プロフィール

2008年6月17日

2008年第2回定例会 代表質問

質問に先立ち、先のミャンマー、中国四川省での自然災害および岩手・宮城内陸地震で被災された方々に対し、心からお見舞いを申し上げるとともに、亡くなった方々に哀悼の意を表するものです。

私は、日本共産党北区議員団を代表し、区長に質問します。

北区政の基本姿勢を問う――新自由主義「構造改革」路線に抗し、くらしを守る区政への転換を

最初の質問は、区政の基本姿勢についてです。

福田内閣の支持率低下に歯止めがかかりません。直近の時事通信調査で19.1%、国民の約2割にしか支持されていない政権が、衆議院では3分の2の議席を占めている"ねじれ"現象は、民意を著しくゆがめています。国民が自公政権を信任できない背景には、年金や道路特定財源、後期高齢者医療制度など、個々の問題での対応不能ぶりに加え、小泉内閣以来、政府・与党がつき進んできた新自由主義「構造改革」路線そのものの失敗とゆきづまりがあります。小泉「改革」から3年、今こそまちがった政治の流れに歯止めをかけることが必要です。

新自由主義とは市場万能論にたった考え方です。その本質は、市場原理を社会のあらゆる分野に広げて競争をあおり、労働者・国民へは耐えがたい痛みを押しつける一方で、一部の大企業や資産家には濡れ手に粟の大もうけを保障することです。こうした原理にもとづく「構造改革」路線の結果、年金、介護、医療と次々に制度の改悪が重ねられ、国民の命まで脅かす福祉の切り捨てが強行されました。労働法制改悪による規制緩和が繰り返され、「日雇い派遣」など使い捨ての働かせ方が横行しています。「官から民へ」のかけ声でPFIや指定管理者制度など公的部門への野放図な営利企業の参入がすすめられ、大企業は国民の財産を食い物にしてバブル期以上の大もうけをあげています。

「痛みに耐えよ」といわれ、行き着いた先は貧困と格差の広がる殺伐とした社会でした。小泉内閣が敷いた新自由主義路線は、安倍、福田内閣へと引き継がれ、いまなお「改革」などと偽りながら国民を痛めつけています。

区長にうかがいます。

いま区が果たすべき役割は、新自由主義「構造改革」路線に対してきっぱり反対の立場を貫くことです。貧困と格差を拡大する間違った国の政治に追随するのではなく、区民のくらしを守る区政へと転換することが必要だと思いますが、いかがですか。

区の答弁

初めに、区政の基本姿勢についてお答えいたします。

北区といたしましては、区民一人ひとりの幸せを目指す、という観点から、国や東京都との役割分担の中で、区としてできることを最大限行い、だれもが「ゆとりと豊かさと夢」を実感できる北区づくりに、全力で取り組んでまいります。

区民の命と地域医療を守るために

2番目の質問は、区民の命と地域医療を守ることについてです。大きく4点うかがいます。

後期高齢者医療制度の廃止を国にはたらきかけること

その第1は、後期高齢者医療制度の問題です。

「年寄りは早く死ねということか」「日本はいつから長寿を喜べない社会になってしまったのか」――4月から始まったこの制度に、全国津々浦々から怒りの声が寄せられています。そもそも医療費削減を理由に高齢者差別を持ち込むこと自体が大問題ですが、保険料はこれからも天井知らずの値上げで、それを支えるすべての世代に重い負担と医療切り捨てを押しつける制度です。

患者のみならず、医療を提供する側も、勇気をもって立ち上がっています。広島県の医師会長が「政治は弱者の目線でおこなわれるべき。高齢者を尊重できない国は、まともな国とはいえません」とのべるなど、全国で6割以上の医師会が制度への意見を表明しています。先日、北区の医師会長にもご意見をうかがいましたが、「診療報酬に上限をもうける『包括払い』が強制される方向に動くなら、断固反対の立場で臨む」とおっしゃっていました。沖縄の県議選では、後期高齢者医療制度が大きな争点となり自民が惨敗、公明と合わせても与党は過半数割れという結果でした。野党4党が提案した後期高齢者医療制度廃止法案は、参院で可決・採択されました。わが党は、延長された国会の中で徹底した審議を求め、衆院で廃止法案を成立させるためにあらゆる努力をつくします。

あまりの批判の強さに、政府・与党は制度を見直すと言っていますが、75歳で線引きする制度の根幹には手をつけていません。「小手先の手直しではなく、高齢者差別の医療制度は廃止しかない」――これこそが国民の望む唯一の対案です。

