私は日本共産党北区議員団を代表して、ただいま上程になりました、日程第1東京都北区一般会計、日程第2東京都北区国民健康保険事業会計、及び、日程第6東京都北区介護保険会計の、各歳入歳出決算の認定について、反対の立場から討論を行います。
平成19年度には安倍首相、今年は福田首相が突然、政権を投げ捨て、国民を見捨てるという無責任な政治が相次ぎました。
構造改革の名の下に、弱肉強食の競争原理で、あらゆる分野での規制緩和、官から民へ等という市場主義がすすめられ、それと共に、自衛隊の海外派兵、憲法改悪への動きなどが、一体として取り組まれました。
こうした国の政治は、これまでにない貧困と格差を拡大し、若者は使い捨て、中小企業、農業は切り捨て、高齢者は差別医療と社会保障の後退で姥捨てなど、国民の激しい怒りとなっています。
更に、投棄マネーの暴走、国際的な金融危機、地球温暖化、食糧危機などの問題をみても、資本主義における新自由主義路線の破綻は明らかです。
こうした、路線を推し進めた自公政権の破綻といきづまりは、今や内外に明らかとなっておりますが、この破綻した路線にしがみついている麻生新政権にも未来はありません。
東京都政も、オリンピック誘致に毎年1000億円を積立、8兆5千億円もの巨大開発をすすめる一方で、新銀行破綻による無駄遣いや、都民の医療、福祉、教育、住宅施策などを後退させ、都民のくらしに痛みを強いています。
こうしたもとで、日本共産党北区議員団は、北区に対し、区民のくらしを最優先し、貧困や格差に苦しむ区民の生活を応援する、自治体の責務を果たすよう求め続けてきました。
それらは、区民アンケートをはじめとする区民要望をもとに、新年度及び補正予算要望、議会質問などを通じて求めてきたところです。
19年度に、妊婦健診費用助成の拡充、若者などへの就労支援イベント事業の実施など、一部は実現しましたが、以下に述べる理由から一般会計決算認定に反対いたします。
その第1は、区民の貧困、格差の実態や現状に対する区長の認識の甘さです。
平成19年度は、非正規労働者の拡大、究極の日雇い派遣という非人間的な働かせかたや、真面目に働いてもくらしが成り立たないワーキングプアの増大等が、引き続き大きな社会問題となりました。
また、定率減税の廃止、高齢者の非課税措置の廃止、住民税のフラット化など税制改悪が実施され、区民からみると、約31億円もの負担増となりました。
これに連動して、国保料、介護保険料も値上げとなり、年金や収入が減少している中、税や保険料の負担は、区民のくらしに重くのしかかっています。
例えば夫の年収が240万円で、かつては住民税非課税だった高齢者世帯では、この税制改悪で税や保険料負担が年間11万円強から約23万円へと、およそ2倍にはねあがりました。
さらに、後期高齢者医療制度の導入にかかわって、区民の中には、国民健康保険料より、年間6~7万円もの負担増、およそ2~3倍にも保険料が跳ね上がった実態も生まれています。もはや、区民の痛みは限界です。
しかしながら、決算の実績報告書をはじめ、決算委員会の質疑においても、区長には、こうした区民の窮状が少しも認識されておりません。
一方で、区の積立金は356億円と、この年はじめて、主要5基金の合計が区債を上回り、区も表明しているように、安定した区財政運営となっております。にもかかわらず、史上最高となった積立金を活用するなどで、区民の痛みをやわらげ、くらしを応援する施策に、背を向け続けて来たことは認められません。
反対理由の第2は、経費削減先行の北区経営改革プラン、指定管理者制度、推進の姿勢です。
平成18年度から、実施された指定管理者制度は、区民施設をはじめ、保育園、児童館、学童クラブ、特別養護老人ホームなどの高齢者施設及び、障害者施設など、今年度までに98施設にまで及びました。
指定管理者制度の本質は、公の施設の運営を民間の法人や企業、団体などに、いかに安い管理料で受託させるかを競わせるものです。
北区は「競争によって、経費が削減でき、サービスも向上する」としていますが、実態はそう簡単ではありません。
会派では、これらの施設を直接訪問し、独自の聞き取り調査を実施してきましたが、どこの施設でも、人材確保と職員の雇用・育成に困難を抱え、苦労されておられました。
経費を削減すれば、直接的には、そこで働く労働者、職員の労働条件や賃金に影響を及ぼすことは必至だからです。
区内の特別養護老人ホームでは、人材不足によって、定員120名のところ、108名しか入所者を受け入れられない事態が続いています。
待機者が770名をこえる中、こうした事態は一刻も早く、改善され、区としての責任が果たされなければなりません。
