【2】 大きく2つめの質問は発達につまずきのある子どもと家族への支援についてです。
子どもの側からみて、何らかの原因で発達の障害をおこし、自分は人との関係がとりにくい。どうやって人と関わったらよいのかわからない、対人関係や社会性がうまく育たない。こうしたことを感じるのは、子どもにとってつらい状態です。
一方、親御さんからみると、小さいのに少しも甘えてくれない。ひとりで遊んでばかりいる。やたらに動き回る。手伝わなければ何もしようとしない等、どう子どもと向き合ってゆけばよいかー、子どもはちゃんと育っているのだろうかーと、大きな心配を抱えていらっしゃいます。
けれども、こうした子ども達も、発達に必要な療育を受け、人とのやりとりの方法がわかってくれば、まわりからの働きかけに応えたり、自分も要求が出せるようになったり、集団の中で生活できるように成長してゆくのです。
これまで、養護学校や小中学校の特殊学級などに通っている児童、生徒は全体の約1,8%、約100人中1~2人と言われておりましたが、平成 14 年に実施した文部科学省の調査では、通常学級で「知的遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示す」と教師が回答した児童生徒の割合は、全体の6.3%と示されました。40人学級でみると、支援が必要な子どもは2~3人いることになります。
こうした中、平成16年度に発達障害者支援法が成立し、1、自閉症やアスペルガー症候群、2、コミュニケーションなどの意思疎通や社会性、想像力の未発達などがみられる広汎性発達障害、3、読む、書く、聞く、推定するなどの学習に困難をかかえる学習障害、4、不適当な衝動性、多動性を示す注意欠陥・多動性障害など、発達につまずきのある子どもに対し、就学前、学校教育、就労、地域での生活などへの支援、及び家族への支援に対する自治体の責務が明らかにされました。
私はその中で、就学前と学校教育での支援について、お尋ねします
その 1 つ目は発達相談の総合窓口を設置することです。
北区では、就学前の子どもで、歩きはじめが遅い、言葉が遅い、友達とうまく遊べばないなど、子どもの発達に関する相談を「発達相談」と名付け、障害者センターで実施しています。
相談実績は平成 16 年度 40 件台であったものが、平成 17 年には 80 件、平成 18 年には 93 件と 2 倍以上に増えており、今年度も同様に伸びております。
その背景には、法律制定により認知度が高まってきたことや福祉保健センターで実施している 1 歳 6 ヶ月健診、 3 歳児健診や育児相談事業との連携等があると思います。
この「発達相談」は、障害者センターの庶務相談係の一事業として行われていますが、体制的には担当の保健師が 1 名。非常勤の専門職の力をかりながら、奮闘していただいています。この間の実績増やあらたな行政課題に対応するにふさわしい体制強化が望まれるところです。
そこでお尋ねいたします。発達相談の総合窓口として発達相談係を設置し、保健師や社会福祉士、臨床心理士など専門家を正規に配置して、体制を強化すること。また、精神科医や言語療法士などによる発達相談事業の回数増などの充実、及び個別相談室の増設を求めるものです。お答えください。
2つ目は、こうした機能を充実させ、杉並区などのように将来的には「発達支援センター」を検討するよう求めるものです。
3つ目は、発達につまずきのある子どもの相談と療育の場、保護者への子育て支援の場として活動している「さくらんぼ園」の充実についてです。
先日、私はさくらんぼ園での療育の場を見学させていただきましたが、子ども達の理解やかかわり方など、蓄積されたノウハウを区内の子どもにかかわる関係施設に広くいかしてゆけるといいなあと痛感しました。今年度はすでに区立の保育園や幼稚園の先生たちに研修などをされたと伺いましたが、更に、私立保育園や私立幼稚園、育ちあいほっと館や児童館などへの研修、指導体制の強化を求めるものです。
4つ目は民間の障害者 NPO 法人などが実施している療育相談事業への支援についてです。
私は NPO 法人ピアネット北の一事業として、実施している療育相談事業「あこの会」の活動を見学させていただきました。名称の理由は、発達につまずきのある子ども達をわが子のように育てていこうという思いで、「わが子」の万葉語「吾子」から名づけたそうです。 活動は十条地域の一軒家を借りて行われていました。
