北区議会第1定例会 最終本会議における討論 |
2018年3月27日
日本共産党北区議会議員
さがらとしこ議員 |
私は日本共産党を代表して、ただいま上程されました、平成30年度北区一般会計予算並びに、平成30年度北区国民健康保険事業会計予算、平成30年度介護保険会計予算、平成30年度後期高齢者医療会計予算に対する反対討論を行います。
はじめに、一般会計予算についてです。
新年度予算案の中で、小学生就学援助入学支度金の前倒し支給、区営シルバーピア143戸の整備、待機児解消をめざす2か年で1000名以上の保育所整備、学童クラブの定員拡大、コミュニティバス展開方針策定、30代を対象とした若年健診、すまい安心支援事業などは住民要望に応えた事業です。
しかし、以下に述べる4点の理由で一般会計予算に反対します。
反対理由の第一は、住民合意のないまま住民を立ち退かせ、商店街壊しのまちづくりを強引に推し進める姿勢です。
いま北区では、志茂と赤羽西の補助86号線、十条の補助73号線、さらには十条駅西口再開発の事業について、認可取り消しを求める住民裁判が起こされています。
区民は、「かけがえのない商店街やまちを大切にしたい」、「まちの歴史や文化、景観など区民共有の財産を守り、安心して住み続けられるまちをつくりたい」と願って、裁判の原告という重い責任を引き受け、日々の暮らしや仕事などの大切な時間をやりくりし、大きな負担を背負いながらも、やむに已まれぬ思いをひっさげて、裁判を決意したのです。こうして、同時期に4つもの提訴が起きるのは、区政史上初めての出来事ではないでしょうか。区長が「区民とともに」という基本姿勢を掲げていながら、まちづくりの分野では次々と住民からの訴えが起きるのは、住民合意がないがしろにされているからではないでしょうか。
都市計画マスタープラン2010では、「都市計画などの手続き」をする前に、「地区住民や関係者との合意形成」が必要だとしています。大本の方針で「住民合意」を謳いながら、鉄道立体交差と付属街路、補助85号線という十条の3つの事業では、昨年末、住民合意がないまま、都とともに都市計画決定を強行しました。地権者の意見もまともに聞かず、強引な事業化を推し進めた特定整備路線など道路計画での教訓が、まったく生かされていません。
十条の新たな都市計画決定においては、事業主体である都やJRへの追随姿勢とともに、住民と商店街を立ち退かせる北区の能動的な役割も重大となっています。鉄道付属街路では、JRが求める前から、仮線用地ともなる付属街路を区の事業として進め、鉄道沿線の住民を立ち退かせる役目を買って出ました。85号線の拡幅では、鉄道高架の案が出され道路拡幅が必要なくなったにもかかわらず、いちょう通り商店街を丸ごと撤退に追い込むような計画変更を、区が求めました。予算審議では、立ち退き対象となる地権者や商店への丁寧な説明を求めましたが、一般的な説明で事足れりとする区の姿勢は、真剣な住民合意形成への努力を投げ捨てるものです。
さらに、わずか10年間で事業化、用地買収、全線完成をめざすという特定整備路線は、現実を無視した無謀な計画であり、今の時点で期限となる2020年度までの完成は見込ないことは明らかです。
また、景観づくり計画との関係でも、自然豊かな公園や赤羽台の崖線、稲付城跡という太田道灌ゆかりの文化遺跡を86号線によって乱暴に踏みにじる計画では、地域住民の合意は得られようもないではありませんか。国交省が示している都市計画道路見直し方針に従って、86号線、73号線の事業の中止を都に申し入れるよう要請しておきます。
なお、十条駅西口再開発については、すでに低層棟1、2階部分の商業施設の計画が動き出しています。地元商店街からは、商業施設における店舗配置の計画段階から再開発組合と相談を進めたい旨、要請が出されています。十条まちづくり担当課と産業振興課が連携して、既存商店街の活性化を確保できるよう、早期の対応を求めるものです。
反対理由の第二は、区民の暮らしを応援する施策や、貧困・格差解消に向けた抜本的な対策が不十分にとどまっていることです。
国が示した新年度予算における社会保障費の大幅な削減は、さらなる貧困と格差をひろげ、国民の暮らしを一層不安にさせています。労働者の平均賃金は1997年の467万円から2017年の418万円へ、20年間で50万円も減りました。アベノミクスの下でも実質賃金は年間16万円下がり、家計消費は22万円も少なくなっています。しかも、男女格差、正規非正規の格差も開く一方です。ですから、区民の暮らしを応援して貧困と格差をなくすこと、子どもや高齢者の窮状に手を差し伸べるのは自治体として当然のことです。
今予算審議では、たとえば就学援助の中学校入学準備金の増額、学校給食の第3子からの無料化や、各種保険料の負担軽減、税金や保険料滞納者への生活再建支援、さらに、要支援の介護予防・生活支援事業者の補助を引き上げることなど、暮らし応援の施策や既存事業のレベルアップ、それを支えて働く人の賃金保障と処遇改善などを提案しました。
これらは、150億円に積みあがった財調基金のうち10億円程度を活用すれば、すぐにでも実現できるものです。