そこで、お尋ねします。

北区として、後期高齢者医療制度の廃止を強く国に求めるべきです。区長の決意をはっきりとお聞かせ下さい。

区の答弁

次に、後期高齢者医療制度、いわゆる長寿医療制度についてのご質問にお答えいたします。

本制度につきましては、運用上の一定の見直しは必要とは考えますが、制度自体は、老人医療費の伸びに対応し、医療制度を将来にわたり持続可能なものとするためには、必要なもとの考えております。

高齢者差別医療の影響を緩和する北区独自の施策を求める

第2に、高齢者差別医療の影響をやわらげる北区独自の施策についてです。

制度の廃止を求めながらも、当面、緊急に求められているのは、すでに実施されている差別医療制度で、医療から排除されるお年寄りが出ないようにすることです。北区では、7月中に保険料の通知が届き、10月から年金天引きが始まります。高齢者の不安もピークに達することは間違いありません。

そこで、以下5点、区長に質問します。

1つは、保険料の額についてです。政府・与党が何の根拠もなく「大方は従来より保険料が下がる」などとのべてきたことは無責任の極みです。厚労省が4日に発表した調査では、低所得者ほど負担が増え、東京では56%の世帯が値上がり、23区など大都市部では低所得者の78%が負担増となることが明らかになりました。わが党独自の調査では、国保からの値上げ率で北区は全国ワースト10という結果も出ています。そこで実際、北区では保険料はどうなるのでしょうか。将来の値上げの見通しも含め明らかにして下さい。

2つは、東京都広域連合に対し、さらなる保険料の軽減を求めることです。

3つは、北区独自の保険料軽減策です。浦安市では、加入者に年1万円の給付金を助成しています。やる気さえあれば、自治体独自の財源で負担軽減をはかることは可能だと思いますが、いかがですか。

4つは、65~74歳の障害者への対応です。加入辞退の手続きをとらなければ後期高齢者医療制度に強制移行するしくみは改善が必要です。北区ではこの間、加入を辞退した人はどれくらいいますか。また、辞退できることを知らないまま不利益になっている人へのきめ細やかな対応はされていますか。お答え下さい。

5つは、医療内容についてです。医師の裁量や患者の希望があれば「包括払い」を選択せずに従来と同じ治療・報酬にできること、また後期高齢者の葬祭費が削減されましたが、北区では区民の声と運動によって国保と同じ額が支給できるようになったことを、区民に周知徹底して下さい。

以上、区長の明快な答弁を求めます。

区の答弁

次に、厚労省の調査についてのお尋ねですが、この調査は、4種類の世帯類型と3種類の収入区分とを組み合わせた12のモデル世帯について、19年度の国民健康保険の保険料と20年度の長寿医療制度の保険料額の変化を比べたものであり、区としてはそれぞれのモデルの変化しか分かりません。区の事例では、長寿医療制度になって保険料が上昇するものは6モデルとなっています。厚労省の調査のように何%の世帯の保険料が上がるということは、国から詳細な計算方法が示されておらず、また、同じ所得階層の世帯であっても世帯の状況によって保険料は異なりますので、お示しすることができません。

なお、将来の保険料の額ですが、医療費の状況等を検証のうえ、今後広域連合において決定することとなります。

次に、保険料の軽減についてのお尋ねですが、東京都後期高齢者医療広域連合では、保険料の算定にあたり審査支払手数料を保険料に参入しないなど4項目にわたる保険料の軽減策に加え、低所得者に対する所得割額の減額を行っています。

また、このたび、国では、保険料の軽減策を含む見直しを行うこととしています。

これらの対策により、高齢者に対する負担の軽減は図られていると考えます。

次に、65歳から74歳の障害者の加入状況についてのお尋ねですが、老人保険制度で障害認定をお受けの約1300人弱の方のうち、昨年度末の段階で長寿医療への加入をご辞退いただいた件数は、373人となっており、約900人の方が長寿医療制度に加入されています。

加入する医療制度の選択にあたっては、職員が有利、不利を検証したうえで手続きを行っているところであり、4月以降の届出に対しても同様の対応をしております。

診療報酬については、20年度の診療報酬の改定にあたって、75歳以上の高齢者に適用できるものとして医学管理、検査等を包括した後期高齢者診療料が新設されましたが、従来の出来高による診療が受けられないということではなく、このことに関しては今までにも説明会などで周知しているところです。

葬祭費の支給額については、葬祭費支給要綱において、東京都北区国民健康保険条例第11条で定める額としており、国民健康保険と同額を支給することとなっております。

特定健診、特定保健指導は区民本位でおこなうべき

第3に、特定健診と特定保健指導についてです。

日本共産党議員団は、これまでも受診機会の拡充、後期高齢健診をふくめた健診内容の充実と無料での実施などを求めてきました。貧困と格差が広がる下で、劣悪な労働環境におかれた若者の健康被害も問題になっています。すべての世代に手厚い健診と保健指導を提供することが必要です。