私がうかがった時は、4歳の子どもたちが3人、マンツーマンで先生がつきながら、衣服のたたみかたや着替え、食事など身の回りのことが自分でできるように練習したり、自分の体をコントロールできるよう運動をしていました。
発達障害の子ども達の療育に40年以上携わってこられた先生は「社会の中で、みんなと一緒に生きてゆくために、自分の気持ちをコントロールできることは大事なこと。そのためにはだめなこと、通らないことも伝えてゆく。子どもの力を信じて、生きてゆく手立てを学ぶ場を保障してゆきたい」と語っておられました。
現在、こうした活動は職員の方々の熱意と保護者からの療育費の負担でまかなわれておりますが、療育が必要なこどもの発達保障の場が、民間や行政が相互に力をあわせて、充実させていくことが求められていると痛感します。
北区として民間法人が実施している療育相談事業への支援を実施するよう求めるものです。お答え下さい。
5つめの質問は保育園、幼稚園への支援について2点お尋ねします。
ひとつは、予算要望の懇談の中で、私立幼稚園や私立保育園の園長先生達から、口々に語られたのが、処遇が困難なこどもたちへ専任の先生をつけるための人件費補助の拡充です。
特に、私立幼稚園は医師の診断書などをそえて東京都に補助を申請するが、その補助額は子ども一人当たり年間で39万2千円にすぎず、非常勤の先生でさえ雇えない状況で、園長先生が積みあがった事務仕事を横において、子どもに向き合う実態もあると切々と語られました。
一方で子ども達は、集団の中で互いに成長しあっている状況も教えてくださいました。
集団生活や行動になかなかなじめない子どもたちをサポートする専任の先生が確保できるよう北区として、人件費補助を実施するよう求めるものです。
ふたつめは、巡回指導体制の確立についてです。
現在、公立、私立保育園、無認可保育室などに対し、臨床心理の専門家の先生が、月に1回程度訪問し、子どもへの理解や対応について、アドバイスする巡回相談が実施されています。先に述べた、さくらんぼ園との連携強化とあわせ、巡回相談で積み上げてきた実績を交流し、全体の指導にいかすなど、北区としての支援体制の確立を求めるものです。
以上5つの角度から、発達につまずきのある子どもと家族への支援の充実をお尋ねしました。区長のあたたかい答弁を求めるものです。
【区の答弁】
(1)、(2)
次に、発達につまずきのある子どもと家族への支援についてお答えします。
まず、発達相談の総合窓口及び発達支援センターの設置についてのご質問にお答えします。
障害者福祉センターでは、発達障害に関する相談件数の増加、相談内容の多様化に対応すべく相談機能の充実に努めてまいりました。
発達障害のある子ども及びその家族の支援については、様々な課題がありますので、職員を先進都市に派遣するなど、研究中でございます。
(3)
次に、さくらんぼ園の有する療育のノウ・ハウを民間の幼稚園や保育園などの関連施設の職員にも伝えて欲しいとのご質問にお答えします。
さくらんぼ園では、職場研修として療育に関する研修を実施しております。
研修の実施に際しましては、区立の保育園、児童館の職員にも声をかけ、参加の機会を設けております。
今後は、区立幼稚園、私立幼稚園、保育園の職員にも声をかけ、参加できるよう検討してまいります。
(4)
次に、民間療育相談事業への支援についてのご質問にお答えします。
発達障害に関する認識が深まるなか、発達障害への対応に取り組む民間の団体も出てきております。
こうした団体に対し、区としての支援、連携協力のあり方について、今後研究してまいりたいと思います。
(5)
次に、私立幼稚園、私立保育園の、処遇が困難な子どもに係わる人件費補助の拡充についてお答えします。
私立幼稚園の運営経費に関する補助につきましては、基本的には東京都が担っており、障害等のある子どもを受け入れた場合には、東京都が人件費等の補助の加算を行っています。
また、私立保育園につきましては、北区において人件費の加算を行っています。
新たな補助制度や拡充策につきましては、私立幼稚園、私立保育園側からも要望をいただいており、検討課題とさせていただきます。
次に、保育園等に派遣している臨床心理の相談員につきましては、個人情報の保護などに留意しつつ、経験交流の機会の設置などを検討し、相談事業の質的向上を図ってまいります。
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