<要請項目>
1.「都営桐ヶ丘再生計画」にふさわしく、後期計画は4期~6期までの全体計画をしめして、環境影響評価を調査するよう求めてください。
今計画書は、本来提示されるべき「都営桐ヶ丘団地再生計画・後期計画」(4期から6期計画)の一部のみで、6期計画については「未定」としているため、後期事業計画地の3分の1以上にあたる地域が今計画に盛りこまれておらず、「環境影響評価調査」そのものが大きな制約を受けています。とりわけ、高齢化率50%以上の地域において、公的行政サービスや医療介護などの計画はまったく未定のままで示されていません。これで、今後70年、100年を見越したまちづくりの正確な調査が実施できるのでしょうか。「団地再生計画」にふさわしく、6期を含めた後期全体計画を提示して「環境影響評価調査」を実施することを、都に求めてください。
2.高齢化率50%以上の団地における、「長生きするなら北区が一番」と「高齢者にやさしいまちづくり」施策推進のため、東京都と連携して、公的施設整備を早く位置づけてください。
6期計画が提示されないため、団地再生・建て替え後期計画の骨組みとなる行政サービス施設の配置、たとえばお風呂のある高齢者ふれあい館や文化・交流活動の集会施設などを盛りこんだ区民センター計画、そして桐ヶ丘郷小学校の改築を展望した位置づけ、子育て支援施設と医療・介護施設の拡充計画、商店街計画が見えません。
地域コミュニティと防災の拠点施設となる区民センターと集会所の適切な配置、地域包括支援センターを核に人的配置とともに24時間見守りの仕組みと医療・介護・福祉の連携強化に必要な施設整備は、「長生きするなら北区が一番」を実現する上で欠かせない課題です。
さらに北区はこの6月、「高齢者にやさしいまちづくり」のモデル地域に桐ヶ丘と赤羽台地区を指定しました。その施策推進の立場から、東京都に後期計画の骨格となる公的施設配備計画の具体化を強力に求めてください。また、北区としても、区有地の活用などで区民センター整備や、団地内に特養ホームを増設することなど、計画の前倒し実施をふくめ、東京都との連携で公的施設整備を力強く推進してください。
3.ファミリー世帯をふくむ多様な世帯でまちを構成し、「支えあうことのできるまち」にすること。単身用1DK住宅を見直し、「高齢者にやさしいまちづくり」をすすめてください。
6期計画を「未定」として、4期・5期を従前居住者用住宅として先行建て替えすることは、居住者への配慮のように見えます。しかし、北区が実施した「介護保険事業計画のためのアンケート調査」結果に示されているように、居住者の高齢がすすみ、ひとり世帯の方が増えている実態は他の地域に比べると突出しています。都は、従前居住者用建て替え住宅のみを、4期・5期に合わせて2100戸建設するとしていますが、これでは住宅の半数以上が単身高齢者用1DKタイプになってしまうことになります。
9月29日、あらたに建て替えがすすめられている17号棟への移転説明会が行われました。
移転対象となったE3、E12、E13の3つの棟の居住者は合わせて78世帯。そのうち、単身の方は41世帯、2人は27世帯、3人は10世帯と説明されました。78世帯のうちの41世帯が単身の高齢者ということは、全戸数の53%です。このように、ファミリー世帯の政策的誘導が行われないまま、従前居住者のみの建て替えでは、ますます局地的な高齢社会が広がることになります。都と区は、人口構成の現状と将来想定をどうとらえておられるのでしようか。後期計画策定にとっての根本にかかわる課題です。調査を求めます。
今計画で都は、旧桐ヶ丘北小学校跡地と西地区の第4期建て替えで700戸を建設すると説明していますが、高層化による一般住宅のみを建設する予定です。先の事例でご紹介したように、700戸の半数以上が単身高齢者住宅になることは明らかです。にもかかわらず、高齢者の生活を支えるLSAが配置される高齢者対応住宅も、障がい者対応住宅も、交流サロンやふれあい食事会などができるコミュニティ施設などの計画も見えないばかりか、ファミリー世帯の政策的誘導計画も、現状ではありません。「多様な世帯の居住」という方針は、どのように具体化しようとしておられるのでしようか。示してください。
住民のねがいは、EVも設置してほしいが、子どもたちや若い人といっしよに暮らせる地域にしたいということです。そのために、ファミリー世帯向け住宅もー緒につくってほしい、多世代交流ができるよう、多様な世帯が居住できる団地であってほしいということです。また、見守りや介護が必要となったとき、家族の協力も得ながら自分の家で暮らしてゆけるように、1DK住宅は1LDKにしてほしい。孤独死をなくすために、浴室や廊下側に窓を付けてほしいということです。