このほど、特定健診および特定保健指導について北区の実施計画が定められ、健診受診率を今年度の45%から5年後には65%へ、同じく保健指導実施率を今年度の10%から45%へと引き上げる目標が掲げられました。国の達成目標に準じた設定ですが、問題なのは厚労省が健診や保健指導が目標通りにゆかない自治体に対して保険料アップなどペナルティを課すとしていることです。健診や保健指導では、あくまでも受診者の自覚が大切であり、財政誘導で自治体に縛りをかけるやり方には厳しく抗議すべきです。過度な目標設定で、本来の目的をふみはずすことのないよう求めておきます。

その上で、以下3点について区長に質問します。

1つに、特定健診については、北区医師会との連携でこれまでと変わりのない内容で実施するとともに、目標とする健診率へどのように引き上げてゆくのか、お考えになっている手立てについてうかがいます。

2つに、いよいよ実施が目前に迫っている特定保健指導については、実施主体を含めた準備の状況、区民への周知をどうお考えですか。

次に、国民健康保険の特定保健指導の準備状況ですが、実施については、北区医師会へ委託して行う予定で、現在、北区医師会と詳細な協議に入っており、事務処理を進めているところです。

また、制度の周知については、10月以降、特定保健指導に該当する方々には、利用券を送付するとともに、今後ともいろいろな場面をとらえ、制度の周知を図ってまいります。

3つに、40歳未満の「青年健診」を復活させることを求めます。

お答え下さい。

区の答弁

次に、特定検診・特定保健指導についてのご質問です。

区は保険者として、北区国民健康保険の加入者に対し、特定健診・特定保健指導を実施するとともに、生活保護受給者等については、健康増進法に基づき特定検診に相当する健診等を、これまでと同様に北区医師会に委託して実施します。

区では、特定検診の際にあわせて追加検診項目を実施し、これまでの基本健診と同程度の健診項目を実施します。

特定健診の実施に当たっては、多くの方に受診していただくため、該当者全員に個別に受診券をお送りするとともに、北区ニュース、ホームページ、チラシ、町会・自治会回覧板などで周知を図っています。

また、コールセンターを設置して、健診に対する問い合わせに対応しています。

特定健診やがん検診などにつきましては、法律や指針などを踏まえて、対象者を定め、実施しています。

40歳未満の方への健診は、任意事業になりますので、効果、経費、費用負担などの問題を十分研究していく必要があると認識しています。

東京北社会保険病院、印刷局東京病院など区民のための公的医療の存続・拡充にむけて

第4に、区民のための公的医療の存続・拡充についてです。

区西北部二次医療圏の病床数確保はまったなしの課題です。ところが、東十条病院の経営破たんによる撤退に続き、東京北社会保険病院や印刷局東京病院、多くの北区民が利用している都立駒込病院など公的医療をめぐって、予断を許さぬ状況が続いています。

とりわけ北社保病院については、4月2日に自民党と公明党が、社会保険病院などを年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)へ出資するという「合意文書」を取り交わしたことは重大です。一部に、「整理機構に入ることになったので存続は大丈夫」との声もありますが、大きな間違いです。そもそも整理機構の任務は施設を「譲渡・廃止」することです。その職員も、多くが売却の専門化である不動産関係のプロによって構成されています。整理機構自体も成立の日から5年、すなわち2010年9月には解散することになっており、ここへ出資されたが最後、遅くとも2年後には売却・廃止が確実なのです。

日本共産党は、消えた年金問題の解決にも逆行する社保庁解体の方針には断固反対の立場をとってきました。しかし現実には10月以降、保有者を失ってしまう北社保病院を存続・拡充させるには、政府の責任において運営できるようにするしか手はありません。

また、私たちの会派はこの間、PFI方式採用後、1年で経営破たんに陥った近江八幡市の市立医療総合センターを視察してきました。それまでずっと黒字経営だった市立病院が、民間に丸投げされたとたん、赤字に転落したのです。この市ではいま、PFI方式そのものの再検討を迫られています。病院経営に営利主義を持ち込むことの誤りは明らかです。

公的医療の存続・拡充を求め、以下3点、質問します。

1つに、東京北社会保険病院については、整理機構への出資に反対し、国の責任で病院を保有できるようにするための法改正を強く国に求めること。また、北社保病院の増床を関係機関にはたらきかけることです。

