頼めずどうしたらいいかと不安そうに相談がありました。
どちらのケースも結果的には問題の解決に至りましたが、どちらの方も解決に至る間は不安を抱えての日々。私も直接的なお手伝いは難しく、身寄りのない人への支援の必要性と難しさを痛感しました。
北区全高齢者実態調査の結果をみると、困りごとの相談先として割合が高値を示したものは、男性、女性共に「同居・別居の家族・親族」となっており、一方で「そのような人はいない」と答えた男性は7.6%、女性は2.7%と一定数みられています。
日本の社会システムでは「家族による支援」があることが当たり前の前提があり、連帯保証や身元引受等が必要とされる慣習があります。そのため,「身寄り」がないか「身寄り」に頼ることのできない人は、居住・医療・介護・就労等のいのちとくらしに関わる重要な場面で困難を抱えることになっているのではないでしょうか。
私の経験を通しても、これらはけして高齢者だけの問題ではなく、家族の支援を受けられない子ども・若者や中高年、障害者など誰もが人生の過程の中で遭遇するかもしれない問題だと感じています。「家族による支援」が当たり前にあることを前提とするのではなく,家族がない場合やその存在が支障になっている場合を考えた支援あり方が今後一層求められます。
こうした中で、新潟県魚沼市では、行政自身がその主体となり,身寄りのない方へのガイドラインを策定しています。医師会を含め地域の主要な機関が策定委員会をつくり、その指針は高い公共性を持つ「魚沼市における身寄りのない人への支援に関するガイドライン」となって活用されています。
ガイドラインの目的では「…親族がいない、または親族はいても疎遠で援助を受けられない人の支援をする上で、医療同意や身元引受など、法的にも明確な規準がないこれらの問題、いわゆる「身寄りなし問題」に対して、地域共通のルールを示すことによって、身寄りのない人でもスムーズに医療や介護・福祉のサービスが受けられるよう、その人の権利を擁護し、また、そうした人に関わる支援者の不安及び負担を軽減することを目的として作成しました。」とされています。
市の担当課職員の方にお話しを伺ったところ、「魚沼市でも身寄りのない方が増え、現場での戸惑いもあった。ガイドラインは対応する職員の拠り所になっているのではないか」、「令和2年にガイドラインを作成してから、医療介護など連携していかなければという意識もあり、健康増進課や保健師の研修会なども行われている。高齢者人口は減りつつあるが、高齢化率は高くなっており、医療介護の人材不足などもある。今後の連携や枠組み、ガイドラインの見直しをすることも課題だ」とのことでした。
そこで、伺います。
1、北区でも身寄りのない人の支援が高齢者安心センターや福祉事務所、社会福祉協議会、くらしと仕事相談センターなどで行われていますが、支援機関においてどのような困りごとが寄せられているか、また、実態把握のための調査を行うことを求めますがいかかでしょうか。
2、身寄りのない人の支援とその問題の解決には、地域全体で課題を共有すること、課題を解決する場の創設、ガイドラインの作成などが必要と考えます。これらの取り組みを前進させることについて区の見解をお聞かせください。
福祉部門を中心とする 区の窓口や 複数の相談 支援機関が受ける 身寄りのない方からの相談について、件数は把握していませんが、入院時や 居所設定時の 困難事案など お示し頂いた事例と 類似の相談があると聞いています。
なお、身寄りのない方に特化した 実態調査の実施は、現時点では考えておりませんが、区や各 相談支援機関が 実施する調査結果の共有に引き続き 努めてまいります。
次に、身寄りのない方を支援する際の 課題解決の場としては、複数の相談 支援機関がかかわる 支援者会議などが、一定の役割を果たしていると 考えており、今後も区と相談支援機関が連携した対応に努めてまいります。
ご提案の ガイドラインの作成については、先行 自治体の 取り組みの一つとして、「身寄り」のない方への 支援策を検討する際の 参考とさせていただきます。
(2)重層的支援体制整備事業について
昨今、先に述べた身寄りのない人への支援をはじめ、8050問題、ヤングケアラーやひきこもりなど、個人や世帯が抱える生きづらさやリスクが複雑化多様化し個別性が高くなり、具体的な問題解決に対するアプローチとつながりをつくりながら支援をする伴走型のアプローチが必要とされています。
こうした中で、2021年4月より社会福祉法に基づき重層的支援体制整備事業が実施され、各自治体では、支援機関・地域の関係者が断らず受け止め、つながり続ける支援体制を構築することをコンセプトに、「属性を問わない相談支援」、「参加支援」、「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に実施する包括的な支援体制を円滑に構築・実践できる仕組みが作られました。
そこで伺います。
北区が主体となっての、重層的支援体制整備事業への取り組みが今後重要だと思います。区の考えをお示しください。
以上、温かな回答を求め私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
支援対象者の属性を問わない包括的な支援体制を整備する、重層的支援体制整備事業については、令和4年11月時点で6区となっており、当事業に取り組む自治体数も増加しています。一方で、実施に当たっては、必要な人材や場所の確保など、時間を要する課題があると認識しています。
区といたしましては、現在、行っている分野ごとの専門的な相談や支援、地域と連携した必要な見守り活動などの連携を更に強化することで、包括的な支援体制を構築することを優先していく考えです。
重層的支援体制整備事業については、各区の取組状況や、先行区における、事業を進める際の課題などについての情報の把握など、調査・研究を進めてまいります。