2016年度決算に対する反対討論
2017年10月6日 | 野口まさと
私は日本共産党北区議員団を代表して、平成28年度北区一般会計決算、並びに北区国民健康保険事業会計決算、北区後期高齢者医療会計決算に対する反対討論をおこないます。
まず、一般会計決算認定についてです。
平成28年度予算執行において、子ども未来応援事業、障害者グループホームの新設、2棟目の区営シルバーピア建設、80人の正規職員の増員による公立直営園を含めた待機児解消施策等については、区民要望に応えたものであり、評価致します。
しかしながら、以下、4点の理由により一般会計には反対致します。
住民合意のないまちづくりを推し進める姿勢
反対理由の第1は、住民合意のないまま、住民立ち退き・商店街こわしのまちづくりを、推し進める姿勢です。
既に訴訟となっている補助86号線志茂地域に続き、今年8月には補助73号線十条地域と、十条駅西口再開発事業でも住民が提訴に踏み切りました。更に補助86号線赤羽西地域でも、11月の提訴に向けて住民が準備に入っています。
十条地域では、道路建設等により、500棟を越える建物が除却対象となっており、長年この地で生計を立ててきた方が区域外への立退きを余儀なくされるほか、商店街にも計画線がかかることから、店舗や倉庫などもまた、除却される事業が進められています。この道路建設により地域が分断されることから、地域商店街に与える影響も深刻であることに加え、十条駅へのアクセスや、小中学校児童生徒の通学の安全、地域コミュニティが壊れることなど、住民は様々な不安を抱えています。
赤羽西地域では500年以上の歴史を持つ太田道観公ゆかりの静勝寺のある稲付城跡をトンネルにし、区民の憩いの場所である赤羽自然観察公園・スポーツの森公園を分断する計画が、住民の生活環境を一変させるものとして怒りを呼んでいます。
住民が裁判に踏み切ったのも、これまで北区が住民の皆様にきちんと向き合ってこなかったことが大きな要因となっています。東京都が決めたことだからと、道路建設推進の態度を取り続けることは、住民との溝を深めるだけです。
十条地域の5商店街が作る、十条地区商店街まちづくり連絡会から出されている、補助73号線見直し要望に対して、2年半以上経過した現在に至るまで回答していないことも問題です。東京都とともに、早急に協議の場を設け、きちんとした回答を示すことを求めます。
加えて、昨日の都市計画審議会において、埼京線の付属街路建設を区の事業として事実上正式決定し、埼京線十条駅付近の連続立体交差化の高架構造と、補助85号線拡幅計画についても建設を推進する趣旨の区長意見を東京都に出すことになりました。
しかしながらこの事業計画について、実際にそこで暮らしている住民の皆様とひざを交えて意見を交わす。こういったことがこれまでに一度でもあったでしょうか。特に補助85号線については、先ほどふれた十条地区商店街まちづくり連絡会が、「埼京線の高架化案が示され、道路拡幅の必要性はなくなったが、なぜ拡幅する区間や幅員、線形が見直されないのか説明するよう東京都に働きかけてほしい」と求めているにもかかわらず、これに対して今日まで回答をすることなく、昨日のような決定に至ったことは、とても許されることではありません。住民合意を得る努力が省かれたまま進められる事業は、住民にとってはまちこわしとなる受け入れ難い計画であるということを、きちんと認識すべきです。
私たちは、こういった住民の声が反映されないまちづくり政策を改善するため、①自治基本条例、②住民参画条例、③まちづくり基本条例の制定を検討することと、区長が区民の意見を直接聞くまちかどトークの再開を強く求めます。
基金を活用し、さらなる区民応援施策を
反対理由の第2は、基金の運用についてです。
区長は年頭の挨拶で、「財政対応力はついた」と表明されました。実際に平成28年度決算では5基金合計で536億円、財調基金も157億円といずれも史上最高額となりました。
