疑惑にフタしたまま代表選へ
「これからは(新代表選出で)マスコミの注目も民主党に集まる」(同党議員)―。小沢一郎代表の辞任表明を受け、民主党は次の代表選びに走っています。西松建設の違法献金事件をめぐる小沢氏の疑惑の解明に、党として自浄努力を尽くさず、代表選で疑惑から焦点をそらそうとする姿勢は許されません。
“決断”を評価
小沢氏の辞任表明について、同党の鳩山由紀夫幹事長は十一日、「国民の暮らしを守るためにまさに身を捨てる決断をされたことは素晴らしい」と絶賛。一夜あけた十二日も、党内には「民主党の反転攻勢の大きなきっかけになる」(馬淵澄夫衆院議員)などと小沢氏の“決断”を評価する声がやみません。
渡部恒三最高顧問は、「代表選は、おそらく鳩山(由紀夫)君と岡田(克也)君の一騎打ちになる。長妻(昭)君も出れば、次の時代を担う素晴らしい者もいると国民にアピールできる」など、早くもうかれています。「どうなろうと、次の総選挙で勝てる体制ができる」というのです。
しかし、民主党に問われているのは、党ぐるみで小沢氏をかばい、疑惑に開き直ってきたという自浄努力の欠如です。党として、みずから疑惑を解明するという責任は、小沢氏が辞めてなくなるものではありません。
辞任表明自体、事件の責任をとったものではなく、総選挙に向けた党の態勢の立て直しを理由としたものでした。
党略優先体質
これにはマスメディアも「政治不信を引き起こした事件の責任に目を向けず、ただ選挙戦術上の有利、不利で判断した辞任では理解を得られない」(「読売」十二日付)、「小沢氏の体質とともに問われたのは、小沢氏を辞めさせる自浄作用を失い、同氏の決断に委ねるしかなかった、民主党の組織としての底の浅さである」(「毎日」同日付)と指摘しています。
これまでも同党には、小沢氏続投が選挙に不利か有利かという議論はあっても、自浄努力を求める議論はありませんでした。同党は、代表を選出する両院議員総会を十六日に開くことを決めましたが、自浄努力もなく、党略優先の体質のままでは、だれに党首が代わったとしても、国民の信頼を得ることはできません。(藤原直)
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