◆平成25年度(2014年)北区議会第3定例会最終本会議
特定秘密保護法の廃止・撤廃を求める陳情不採択に反対討論 山崎たい子区議
2014年10月3日
私は新社会党議員団及び日本共産党北区議員団を代表し、特定秘密保護法の廃止・撤廃を求める陳情不採択に反対の立場から討論を行います。
ご案内のとおり同法は、外交・防衛・スパイ防止・テロ防止に関する情報を行政機関の長が秘密指定すると、その情報を漏らした場合やその情報にアクセスしようとした者に、最大懲役10年、1000万円の罰金などの刑罰を科す法律です。
何が秘密なのか?それ自体が秘密で国民には知らされず、国会や裁判所への提供も厳しく制限され、国民の知る権利や表現の自由、プライバシーなどの人権を侵害するなどの重大な問題をはらんでいます。
日本弁護士連合会をはじめ、日本新聞協会、日本ペンクラブ、憲法・メディア法研究者、テレビキャスター等が、次々と反対を表明し、産経新聞世論調査でも慎重審議を求める声が8割をこえ、反対は過半数を超えました。しかし安倍政権は、こうした国民世論を無視して、昨年12月6日、法案を強行可決しました。法成立後の世論調査でも廃止・修正を求める声は82%にのぼっています。
今議会へ陳情された区民の皆さんは、12月6日の強行採決から、草の根の民主主義の力で法律を廃止にさせようと、毎月6日を行動日にして、雨の日も猛暑の中でも駅頭から、一人ひとりが自分の思いを語り、自分の言葉で呼びかけ、署名を集め、取り組みを拡げてこられました。 署名は3195筆という大変な数にのぼっています。
また、日本共産党北区議員団は取り組んだ「区民アンケート」では、現在2200通にのぼるご回答を頂き、秘密保護法については、反対が60%、わからないが23%、賛成はわずか7%でした。
こうした状況にもかかわらず、政府は12月10日にも同法を施行する方針を決めました。今月2日の東京新聞では「国民の不安や懸念を置き去りにしたまま」と、厳しく報道されています。
この陳情不採択に反対する理由の第1は、民意を無視して国会で強行し、その後も法施行を粛々とすすめようとする国に対し、区民にもっとも身近な北区議会が、民意に応え、国に意見を述べることが使命であると考えるからです。
第2の理由は、法律の問題点からです。
企画総務委員会の審議では「国の秘密保護は必要、しかし個人を圧迫するものではない」「国民の知る権利は保障されている」との意見が出されました。本当にそうでしょうか?
先月19日に、日本弁護士連合会が秘密保護法の問題点を改めて浮き彫りにするために「秘密保護法と国民の知る権利 オープンガーバメント(開かれた政府)を目指して」と題するシンポジウムを、参議院会館講堂で行いました。
その中で、アメリカの国家安全保障会議の元高官で、核戦略と国家秘密法制の専門家であるモートン・ハルぺリン氏が講演し「世界の基準からみても日本の秘密保護法は大きく逸脱している」と指摘しました。
具体的事例として、日本の秘密保護法では民間人、ジャーナリストも刑事罰の対象となりえる点をあげ「アメリカの同盟国でも類をみないもので、根本的な人権侵害に関わる」と厳しく批判しています。
更に、安倍政権が同法成立時に「秘密保護法をつくらないとアメリカが情報を共有させてくれない」等と口実にした点についても、アメリカ政府高官だった経験から「真実ではないと思う」と断言されていました。
こうした国民の知る権利や人権侵害の問題について、国際人権規約委員会からも、秘密指定を厳しく限定すること、ジャーナリズムや市民活動家が公益に関する情報を公表したことで処罰されないことを保証すべきであるとの勧告がだされています。 この間、情報保全諮問会議がまとめた法律の運用基準案に対するパブリックコメントには、日本弁護士連合会がプライバシー保護や基本的人権、報道・取材の自由の尊重などについて、A4裏表24ページにわたり、細かく指摘したのをはじめ、全国から異例の約24000件の意見が寄せられました。しかし国の対応は、微修正にとどまりました。
このように同法は、国民の知る権利や人権、国会の立法権や国政調査権まで侵害するなどの重大な問題をはらんでおり、その施行は許されません。廃止してしかるべきと考えます。
第3の理由は、日本の国のあり方を、戦争する国に変えようとする動きと表裏一体のものであるからです。
この7月、集団的自衛権の行使容認の閣議決定が、これも多くの国民の反対世論を押し切って行われました。これまでの世界の歴史をみれば、集団的自衛権の名の下にすすめられてきたのは、アメリカやソ連などの大国による、大国の利益確保のための軍事介入の口実に使われてきたのが実態です。集団的自衛権の行使容認によって、アメリカが起こす戦争で「戦闘地域」まで行って軍事行動をおこなうことは明らかです。
秘密保護法は、この集団的自衛権行使を、内閣が容認判断するためのいわゆる3要件について、その判断の根拠となる情報を「防衛秘密」としてアクセスすることを不能にするものです。国会議員もメディアも、一般人も、内閣による3要件判断の正当性を検証できません。
更に、法律の運用基準案では、秘密指定の対象事項として「外国政府からもたらされた情報」が多数規定されており、国民やメディアの米軍情報への接近を排する法律であることも浮き彫りになりました。
企画総務委員会の質疑では「これまで特別管理秘密として、各省庁がバラバラに運用してきたが、今度の法律で国民が選んだ政権・大臣が秘密を指定することになり大きな前進」との意見も出されました。
しかし、集団的自衛権行使の閣議決定の下、アメリカと共に「海外で戦争する国」へと、民意に反して暴走する政権に、秘密指定がまかされることほど危険なものはありません。
9月29日からはじまった臨時国会での安倍首相の所信表明演説は、集団的自衛権行使容認の閣議決定に一切ふれず「安全保障法制の整備にむけた準備をすすめていく」とだけ述べ、どの世論調査でも過半を占める反対の意見をいっさい顧みず法案作成をすすめる考えを示しました。
今、多くの国民が最も心配と懸念を感じているのは、まさに一内閣、一政権の判断で戦後69年間、世界に対して示してきた日本のアイディンティティ、憲法9条の戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認が崩されようとしていることです。秘密保護法は、日本を再び戦争する国へ大転換するための核心となる法律、国民統制に他なりません。
日本共産党は他会派の方々とも共同して、秘密保護法廃止法案を国会に提出し、多くの国民・区民の皆様と力をあわせて、同法を廃止においこむために全力をつくします。
議場の皆様に今陳情の不採択に反対することを心から呼びかけ、討論と致します。ご静聴、ありがとうございました。 |