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 平成24年10月5日(金)
 北区議会第3回定例会最終本会議においてのやまき直人の「議員定数削減」反対討論

私は、日本共産党北区議員団を代表して、ただ今上程されました「議員提出議案第13号 東京都北区議会議員定数条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論を行います。
 本議案は、現在の議員定数44を4削減して40とし、次回の一般選挙から実施しようとするものです。改正理由について提出者は、北区の職員数削減との比較、削減を求める民意、前回の区議会議員選挙における立候補者の定数削減に関する選挙公約、類似する他自治体との比較、都の財調財源上の議員定数の算定などをあげています。これらについて、以下の問題点を指摘し、議員定数4名の削減案に反対します。

 第一に、議員定数を議論するときの判断基準の問題です。議員の定数問題は地方政治における民主主義の基本問題という観点からです。
 憲法93条は、地方議会は国会の議院内閣制と異なり、議会と首長がともに選挙によって公選される二元代表制であること、議会と首長はそれぞれ独立し、かつ対等であり、互いに牽制しながらバランスを図り、地方行政の公正な運営を図ることを明記しています。そして、地方議会の役割を議決と立法の機能を持った議事機関であるとしています。また、合議制であるがゆえに、多様な住民の民意を可能な限り反映して、十分な討議を通して民意を調整し、意志決定を図るという重要な役割を担っています。
 議員定数を検討する際には、この憲法に基づいた議会の位置と役割がふさわしく発揮されているのか、これから発揮されるのかどうかの基準で判断されなければなりません。
 ところが今回の提案は、民意の反映、基本政策の立案、行政に対する監視などの地方議会をめぐる本質的な議論が十分に尽くされておりません。財調などの財政問題や世論、類似近隣区との比較などの観点からこれを論ずることは浅薄であると言わざるを得ません。
 
 第二に、定数削減が議会機能に与える否定的影響の問題です
 地方自治総合研究所の当時は主任研究員であった辻山幸宣氏は2005年8月、都市行政問題研究会総会での講演の中で、全国的に議員定数の削減が進んでいる状況について、「今の地域の民主主義、これを代表する議員の定数というのは、ものすごく代表率が低下していて、これで本当に多様な意見を調整していくことが可能かという危機感がいっぱいでございます。議員定数も多様化を求められるようになっていますよね。そして、次々に議員定数が削減されていって、一体少数者の意見はだれが代表するのだろうか」と、こういう主旨を述べ懸念を表明しています。
 同時に、都市行政問題研究会は、2006年2月にまとめた分権時代における市議会のあり方に関する調査研究報告書で、「分権の時代であり、議会の執行機関に対する監視の役割がいっそう重くなり、議会の構成も都市全体を見渡すことのできる議員を多く構成されるようになることが求められる。また、執行部に負けないほどの政策論争を重ねることが必要であり、監視機能・政策立案機能の向上を果たす上においても相応の議員数は必要である」と述べています。
 地方分権の一定の前進によって、自治体の仕事のほとんどが、一部の法定受託事務を除き、原則として自治事務、すなわち自治体自らの権限で行う事務とされ、地方議会の権限の強化が図られています。
 今、23区も真に独立した自治体として東京都に対し、財源を伴う事務事業の拡大を求めて、協議を続けています。これに伴い北区の事務事業の拡大が予想され、住民の暮らしと権利を守るためにも、行政執行機関へのチェック機能を強化するためにも、議会と議員の役割は益々重要となっています。
 北区では現在、行政側の幹部職員として、区長などの特別職が3名、部長級が20名、統括課長が9名、課長級が56名、合計88名が在職しています。私たち議員は、行政の専門職である幹部職員と議会での論戦を通じて、議決と立法の機能を持った議事機関としての役割を果たしています。今回のように4名もの議員を削減して、互いに牽制しながらバランスを図り、地方行政の公正な運営を図るという議会本来の役割を発揮することができるのか非常に疑問です。
 このように、分権時代において議会に求められているのは、議員定数の削減ではなく、より多様化した住民意思と要望に対応できるだけの議員の数であり、議員・議会の質的向上とともに、住民のために働くことこそが求められているのではないでしょうか。
 こうした本質論にふれず、自民・公明・民主あすか区民クラブの各会派の議員が、「前回の区議会議員選挙における立候補者の定数削減に関する選挙公約」や定数削減が議会改革検討会で全会派一致の結論を得られなかったことなどを理由に、今回の削減条例を正当化することは的外れと言わざるを得ません。

