プロフィール

2010年3月23日

2010年第1回定例会 2010年度予算に対する反対討論

私は、日本共産党北区議員団を代表して、2010年度東京都北区一般会計予算ならびに国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計の各予算に反対の立場から討論を行います。

「どうしたら政治は変わるのか」――2つのゆがみ正す日本共産党の立場

昨年夏の総選挙で、古い自公政権から民主党中心の連立政権へと交代してから半年が経ちました。「政治を変えてほしい」「生活をなんとかしてほしい」と願った国民、区民の熱い思いは今、急速に冷えつつあります。鳩山内閣は、国民の願いにこたえる政策を部分的に実現はしたものの、後期高齢者医療制度の廃止は先送り、「政治とカネ」をめぐる問題でも自浄能力のなさを露呈しました。米軍普天間基地問題では混迷・迷走を繰り返し、無条件の基地撤去を求める地元沖縄の声に正面からこたえようとしていません。「使い捨ての働かせ方に厳しい規制を」と、労働者派遣法の抜本改正を望む労働者の前にしめされたのは、抜け穴だらけで実施も先延ばしの改正案です。「期待外れだった」という失望の声も当然ではないでしょうか。

その一方で、「前の政権はよかった」とか、「早く自公政権にもどってほしい」という声は、ほとんどといってよいほど聞こえてきません。今、国民は、どうしたら本当に政治を変えられるのか、真剣なまなざしで政局を見守っています。

日本共産党は、民主党政権も、それ以前の政権も手をつけることができなかった日本政治の2つのゆがみを正すことで、「国民が主人公」の新しい日本をつくろうと提案しています。1つは、大企業だけが富を独り占めする経済システムを大本から改めることです。この10年間で229兆円にも膨れあがった大企業の内部留保を国民の暮らしに還元させ、「ルールある経済社会」を築くことが必要です。いま1つは、日米軍事同盟を廃棄し、対等・平等、真の友好で結ばれた日米関係に転換することです。安保改定から50年が経ちました。アメリカいいなりの異常な日米同盟を、いまこそ根底から見直すべき時です。

新年度予算に盛り込まれた切実な区民要望は評価する

今回の北区新年度予算の審議にあたって日本共産党北区議員団は、こうした政治情勢をふまえながら、区民の生の声から出発し、その願いの実現を迫る立場で臨んできました。わが党は昨年末、区内で活動するさまざまな団体から要望を聞き、4つの柱、351項目にわたる予算要望書をまとめ、区長に提出しました。年明けからは、区内全有権者を対象にした「北区民アンケート2010」にとりくみ、現在までに1600人以上の方々から回答を得ています。ここには、現在の区政に対する強い要望や意見がびっしりと書き込まれています。

区が示した新年度予算には、わが党が、区民のみなさんといっしょに求めてきた要望が少なからず盛り込まれています。新借換え融資、キャリアアップ講座、中高年向け就職支援セミナーなど中小企業や就労支援を軸にした10億円の緊急景気対策、地域包括支援センターの増設、多床室を含む新町中跡地の特養ホーム建設、認可保育園増設など待機児解消への一定の努力などは、評価できるものです。

しかしながら、以下にのべる理由から、新年度一般会計予算について反対いたします。

反対理由の第1。いまだに「構造改革」路線にしがみついていること

第1の理由は、破たんした「構造改革」路線にしがみつき、従来の北区経営改革路線から転換をはかろうとしていない姿勢です。

昨年の総選挙で、自公政権が退場を迫られた決定的な理由のひとつが、国民に痛みをおしつけてきた「構造改革」路線への怒りでした。特に小泉内閣以来の歴代政権は、新自由主義路線を突き進み、ワーキングプア――「働く貧困層」が1000万世帯を超える異常な格差社会をつくりだしました。今になって「構造改革」の旗振り役をつとめてきた学者からも“懺悔”の声が聞かれるようになり、ゆきすぎた市場原理主義への批判はいっそう広がっています。

この間、地方自治体も「構造改革」路線の渦の中に巻き込まれてきました。財政再建団体に陥った夕張市を例にあげ、「これからは自治体も『経営改革』が必要だ」と執拗にせまってきたのが「構造改革」推進派です。職員の削減と外部化によって人件費を浮かせ、住民には受益者負担を求めることで自治体財政の「健全化」をはかろうというのがねらいでした。