2つに、印刷局東京病院についても公的病院として存続させるため最大限のイニシアチブを発揮することを求めます。

3つに、都立駒込病院のPFI への移行をはじめ、公的機能を骨抜きにする都立病院再編計画に対し、これを中止するよう東京都へ働きかけることです。

区長の明確な答弁を求めます。

区の答弁

次に東京北社会保険病院及び印刷局東京病院についてのご質問にお答えいたします。

平成19年6月に成立した社会保険庁改革関連法案により、社会保険庁は平成22年1月までに廃止されるため、社会保険病院を保有できるのは、平成20年9月までとなっています。

その後については、与党社会保障政策会議が、「社会保険病院及び厚生年金病院については、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)に出資することとする」「出資された病院については、安定的な経営を図ることを基本に、適切な譲渡先を検討し、その確保を図る」という方針で合意したと伝えられています。

一方、国立印刷局東京病院は、昨年12月に閣議決定された「独立行政法人整理合理化計画」において「他の医療機関等への移譲に向けて取り組むこととする」とされています。

いずれの病院も北区民の健康と福祉を守るためにはなくてはならない施設です。

印刷局東京病院については、先日、財務大臣に対し、要望書を提出してまいりました。

また東京北社会保険病院につきましても、適切な時期に、適切な対応を図ってまいりたいと考えております。

今後も、政府の動向を充分注視し、区議会や医師会ともご相談しながら両病院の医療機能の確保に向けて、全力を挙げて取り組んでまいる所存です。

次に都立病院再編計画についてのご質問にお答えいたします。

現在東京都は、医療をめぐる環境の変化等に対応するということを目的として第2次都立病院改革実行プログラムを推進しています。北区といたしましては、西北部二次医療圏における基準病床数の確保等について東京都の適切な対応を求めるとともに、区内の医療機能の存続に、全力を挙げて対処してまいります。

よりよい介護、福祉の実現のために

3番目の質問は、よりよい介護、福祉の実現についてです。大きく3点うかがいます。

事業計画からかけ離れた介護保険の運営は是正すべき

まずはじめに、介護保険事業計画についてです。

日本共産党議員団は、3年間で84億円の給付費を余らせるという異常な北区の介護保険運営の改善をくりかえし迫ってきました。とりわけ、区も一定の改善を図ってきたという介護認定の問題では、目に見える改善がみられないばかりか、いまだにランク下げの実例が後を絶ちません。今年度は第3期事業計画の最終年度であるとともに、第4期計画の策定がおこなわれる年度でもあります。これまでの問題点を総括し、抜本的な改善をはからなければなりません。

そこで、2点についてうかがいます。

1つに、全国に例を見ない北区の異常な介護保険運営の原因がどこにあると考え、第4期計画ではどう改善しようとしているか、お答え下さい。

2つに、北区では、第3期事業計画終了時までに介護保険基金積立金の残額が30億円に達することは間違いありません。第4期事業計画の策定にあたって、保険料を大幅に引き下げるべきだと思いますが、いかがですか。

区の答弁

次に、介護保険の質問にお答えします。

まず、第3期の介護保険運営において、保険給付費の実績が計画値を下回った主な理由は、事業計画の策定に当たり、平成16年度までの要介護認定者数と給付費実績の大幅な伸びを前提に見積もりを行ったこと、また、地域密着サービスの基盤整備が計画通りに進捗しなかったことなど、さまざまな要因があると考えております。

第4期介護保険事業計画においては、こうした課題を検証し、適切な給付費の算定を行うとともに、高齢者実態調査アンケート等を活用して、高齢者の生活実態やサービスの利用状況を十分に踏まえたうえで、計画の策定をおこない、区民の皆さまから信頼される事業運営に努めてまいります。

なお、介護給付費準備基金につきましては、第4期における介護保険料の軽減に活用することなどが考えられますが、区議会のご意見等を踏まえながら、今後、介護保険運営協議会で具体的な検討を進めてまいります。

介護保険利用者に北区独自の負担軽減策を求める

介護・福祉の問題の第2は、介護保険利用者への北区独自の負担軽減策についてです。

先日、介護保険料・利用料の軽減や独自のホームヘルプサービスにとりくんでいる渋谷区を訪ね、お話をうかがいました。区民税非課税世帯の各段階ごとに設定された保険料を一律2割軽減、利用料については所得制限付きですが、居宅サービス自己負担分の70%分、入所サービスの25%分を助成しています。さらに、ホームヘルプサービスでは訪問介護の時間延長、同居家族がいることを理由にサービスが利用できない方への生活援助、通院などの外出介助と「痒いところに手が届く」区独自のヘルパー派遣をおこなっています。

