私は日本共産党北区議員団を代表して、ただ今上程になりました陳情19第21号「後期高齢者医療制度の抜本的改善を求める件」の不採択に、反対の立場から討論を行います。
現在、会期中の国会審議を通じても、国民が安心して医療にかかることができる体制が危機に瀕していることが、大きな焦点になっています。
医師をはじめとした専門家スタッフの不足、過酷な労働条件、中でも女性医師が働き続けられない実態。診療報酬の引き下げによる医療機関の経営困難、療養病床の削減などにより、いわゆる「お産難民」「医療難民」ともいわれる人々が生まれています。
この北区においても、23区の中で療養病床の削減が一番進んでおり、加えて、 350 床の東十条病院が総休診という事態となり、今議会の中でも、区民の医療を守る立場から、重ねての議論が交わされたところです。
こうした状況の中、先月の 16 日、医療、介護をテーマとした「全国の集い」が、東京の一橋大学で開かれました。 その中で「どうする 21 世紀前半の医療、介護」と題する基調講演が行われ、日本医師会の唐沢会長は、療養病床の将来についての独自試算をもとに、「厚生労働省の計画では、 12 年には 11万人の医療難民が生まれる。」と警告しました。
そして、深刻化する医師不足の本質的要因に「医療費抑制政策」と「財源手当てを伴わない拙速な制度変更」があり、その現場へのしわよせは「限界にきている」と力説しました。
続けて会長は「これ以上の社会保障費の削減は生命の安全保障を崩壊させる」と訴えたのです。
命を守る医師の立場から、日本の医療現場が直面している悲鳴を代弁するものであり大変、重い発言だと思います。
この医療費抑制政策の具体化の一つが、来年 4 月から実施される後期高齢者医療制度です。
日本共産党は、昨年強行された医療改革関連法に反対し、後期高齢者医療制度については、「75歳以上の方を現役世代から切り離し、過酷な保険料の取り立てと、差別医療の押しつけになる」ということを追及し、その撤回を求めました。更に、現在は「後期高齢者医療制度」の中止、凍結を求めております。
本陳情は、来年 4 月より実施される 75 歳以上の「後期高齢者医療制度」について、保険料の負担を抑えると共に、診療包括払いの中止など制度の抜本的改善をはかるよう関係機関にはたらきかけることを要請する内容の陳情です。
一つ目の保険料については、今議会の質疑でも、その負担が大変重いことが明らかになりました。
8 月 31 日の東京都後期高齢者広域連合の試算では、東京の一人当たりの平均保険料は年額 15 万 5 千円となり、厚生労働省で示していた全国平均保険料 7 万 4 千 4 百円の 2 倍にもなることが示されました。
また、これまでの国民健康保険料と比べても、例えば年収 153 万円までの方ですと、国民健康保険料は 10530 円だったものが、後期高齢者医療保険料 14000 円となり約 1 ,3倍に、また、年収168万円までの方なら、 13750 円から 23000 円と 1,6 倍に、同様に年収 270 万円までの方は、 92140 円が、 172000 円と 1 , 86 倍にも達することになります。まさに驚くべき負担増です。
更に、この保険料は 2 年ごとに改定されますが、医療費が増大したり、 75 歳以上の後期高齢者の数が増えることによって、保険料が自動的に引きあがる仕組みになっています。
しかも、年金が月 15000 円以上の方はこうした高額な保険料を、年金から有無を言わさず天引きされるのです。
現在、高齢者のくらしは老年者控除の廃止、年金課税の強化などにより、収入は変わらないのに税や保険料の負担が増え、くらしが立ち行かなくなっている中で、来年 4 月からの後期高齢者医療保険制度の実施により、高額な保険料負担が増えるのは耐えられないー。せめて保険料を低く抑えてほしいという声があがるのは、当然のことではないでしょうか。
今議会では、北区も高い保険料試算を受けて「部長会、課長会を通じて、国、広域連合に軽減を求めてゆく」と答弁しています。
次に、 2 つ目の診療包括払いについては、病気ごとに治療費の上限を決める「定額制」にすることが検討されています。
治療した内容によって医療費が決まる現行のしくみである「出来高払い」と違い、治療や検査の回数が制限されることになります。
医療機関にとっては、上限を超えた治療は持ち出しになるため、高齢者には手厚い治療ができず、粗悪な医療や病院追い出しにもつながりかねません。
まさに 75 才以上の方については、受けられる医療を制限し、医療費を安く抑える「差別医療」をすすめるということではないでしょうか。
このように、年齢でくぎって独自の医療保険をつくり、保険料を徴収し、医療内容にも差をつけるなどというのは、世界でも例がありません。
こうした内容が明らかになり、実施に向けての準備が進行する中で、改めて各界から後期高齢者医療制度への危惧や凍結、見直しを求める声が拡がっています。
例えば、 3 つの例をご紹介いたします。
その 1 つは、医療関係者からのものです。
今月 2 日に、「都市部に求められる地域医療を考えるシンポジウム実行委員会」が、東京、千葉、神奈川、埼玉、茨城、栃木の 6 都県の約2000の国公立病院、大学、民間などの病院の院長にアンケートを送付し、 9 月末までに返ってきた140の回答を分析した中間報告をまとめました。
その結果によると「医療改革関連法」については 91 %が「方向が間違っている」と解答。
後期高齢者医療の実施にかかわる「更なる患者負担によって受診抑制がおこると思うか」との問いには「病気になっても受診できない患者が増加する」54%。「ある程度の影響はある」42%をあわせると、96%が「受診抑制」を心配されているという結果がでました。
2 つ目は、この制度を成立させた与党からも、制度の見直しが出されていますので、紹介いたします。
自民党の総裁選に立候補した際の福田首相の公約は「後期高齢者医療の凍結、見直し」でありました。
会期中の衆議院本会議質問で公明党の大田代表は、来年 4 月から 70 歳〜 74 歳の高齢者窓口負担を 1 割から 2 割に引き上げる問題について「少し時間をかけて論議し、窓口負担を凍結すべきである」と主張しています。
更に、後期高齢者医療制度についても「保険料徴収を凍結すべき」と訴えました。
これに対し、福田首相は高齢者医療制度の見直しについて、「与党内での議論をふまえ、予算措置も含めて十分検討してゆく」と答弁しています。
3 つ目は、各自治体の動きです。
後期高齢者医療制度に関する意見書として、保険料の軽減や見直しなど求める意見書が現時点で、都内でも 3 つの区議会、 19 の市議会、1つの町議会の計23の議会から、あげられています。
まさに国民世論、医療現場からの声にこたえて制度の改善が動きつつある中で、北区議会としても、区民の声に応えて、陳情を採択し、国に対して意見をあげてゆく時だと考えます。
「後期高齢者医療制度の抜本改善を求める陳情」に対し、議場の皆様のご賛同を心からよびかけ、私の討論とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
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