この自治体版「構造改革」路線は、住民や地方自治体の側から出てきたものではありません。その仕掛け人は、財界・大企業です。私は、予算審議の中で、経済同友会が2007年6月に発表した提言『基礎自治体の経営改革』という報告書を紹介しました。経済同友会といえば、企業経営者の代表であり、財界・大企業の代弁者です。報告書では、「『自治体運営』から『自治体経営』への転換」「官民『協働』による地域経営」とのスローガンで、自治体の営利企業化を図り、公の仕事を民間企業に開放することを、あからさまに求めています。また、事業仕分けや民間委託などの手法、さらには「民間に事業を開放していく際には、その能力が最大限に発揮できるように、規制撤廃や既存業法の見直しを徹底し、行政による関与を最小限に抑える」ことまで指図しています。ここには、自治体を食い物にして利潤追求をはかろうという民間大企業の営利的ねらいがはっきりとしめされています。

北区は、この路線を「北区経営改革プラン」として忠実に具体化し、これまで23区でも突出した110の施設に指定管理者を導入するなど一路外部化路線を進んできました。そして、このほど2010年を起点とする長期計画、「北区基本計画2010」にあわせて、経営改革「新5か年プラン」の策定にいたりました。この新プランは、「構造改革」路線をそのままの形で続けるばかりか、さらにふみこんで徹底しようという点で、きわめて重大です。

私は、予算審議の中で明らかになった問題点を、端的に3つ指摘いたします。

問題点の1つは、これまでも矛盾が噴出している指定管理者制度について、真剣な総括がないまま、保育園や児童館などに導入を拡大してゆく計画となっていることです。

この間、実質1年限りの雇用形態や保育内容の一方的な改変で、半数もの職員が退職した保育園、各地で事故や不祥事を繰り返し、コンプライアンスすら投げ捨てた株式会社など、指定管理者制度の根幹が問われる事態が起きています。来年度からモニタリングに公認会計士、社会保険労務士といった外部委員を加え、より精度の高い検証をおこなうとしていることは多としますが、こうした問題が発生する原因を、制度の根本に立ち返って検証する必要があると、わが党は繰り返し指摘してきました。十分な総括がないまま、毎年、保育園や児童館などに指定管理を広げてゆくことは認められません。

問題点の2つは、これまでのプランにはなかった新たな外部化や経営改革の手法にふみこもうとしていることです。

「新プラン」では、給与事務や戸籍事務、出納事務など区民と職員のプライバシーに関わる部門にまで外部委託を検討することとしています。個人情報の漏えい事件が頻発している昨今、ここまで外部化することが必要かと疑わざるを得ません。また、どの図書館にも専門性をもった司書を配置することが求められている時に、すべての地区図書館から正規職員を引き上げ、外部委託を拡大する方針は、逆行です。市場化テストは「官」と「民」を競わせ、入札によって公共サービスの担い手を決めるというもので、あけすけな民間開放を求めるものですが、法律に基づく実施は全国わずか3例にとどまっています。「新プラン」では、これも引き続き検討となっています。さらに、「新たな経営改革手法の検討」という新項目が付け加わり、「構造改革」路線への固執が見て取れます。これ以上の外部化に道を開くやり方は、認めることができません。家庭ごみの有料化についても引き続き検討となっており、さらなる区民負担増が懸念されます。

問題点の3つは、北区発「官製ワーキングプア」をつくりだしていることに反省がないことです。

区は、指定管理者制度の導入によって「18年度は約6千万円、19年度は約2億2千万円、20年度は1億6千万円、21年度は新たに9千万円程度のコスト削減が見込まれています」とのべています。これらのコスト削減は、なにによってもたらされたのでしょうか。その圧倒的部分が人件費の削減であることは明らかではありませんか。

1999年に派遣労働の原則自由化、2004年に製造業への解禁など、旧政権のもとで労働者派遣法が繰り返し改悪され、正社員から非正規社員への大規模な置き換えがすすめられてきました。人件費を浮かせることで、民間大企業は大もうけをあげ、長期にわたる不況の中でも内部留保を過去最大の規模に膨らませることができました。国の規制緩和路線が、大量のワーキングプアを生みだすことになったのです。

