北区の435世帯が被害
  首都高の工事責任論も
ゲリラ豪雨で石神井川はんらん
「都政新報」2010.7.23付より
 5日のゲリラ蒙雨で浸水などの被害が出た問題で、北区は区議会防災対策特別委員会に被害状況と対応を説明した。特に石神井川はんらんした堀船地区では、区内全体の浸水件数の8割強を占めるなど、被害が集中した実態が明らかになった。委員会では、水があふれた部分の護岸が本来計画より約0・2㍍低かったことが区議の指摘で判明。隣接地で首都高速道路を建設中の首都高速道路㈱が同部分の整備を都から委任されており、護岸管理や水防計画に関して責任問題が浮上している。
  5日のゲリラ豪雨では、練馬区で79㍉、板橋区で113㍉、北区で77・5㍉の時間最大雨量を記録し、浸水などの被害をもたらした。
  20日に開かれた北区議会防災対策特別委員会では、区が被害状況(15日時点)を報告し、床上浸水が271世帯、床下浸水が261世帯、道路冠水が17件、公園冠水が4件にのぼることが明らかになった。
  このうち、石神井川のはんらんによる浸水被害が出た堀船地区(1~4丁目では、床上浸水が216世帯、床下浸水が219世帯に達し、特に、はんらん現場になった堀船2丁目の溝田橋付近を中心に、被害が集中している実態が報告された。
はんらん地点の護岸は高さが約5・6㍍。都の基準では1時間あたり50㍉の降雨を想定して河川の予想水位と護岸の高さを算出している。5日の豪雨時、河川水位は護岸を大幅に超え、濁流が堀船地区に流れ込んだとみられる。押し流されて壊れたフェンスなどから水流の強さが分かるが、護岸自体に破損などは出ていない。

5年前も同じ地区で被害

特別委員会では、福島宏紀区議(共産)の指摘によって、はんらんが起きた地点の護岸部分だけ前後の護岸よりも低いことが新たに分かった。
  同区議は「この表の護岸を0・2㍍かさ上げする改修工事が行われているが、はんらん地点は未実施。下流の改修済みの護岸(約5・8㍍)の方が高い、逆転も起きている」と指摘した。
石神井川の管理責任者は都だが、はんらん地点周辺は首都高速道路の建設工事が行われている関係で、都が首都高速道路㈱に委任している。改修が済んだ下流の護岸は都の直轄で、未実施部が首都高の管轄、という構図だ。福島区議は「今回のはんらんとの因果関係を含めて、首都高に水防計画の説明を求めたい。さらに監督する都の指導状況も明らかにするべき」と強調した。
  堀船地区では、05年9月にも石神井川がはんらん。今回より数百㍍上流部分の護岸が決壊し、およそ400世帯に被害が出た経緯がある。 
  首都高が管轄していた仮設護岸が約30㍍にわたって崩落したことが原因で、その後の調査で都が当初承認した建設方法とは違う工法で首都高側が仮設護岸を整備していたことなどが判明。首都高と発注先のゼネコンの責任が問われた。
5年後に再び起きた水害に、地元の不安や不信感は大きいことから、北区と都、首都高の3者による住民説明会を30日に開催することを決定。今後の対策や事故の因果関係などを明らかにする見通しとなった。これに先立ち、防災対策特別委員会も都担当者を招いて現場視察を行う方針を固めている。
特別委員会では、ゲリラ豪雨対策で抜本的、長期的な取り組みの必要性を指摘する意見が相次いだ。河川管理では、国や都に加えて、上流域の自治体と広域的な連繋を進めるべきとの意見が複数の区議から出た。
  さらに、従来の防災施策の目安である「時間最大雨量50㍉」が、近年のゲリラ豪雨などの実態に即していなしとの見解から、都市整備の基準見直しや、区民にたいして防災マニュアル、ハザードマップなどの周知を求める声も出た。 北区では、今後のゲリラ豪雨や台風シーズンに備えて土のう配布などの予防策を講じる一方、今回の被災者に対して復旧支援を行うとしている。



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