プロフィール

2011年10月7日

2011年第3回定例会 2010年度決算に対する反対討論

 

私は、日本共産党北区議員団を代表して、2010年度北区一般会計決算ならびに国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計の各決算の認定に反対の立場から討論を行います。

 

日本のあり方を変えた東日本大震災・原発事故

年度末の3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発の事故は、日本という国のあり方を変えてしまいました。国民の命と暮らし、地域経済や環境もはかりしれない打撃を受けました。国の政治に責任を持つ政府も、住民の福祉向上を目的とするそれぞれの自治体も、いま何をなすべきかが鋭く問われています。

 

わが党の申し入れと北区の対応について

日本共産党北区議員団は、発災翌日の3月12日から8月11日まで、北区に対し6回にわたる申し入れをおこない、震災の救援・復興や放射線対策を求めてきました。

これを受けて区は、いち早く被災地に救援物資を送り、職員の派遣、被災者受け入れ施設の設置など機敏に対応しました。また、新年度から実施を予定していた居住あんしん修繕支援事業、いわゆる住宅リフォーム助成制度の前倒し適用や、家具転倒防止器具無料取り付けの対象枠を3倍化するなど、区内で被災した世帯への支援を拡充しました。

原発事故による放射能汚染に対しては、議会での陳情や区民の切実な声を受けて、区内小中学校、保育園・幼稚園、公園などでの放射線量測定を実施し、現在も対策が続けられています。

いつ起きてもおかしくない首都圏での大地震に備えて、公開の「災害対策のあり方検討会」をたちあげ、地域防災計画の見直しにもとりくみはじめました。

これらは総じて、未曽有の震災・原発事故から住民生活を守るための積極的なとりくみとして評価されるべきものです。

中でも、東京の水道水から安全基準値を超える放射性ヨウ素が検出された際、区の職員が200名体制をとって、乳児のいる家庭に直接ペットボトルの水を届けてまわった活動は、公務労働としての原点を示したものです。

震災の救援・復興と放射線から子ども、区民を守るとりくみ、防災に強いまちづくりをさらに前にすすめるために、日本共産党も全力をつくす決意を表明するものです。

 

待機児解消、若者就職応援事業は評価する

そうした中で、2010年度の決算については、待機児解消のための認可保育園の増設や、区内中小企業の活性化と結んだ若者就職応援事業などは、切実な福祉と雇用の願いに応えた施策として評価すべきものと考えます。しかしながら、以下にのべる2つの理由から、一般会計決算の認定には反対いたします。

 

基金を積み増す一方で、区民サービス拡充に消極的な財政運営のあり方

反対理由の第1は、順調に基金を積み増しながら、「財政が厳しい」と、必要な区民サービスの拡充に消極的な財政運営のあり方です。

決算審議の中で区は、「東日本大震災やデフレ、円高などの影響で財政は予断を許さない状況にある」「このままでは財調基金は来年度にも枯渇する」などとのべ、「北区の財政は厳しい」との認識をしめしました。

ところが実態はどうでしょうか。一般会計決算ではここ数年間、実質収支は黒字です。2006年度から順に48億円、61億円、64億円、49億円、そして2010年度は37億円と、いずれも黒字となっています。しかも、これら余剰金の半分を自動的に財調基金に積み立てるシステムとなっているため、毎年数十億円単位で基金が積み上がり、主要5基金の残高は一昨年度の391億円から、昨年度末には450億円と過去最高水準にまで達しました。

一方、特別区債の借入残高は2億円減の343億円となり、積立金が借金の額をはるかに上回っています。北区の公債費比率の低さは、23区でも上位に位置しています。区は、毎年の実質収支黒字は、いわば「のりしろ」として調整している部分だと説明しています。しかし、昨年度黒字となった37億円を暮らしにまわせば、どれだけ切実な区民要望が実現できるでしょうか。

「要介護度が3に変わったら、紙おむつがもらえなくなった」と、お年寄りがさみしい顔をしています。北区のように重度の方だけに支給を限定している区は、23区中3区しかありません。37億円あれば、私たちが求めたように、必要な方すべてに、すぐにでも紙おむつを支給できるのではないでしょうか。

防災に強いまちづくりをめざすとしながら、木造民間住宅の耐震改修はいっこうに進んでいません。耐震工事への助成上限が23区最低の50万円に留まっているからです。これも37億円の財源を使えば、すぐに引き上げが可能です。

本当は財源があるのに、「財政が厳しい」といって、区民に「がまん」を強いるのはまちがっています。さらに、「財政が厳しい」ことを理由に、これまで以上の職員削減や外部化路線を突き進もうという姿勢は認めることができません。

審議の中でわが党は、区民の暮らしにも重大な影響を及ぼすことが明白な、野田内閣による消費税増税や復興税に反対の声をあげるよう求めました。しかし区は、「国と地方では役割が違う」などとのべるにとどまりました。区民にがまんを強いるばかりか、国が押しつけてくる悪政には物言わぬ姿勢では、区民の生活も安全も守ることはできないといわなければなりません。

 

破たんした構造改革路線にしがみつき、外部化路線を推し進める姿勢

反対理由の第2は、破綻した構造改革路線にしがみつき、「経営改革プラン」を至上命題として、外部化路線を推し進めようとしている姿勢です。

決算審議で区は、「経営改革プラン」と、そのさらなる徹底をめざす「5か年プラン」をあくまでも推し進める姿勢を示しました。この方針にもとづいて指定管理者制度が導入された施設は、すでに116を数えます。これまでも、職員の大量退職やコンプライアンスの欠如など、民間まかせの矛盾が露呈しており、真剣な総括と検証こそ求められているところです。とりわけ保育園や児童館など子育て施設においては、運営費の圧倒的部分が人件費であり、区がいうように「サービスを向上させながら経費を節減する」とすれば、働く職員の給与水準をカットする以外にありません。官製ワーキングプアを拡大しながら「給与は充分に保障されている」と開きなおる区の姿勢は、無反省と指摘しなければなりません。