しかし貧困・格差是正に向けた、暮らしを応援する抜本的な施策は充分に行われたといえるでしょうか。わが党は基金の一部を活用して、区民応援の施策を行なう予算組み替え動議を提出しました。今年度、就学援助の入学準備金の前倒し支給、子どもの学習支援や子ども食堂の補助、認証保育所の保育料補助などについて、全会派も一致できるものであり、一部実現されることになりましたが、高齢者・ひとり親世帯などへの住宅家賃補助や国保料の負担軽減策、コミュニティーバス路線の新規路線などまだまだ実現すべき課題は多くあります。更なる暮らし応援の施策拡充にこそ、財政対応力を発揮すべきです。
今年度も10億円を積み立てて、90億円となったまちづくり基金十条分については、充分に精査し、来年度こそ、区民応援の施策に活用していただくことを求めます。
経営改革プラン、公共施設再配置方針は見直しを
反対理由の第3です。北区では既に人口増加傾向が明らかになり、更に今後も一定期間の人口増加が予想されます。このことで新たな行政需要が見込まれるにもかかわらず、人口減少を前提として設計された経営改革プランや公共施設再配置方針に固執して区民負担増、サービス削減を続ける姿勢です。
具体的にはまず、児童館の削減と子どもセンターへの移行です。
放課後子ども総合プランは、北区全域に拡大しつつあり、児童の8割以上が登録していることから、放課後の子どもの居場所として機能しつつあります。しかし一方で、一般登録児童が実際に利用する割合は2割程度にとどまっているなか、児童館の廃止、子どもセンターへの移行を進めることは、子どもたちから遊びの選択肢を奪うことになります。
また、児童が費用負担の心配なく活動できる、クラブ活動がなくなってしまうこと。違う学校の児童が交流する機会が奪われてしまうことなど、削減できる費用に比べ、子どもたちが失うものの価値は計り知れないものがあります。
子どもたちの意見も充分に聞きながら、児童館のあり方検討方針の検証、見直しを求めるとともに、当面子どもセンターでの小学生の受け入れを拡充すること、児童館のクラブ活動の継続を強く求めます。
次に、区民事務所7分室廃止方針についてです。
現在区民事務所分室では北区全体の事務量の2割、約9万5000件の事務を取り扱っています。都営住宅の収入報告や家賃減免など、身近な分室の利用者の多くは高齢者などの交通弱者です。にもかかわらず、王子・赤羽・滝野川の3区民事務所に業務を集約してしまうことは、区民に大きな負担をかけ、高齢化社会の対応としても本末転倒です。
また、分室で行われている事務を3区民事務所に集中させて、業務が滞りなく行えるか、王子区民事務所の繁忙期の抜本対策も「これから検討する」と、明確な方策も無いまま、分室を廃止する方針を示すことは、時期尚早といわざるを得ません。方針の撤回を求めます。
更に3年ごとの見直しとなる使用料、手数料の改定は、自転車駐車場の引き上げだけでも、区民負担は1億円を越えます。値上げ理由も、定期利用料金と一時使用料金の整合性をはかるとのことですが、区民に納得させられる理由とは思えません。この方針も撤回を求めます。
小学校適正配置計画については、この計画の基礎となった「東京都北区立学校適正規模等審議会 第三次答申」の人口推計は平成20年当時のもので、既に9年を経過しています。
この間に、王子5丁目で860戸のマンションが建設され、今後志茂地域でも500戸規模のマンション建設計画もあります。
都営桐ヶ丘団地では、新たに1000戸の都営住宅建設や、UR赤羽台団地でも、建替え後、あらたに1300戸の住宅建設が見込まれるようになるなど、北区の現状は当時とは大きく変わりました。
既に適正配置の済んだ中学校の教室不足を心配する住民の声がある中で、現状には合わなくなっている、小学校数を減らすとの議論を継続することは、区民にさらなる不安・不信を与えるものと言わざるを得ません。地域の実情に合わせた配置計画を、協議会できちんと議論することを求めます。
北区は、少子高齢化の進展により、区税収入の伸びが期待できないことを施設総量の削減理由としていますが、平成24年度から5年連続で特別区税収入は増え続け、平成28年度も対前年度比で2.9%、8億円の増となっています。
