「介護予防重視」と言うけれど…
利用者からも事業者からも悲鳴 改悪された“介護保険”実施から3ヶ月
「介護予防の重視」などを売り物に制度改悪された介護保険法が四月に実施され、三カ月がたちました。政府・厚生労働省の宣伝とは裏腹に、利用者から「必要なサービスが受けられない」と悲鳴が上がっています。(秋野幸子)
介護利用計画
「退院する患者さんのケアマネジャーが、なかなか見つからない」。埼玉協同病院(埼玉・川口市)の医療ソーシャルワーカー・小林美沙さんは訴えます。
ケアマネジャーは、介護保険を利用するのに必要なケアプラン(介護サービスの利用計画)を作る専門の職種です。ところが、三月ごろから患者を引き受けるケアマネが少なくなり、数カ所の介護事業者に相談してやっと見つかるケースが増えてきました。なかには十カ所あたって全部断られたことも―。
原因は、ケアプラン作成に支払われる介護報酬が四月から改定されたことにあります。それまで、ケアマネジャー一人が担当する「標準件数」は五十件でした。それが改定で三十五件に。政府が、担当件数を増やすと介護報酬を引き下げる仕組みにしました。「ケアマネジメントの質を確保する」というのが理由です。
さらに、介護度が軽い利用者のプラン作成ほど報酬を低く抑えました(表参照)。この結果、ケアマネのいる介護事業者が利用者の件数を調整し、断る事例が相次いでいます。
横浜市のうしおだ介護支援センターには、「四カ所まわったけど、どこも断られた」などの相談が増えています。要介護1のある男性は、「来月からもう面倒見ないから、よそでケアマネを探して」といきなり言われ、同センターを頼ってきました。ケアマネジャーの片野一之さんは「“軽度”の人が行き場を失っている感じです」と言います。
介護事業者も深刻です。埼玉・川口市にあるケアセンターきょうどうは、六人のケアマネジャーで、三百人を超える利用者のケアプランを作成しています。一人あたり約五十人。そのため、四月からは介護報酬が四割カットになり、月に約百万円の減収となりました。
管理者の加藤たい子さんは、「『よそに行ってほしい』と利用者の方を切り捨てることはできない。しかし、このままでは運営がなりたたない」と話します。
改悪介護保険法 昨年六月、自民、公明、民主の各党の賛成で成立しました。
改悪の柱の一つは、特別養護老人ホームなど施設に入所する人の居住費と食費、デイケアなど通所施設の食費を全額自己負担にすることです。昨年十月から実施され、これまでに少なくとも千人以上が、負担増が原因で施設を退所したことが明らかになっています。
もう一つの柱が、四月から始まった新しい「介護予防サービス」の導入です。これまで六段階にわかれていた要介護度を七段階に変更し、高齢者を従来の介護給付を受ける要介護者と、新しい予防給付を受ける要支援者にわけました(表参照)。
しんぶん赤旗 日曜版 7月12日付より |