この人材不足の主な背景には、介護報酬の引き下げとあわせて、正規雇用を雇えない指定管理料にあるのではないでしょうか。
経費削減が先行し、指定管理者・外部化を急ぎすぎ、公共の責任や役割、サービスの質などが、ないがしろにされていることは認められません。
私はこの際、現在、実施されている指定管理者に対して、正規、非正規などの雇用形態、派遣社員の有無、平均年齢、労働時間、サービス残業の有無、賃金体系、最低賃金、労働協約、一時金、退職金などを、区としても把握し、議会にも報告することを求めます。これは、北区も努力する姿勢を示しているので、重ねて指摘します。いずれにしても、労働者にしわ寄せがいかない適切な指定管理料とすることを求めます。
加えて、今後も資源調達のために、指定管理者への移行をすすめるとのことですが、一路民間へという新自由主義路線が破綻してきている今、指定管理者制度は、立ち止まって見直すべきです。
更に、北区で働く非正規職員が30%をこえるなど、官制ワーキングプアがつくられつつあることは認められません。
非・正規職員の多くは、保育園や児童館、学校など、子どもの処遇にかかわる施設で働いている職員です。専門性も求められる職場であり、5年の雇い止めはやめて、正規雇用とするよう求めます。
反対理由の第3は、北区独自の認定調査のしめつけによる給付抑制など、異常な介護保険運営です。
「北区の認定は厳しい」と、区・内外の事業者が指摘し、区民からも同様の苦情や相談が寄せられている介護認定のしめつけにより、年度途中で減額補正を行われ、結果として平成 19 年度決算では、計画していた介護サービス給付費を34億円も使い残すこととなりました。
平成 17 年度から 19 年度の 3 年間を合わせると、実に85億円もの計画との乖離が生じた事になります。 更に、20年度に終了する第3期事業計画の3年間でみるならば、約 100 億円の乖離となります。
その要因となった麻痺などの解釈にみられる区独自基準については、ようやく、生活への影響を特記事項に十分記載する等の改善点が示され、認定調査員研修会でも徹底したとされておりますが、その後も「状態が変わらないのに、要介護2から要支援2とランクが下げられた」とか「北区では要支援しか認定されなかったが、他区に転居して認定を受けたら、要介護2と判定された」などの相談は続いております。
それを裏付けるように、決算資料で示された平成19年度と平成 20 年度現在までの、月別の介護度別、判定の割合をみても、ほとんど変化がみられません。
北区の認定調査は、未だに、十分な改善が図られていないといえます。
介護サービスがいきとどかず、辛い思いをされた区民が、数多くいらっしゃることを、北区は肝に銘じて受けとめるべきです。
わが党がつかんだ、厚生労働省の見解でも、「国のマニュアルを自治体が独自に文書にして指導することは構わないが、事例まで示して指導するのは逸脱ともいえる」また、「自治体によって、認定が変わってしまう事はあってはならない」と指摘しています。
更に、他区では当たり前に行われている認定調査時のケアマネージャーの立会いについても、未だに実施されていないのは認められません。
この点でも、厚生労働省は「担当のケアマネージャーが調査を実施すること自体、禁止しているものではなく、ましてや立会いまで禁止するのは逸脱といえる」としています。
決算委員会の審議を通じて、区はケアマネージャーの立会いについて、「今後、検討してゆく」と、ようやく改善を示唆する答弁となりました。
生活状況が十分に反映される認定とするために、必要に応じて、ケアマネージャーの立会いができるよう、速やかな改善を強く求めます。
あわせて、介護保険では足りない、または不十分な生活支援や、配食サービスなど、北区独自のサービスとして実施するよう求めます。
次に保険料の積立金についてですが、平成 19 年度までは23億円、平成20年度末までには、約 30 億円の積立金になる見通しが示されました。
この30億円という額は、区民一人当たり、月 1200 円を 3 年間にわたって、とりすぎたことにあたります。
他区では、保険料の引き下げや、独自の軽減策などを行っていますが、北区はこの間、何の改善もおこなっておりません。すみやかに介護保険料の引き下げを実施するよう求めます。
反対理由の第4は、住宅施策についてです。
低廉な家賃、安心できる公共住宅の整備は、居住福祉の要です。しかし、北区では、高齢者住み替え家賃助成事業の終了、住宅承継制度の改悪、借り上げ高齢者住宅の増設の中止に加え、区独自の供給策ゼロ、都営住宅建設を都に働きかけることの拒否などを続けていることは、認められません。