渋谷区では、改悪された介護保険制度に悲鳴をあげる区民の声に、区長自らが独自軽減策を議会に提案したとのことです。要は、区のやる気です。

そこで、区長に質問します。

1つに、北区でも4期の計画待ちにせず、今すぐ介護保険料や利用料の負担軽減にふみきるべきではありませんか。

2つに、私たちの会派が繰り返し求めてきた区独自のヘルパー派遣も、いよいよ実現すべき時だと思いますが、いかがですか。

以上、2点についてお答え下さい。

区の答弁

次に、介護保険料や利用料の負担軽減策についてお答えいたします。

北区では、税制改正の影響により介護保険料の所得段階が上昇した方について、今年度も、激変緩和措置を継続しております。

また、利用料につきましても、国のいわゆる社会福祉法人等利用者負担軽減制度及びこれを拡大した東京都の制度を活用して、生計困難者に対する軽減策を実施してきております。

新たな負担軽減策につきましては、第4期介護保険事業計画の策定に合わせて、区議会や区民の皆さまにご意見をいただきながら、検討させていただきます。

なお、低所得者に対する負担軽減策につきましては、国の責任で行うことが基本であると考えますので、全国市長会の重点要望として、国の責任において抜本的な見直しを行うように要望しております。

また、ヘルパー派遣など日常生活の支援を中心とした効果的なサービスの必要性については、老人保健福祉計画及び、介護保険事業計画を策定する中で、既存のサービスの検証も踏まえ十分ご議論いただきたいと考えております。

介護・福祉の人材不足を打開するために

第3は、介護・福祉の人材不足打開の問題です。

東京都は9日、介護施設の経営実態調査結果を発表しました。これによれば73%の特養ホーム、72%の老健施設が緊急に解決の必要な課題として「人材確保」をあげています。「給与水準が低い」というのが最大の理由ですが、介護保険の改悪と相つぐ報酬切り下げが引き金になっています。都はこの日、調査結果を受けて、介護報酬の引き上げなどを求める緊急提言を厚労省に提出しました。東京都社会福祉協議会も「東京の介護を守るために」と題した大集会を今月21日、都内で開催することを決めています。

北区でも、職員の人材不足から特養ホーム入居者を定員通り受け入れられない例や、予算計上もしていた老健施設が建設直前になって人材確保の見通しがつかずに撤退するなどの事態が生まれています。まったなしの介護・福祉の人材不足打開にむけて、3点質問します。

1つは、国に対し福祉労働者の賃上げ、介護・支援費の報酬引き上げ、職員配置基準の改善を強く求めることです。

2つは、今年度新規にとりくむ「福祉人材確保支援事業」がどう具体化されているか、お答え下さい。

3つは、介護・福祉の人材不足打開にむけた区独自の対策をおこなうことです。例えば千代田区では、今年度からパート職員確保のための時給引き上げ分や介護職員の住宅手当などを助成しています。北区でもこうした施策を実現すべきではないでしょうか。

以上、区長の前向きな答弁を求めます。

区の答弁

次に、介護・福祉の人材不足の打開についてお答えいたします。

まず、国への要望についてです。

介護や福祉の現場で働く人材の確保は、介護サービスの質を向上していくために最も重要なものであり、給与をはじめとする処遇面の改善に向けた国の取組みが不可欠であると考えております。

そこで、全国市長会の要望として、次期介護報酬の改定に当たっては、都市自治体の意見を十分踏まえて設定するように国に要望いたしました。

さらに、特別区長会においても、地域間の格差を是正するための報酬加算率を実情に見合ったものに改定し、都市部の実情に合った介護報酬とするとともに、利用者への直接的な影響を抑制するための方策を講じることを国に要望することといたしました。

なお、職員の配置基準につきましては、実態を踏まえたものに改める必要があると認識しておりますが、介護報酬の設定や保険料の引き上げに直結するものであることから、総合的かつ慎重な検討を行いながら、必要があれば要望等行ってまいります。

次に本年度に実施予定の「福祉人材確保支援事業」についてのご質問にお答えいたします。

本事業は、社会福祉協議会と共同で、福祉の仕事の理解を深めるためのイベントや、求人合同面接会などを開催し、北区内の福祉施設の人材の確保を図ることを目的として実施するものです。

事業の詳細につきましては、所管委員会でご報告させていただきます。

次に、人材不足打開に向けた区独自の対策についてです。介護・福祉の現場で働いている方の処遇について、区から直接、金銭的な助成をすることは、その対象や基準の設定など、困難な点も多いと考えております。