自治体でもこの構図は同じです。これまで経験豊富な職員があたっていた公の仕事を、指定管理者制度や外部委託で民間法人にまかせることによって、人件費の大幅な削減を実現できるようになりました。昨年、放置自転車の移送・管理業務に携わってきた業務委託の株式会社が、突然の倒産と賃金未払いという大きな問題を起こしました。この会社は、雇い入れた労働者を実質最低賃金以下の給与で働かせていました。区は「民間のノウハウ」を活用するといいますが、これは、いかに人件費をかけずに利益をあげるかという「ノウハウ」に他ならないのです。予算審議では、わが党が北区発「官製ワーキングプア」を生みだしていることを指摘し、改善を求めたのに対し、区の当局から前向きな答弁は出されませんでした。

なお、わが党は審議の中で、5年で「雇い止め」になっている非常勤職員について、他の区では東京都が新たに出した「見解」にもとづいて次々と改善が図られている事実をしめしました。北区でも6年目の更新にあたる募集で、同じ非常勤職員を雇い入れた例があるとのことです。ただちに全庁的な「見解」の徹底と、改善をおこなうよう求めるものです。

反対理由の第2。負担増を区民におしつけ、独自の軽減策が不十分なこと

一般会計予算に反対する第2の理由は、区民に負担増を迫りながら、独自の軽減策がきわめて不十分であることです。

来年度は、住民税フラット化にともなう経過措置が終了、子ども手当と高校授業料無償化の実施と引き換えに年少扶養控除が廃止されることなどから、所得税・住民税が増税となります。加えて、国民健康保険料は一人あたり年間6198円の引き上げ、後期高齢者医療保険料は4165円の引き上げで、区民負担増に拍車がかかります。わが党は、代表質問や予算審議を通じて、高すぎる保険料を軽減するために、積極的に国にはたらきかけるとともに、区独自の軽減策をとるよう求めてきました。しかし区は、「国の制度だから致し方ない」と、消極的な姿勢に終始しました。

いま、保険料の負担に加え、医療費の窓口負担に耐えられず、診療を自ら中断するなど深刻な医療抑制が起こっています。日本共産党は国会でも、国民健康保険証を手にしていながら高い窓口負担のために医者にも通えず、命を落とした事例などがあることをしめし、先進国では当たり前の医療費窓口負担をゼロにすること、当面は高齢者と子どもの医療費無料化を、国の制度として実現することを訴えています。 区は、「財政が大変だから」といいます。しかし、北区の積立金はすでに371億円と過去最高の規模に達しています。区民の暮らしと命に責任を負う地方自治体として、東京都からの財源確保に全力をあげるとともに、積立金の一部をとりくずしてでも、区民負担増をやわらげる対策に本気でのりだすことを要望します。

なお、予算審議の中で区は、経営改革「新プラン」とは別に、2011年度から毎年20億円規模の財源確保対策を講ずることを強調しました。歳入、歳出において適切な見直しをおこなうことは必要ですが、財源不足を理由に、区民の暮らしを守るための施策を後退させたり、区民に新たな負担を強要することがないよう求めるものです。

反対理由の第3。庁舎問題で区民合意への努力をつくさないまま拙速に改築方針を決定したこと

一般会計予算に反対する第3の理由は、庁舎問題で区民合意への努力をつくさないまま、拙速に改築方針を決定したことです。

昨年から本格的な審議が続けられてきた庁舎問題ですが、わが党は、この3月3日に開かれた庁舎のあり方検討特別委員会で、「改築」を基本方向とする区の方針を了承することに反対しました。それは、区民の合意がはかられないままに方針を決定することは、「区民とともに」という区の基本姿勢に反するからです。

わが党は、改築そのものに反対しているわけではありません。現在の庁舎の耐用年数は15年程度であり、耐震性にも大きな問題があります。やがて改築を考えなければならない時期が来ることは明らかです。同時に庁舎改築は、多額の税金を必要とするだけに、区民の理解と合意をぬきにすすめることはできません。しかし、この間の区の対応は、残念ながら最も基本的な区民合意への努力という点で課題を残すものとなっています。

その1つは、そもそも区民の意見を十分に集約していないことです。昨年夏の「北区ニュース特集号」による区民アンケートに続き、年末から年明けにかけてパブリックコメントがおこなわれました。アンケートの回答数537に対し、パブリックコメントは154件、提出者の数では54人にとどまりました。わが党が独自におこなった区民アンケートでは、昨日現在1207人分の集計で、庁舎の検討について「知っている」と答えた方が48.4%、「知らない」と答えた方は51.6%です。ようやく区民の半数が関心を持ち始めたところであり、意見の集約はこれからが正念場です。意見を提出しやすいように改善し、期間を延長して、パブリックコメントを継続すべきではないでしょうか。

