私は、ただいま上程されました日程第 24 陳情 22 第 9 号 (仮称) 滝野川六丁目計画(案)の現在計画に反対する件について、賛成の立場から討論を行います。
この計画の概要と陳情に至る経過
この(仮称)滝野川六丁目計画(案)は、滝野川 6 丁目 21 番地に建っていた NTT 東日本社宅跡地に、建築主の三井不動産株式会社などが、分譲住宅棟として高さ 111 b、地下 1 階、地上 32 階、賃貸住宅棟として高さ 58 b、地下 1 階、地上 18 階建てで、総戸数 620 戸が入居する超高層マンションを建設する計画です。 かつて、この地に建てられていた NTT 東日本社宅は 4 階建てで、この敷地の中にあった遊び場は近隣住民の子どもたちが自由に出入りできる広場として親しまれてきました。 この地域は 2 階から 3 階建ての閑静な住宅地であり、近隣には区立滝野川第二小学校と鳩の家幼稚園、滝野川西区民センターなどがある文教エリアでもあります。また、当該の敷地は、国道 17 号線から 30 b以内に計画されている分譲住宅棟の 32 階建て部分に該当する商業地域とその奥の第一種住居にまたがってはいますが、当該敷地の大部分は第一種住居地域です。 このため、 NTT 社宅が閉鎖されたのちに、「 NTT 社宅跡地の利用を考える会」が行った跡地利用についての住民要望アンケートによると、緑地、児童の遊び場、高齢者などの施設、区営住宅などの公営住宅の要望が多く出されていました。また、滝野川西部自治会連合会からは、既存の 4 階建て社宅より高い建物は建てないで欲しいとの要望書も区に提出されていました。
建設委員会での審議内容
しかるに、今回の計画案は、地元住民の要望を無視した超高層マンションとなっています。このため、近隣住民のみなさんは長年住みつづけてきた良好な住環境を守りたいとの一心で、今回、区議会建設委員会に陳情を提出したのです。この陳情は、計画地に隣接する滝野川新西自治会が、本年 1 月 17 日に臨時総会を開催し、満場一致でこの超高層マンション計画案に反対する決議を採択し、自治会に所属する会員 794 名の署名を添えた地域住民の総意をもって議決されたものです。
3 月 1 日の建設委員会ではこの陳情に対し、 3 項目すべてに私ども日本共産党北区議員団が採択、民主区民クラブが趣旨採択を主張し、自民、公明の両会派が第 1 、第 2 項目を継続審査、第 3 項目を趣旨採択と主張しましたが、いずれも過半数に達しないため、日本共産党は陳情の趣旨を踏まえ趣旨採択としました。この結果、 4 対 3 で 3 項目すべてが趣旨採択となりました。
ところが、 3 月 18 日に開催された議会運営委員会では、先の建設委員会で継続審査を主張した自民、公明の両会派が、この陳情の第 1 、第 2 項目に反対するとの態度表明がありました。地域住民の切実な住環境を守りたいとの要望に応え、また、この計画地のみならず、北区の良好な環境守り発展させたいと願う区民の期待にも応えて、議場の自民・公明の皆様に改めてご賛同を訴えるものです。
陳情の内容
今回の陳情内容を改めてご紹介しますと、この計画地に、総戸数 620 戸もの住居が入る地下 1 階、地上 32 階及び 18 階建てマンションが建設される計画で、地域住民からは、高層建物による圧迫感、広域に及ぶ日照障害や景観阻害、ビル風に拠る歩行困難、局所的な世帯増による生活環境の急変、駐車台数、通過車両の増加による大気汚染やこれに伴う交通問題や買い物・通学・通勤時の歩行の危険など、さまざまな心配の声を指摘しています。
その上で、地域特性を重んじ、再開発ありきの超高層マンションの許可ではなく、地域住民の営み・生活に視点を移した心が通い合う持続可能な地域社会を形成していくため、 3 項目の陳情となっています。
陳情の第 1 項目は、当地が第一種住居地域と昔ながらの土地柄を認識して、「一団地建物設計制度」、「東京都総合設計制度」などの建物の容積率を増やすことができる特別な手法を使わず、現状の用途地域に則した現行の法令を遵守したマンション計画にすること。
第 2 項目は、風洞実験での細かな条件設定での検証(風速、風向、建物高さ等)、継続的な風害対策の実証検分、近隣住民、家屋、通行人等への被害が発生した場合の因果関係の立証・被害補償、解決策等を実施する専門窓口の設置。また、風洞実験は、公共機関等で行い、その資料はすべて公表すること。