貧困と格差の是正へ――人間らしい働き方、ワーキングプア根絶を求めて

4番目の質問は、貧困と格差是正の問題についてです。

私は、これまでも議会でワーキングプア、「ネットカフェ難民」など貧困に陥った労働者の問題をとりあげてきました。いま、戦前に書かれた小林多喜二の『蟹工船』が大ブームといわれています。「おい、地獄さ行ぐんだで!」という漁夫の言葉で始まるこの小説には、ソ連の領海で取った蟹を缶詰にする大型漁船を舞台に、非人間的な奴隷労働の実態がまざまざと描かれています。これが、人間を「使い捨て」にする現代の労働現場と酷似しており、現状からぬけだすために労働者が団結してたたかう姿に共感が集まっているのだといいます。

いま雇用をめぐっては、規制緩和一辺倒だった与党からも規制強化を求める声が上がり始めています。舛添厚生労働大臣は13日、日雇い派遣について「気持ちから言えば、もうやめる方向でいくべき。厳しい形で考え直すべきだ」とのべ、臨時国会に労働者派遣法改正案を提出する考えを明らかにしました。労働者の声に押され、大手企業も正社員化・直接雇用化を促進せざるを得なくなっています。「潮目が変わった」ともいえる情勢の下、東京都の生活安定化総合対策事業もいよいよ補正予算に計上されました。この機をとらえ、北区としても人間らしい働き方をとりもどすための積極的な施策にとりくむことを求めるものです。

以下、3点質問します。

1つは、労働者派遣法を「労働者保護法」へと抜本的改正をはかるよう国に求めることです。

2つは、東京都の新規事業の一環となる「生活安定応援事業」の実施にあたって、区内に複数の相談窓口を設けるとともに、制度について周知徹底すること。また、低所得就労者への家賃補助制度など区独自の上乗せ施策も検討することを求めます。

3つは、リニューアルした「赤羽しごとコーナー」の活用と若者・女性就労支援のさらなる前進にむけた課題です。具体的には、赤羽しごとコーナーに専門相談員を配置するとともに「ポケット労働法」を常備すること。予定されている若者・女性むけ就労セミナー、若者就職サポートフェスタがどう具体化されているかについてお答え下さい。

区の答弁

次に、貧困と格差の是正に関するご質問に、順次お答えさせていただきます。

まず、労働者派遣法に関しましては、日雇派遣を含めた登録型派遣につきまして、雇用が不安定であるといった問題などが指摘されております。

そうした中、国においては、先週末、厚生労働大臣が日雇い派遣を原則禁止する方向性を明らかにするとともに、その内容を盛り込んだ改正案を今秋の臨時国会に提出するとの意向を示したところです。

区といたしましては、そうした国の動向を注視しつつ、今後も、雇用対策、就労対策の充実について、必要に応じて、国や東京都に要望してまいります。

次に「生活安定化応援事業」についてのご質問にお答えいたします。

本事業は、東京都の事業である「生活安定化総合対策事業」の一環として、区内に窓口を設置し、低所得の方々に対し生活相談、就業支援等を実施するものです。

窓口につきましては、来所される方々の利便性を考慮して、検討をいたしました結果、赤羽高架下への設置を予定しております。

また今後、事業開始に向けて、東京都と協力して周知・PRに努めるとともに、来所される区民の皆さまには、他の貸付制度をはじめとした関係施策の紹介なども行い、丁寧な対応に努めてまいります。

次に、赤羽しごとコーナーの活用に関してですが、赤羽しごとコーナーでは、ハローワークの職員が専門相談員として、就職相談や職業紹介などを行っております。

また、ご指摘の「ポケット労働法」につきましては、只今、配置に向けて手配をしているところです。

それ以外のリーフレットなどの配置とともに、これからも就職に関する資料の充実に努めてまいります。

さらに、今年度におきましても、ハローワーク王子との共催で、若者向け就職セミナーを7月から9月にかけて、また、女性向け就職セミナーを11月から12月にかけて、それぞれ、4日間程度の日程で実施すべく、準備を進めているところであります。

若者就職サポートフェスタにつきましては、ハローワーク王子や王子労働基準監督署、さらには、都立職業能力開発センター赤羽校の3関係機関と共催で、11月頃をめどに、昨年同様の内容で実施する予定となっております。

今後も、これまで以上に関係機関との連携を図りながら、可能なところから、区としての雇用対策に取り組んでまいります。

"効率第一"の弊害が明らかな「経営改革プラン」は抜本的に見直し、区民福祉の向上を

5番目の問題は、「経営改革プラン」の抜本的見直しについてです。大きく3点うかがいます。

正規から非正規への流れを止めるとともに、非常勤職員の待遇改善を求める

その第1は、職員の非正規化の流れを止めるとともに、非常勤職員の待遇改善をはかることです。

日本共産党議員団は、「経営改革プラン」が求める人件費削減、外部化の中で、非正規職員がすでに全職員の3分の1にのぼっている実態を告発し、その待遇改善を求めてきました。今年度、一部職種での給与の引き上げなど一定の前進はみられるものの、いまだ正規との「均等待遇」にはほど遠い状況です。