2つに、寄せられた意見をみると、必ずしも改築の方向でまとまっていないのに、区が「区民の意向はおおむね把握できた」としていることです。パブリックコメントで寄せられた154件の意見のうち、「改築」すなわち、C案とD案を支持する意見は、3分の1足らずにすぎません。わが党のアンケートでも、「D案に賛成」と答えた方が13.7%、「その場で建て替えた方がよい」と答えた方が20.8%、あわせて34.5%で、やはり改築支持は回答者の約3分の1です。これらの結果から、庁舎問題を知っている人の中でも3人のうち2人は区の方針を受け入れていないことがわかります。予算審議で、私が「区民の気持ちは、まだ改築の方向でまとまっていないのではないか」と質したのに対し、区は「理解はいただいている」とのべましたが、根拠に欠ける答弁だと思います。

3つに、北区が区民への説明責任を果たしていないことです。改築を支持しない方のうち、最も多い意見が、現在の経済情勢と財源に関するものです。わが党のアンケートに寄せられた声をいくつか紹介いたします。

――「不況の中でも区民の生活、若者の就職等に財源を使ってほしい。一番大事な時期に建て替える必要はない」

――「区民一人ひとりの生活が苦しい中、少しでも税金の使い道を工夫してもらいたい」

――「税金をこれ以上払うと、生活が成り立たない。北とぴあに金をかけたのだからもういい。文京区のような庁舎を建てない北区が誇らしかった」。

どれも解説のいらない訴えです。肝心なことは、こうした考えを持っている区民に対し、なぜ庁舎の改築が必要なのか、どれだけの財源をどう捻出しようとしているのか、区民への負担はどれくらいになるのか、などについて、区が真摯に説明することではないでしょうか。ところが、実際の区の対応は、年末に予定されていた「まちかどトーク」も取りやめてしまうなど、きわめて消極的なものでした。今からでも遅くはありません。庁舎問題について、区民むけの住民説明会を開くよう強く求めます。

以上のことから、庁舎問題では「区民とともに」という基本姿勢において、大きな問題があると考えるものです。区は検討の当初から、「移転・建替え」を誘導し、11月にはD案による改築方針を決定しようとしましたが、区民意見や議会での議論をふまえて、C案もしくはD案による改築方針へと、若干の軌道修正をおこないました。今後、基本構想を検討する審議会などもつくられると聞いていますが、公募の区民代表を委員に加えるなど、区民意見を十分にふまえた運営とすることを求めておきます。

なお、来年度から暫定耐震補強工事のための予算が盛り込まれたことについては、わが党がくりかえし提案してきたことでもあり、評価いたします。

いくつかの要望について

次に、予算審議の中で焦点となったいくつかの点について、要望をしておきます。

1つは、平和をめぐる問題です。5月にニューヨークで開かれるNPT再検討会議を前に、核兵器廃絶にむけた新たな機運が盛り上がっています。この機をとらえ、北区平和都市宣言を「非核」平和都市宣言とすることを求めます。来年度、自衛隊跡地にできる「赤羽スポーツの森公園」の区民利用が始まりますが、戦前の軍都・北区から平和都市・北区への転換を象徴的にしめす施策として、歓迎するものです。

2つは、地域医療の砦を守ることです。東京北社会保険病院を公的な病院として存続・拡充させるため、政府に対し精力的にはたらきかけることを求めます。さらに印刷局東京病院の医療機能を存続させるため、北区として必要な手立てを機敏に講じることを求めます。

3つは、要介護認定について、法律で原則とされる30日以内の決定を遵守することです。現在は平均で38日とのことですが、必要な介護がすみやかに受けられるよう改善が必要です。

4つは、少人数学級の本格的実施に向けた積極的なとりくみです。東京都は不十分ながら、来年度初めて少人数学級への第一歩を踏み出します。30人学級実施への教育委員会を先頭にした、前向きな対応を要望します。

5つは、今年が「国際生物多様年」であることもふまえて、生物多様性など環境問題へのいっそうのとりくみの強化を求めるものです。

特別会計予算への態度

最後に、特別会計についてです。国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計については、先にのべた通り保険料の引き上げなどの理由から反対します。用地特別会計、中小企業従業員退職金等共済事業会計、老人保健会計、介護保険会計の各予算には賛成することを申し添え、討論を終わります。

ご清聴、ありがとうございました。