反対理由の第5は、 30 人学級の実施に背をむける教育委員会の姿勢です。
ご案内のとおり、少人数学級は世界の体勢であり、わが国においても、実施していないのは、東京都だけという事態が続いています。
そうした中、他区においては、東京都に対し、少人数学級の実施をはたらきかけ、区独自に教員を採用する等、この実現にむけて努力を傾ける区も生まれてきました。
ところが北区は、制度としての30人学級の実現について、区、自らの努力はもとより、東京都に働きかけることさえ、頭から否定する消極性は、到底、認められません。
以上のべてきた理由により、一般会計の決算認定に反対します。
この際、決算審議を通じて明らかになった問題点について、 2 点指摘いたします。
その一つは、北とぴあの管理委託契約についてです。
ご承知のように、北とぴあの管理委託案件は、前荒川区長に贈賄事件を起こし問題となった企業が、長きにわたり受注していた案件です。
その企業が指名停止になって以降の平成17年からは、北とぴあの管理契約は一括請負から、警備、清掃、設備の3つに分割されて、入札されることとなりました。
その中の、警備と清掃の二つの業務については、平成18年度の清掃を除き、平成17年から平成20年の4年間、いずれもO社が受注しております。
平成19年度の入札については、警備、清掃共に、応札した15社全員が、予定価格を超過し、2回目の入札では、O社を除いて、全員辞退するという大変不可解な結果の末、警備については随意契約でO社に、清掃については、落札でO社が受注することとなりました。
このような入札の経過は正常なのか、大きな疑問が残ります。
更に、平成20年度の契約では、従来実施していた入札を行わず、北区は、警備、清掃についてはO社と、設備についてはS社と随意契約するための、再度委託案件とする方針をとりました。
しかしながら、S社については、区有施設での不祥事で、その施設を指名停止された会社であり、再度委託案件審査委員会において、不適当とされたのは当然の結果です。
その後、設備については入札により、前年度より15%低く、別の業者が落札いたしました。残る警備と、清掃については、O社が再度委託案件として認められ、北区と随意契約を結ぶこととなったのです。
これでは、警備と清掃の二つの業務を、O社に再度委託させることを正当化するためのものだったのではーと言われても仕方ありません。
この間の契約制度の改善の中で、官製談合も含めて談合を排し、公正、公平な入札をすすめるために、特別な事情、納得できる状況以外は、随意契約から、一般競争入札を行うというのが是正の方向ではないのでしょうか。
北区は、北とぴあの再度委託の理由として、委託先で働く社員やパートの雇用を守ることになると説明しましたが、平成21年度の予算編成の依命通達「施設の管理運営費については、前例にとらわれることなく、経費の削減を図ること」という中身に照らしても、また、他の施設管理に対して、これまで働く者の雇用を守る視点で対応されてきたのかーという実態に照らしても、何故、北とぴあの管理契約だけ、仏のような顔をするのか、納得できるものではありません。
北とぴあのこうした契約について、改善を強く指摘いたします。
問題点の二つ目は、耐震上、問題が明らかになった庁舎問題についてです。
区民、職員の安全や職務遂行を確保するために、早急に、暫定的な耐震補強を実施することを求めます。
その上で、庁舎の建て替えについては、10年以上の期間をみこし、巨額な費用のかかる事業であり、財源確保、区政運営とのバランスなど、様々な角度から、その手法については慎重に判断されなければなりません。
「北区役所のあり方」として、庁内検討会の中間報告により、A案からD案の4つの案が示されましたが、議会や区民とオープンに、充分議論を行い、区民合意で庁舎の方向性を定めていくという経過をふむことが、非常に重要と考えます。
それに照らしてみるならば、北区のこの間の対応は、新しい場所で、新庁舎を建設するというD案に、丸印をつけて提案し、年内にも結論を急がせるような意図的、誘導的、拙速なものであり、その姿勢は認められません。
こうした姿勢を根本から改め、今、必要なことは緊急の暫定対策を行うことです。その上で、公平、公正な議論を行い、区民合意が前提という立場で対応して頂くよう強く指摘しておきます。
次に、特別会計について述べます。
国民健康保険会計決算については、保険料の値上げ、年金からの天引きなどから、介護保険会計決算については、さきほどのべた理由からいずれも、認定に反対致します。
他の3つの特別会計の認定には賛成し、討論を終わります。 |