第 3 項目は、今までの説明会の内容開示を再度強く求めるとともに、地域住民と連絡を密にし、理由に掲げる諸問題について誠実な対応をとることを求めています。
いずれの項目も、この計画地に隣接する近隣住民のみなさんが、自らの生活環境を守ろうとするごく自然な当然の要望です。
民間デベロッパーによる利益最優先の実態と危険性一方、このような超高層マンション計画を強引に推し進めようとしている事業者の実態はどうでしょうか。
つい最近、販売を始めた岩淵町のシティタワー赤羽の新聞折り込み広告では、大きな見出しに「住友不動産のマンション、北区最高層、超高層 22 階建て」との文言が大きく描かれています。民間デベロッパーは自らの利益のために、長年住み慣れた近隣住民の住環境を乱暴に踏みにじり、これらの物件を高く売りつけるために、建物の高さや階数を最大限の売り物にしています。これは、企業の利益のためには手段を選ばず、近隣住民共通の空間を買収し、環境・景観破壊を平気で行うまち壊しの手法と言わざるを得ません。今回の(仮称)滝野川六丁目計画(案)も利益最優先の姿勢は全く同じです。
これまで北区には、 20 階以上の民間マンションはありませんでした。このことは関係住民の運動で、開発業者の建物を高層化したいとの目的を抑制し、地域環境を守る努力がされてきたからです。
東京都や北区がこのような計画を住宅密集地にそのまま認めれば、今後、北区のあらゆる地域に高層マンション建設に道を開くことになります。
このような超高層マンションは、そのマンションに住む人々の安全上の問題も指摘されています。災害時におけるエレベーター運行上の問題、超高層建物の今後の耐震上の問題や管理・修繕システムの未稼働など数々の問題が未解明のままです。
風害・交通被害の恐れ
さらに、高さ 111 b、 32 階建てという超高層マンションによるビル風の影響による風害、広範な日照阻害や景観阻害が懸念されます。今でもこの地域は、高速道路王子線の影響で沿道に建つ高層住宅がビル風の通り道となり、強風にさらされています。今後は、今まで以上に強烈などル風による歩行困難や近隣住宅の家屋被害なども予測されます。このため、風洞実験は事業者の研究所などにまかせるのではなく、第三者機関が公平な立場から実施すべきです。
加えて、地下駐車場の住宅用車両 186 台、バイク 40 台が中山道から進入し、滝野川第二小学校に面した今後拡幅される計画となっている 6 bの区道へ出て行くことになり、通学児童や近隣住民の交通被害が心配されます。同時に、これらの車両や幅員が 3 ・ 6 bから 6 ・ 0 bに拡幅されることで呼び込まれる通過車両などが、 6 丁目の狭除道路へ進入し、交通事故の増加も心配されます。
ボーナス制度の危険性
今回の計画では、開発手法として「一団地建築物設計併用による総合設計」制度を用いていますが、この制度は建物の容積率、高さ制限、斜線制限などを緩和する、事業者にとってはボーナス制度とも言えるものです。公開空地を確保し近隣住民の利便性を図ると言っても、公開空地の管理上の問題や完成後に駐車場や駐輪場に転用される恐れも各地で心配されています。この制度の多くは、都心部や都市中心部で適用される手法で、当該地域のような住宅地で活用すべきではありません。
事業者は、この手法を適用することによって 32 階と 18 階建ての 2 棟、総戸数 620 戸もの住居を計画していますが、推定夜間人口は 1200 人から 1300 人程度となり、滝野川 6 丁目の人口が約 5 、 500 人ですから、 2 割以上の人口が一挙に増え、過密状態になりなりかねません。この結果、震災時の避難など過密人口による混乱が想定されたり、滝野川第二小学校の児童が急激に増加し、学校運営に支障をきたすのではないかとの不安もあります。また、近隣住民の木造低層住宅に対して、ハイテクセキュリティーの超高層マンションでは、町並みの調和が取れず、まち壊しになりかねない、新住民が地域にとけ込めないのではという“路地と人情のまち”の地域コミュニティが破壊されるのではないかとの心配の声が高まっています。
改めて申し上げますが、今回の陳情は、地域住民の切実な要望が盛り込まれ、地域住民の総意をもって議決されたものです。
議場のみなさんの賛同を心からお願い申し上げ、賛成討論と致します。 |