そこで、質問します。

正規職員から非正規への流れを止めるとともに、雇い止めの廃止、賃金の引き上げなど非正規職員の待遇改善をさらにすすめるべきだと思いますが、いかがですか。お答え下さい。

区の答弁

次に、北区で働く非正規職員の待遇等につきましてのご質問にお答えさせていただきます。

非常勤職員の採用等につきましては、必要とする職務の内容等を踏まえて、適切に対応しております。

雇用期間につきましては、採用時や更新時に明確に説明し本人の了承をいただいております。

報酬、賃金などの待遇につきましては、20年度の当初予算におきましては、子ども家庭支援センターの支援ワーカー、あるいは学校給食調理栄養士、中央図書館のほうに設置をいたします地域資料専門員、これらについて非常勤の単価のアップを図っているところでございます。

国や他自治体の動向、社会状況などを見ながら今後とも、適切に対応してまいります。

「官製ワーキングプア」を生み出し、区民サービスの低下につながる指定管理者制度は根本的な再検討を

第2は、指定管理者制度の問題です。

指定管理者の導入は、今年度までに98施設にのぼります。私たちの会派ではこの間、これらの施設を直接訪問し、独自の聞き取り調査を進めてきました。始めたばかりの調査ですが、見えてきたのは次のことでした。

1つ。人材確保に大きな困難がともなうこと。ある施設では定員割れを起こしており、担当者が「正社員は最初から無理。せめてパートをとりたいが、限られた指定管理料の中では区が示す水準の給与は出せない。結果として区より100円安い時給で募集をかけざるを得ない」と嘆いていました。

2つ。3年から5年の期限つきでは、まともに人を育てられないこと。「しっかりした働き手を育てたいが、給与を上げると競争に負けてしまう。次の公募で継続できるかわからないので、職員にも不安感がつきまとう」などの悩みが出されました。

3つ。壊れた建物や設備も思うように直せないこと。ある施設では空調が壊れているのに「修繕費の枠が限られているので、一年待ってくれ」といわれているそうです。

訪問した指定管理者はどこも、区民の要望にこたえてよりよい仕事をしようと一生懸命でした。同時に、限られた条件の中ではやりくりが大変という、率直な胸の内を語ってくれました。「しばられている感じ。身動きがとれない」――ある施設の責任者が漏らした一言が、この制度の本質を突いていると感じました。区が繰り返す「競争によって経費が削減でき、サービスも向上する」との謳い文句は、まるで実態にあわない絵空事でしかありません。

営利目的の株式会社を公の施設に導き入れる危険性についても指摘しなければなりません。東京都が保育への企業参入を拡大するために導入した認証保育所の現場では、職員の架空申請など不正が発覚、保育内容や設備にも重大な問題点のあった保育園が認可取り消し処分を受けました。北区にも児童館などに次々と株式会社が参入しはじめていますが、福祉と儲け本位とは絶対に相容れません。

私たちの議員団は、島根県・安来市を視察し、いったん指定管理にした市立図書館を「直営の方が運営しやすい」と、昨年から市の直接管理に戻している事例について調査しました。このように「官から民へ」とあおられて決めた早計な判断を、今になって冷静に見直す自治体も生まれています。

これらをふまえ、区長に3点質問します。

1つは、問題点が明らかな指定管理者制度については、今後の計画を抜本的に再検討すべきと思いますが、いかがですか。

2つは、すでに指定管理に移行した施設については、安定的な雇用と人材を確保するため、2年目以降も人件費や職員の配置状況について区への定期的な報告を義務づけることを求めます。

3つは、福祉の現場に営利を目的とする企業の参入を許してはなりません。児童館などの施設については、保育園と同じように、応募の時点で条件をつけ株式会社を排除すべきではありませんか。

はっきりとお答え下さい。

区の答弁

次に、指定管理者制度のご質問についてお答えします。

区では、北区経営改革プラン、北区指定管理者制度ガイドラインに基づき、多様化、複雑化する区民ニーズに、より効果的、効率的に対応するため、平成18年度から順次、公の施設の管理に、指定管理者制度の導入を進めてまいりました。

導入後については、担当所管課による定期的なモニタリングの実施、また、指定管理者との意見交換や協定書に基づく協議など、良好なパートナーシップの形成を図りつつ、管理運営にあたっております。

