2019年予算に対する反対討論と組み替え動議に対する賛成討論
2019年3月22日 | やまき直人
私は、日本共産党北区議員団を代表して、ただいま上程されました第20号議案、平成31年度東京都北区一般会計予算、第21号議案、東京都北区国民健康保険事業会計予算及び、第24号議案、東京都北区後期高齢者医療会計予算に対する反対討論を行います。
一般会計予算について
初めに、一般会計予算についてです。
新年度予算案に、児童虐待防止に向けた子ども家庭支援センターの職員増、小中学校体育館へのエアコン設置、学校における働き方改革の推進、コミュニティバス新規路線を含む地域公共交通の検討、多文化共生をめざす取り組みなど、区民要望に応えた事業が盛り込まれたことは評価いたします。
しかし、以下に述べる3点の理由で、一般会計予算に反対します。
第1の理由は、今後10年間、人口が増えていくという推計が示されているにもかかわらず、区民施設の削減計画をかたくなに推し進める姿勢です。
昨年の3月に発表された最新の北区人口推計調査では、総人口で今後10年間、年少人口で今後15年間にわたり、北区の人口が増えていくことが明らかになりました。人口が増えれば、当然のことながら区民施設の充実が必要になります。ところが区は、保育園や学童クラブの増設・定員増を進める一方で、区民に必要な施設を次々と削減しています。
区内に7つあった区民事務所分室は、昨年10月に全廃となりました。住民票などのコンビニ交付に必要なマイナンバーカードも十分に普及しておらず、議会でも多くの反対の声があがる中、区は分室の削減を強行したのです。区民からは、今なお分室の再開を求める声が出されています。
乳幼児や子どもたちが楽しみにしている児童館も、これまでに25館中5館が廃止決定されました。新年度から廃止となる滝野川北児童館については、3月19日に最後の児童館運営委員会が開かれ、46年間の長い歴史を振り返って参加者全員からお別れの言葉が述べられました。その中では、「なんでもかんでも減らせば良いというものではない。この児童館がなくなれば、隣の児童館へ行くのに明治通りや中山道を渡らなくてはならず、乳幼児とその保護者には大変な苦労が伴う。区はこのことが分かっているのか」、「長年子どもたちに親しまれてきた児童館がなくなることは、寂しい限りだ」など、児童館を廃止することへの厳しい意見も出されました。区は、こうした地元の声に、もっと耳を傾けるべきです。
わが会派はこのほど、子ども人口の増加にふさわしい学校整備を求める「子どもたちにゆとりのある教室と豊かな教育環境を」という緊急提言を発表し、区長、教育長にもその実現を求めました。今議会の中で教育委員会は、関係部課による内部組織での検討の下、6年間で生徒数が1.5倍になった滝野川紅葉中学校の教育環境改善や、学区域に864世帯の大規模マンションが出現したことで学校一校分の就学前人口が増えた王子小学校において、具体的な教室確保の見通しを明らかにするなど、私たちの提案に応える前向きな姿勢も示しました。
しかしながら、十条富士見中サブファミリーブロックの適正配置協議では、児童人口が増えているのに、学校統廃合の方針を見直すことなく荒川小学校と十条台小学校の統合方針を決定してしまいました。この協議においては、議会での審議を通じて、教育委員会の責任に属する2つの問題が明らかになりました。
1つは、協議に入る直前には対象となる5校全校が当面存続規模に達していたにもかかわらず、協議開始を強行したことです。平成24年の適正配置計画では、すべての学校が当面存続規模なら、適正配置検討は必要ないと明記されています。教育委員会が、自ら定めた基準を踏み破って協議を開始したことは重大です。
2つは、先にものべた最新の北区人口推計調査結果を協議会に示さなかったことです。5年前の調査と比べても劇的な人口増の傾向が示され、適正配置協議の大前提となる資料なのに、協議会委員に配付すらしなかったことは、説明責任の放棄ともいえるものです。
協議会の中でも、さらには協議終盤の十条台関係者会議の中でも、「人口増加を見極めるため、協議は中断した方がよいのでは」という声が繰り返し委員から出されました。これに対し、教育委員会は「5校の児童数を5で割っても全ての学校で適正規模を確保するのは難しい」という、適正配置計画には存在しない説明を持ち出して協議を推し進めました。ところが、最新の北区人口推計に基づけば、ピークとなる平成41年には5校の児童数は1400人近くまで増え、5で割ればすべての学校が適正規模となります。教育委員会の言い分は、完全に破たんしています。
わが会派は、二重三重にもルールを踏み破った教育委員会の責任を厳しく問うとともに、改めて、適正配置方針の再検討を求めるものです。
区民施設や学校の削減を推し進める根底には、20年間で15%の施設を削減するとした公共施設再配置方針があります。すでに実態に見合わなくなっているのに、区はこの目標にしがみついています。今後、過大な削減目標によって、区民施設や教育環境の整備に支障をきたすことのないよう、改めて公共施設再配置方針の施設削減目標の見直しを求めます。