子どもは増えていることから子どもが利用する施設はこれまで以上に必要になること。また、高齢者が増えれば高齢者が必要とする施設もそれだけ必要になります。この税収増を人口増に対応した施設の維持・建設に振り向けることこそ、今求められることであるにもかかわらず、施設総量の削減という制約をかけることは、現状にそぐわない方針であると考えます。
経営改革プラン・公共施設再配置方針は見直すべきです。
国や都の施策に追従する姿勢
反対理由の第4は、国や都の施策に追従する北区の姿勢です。
住民にもっとも身近な自治体である北区は、国や東京都の、区民に不利益な施策に対しては防波堤の役割を果たさなければなりません。
1つは再来年10月に予定されている消費税10%への増税について、区は「安定財源」と評価しました。区民税や国民健康保険料、介護保険料、国民年金の未納が増え、徴収が厳しくなっている現状を見ても、区民の生活が大変になっていることがわかります。消費税増税は中止を求めるべきです。
さらに、国の主導したマイナンバー制度を無批判に受け入れる姿勢も問題です。
制度の拡大に伴い、これまでに指摘されてきたセキュリティーなどの問題や、新たな国民のプランバシーに関する問題点も明らかになりつつあります。北区内でのマイナンバーカード普及率はいまだ一割程度です。これは北区民がカードを所持することについて、利便性を感じていないことの表れですので、カードの取得を強いるようなことは行なわないこと、あわせて、北区が負担する経費が増え続けていることについての改善も求めます。
東京都の進める特定整備路線の推進姿勢も問題です。区民の貴重な財産である、旧赤羽中学校跡地の利活用方法も今議論されていますが、利活用といいながら、一番活用できると思われる、建設して10年にも満たないプレハブ校舎を除却して、特定整備路線の代替地とすることが示されるなど、区民財産を有効に活用しようとする判断がされているとはとても思えません。東京都の道路事業に対して、北区はなぜこれほどまでに尽くさなければならないのか、大いに疑問です。
以上大きく4点の問題点を指摘し、一般会計に反対します。
早期に実現すべき区民要望
なお、決算審査を通じて明らかとなった以下6項目については早期に実現することを要望します。
1、国民健康保険証は決算審査時で8381人分が区役所内に留め置かれていることが明らかになりました。このうち1546人は高校生年齢以下のこどもの分です。速やかな交付を直ちに行ってください。
2、区民事務所の7分室を廃止し3区民事務所に集約する方針は撤回し、王子区民事務所の混雑解消に向けた抜本的対策を講じること。
3、区民館、ふれあい館については利用者から様々出されている施設改善の要望に応えること。また区が位置づけた諸事業を一緒に進めようとしている団体の活動場所の確保について配慮すること。
4、医師会をはじめとして、様々な団体から要望のあるコミュニティーバスの新規路線検討など区内交通手段の拡充を行なうこと。
5、未婚のシングルマザーに適用されない寡婦控除の規定の見直しを国に働きかけること。
6、学童クラブ待機児解消に早急に取り組むことを求めるものです。
特別会計について
次に4特別会計決算についてです。
まず、国民健康保険事業会計決算について申し上げます。
平成28年度も保険料の大幅値上げが行なわれたため、29年度も、直近5年間で金額・率とも最大の値上となったことから反対します。
さらにある報道機関による自治体アンケートでは、平成30年度からの都道府県化により更なる大幅値上げが必至の情勢であることが明らかになりました。今こそ国や東京都に対して最大限の財政支援を働きかけ、区としても生活保護ボーダー層に対する境界層減免や、新制度に向けての激変緩和策を講ずることを求めます。
次に、後期高齢医療会計については、新規に保険料軽減策が無かったため、約40%の加入者の保険料を値上げしたことから反対します。
最後に、介護保険会計と中小企業従業員退職金等共済事業会計には、賛成であることを表明し、日本共産党北区議員団の討論といたします。