 第三に、行政改革による北区の職員数削減との比較や東京都の財調財源上の議員定数の算定など、財政問題についてです。
 提案者は、区の職員数が削減されているのだから、それに比べて議員数も削減すべきと言っていますが、比較すべき問題ではありません。提案者は、北区の職員数が平成13年から23年までの10年間で、約20%の削減がされたと行革の成果を誇っています。この職員削減の行革が区民にとって本当の意味で誇るべきものだったでしょうか。北区の「経営改革プラン」に基づく指定管理者制度の導入は区職員を削減することによって維持管理費を安上がりにすることを目的として実施されました。その結果、区立保育園への指定管理者制度導入によって、浮間東保育園では職員の大量退職などの問題を起こし、次期の指定管理者が変更される事態となっています。また、昨年の東日本大震災の教訓として、公務員の果たす役割が被災地の復興にとっても、その重要性が改めて認識されました。
 北区の現状は、職員の約4割が非正規職員となっており、今後平成22年から26年度の5年間で新たに103名(約4.5%)の職員定数を削減する計画となっていますが、今、国民・住民の医療・福祉・子育てなどを支えるためにも、予想される首都直下型地震などの巨大地震や水害などから住民の命と財産を守るためにも、必要な職員数は確保すべきです。
 さらに、提案者は都の財調上の議員定数の算定が41名とされていることから、区の自主財源からの持ち出しを避けるためと称し、この人数を下回るべきとしています。
 北区の2011年度決算において事務局費を除いた議会費は8億2930万円、一般会計決算に占める割合は0、66%です。この数字は退職議員の支払い年金が一時的に膨らんだためで、前年の2010年度の割合は0、50%となっています。また、議員一人あたりの年間所要額は、2010年度は1340万円、2011年度は議員年金との関係で1854万円となっています。4名削減では2010年度ベースでは5360万円で一般会計決算に占める割合は0、00043%の節減効果です。
 議会費を削減すべきと言うのなら、日本共産党北区議員団が2010年第4回定例会と2011年第1回定例回に提出した議員報酬の削減と費用弁償の廃止を行うべきです。提案者の3会派のみなさんは、この提案に対し、自らの身を削ることには反対したではありませんか。
 ましてや、本議案に関わる先日の全員協議会の答弁で、提案者は「今までどおりの予算の執行で、区民に対してのサービスが本当にできていくのかと、これから区民の方々にもさまざまなお願いもこの議会を上げてしなければならない、我々が全く身を切らずしてそういうことを平気で区民の方に対して言えるのかということも十分にある議論であります」と述べています。この答弁のように、区の「経営改革プラン」に基づいて、今後も区民サービスを削減することを容認する言い訳に、議員定数の削減を引き合いに出すことは到底認めるわけにはいきません。
 議員自らが率先垂範、身を切る姿勢を示すことが必要だというのなら、議員自らの報酬削減と費用弁償の廃止こそ、区民のみなさんに説得力があります。それをやらずに、区民サービスの低下を招く職員削減や区民の声がますます区政に届かなくなる議員定数の削減に区財政と議会費の節減を求めるのは道理がありません。

 第四に、削減を求める民意、即ち世論という理由についてです。
 区民から「議員が多すぎるから減らすべきだ」という声があることも承知しています。このような声が上がる背景には、国民・区民の政治や議員に対する不満と不信があるからです。
 以前にもご紹介しましたが、2006年に日本世論調査会が全国規模で行った地方自治に関する調査の中で、議員・議会への不満の理由が大きく五点示されています。多いものの順で「議会活動が十分に伝わらない」「行政のチェック機能を果たしていない」「議員のモラルが低い」「議会内での取引を優先して審議が不透明」「議会の政策立案能力が低い」などです。
 政党や議員が平然と公約を破ったり、公約に掲げていないことを強行するなど、国民不在で繰り返し行われる党利党略の離合集散、不透明な政党助成金の使い道など、国民・区民の政治家に対する根深い不信があることは明かです。
 このような議員・議会に対する不満・不信を払拭し、区民の信頼を高めていくためには、議員が日夜研鑽し、襟を正して行くことが一層求められています。そして、区民の負託に十分応える議会活動の前進と区民の代表としての議会の審議能力、立法能力を充実させていくことが一番の対応です。このような議会のあり方を積極的に示し、区民のみなさんの理解を求めてゆくことではないでしょうか。
 その議会改革の取り組みの一つとして、北区議会は全国に先駆けた議員政治倫理条例の制定や常任委員会での傍聴と請願・陳情の審議、少数会派への権利保障、政務調査費の全面公開、費用弁償の引き下げなどを進めてきました。
 議会制民主主義の中で、議員のみが区の予算を審議でき、決定できる立場にあります。議員が住民の立場に立って、住民の声を取り上げ、区政をしっかりとチェックすることにより、議会・議員が必要なものだということを区民に知ってもらうことが大切です。「議員を減らせ」という世論があるからと議員提案で議員を減らすことは、議員自らが議員の果たす役割を否定していることになります。
 私たち、日本共産党北区議員団は今後とも、議会基本条例の制定など、議会の質の向上めざし、議員定数削減の反対討論と致します。
 ご静聴ありがとうございました。

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