【6】 第6の質問 は来年 4 月から実施される医療制度改革の改善を求めてです。
国民皆保険をもたないアメリカ医療の現実を鋭く告発した、マイケルムーア監督のドキュメンタリー映画「シッコ」が話題を呼んでいます。
「シッコ」とはアメリカの俗語で「いかれた奴」といった意味ですが、さながら「アメリカの医療制度はほとんどビョーキだ」というメッセージでしょうか。
私もその映画を観てまいりましたが、アメリカでは保険に加入しない市民が 4700 万人も存在し、毎年1万8千人が死亡していること。また、そうならないように高い保険料を払って民間保険会社の医療保険を購入しても、保険会社が最大限の利潤をあげるために、国民はあの手この手で保険金の支払いを拒否され、必要な医療が受けられず、命を落とす人がいる。また、治療費を払えない患者さんは治療の途中でも路上に捨てられるという医療から排除された人々のショッキングな現実が映し出されていました。
一方、映画ではカナダやイギリス、フランス、キューバの国々でほぼ自己負担なしで医療が受けられることを紹介し、アメリカ医療の異常さを浮き彫りにしていました。
映画の中で、イギリスの政治家は、医療保障のあり方は民主主義の問題だと指摘しておりましたが、命と健康は何人も平等のものであり、全くそのとおりだと私は深く共感し、改めて、国民皆保険制度の大切さを痛感しました。
ひるがえって我が国では、来年 4 月から後期高齢者医療制度などの医療の構造改革が実施されようとしていますが、凍結し見直すべきです。その立場から以下 6 点、質問いたします。
1.医療制度改革の一つ、75歳以上の後期高齢者医療制度についてです。
これまで、家族に扶養され保険料の負担がなかった人も含め、全ての後期高齢者が保険料の負担を求められ、しかも大多数の人は年金から「天引き」です。
保険料は東京都後期高齢者医療広域連合で、 11 月を目途に決められることになりますが、先日8月31日の1回目の広域連合議会では、東京の平均保険料は最高で年額15万5千円、月額にすると12900円、最低でも年額9万6千円、月額にすると8000円となる試算を明らかにしました。これは厚生労働省が試算した全国平均保険料、年額7万4千4百円、月額にすると6200円に比べても1.3倍から2倍と高額であり、広域連合議会でも「こんな高い金額では納得できない。住民にも説明できない」という批判の声が相次いだと側聞しています。
介護保険料と合わせると、月 1 万円をゆうにこえる負担となり、あまりに過酷な負担増です。
しかも重大なことは、その保険料を払えない高齢者には資格証明証の発行、すなわち保険証のとりあげが行われることです。
この後期高齢者医療に便乗して、医療改革の二つ目に、 65 歳から 74 歳までの方の国民健康保険料も年金から天引きになります。
更に3つめには 70 歳から 74 歳の方の窓口負担が、現行の 1 割から 2 割負担に引き上げられます。
今、高齢者のくらしは老年者控除の廃止、年金課税の強化などで急激な負担増に見舞われている中、更なるくらしと健康への大打撃になることは目にみえています。高齢者の医療を受ける権利、いのちとくらしを守るため、区としての対応を求め、以下4点お尋ね致します。
(1)後期高齢者医療制度の保険料を低く抑えるとともに、低所得者の保険料 減免制度をつくること。
(2)資格証明証の発行は行わないこと。
(3)年金からの保険料天引きをやめるよう国に求めること。
(4)70~74歳の窓口負担を1割から2割に引き上げないよう国に求めること。以上4点、区長のあたたかい答弁を求めます。
【区の答弁】
6-(1)
つぎに、医療制度改革に関するご質問にお答えいたします。
はじめに、保険料及び保険料減免制度についてでが、後期高齢者医療制度の保険料の算定については、
東京都後期高齢者医療広域連合が本年11月の広域連合議会への提案に向けて現在、粗い(あらい)試算などを行い、検討しているところです。
その中で、所得の少ない被保険者の方々には、国民健康保険制度と同様に均等割部分の7割、5割、2割の軽減措置の導入を予定しています。
また、被保険者が災害等により重大な損害を受けたときや収入が著しく減少したときに保険料の全額または一部の減免を行う保険料の減免制度についても導入を検討しているところです。
6-(2)
つぎに、資格証明書の発行についてですが、広域連合では、一定期間以上の保険料の滞納者には被保険者証に変えて資格証明書を発行し、償還払いによる給付を行うことを検討しています。
資格証明書の交付を受けた場合、医療機関の窓口では、いったん医療費の全額を支払い、のちに広域連合から保険給付相当額の償還を受けることとなります。
資格証明書の発行にあたっては、十分な負担能力があり、災害、事業の廃止、疾病など特別な事情がないにもかかわらず、一定期間、保険料を滞納している者に対し行われるものです。
6-(3)
つぎに、年金からの保険料天引きについてのご質問です。
後期高齢者医療制度の対象者には、平成20年4月より年金からの保険料の特別徴収制度が導入されますが、低額の年金受給者まで対象とすることは適当でないということから年額18万円以上の年金受給者を対象とし、さらに天引き額が過大とならないよう介護保険料とあわせた保険料額が年金額の二分の一を超える場合は、特別徴収の対象としないという取扱いをすることとなっています。
この仕組みは、国民健康保険の65歳から74歳までの前期高齢者にも導入されますが、北区においては準備の都合から平成21年度からの実施になります。
6-(4)
つぎに、70歳から74歳の窓口負担引き上げにかかるご質問ですが、70歳から74歳までの方々の一部負担金割合については、平成20年4月から1割から2割に改正する予定です。この改正は、医療制度改革の保険給付の内容・範囲の見直しの一環として本人負担の見直しを図るもので、急速な少子高齢化に向け老人医療費の伸びに対し、国民皆保険制度を持続可能なものとしていくためには、避けられないものと考えております。
なお、70歳から74歳までの低所得者につきましては、自己負担限度額を据え置くこととしております。
次に特定健診と特定保健指導についてお尋ねいたします。
ご案内のとおり、健康診断制度も根本的に変わってしまいます。これまで公費で行われていた区民健診がなくなり、加入している健康保険ごとにメタボリック症候群を中心に実施されるようになります。
北区も国民健康保険者として、準備をすすめている最中ですが、いくつもの心配が出されています。例えば、これまで無料で受けられていた健診が有料化されるのではないか?制度が変わったことによる区民の戸惑いからも、健診が受けられなくなる方が出るのではないか?検診後の特定保健指導はアウトソーシングも可能としているが、体制や質は十分整うのか等です。
北区ではこの間、区民健診の内容の充実や、2年前からは個別医療機関での実施、かかりつけ医との連携など、充実が図られてきました。その財産を継承することが大切ではないでしょうか?そこで2点、お尋ねいたします。
(1)区民が引き続き健診を受けられるよう区として窓口対応をはかることや無料健診を継続すること。
(2)これまでの区民健診の実績を活かし、特定健診の実施は北区医師会と連携して行い、特定保健指導は当面、北区の保健師が行う体制も視野に入れて検討するよう求めるものです。
以上、4月からの医療制度改革に伴って、区民の命と健康を守る立場から、区長の前向きな答弁を求めます。
【区の答弁】
6-(6)
つぎに、特定健診・特定保健指導の実施機関についてのお尋ねです。
特定健診の実施機関については、今まで基本健診を実施してきたノウハウや経緯、受診者の数や利便性を考慮し、北区医師会に委託して行う方向で協議中です。
特定保健指導の総括、管理指導につきましては、区の保健師が担います。
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