今後も、施設の設置目的に照らし、より良いサービス提供をより効果的に行うべく、必要に応じて指定管理者制度の活用を図ってまいりたいと考えております。

次に、指定管理者から区への定期的な報告の義務付けについてです。

区では、指定管理者との協定書において、毎年度終了後に、実施状況や利用状況など、事務報告書の提出を義務付けています。

また、「モニタリング・評価制度」に基づき、毎年度、施設への現地調査、指導を実施し、その際、サービスの提供に必要な従事者数の配置について確認しております。

今後も、指定管理者によるサービスの安定的提供を図るため、協定書の遵守やモニタリングによる指導、監督の徹底を図り、管理運営状況の継続的な把握に努めてまいりたいと考えております。

次に、児童館の指定管理者の応募条件から、株式会社を排除すべきとのご質問です。

児童館は、遊びをとおして地域の児童の健全育成を推進するため、幅広い活動が求められている施設です。

そのため、指定管理者には、自由な発想による多様な事業提案を期待して、さまざまな法人からご応募いただけるよう、応募条件を定めさせていただいています。

過去最高の348億円を超えた積み立て金は、一部をとりくずして区民のくらし・福祉を守るために活用すべき

第3に、積み立て金の活用についてです。

「経営改革プラン」は、「北区基本計画」実現にむけた財源確保を目的に掲げています。しかし、いくら夢を語ろうとも官製ワーキングプアを生み出す外部化や人件費削減、福祉やサービスの切り捨ての上に成り立つ計画では、本末転倒です。この間、「効率化」を推し進める一方で、区の積立金は348億円と、北区政史上最高額に達しました。これら基金のほんの一部を使うだけでも区民のくらし・福祉を応援する政策がいくつも実現できるはずです。

そこで、区長にうかがいます。

過去最高の348億円を超えた積み立て金は、一部をとりくずして、区民のくらし・福祉を守るために活用すべきではありませんか。

お答え下さい。

区の答弁

次に、積立金の活用についてです。

税収等の見通しが不透明な中にあって、少子高齢化をはじめとする様々な課題を解決するための行政需要は、ますます大きくなるものと見込まれることから、今後とも、施策遂行の裏付けとなる重要な財源の一つとして、基金を積み立て活用してまいります。

平成20年度当初予算におきましても、91億円を基金から取り崩して、直面する課題解決に向け必要な経費を計上するとともに、多くの新規事業、レベルアップ事業を予算に計上しており、区民の福祉向上に活用しました。

財政運営にあたりましては、今後とも、中長期的な視点を踏まえ、継続性も重視しながら、実施すべき事業は実施するという姿勢で臨んでまいります。

被爆者の願いにこたえ、平和を発信する北区に

最後の質問は、被爆者の願いにこたえ、北区から平和を発信することについてです。

いま全国の被爆者が「これが最後」との思いで原爆症認定集団訴訟をたたかっています。厚労省は、国が敗訴した仙台、大阪両高裁判決について上告を断念したものの、被爆者が望む原告全員の認定と基準の根本的見直しには背を向ける態度をとっています。私は、被爆者の体験を風化させてはならないとの思いから、15年以上にわたり北区で被爆体験の聞き取り活動にとりくんできた一人として、いまこそ被爆者の願いにこたえるときだと訴えたいのです。

そこで、うかがいます。

1つ。国に対して、被爆者認定基準を原爆被害の実態に即したものに抜本的に改定し、集団訴訟の全面解決を強く求めるべきだと思いますが、いかがですか。

2つ。広島、長崎の平和祈念式典への北区代表の派遣、区民による被爆体験の聞き取り活動への援助など、北区として被爆者の願いにこたえるとりくみを積極的にすすめることを求めます。

区長の断固とした決意をお聞かせ下さい。

以上をもって、私の質問といたします。ご清聴、ありがとうございました。

区の答弁

次に、原爆症認定の問題についてですが、今春から、国において、認定条件を緩和した新しい認定基準の運用がなされているところです。

原爆症の認定に関しては、国の責任において対応していくべきものと考えており、今後の裁判や国の対応を見守り、必要な場面には、議会にご相談申し上げ、区として対応してまいります。

次に、被爆者の願いにこたえる取り組みにつきましては、北区は、平和祈念週間事業として、多くの区民の皆さまによって作られた千羽鶴を永年にわたって、広島、長崎の両市に贈り続けています。また、原爆体験をもとに、生きる喜びや平和への願いを描いた映画を平和祈念週間イベントとして上映するなど、被爆体験を風化させることなく、恒久の平和を願い事業を実施しています。

今後も、平和都市宣言を行った北区としての活動を展開してまいります。