「高齢者にやさしいまちづくり」というのは、段差解消やEV設置はもちろんのこと、孤独死を防ぎ、在宅介護にも対応できるような居住水準に引き上げてゆくこと。多世代でまちを構成して、自治会などの多様な活動を通じて「支えあうことのできるまち」にしてゆくこと。行政と専門機関との連携によって、医療と介護、福祉の充実、災害時の備えを拡充してゆくことではないでしょうか。そのことは、周辺地域のまちづくりに大きく貢献するはずです。東京都とともに、施策推進のために全力でとりくんでください。
4.桐ヶ丘中央公園は「身近な森」です。公園の真ん中を通す区道新設計画は見直しし、自然環境の保全と活用、環境負荷の低減や緑の充実のために、「住民参画による計画検討会」を求めてください。また、「生物・生態系」「景観」を評価項目とするよう求めてください。
今計画の特徴の一つは、団地の東西をつなぐ緑の空間、桐ヶ丘中央公園の真ん中に「区道新設」を行うとしていることです。
桐ヶ丘中央公園は、周辺地域からの景観としては、「身近な森」のような存在です。それは、およそ半世紀にわたる団地の歴史の中で育まれた、住宅地にある貴重な緑の資源です。北区が今年6月に実施した「区民意織調査」の中では、地域の将来像として「公園や緑などの多い自然と親しめるまち」とすることは、半数をこえる期待がよせられています。
区民意識から見ても、これだけの規模を持つ中央公園の真ん中に道路を新設することは、時代の要請に逆行する行為ではないでしようか。勿論、住民が気持ちよく公園を利用できるように整備することは必要です。しかし、今計画では、現存する多くの樹木が伐採されたり、移植できる樹木を選定して残すことしかできません。いづれにしても緑の木きな損失になります。計画図では、新たな緑地を確保するとされていますが、現在のような樹木の種類も多様で、セミやチョウ、カエル、鳥、小動物のいる緑空間を住宅地に形成するためには、長い年月がかかるものではないでしようか。
したがって、「影響評価」の項目に選定しなかったことは認められません。
① 調査項目にして、「環境影響評価」を実施することを求めます。
② そして、身近な森とも言える中央公園を生かし、緑のネットワークを形成しながら、子どもや高齢者をはじめとする歩行者の安心と安全を最優先させた計画にするため、住民参画による計画検討会の設置を求めます。
5.補助85号線が団地内を直進して、補助244号と交差する「区道新設」の環境影響調査、交通量の増加予測、排気ガスによる大気汚染の影響、学校施設への騒音と振動、高齢者や障がい者、子どもなど交通弱者への影響調査を求めてください。
今計画によれば、補助85号線が両面通行で団地内に直接入り込むこととされています。姥が橋からほぼ一直線の補助85号線は、現在でもスピードが出やすいことから、交差点付近での事故が多いところでもあります。この交差点から、団地内に入ったすぐ近くには区立桐ヶ丘郷小学校の正門があります。現在は、小学校の通学路であることに配慮して、校門前を通過して団地側から補助85号線に出る通路には、一方通行の規制がかけられています。
こうしたことから、交差点の事故を防ぐための抜本的な手立てはもちろんのこと、特別支援学級の児童をふくめ、500名規模の小学校の教育環境を守ることは、北区としても最優先で考慮しなければならないと考えます。都にその「影響調査」を求めてください。
中央公園は団地の中央に位置し、団地の東西をつなぐ形でつくられています。その結果、これまで団地中央を南北に通過する道路はなく、ほとんどが「通路」の位置づけでした。したがって、建て替えエ事による大型車両の出入りはあったものの、大型車などの通過車両はほとんどありません。まさに、スローライフが実現していました。
今計画の「区道新設」によって団地の東西が二分される形となり、東西の行き来には、道路横断が必要になりますが、それは高齢者にとって大きな負担となります。この間の建て替え事業によって、長年住みなれた東側地区から西側地区への転居(またはその逆も)を余儀なくされており、友達に会いにゆくときも、買い物に出かけるときも、車の走行を心配せず行き来できることは、コミュニティ維持のうえでも大切なことです。その点では、コミュニティバス運行が望まれています。
交通量の増加につながる「区道新設」は、スローライフの生活環境を一変させることになるのではないでしようか。「高齢者にやさしいまちづくり」施策を推進する視点から、その「影響調査」を求めてください。
6.旧桐ヶ丘北小学校跡地に建設予定の建物は、周辺地域に風害や日照被害を及ぼす懸念があるため、「影響調査」を求めてください。
