政府が介護保険の新しい要介護認定制度を導入してから二週間もたたないうちに「経過措置」という名の対策を表明せざるを得なくなり、「異例の事態」(「日経」)「異例の運用見直し」(「東京」)と報じられる事態に立ち至っています。「経過措置」は、新認定で要介護度が変わった場合、希望すれば従来の要介護度を継続できるというもの。スタート早々、新制度の欠陥を認めたのに等しい対策です。
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(写真)新しい認定基準を告発した2月16日付(奥)と厚労省の内部文書を暴露した小池晃議員の質問を報じた4月3日付の「しんぶん赤旗」 |
介護保険では、七段階(要支援1・2、要介護1―5)の要介護度のどれに認定されるかで利用できるサービスの量と種類が変わります。新制度は利用者の状態からかけ離れた軽度の認定を増やすと危惧(きぐ)されています。
「多くの人が必要なサービスを奪われる」と介護関係者を驚かせたのは、重度の寝たきりの人の移動・移乗を「自立」と判断するなど、狭められた新しい調査の基準でした。制度変更の検討会にも諮らず、国民の目の届かないところで決められていたものです。
本紙が「認定軽度化に拍車」(二月十六日付)と報じると、「認定軽度化“介護切り”」(「東京」三月九日付)「『介護難民』百万人があふれ出す」(『サンデー毎日』三月十五日号)など、各新聞・雑誌が新制度批判の記事を載せました。
幅広い団体が「国民が納得しうるまで一旦(いったん)、凍結するよう求める」(「介護1000万人の輪」の厚労相への要望書)と抗議。政府は新しい調査基準の一部見直し(三月二十四日)に追い込まれましたが、それでも批判は収まりませんでした。
“決定打”となったのが、新制度実施直後の二日、日本共産党の小池晃参院議員が暴いた厚労省の内部文書。新制度の狙いが認定の軽度化にあることが書かれ、認定「適正化」などで削減できる給付費の額も列挙されていました。
国会での小池氏の追及に舛添要一厚労相は調査を約束。十日あまりで厚労省は内部文書作成の事実を認め、小池氏への説明文書まで出しました。さらに、新制度を見直す検討会の新設と「経過措置」の実施を表明する異例ずくめの急展開となりました。厚労相は内部文書についてのテレビの取材に「省をあげて反省する」と述べざるを得ませんでした。
中止求め署名集める
NPO法人「高齢者福祉ネット研究会」の加藤史朗理事長の話 先日、本人の希望で認定更新の調査に立ち会いました。現在「要介護3」の人で、十センチの段差を上がるのにも介助が必要な状態です。ところが、「まひ」などの調査項目で次々に「あり」が「ない」に変わりました。「要支援1」か「2」に下がるのではないかと心配です。
「経過措置」をとらせたのは世論の力です。小池議員が暴露した内部文書が政府を追い込んだと思います。今後、新制度の中止を求めて署名を集めるつもりです。 |