第2の理由は、主要5基金が580億円、財調基金が177億円に積み上がり、「財政対応力が高まっている」にもかかわらず、なお区民の暮らし応援の施策が不十分な予算であることです。加えて消費税10%増税の容認、健康保険料の連続値上げは、認められるものではありません。
冒頭でも紹介した通り、新年度予算にはわが会派が予算組み替え提案や、予算編成に関する要望書で求めてきた区民要望が、少なからず盛り込まれています。これに加え、予算審議でわが会派は、積み上がった基金のごく一部を活用すれば実現できる、さらに区民に歓迎される施策を提案しました。
たとえば、低所得者世帯には切実な返済不要の給付型奨学金の創設は、すでに都内でもいくつかの区が踏み出しており、予算的にも無理なく始められるものです。また高齢者に好評なヘルシー入浴券事業では、銭湯を経営するお風呂屋さんを支援するために、入浴一回あたりわずか20円の負担軽減を行うよう求めました。事業開始当時は100軒を超えていた銭湯も、今年は28軒にまで減りました。銭湯がなくなって困っている利用者からは、「これ以上銭湯がなくならないよう、区はもっと風呂屋さんを応援して欲しい」との声が寄せられています。予算はわずか600万円程度、やる気になりさえすれば出来るはずの施策です。こうしたささやかな提案にも、区からは前向きな答弁が聞かれませんでした。
その一方で、住民税滞納者に対する預貯金等の差し押さえ件数の急増は看過できない問題です。数年前までは、住民税滞納による差し押さえ件数は1200件から1300件でしたが、平成28年度は2504件、29年度は2621件と、ほぼ2倍になっています。予算審議では、子どもたちの進学準備に積み立てている学資保険まで差し押さえた例が6件、そのうち4件で保険を解約し、住民税の滞納分に充てていたという驚くべき答弁がありました。学資保険は、教育の機会均等を保障するものとして、生活保護を利用している世帯でも加入と保有が認められているものです。経営改革プランでは収納強化が位置づけられていますが、このような強制徴収は、「教育先進都市北区」、「子育てするなら北区が一番」の看板をも傷つけ、区民の信頼を大きく裏切るものです。早急な是正を求めます。
さらに区は、消費税10%増税の中止を国に求めるよう質疑したわが会派の質問に、政府の公式見解を鵜呑みにして、二度も「景気は緩やかに回復している」と答弁しました。皮肉なことに、わが会派が総括質疑をしたその日に、内閣府は公式見解を、「下方への局面変化」と下方修正しました。また、昨年9月発行の「ふるさと北区財政白書」では、消費税率引き上げにともない、北区が国による不合理な税制改正等、すなわち法人税の一部国税化、地方消費税清算基準の見直し、ふるさと納税による特別区民税減収で、71億円もの影響を受けることが明らかにされています。それにもかかわらず、なお消費税を「社会保障の安定財源」とし、増税を容認する国追随の姿勢は、とうてい区民からの理解が得られるものではありません。
第3の理由は、駅前再開発や大型道路計画などの事業を、住民合意のないまま推し進める「まちづくり」のあり方です。
北区は今後、まちづくりを本格化するとしています。しかし、駅前再開発や大型道路事業を進めるごとに、まちづくりに反対する声が広がっています。とりわけ、十条駅西口再開発や特定整備路線補助73号線、赤羽西と志茂の86号線計画では、認可取り消しと計画の見直しを求める住民訴訟が起きています。なぜ今、北区の中で4つの裁判が同時進行でたたかわれているのでしょうか。それは、北区のまちづくり行政に対する区民のきびしい批判の表れだということを、重く受けとめるべきです。
予算審議では、十条駅西口再開発の中で、再開発組合設立当初に計画に反対していた3分の1にも及ぶ地権者が、今どうなっているかを尋ねました。ところが、区の答弁は、「組合が認可されれば権利者はすべて組合員となるので、反対者がどうなったかは承知していない」という冷たいものでした。今回の予算では、計画に反対する地権者を一顧だにせず、再開発を推し進める満額の予算を計上しました。北区が「区民とともに」を標榜するのであれば、「丁寧な説明」にとどまらず、区民の思いにもっと心を寄せ、計画反対や見直しを求める声にも、真摯に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。反対者を切り捨て、強引に計画を推し進める姿勢は、断じて容認することはできません。
