2006.03.20付 しんぶん赤旗より
「就学援助の制度を調べてみたら、自治体でこんなに違うとは。驚きました」。東京都内の中学校で働く事務職員、越智有吾さん(50)が話し始めました。
自治体で差
先生や職員の労働組合・全教が二月に開いた関東ブロック学校事務職員交流集会でのこと。房総半島の民宿で子どもたちの教育条件や制度をめぐって活発に議論しました。
越智さんは、自治体が保護者向けにつくった「就学援助のお知らせ」を集め、比較検討した結果を報告しました。
対象は、島嶼(とうしょ)部を除く東京都二十三区と三十市町村。名称や制度の説明、援助の内容、申請書類の提出方法、援助費の振り込み方法はじめ多岐にわたって調べました。
大半の自治体は、就学援助について「子どもたちが楽しく勉強できるための制度」と説明していました。ところが、なかには「教育費に困窮する保護者」という人権を無視した表記もありました。
所得基準は、四人家族モデルで約五百五十五万円から、約三百五万円以下と差がありました。
申請方法も「児童・生徒全員から提出」「希望者だけ」「兄弟がいる場合一人でいい」「一人一人書かなくてはならない」とばらばらです。
二十三区内の受給率(二〇〇四年度)は、トップの足立区(42・5%)と最低の千代田区(6・5%)で六・五倍の差がありました。
7倍の開き
全教事務職員部の小宮幸夫事務局長は、「教育分野での地域格差は東京だけの話ではなく、全国的に広がっている」といいます。
〇四年度の就学援助の全国平均は12・8%でした。ところが県別にみると大阪27・9%、東京24・8%、静岡4・1%です。実に大阪と静岡では七倍近い開きがありました。
小泉内閣は、生活保護の基準を引き下げ就学援助をとりにくくさせようとしています。越智さんの調査では、「基準の見直しのため、昨年度認定された方でも、今年度認定されない場合があります」と告知する自治体もでています。
「これでは格差がひろがる一方。教育の機会均等が失われてしまう」と小宮さんは危ぐします。
親の収入は減り続けているのに、教育費の負担は増えています。「給食費を払えない家庭が増えている」「積みたて金を納められず、修学旅行をあきらめたり、卒業アルバムをもらわずに卒業する子がいる」。交流集会では、ひずみが大きくなっていることが出されました。
食材費会計を学校ごとにしている自治体では、滞納があるとその分、デザートのプリンや果物が削られるなど子どもにしわ寄せしている実態も明らかにされました。
小宮さんはいいます。「国と自治体は就学援助までも切り縮めようとしています。就学援助が生活保護を受けている人だけに限られたら、子どもに教育を受けさせる権利はいっそうせばめられます。制度を改悪させない運動、教育費を無料にさせる運動が大切です」(つづく)
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