この予算の組み替え提案に対して区は、「その考えはない」ときっぱり否定しました。貧困・格差の是正、区民の暮らし応援施策は、まだまだ不十分と言わざるをえません。
反対理由の第三は、区民負担増、サービス削減につながる経営改革プランや公共施設再配置方針に固執する姿勢です。
北区の人口は35万人が目前となり、花川区長は3年連続で「財政対応力は高まっている」とのべています。高まった財政対応力は、人口増加に伴う行政ニーズに振り向けるべきではないでしょうか。
ところが、区は新年度、経営改革プランや公共施設再配置方針など北区「行革」路線に従い、9000万円もの区民負担となる自転車駐車場利用料金の値上げや、区民事務所7分室の全廃、児童館のさらなる統廃合を推し進めようとしています。とりわけ、7つの分室廃止は、利用者への十分な周知や職員団体との最終的な妥結もないまま、議会では38人中12人が条例改正案に反対する中で採決がおこなわれました。区は、コンビニ交付と重複するサービスは見直す、としていますが、コンビニ交付の前提となるマイナンバーカードの交付率は未だ13%程度、とても代替サービスとはなり得ません。「身近な分室がなくなるのは不便で困る」、「住民票を取るのにも、わざわざバスに乗って区民事務所まで行かなくてはいけない」など、分室が廃止されることを知った区民からも困惑の声が多数寄せられています。17年前の出張所再編の時には、結論を得るまでに足掛け4年も議論したのに、分室全廃という区民生活にかかわる重大問題を、わずか半年で強行する姿勢は認めることができません。
そもそも、経営改革プランや公共施設再配置方針は、厳しい財政状況と人口減少を前提として策定された方針です。区の予測でも平成40年(2028年)までは人口増加が続くとしている現状の下で、サービスも施設も「削減ありき」とする「行革」路線は、実態に合わなくなっており、抜本的な見直しが必要です。
予算審議を通じ、自主管理委員会が運営するふれあい館では、窓口業務をおこなう職員の報酬が最低賃金以下の時給800円という水準であることも明らかになりました。区は、「外部化」をさらに推進するといいますが、「外部化」は区の経費を軽減する一方で、民間事業者の人件費を抑制していることにも注意を払う必要があります。区の委託業者や指定管理者で働く労働者の賃金を引き上げ、適切な労働環境を確保するためにも、公契約条例の制定は急務であると求めておきます。
反対理由の第四は、区民の利益を損なう安倍自公政権の政策に批判的立場を持たず、これらを容認する姿勢です。
今、国民の怒りを大きく広げているのが、「森友・公文書の改ざん」疑惑です。国家予算を審議する衆参両院の予算委員会では、連日この問題での追及が行われ、ついに、本日3月27日、佐川前理財局長の国会での証人喚問が行われることになりました。
自公政権のもと、新年度の改悪を含めて、この間、三度にわたる生活保護基準の改悪が繰り返された結果、単身高齢者の生活扶助費は約9万円から7万円へと、四分の1もカットされてしまいます。
質疑でも紹介しましたが、今でも、親族が亡くなっても香典が出せずに義理を欠いてしまった。エアコンがあっても電気代を考えると使えないなど、これが1か月や2か月で終わる話ではなく、ずーと続くのです。社会からの孤立化が懸念される中、生活保護費の基準改悪が実施される今年10月からは、さらに過酷になってゆくことはあきらかです。
生活保護基準切り下げ撤回を国に要請するよう求めましたが、北区の答弁は国の動向を注視、容認するという姿勢であり、断じて認めるわけにはいきません。
また、政府は、「働き方改革」の名のもとに、残業代ゼロなどの労働法制の改悪をねらっています。この間、厚労省による調査資料の隠蔽や労働時間データのねつ造などが発覚し、安倍首相が3本柱の中心に位置付けていた「裁量労働制」については、法案提出前に断念に追い込まれました。「過労死ラインの月100時間を容認するものだ」、「命を奪う裁量労働制の法案は廃止に」と、世論が大きく広がったことが背景にあります。しかし北区は、「政府の『「働き方改革』は、多様な働き方をすすめる政策である」と、無批判な姿勢を示しました。
さらに、来年10月に予定されている消費税10%増税は、暮らしと地域経済を直撃する大問題です。ところが北区は、「あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う」と、消費税増税を肯定する姿勢でした。区民の命と暮らしを脅かす政府の政策に対して、「動向を注視する」などと容認する姿勢は認められません。
以上、大きく4点の問題点を指摘して、一般会計予算に反対します。
なお、以下要望として申し添えます。
要望の1つ目は、介護保険業務におけるAI技術を活用した富士通との共同実証実験についてです。
北区は富士通と、いまだ活用方針も定まっていない人工知能・AI技術を導入しての共同実験にふみきりました。実験は3月で終了しますが、北区が富士通と締結した協定書の内容を明らかにすることを含め、区民、関係者、議会に対する十分な説明責任を果たすよう求めます。また、富士通は実証実験で構築した学習モデルをサービス化し、社会保障給付の適正化に貢献するとしましたが、実験結果が給付サービスの抑制につながることがないよう、重ねて求めておきます。