赤羽西地区の補助86号線では、太田道灌ゆかりの道灌山をくりぬくトンネル工事は、完成の見通しすらたっていません。東京都は、赤羽自然観察公園と赤羽スポーツの森公園の間の道路予定地を国から買収しましたが、現在でも道路計画予定地という明確な表示がない草っぱらとなっており、子どもたちは2つの区立公園を自由に行き来し、虫取りや凧揚げをしてのびのびと遊んでいます。これがこの公園の大きな魅力であり、年間あわせて20万人が訪れる住民の憩いの場、環境教育やスポーツ活動の拠点として利用できる、かけがえのない区民の財産です。だから住民は、公園の真ん中を道路が通ることによるカワセミなどの野鳥や湧水への影響を心配し、赤羽自然観察公園の環境を激変させる道路計画はやめよと東京都を訴えているのです。
さらに、志茂地区補助86号線にかかる住民は、都内でいち早く住民提訴にふみきり、すでに4年越しの裁判をたたかっています。東京地裁の判決を不服として控訴し、次は高等裁判所で事業認可の取り消しを求めます。このように、安心して住み続けることができるまちづくりへ、住民の努力が重ねられています。
「自分が納めた税金で、なぜ、自分が長年住み続けてきた住宅や地域から追い立てられなければならないのか」。住民が発する重い言葉です。改めて、まちづくりは住民合意を最優先とする姿勢に転換することを求めるものです。
以上、一般会計予算について反対理由を述べました。
特別会計について
次に、4特別会計予算についてです。
まず、国民健康保険事業会計予算です。国保料に加え後期高齢者医療保険料、介護保険料のトリプル値上げとなった今年度に続き、新年度でも国保料は、一人あたり年額11万6647円へ、今年度から1928円の値上げになります。うち均等割は、1200円の値上げで5万2200円です。今ですら払いたくても払えない水準の保険料を、さらに値上げする予算は認められません。
わが会派が提案している子どもの均等割5割減額については、対象となるのは18歳未満の加入者6441人のうち、すでに減額されている被保険者を省いた約4300人ですから、約1億1000万円の予算措置で実現可能です。区は、「23区統一保険料を採用しているので、単独で実施するのは難しい」と答弁しましたが、それならばぜひ、23区そろって均等割減額に取り組むべきと特別区長会で主張し、まずは先陣を切って北区が軽減に踏み切ってほしいと思います。
後期高齢者医療会計予算は、低所得者対策としての保険料軽減特例の廃止により反対します。介護保険会計予算、中小企業従業員退職金等共済事業会計予算には賛成することを申し添えます。
組み替え動議について
続いて、「第20号議案、平成31年度東京都北区一般会計予算」及び「第21号議案、東京都北区国民健康保険事業会計予算」の組み替えを求める動議に賛成する討論を行います。
日本共産党北区議員団は、この4年間、当初予算の組み替え動議を行ってきました。残念ながら、議会では否決されておりますが、提案した48項目の内容については、区有地を活用した認可保育園の増設や正規の保育士確保、就学援助の増額や前倒し支給、子どもの貧困対策など、年度途中の補正や次年度の新予算などで、すでに20項目が実施されています。
その項目は、区民の切実な要望であり、わが会派が、粘り強く、繰り返し求めてきたものです。他の会派・議員の皆さんも一致できる内容もあるからこそ、その後、北区の施策として実現を後押しすることになったものであり、議員としての提案権を活用した責任ある取り組みだと確信しています。
単年度主義、刹那的、場当たり的などというものではないという事を、重ねて強調しておきます。
また、新年度の予算組み替え動議の内容で、例えば、国民健康保険料の軽減については、全国知事会、特別区長会も要望している、まさに地方自治体あげての課題となっています。すでに、全国や都内の自治体でも、独自減免に踏み出しており、そうした動きが、財源確保も含めて、国民健康保険制度そのものの改善につながるものではないでしょうか。
他の施策についても、他の自治体においてすでに事業化されているものを参考に積算したもので、実現性が高いものです。
財源については、この間、繰り返し強調しているとおり、庁舎や学校改築のための特定目的基金や、財政運営上必要な将来のための財政調整基金を確保することに、反対しているわけではありません。
今回の提案も、財政調整基金を全部取り崩せというものではなく、平成30年度末で、177億円と過去最高額となった基金の一部、3億4000万円、財調基金残高のわずか1.9%を活用するものです。恒久的な財源を取り崩すことはまかりならんとのご心配にはあたらない。区民の窮状を考えるなら、今こそ、財政調整基金の積極的な活用をはかるべきと考えます。
特定目的基金の積み替えについても、新庁舎建設分は今年度20億円を積み、新年度の分も既に積み立てができたと考えれば、何らマイナスではありません。条件がある時には、学校改築基金を優先する判断があって然るべきと考えます。
以上、事業の必要性や財源、実現可能性という点からも、今回の組み替え動議の積極的な意義をお示し致しました。
議場の皆様のご賛同を心よりお願いして、賛成討論と致します。ご清聴ありがとうございました。