さらに重大なことは、保育園への指定管理者導入にあたって、今後、株式会社を参入させる公募要件緩和に踏み切る可能性を、区が明確に否定していないことです。これまで北区は、保育園の指定管理者は社会福祉法人、学校法人、NPO法人に限定し、株式会社を排除してきました。これは、子どもを保育する公の施設を、営利目的の企業にまかせることのないようにする賢明な判断です。この立場は、変えることなく堅持するべきではないでしょうか。

すでに株式会社に門戸を開いている23区内のある自治体では、保育園の指定管理者となった株式会社が、わずか5年弱で9100万円もの余剰金を積み上げるなど巨額のもうけを享受しています。保育業界への参入で急成長をとげているJPホールディングスの山口洋社長は、政府が導入を計画している「子ども・子育て新システム」の検討会議の場で、保育事業で稼いだ余剰金の規制を撤廃し、株式配当に回せるようにせよ、と繰り返し主張しています。保育園を、株式会社による金儲けの道具にすることは断じて許されません。

2006年から本格的に実施された「北区経営改革プラン」ですが、もともと号令をかけたのは当時の自公政権でした。当時、全国の自治体に対して「集中改革プラン」の策定を義務づけ、構造改革路線にもとづく「行財政改革」を力づくで押しつけてきたのです。

ところが、昨年末、総務省から全国の自治体に向けて「指定管理者制度の運用について」と題する通知が送付されました。「集中改革プラン」を強要してきたことへの反省にたってのものです。今年の年頭に、当時の片山総務大臣が会見をおこない、この通知の意味について、次のように語っています。

――「指定管理者制度の…利用の状況を見てみますと、コストカットのツールとして使ってきた嫌いがあります。…コストカットを目的として、結果として官製ワーキングプアというものを随分生んでしまっているという…懸念も示して、少し見直してもらいたいなという…気持ちもあって、お出ししたわけです」。

――「自治体が、自ら内部では非正規化をどんどん進めて、なおかつ、アウトソースを通じて官製ワーキングプアを大量に作ってしまったという、…自覚と反省は必要だろうと、私は思います」。

そして、片山氏は、結論としてこう結んでいます。

――「集中改革プランという法的根拠のない仕組みを全国に強いてきたという、これの解除ですね。…以前進めてきた集中改革プランにとらわれることなく、自治体では、業務と職員とのバランスは自ら考えて、これから定数管理などをやっていただきたい」。

区は、この総務省通知をどのように受け止め、どのように総括したのでしょうか。集中改革プランをあおってきた政府自身が、ゆきすぎたコストカットや官製ワーキングプアの拡大を反省し、「解除」を求めているのに、真剣な検証もぬきに構造改革路線を突き進む姿勢は認めることができません。

以上の理由から、一般会計決算の認定に反対いたします。

 

いくつかの要望について

なお、決算審議の中で焦点となったいくつかの点について、要望をしておきます。

第1に、原発事故による放射線汚染への対策です

区はこのほど、空間放射線量で毎時0.25マイクロシーベルトを超える地点での除染対策を発表し、一昨日の防災対策特別委員会では、すでに基準を上回っている箇所について、すみやかな対策を講じると表明しました。今後、子どもが利用する場所などで複数ヵ所の測定をおこなうとしていますが、区民から要望や指摘のあった場所も考慮に入れた、すみやかな測定計画の公表を求めます。

小学校・保育園給食の安全対策については、サンプル調査などできるところからの対策にのりだすことを求めます。せめて牛乳の検査は、早急に実施すべきです。

第2に、生活が困難な世帯への対応です。

未交付や窓口に留め置いている国民健康保険証は、一刻も早く被保険者に届けるよう求めます。生活保護行政については職員体制を拡充し、受給者にあたたかく対応することを、また税金や保険料を滞納している世帯には、その人のおかれている状況も配慮し、丁寧な対応をおこなうことを要望いたします。

第3に、新庁舎の建設についてです。

現在、立地が定まらないまま基本構想が決定してゆくという異例なプロセスが進んでいますが、区として早期に候補地を提示し、地に足をつけた検討ができるようにすることを求めます。また、区長の「まちかどトーク」で直接区民に説明をするなど、この問題でこそ「区民とともに」の姿勢をつらぬくよう要望いたします。

第4に、十条駅西口再開発事業については、147メートル、37階建て超高層ビルの再検討、高齢者や若者が住み続けられる居住空間の確保など、「十条らしさ」を損なわない計画とするよう要望いたします。区の投入するお金が、参入するディベロッパーの利益を増やすだけという結果にならないよう、しっかりとした監視を求めます。

第5に、昨年7月に発生した石神井川の水害については、今後の対策はもとより、徹底した原因の究明と被害住民への補償を、首都高速道路株式会社および東京都に強く求めるよう要望いたします。

 

特別会計への態度

最後に、特別会計についてです。国民健康保険事業会計については、国保料の引き上げとなる算定方式の見直しと保険料の引き上げにより、後期高齢者医療会計は保険料引き上げから反対します。用地特別会計、中小企業従業員退職金等共済事業会計、老人保健会計、介護保険会計の各決算には賛成することを申し添え、討論を終わります。

ご清聴、ありがとうございました。