要望の2つ目は、神谷中サブファミリー施設一体型小中一貫校についてです。
小中一貫教育制度導入の法改正に関する文科省通知は、「地域とともにある学校づくりの観点から、…学校関係者・保護者・地域住民との間において、新たな学校作りに関する方向性や方針を共有し、理解と協力を得ながら進めて行くことが重要」と指摘しています。開校推進協議会報告書をまとめる過程においても、近隣住民から住環境の変化を心配する声が寄せられているだけに、この指針を厳格に守ることを求めます。とりわけ稲田小学校の関係者には、当事者の意見をよく聞き、丁寧に対応するよう要望します。加えて、学校の主人公である子どもたちの意見表明権を保障することも求めておきます。
また、大規模マンション建設や学区域変更などにより、児童・生徒数が大幅に増加することも予想されます。人口推計を注視しながら、必要かつ十分な教育環境が確保できるよう対応を求めるものです。
要望の3つ目は、桐ヶ丘中と十条富士見中の各サブファミリーブロックにおける小学校適正配置問題についてです。
1年8か月にわたる桐ヶ丘中サブファミリーブロックでの協議が、「打ち切り」「協議終了」とされた背景には、大規模開発などの影響による児童人口推移が正確に把握できなかったことにあります。また、協議が終わっていない十条富士見中サブファミリーブロックでも、今後の十条まちづくりの進捗による大規模な人口変動が予想されます。すでに、すべての学校で当面存続規模を満たしていること。都の児童推計も、協議の基礎となっている第3次答申時とは大きく異なっている現状をふまえ、協議をいったん打ち切ることを求めます。
次に、特別会計についてです。
国民健康保険は、新年度から、国保事業は都道府県化されます。一般会計からの繰り入れを向こう3年間で段階的解消するとしていますが、これまで保険料を抑制してきた繰り入れがなくなれば、際限のない保険料につながりかねません。
介護保険は、第7期事業計画に入ります。わが会派は代表質問で、さらなる基金活用で保険料の引き下げを求めましたが、基準保険料では年間8123円もの大幅値上げとなってしまいました。
後期高齢者医療保険は、新年度の保険料改定で、加入者の約7割が値上げとなります。
以上、いずれも加入者の多くが負担増となる、保険料のトリプル値上げとなることなどから、国保会計、介護保険会計、後期高齢者医療会計の予算に反対します。
なお、中小企業従業員退職金等共済事業会計には賛成することを申し添えます。
つづいて、 「第25号議案 平成30年度東京都北区一般会計予算」の組み替えを求める動議に賛成する討論を行います。
組み替え提案の内容については、大きく、(1)貧困・格差の是正、(2)事業のレベルアップ、(3)働く人の賃金保障・処遇改善、(4)新規の事業、(5)削減された事業の復活、という柱で提起されています。
全体として、10億円の規模としていますが、一つひとつの予算根拠については、他自治体においてすでに踏み出している事業や、委員会質疑の中で明らかになった予算規模を参考にして積算しています。その一部については、先ほどの提案理由説明の中でも示されています。
次に財源ですが、財政調整基金から10億円程度を取り崩すことで必要な財政をまかなうとしています。予算審議では、「財調基金は将来のための積み立てであり、安易に取り崩すべきではない」との議論がありました。私たちも、将来への備えは大事だと考えており、庁舎や学校改築などの特定目的基金を一定程度積み上げることは必要との認識です。財調基金についても、その多くを将来への備えのために確保しておくことに、反対しているわけではありません。しかし、今回の提案は、財調基金を全部取り崩せというものではなく、平成28年度末で150億円以上も積み上がった基金のうち、10億円を活用して暮らし応援の施策に充てようというものです。これが財政のバランスを壊してしまうとか、将来の財政を考えないものだという批判はあたりません。むしろ、区民の窮状を考え、その切実な要望に応えるためにも、今こそ財調基金の積極的な活用に踏み出すべき時ではないでしょうか。
一部に、この組み替え提案に対して、「実現性がない」、「パフォーマンスではないか」との声が聞こえますが、決して実現不可能な提案ではありません。実際、日本共産党北区議員団は、これまで3年間、当初予算への組み替え提案をおこなってきました。残念ながら議会では否決されていますが、提案の内容については、区有地などを活用した認可保育所の増設や正規の保育士確保、就学援助の前倒し支給や子ども食堂への支援など子どもの貧困対策、認証保育所保育料の補助など、年度途中の補正予算や次年度の予算などでいくつも実現に至っています。
今回提案している事業についても、全ての会派、議員の方々が一致できるものと確信しています。
以上、事業の積算、財源、実現可能性という点から、今回の組み替え動議の積極的意義を示させて頂きました。議場の皆様のご賛同をお願い致しまして、賛成討論とします。ご静聴ありがとうございました。
以上
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