高層住宅を見直し、南側にふれあい広場やデイサービス施設などをつくり、周辺地域との交流もできる計画とするよう提案します。
今計画では、旧桐ヶ丘北小学校跡地に第4期の住宅棟が、敷地の南側に建設されることになっています。400~500戸の戸数になると考えられます。
これまで小学校の校舎は北側に4階建で建っていましたから、校庭には太陽の光がふりそそぎ、子どもたちだけでなく周辺住民にとっても、緑ゆたかな貴重な空間でした。また、災害時の避難場所でもありました。
その敷地の南側に、地上14階の高層建物を中心とした住棟が両手を拡げたように建設されれば、周辺住民にあたえる環境は大きく変化します。
まず風の影響です。計画地の目の前に位置するE47号棟は、14階の高層階となっていて、これまでも、強風によって自転車がなぎ倒されたり、歩行者がころんでけがをしたり、数々の事故が起きました。建て替えが終わった3号棟、27号棟の高層階をはじめ、団地内でも新たな風害が発生しています。また、赤羽北3丁目では戸建て住宅と区営・都営住宅を囲むように巨大マンションが建設されるなど、周辺住民にとって風害対策は大きな課題となっています。さらに、これまで良好な空間となっていた学校の校庭の南側に、数百戸規模の高層住宅が建設されれば、風と日影の影響を大きく受けることになります。巨大マンション建設の際は、周辺住民と事業者との協議が重ねられ、階数の引き下げとセットバックとともに、植栽計画の抜本的見直しによって、風害から住民を守るための対策が請じられましたが、それでも被害が発生しました。
こうしたことから、今計画で、「風環境」を評価項目に選定しなかったことは認められません。「風環境」と「日影」の影響調査とともに、住棟配置の変更とふれあい広場やデイサービス施設計画を求めてください。
7.近年、北区ではゲリラ豪雨による甚大な被害が発生しています。その被害発生地域のひとつが赤羽台3丁目地域で、今計画地に隣接しています。ここでは現在、東京都が地下貯水管の敷設工事を行っています。にもかかわらず、今計画では広大な団地敷地内に降った雨を「公共下水道へ放流するため、・・・影響を及ぼすおそれはない」として、「環境影響評価」項目に選定していません。これは認められません。「影響調査」とともに、広大な敷地上に降りそそぐ雨水の活用を含めた抜本的な対策を求めてください。
建て替え後の住棟で、豪雨時に排水溝から水があふれたという事態も発生しています。
8.「原発に依存しない」、「温室効果ガスの発生を防ぐ」ために、自然エネルギーへの転換をもっと積極的に推進してください。
桐ヶ丘では、建て替え第3期から、太陽光パネルの設置がはじまっています。私たちは、ことし3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所の爆発事故というこれまでに経験したことのない体験をしました。そこからの教訓を引き出し、これからのまちづくりに生かしてゆかなければならないと考えます。
太陽光や太陽熱、小風力などの自然エネルギーを活用するとりくみのモデル団地にすることを提案します。すでに建て替え済の住棟も含めて、もっと積極的な推進が必要です。
また、先に提案した区民センター・ふれあい館の「いこいの湯」、桐ヶ丘体育館の改築にあたっては「温水プール」として自然エネルギーの活用を提案します。
9.区立桐ヶ丘郷小学校については、これまでも繰り返し議会でとりあげてきましたが、今回提示された建て替え計画の4期にも5期にも位置づけがないばかりか、6期予定地域にも入っていません。しかも、学校の南側に8階建ての住棟計画が示されました。「区道新設」とともに、教育環境への影響が大きいと考えられることから、調査を求めます。
区立桐ヶ丘郷小学校の建て替えに必要となる用地を、桐ヶ丘建て替え計画地内に確保しておくこと、よりよい教育環境を子どもらに提供することは、東京都と北区の大きな責任です。「時期を失することなく、都と協議してまいります」が教育委員会のご答弁でした。
今計画発表にあたり、都との協議はどのように行われたのか、明らかにしてください。
建設年度は昭和41年、1966年、すでにことしで45年が経過している学校施設です。児童の急増に対応して校舎増築と桐ヶ丘北小学校の建設が行われてきました。平成8年、1995年に発生した阪神淡路大震災のあと、耐震改修工事が行われ、現在に至っています。
現在の児童数は524人、16クラスの大規模校になっています。35人学級への移行や、児童数の増加、学童クラブの利用増で教室の増設も必要になってくるのではないでしょうか。
こうしたことから、桐郷小学校の課題を指摘し、対策を求めるものです。
以 上 |