2012年9月11日
2012年第3回定例会 代表質問
私は、日本共産党北区議員団を代表して、花川区長に大きく5点質問いたします。
「原発ゼロ」にむけた北区の決意を
大きな1つ目の質問は、「原発ゼロ」にむけた北区の決意についてです。
昨年3月の福島第1原発事故は、原発が人類とは共存しえない存在であることを白日の下にさらしました。新しいエネルギー政策に向けて政府がおこなったパブリックコメントには8万9000件を超える意見が寄せられ、約8割が「ただちに原発ゼロ」を求めるものでした。
ところが野田内閣は、国民多数の抗議の中で大飯原発を再稼働させ、あくまでも原発にしがみつく姿勢をあらわにしました。関西電力は、この夏の電力は十分に足りていたことを公表、もはや再稼働の根拠は崩れています。
こうした中、「原発ゼロ」を求める国民運動は空前の広がりをみせています。7月には代々木公園や国会議事堂周辺で、安保闘争以来といわれる十数万人規模の反原発集会が開かれ、今なお数万人がかけつける毎週金曜日の官邸前行動は、通算20回を超えました。私も可能な限り参加しています。最初は「大きな音だね」といっていた野田首相も、先日ついに市民団体の代表と面会し、抗議の声を直接聞かざるを得ないところまで追い込まれました。
こうした情勢をふまえ、区長にお尋ねします。
国に対して、ただちに「原発ゼロ」の決断を下すようはたらきかけるべきではありませんか。「原発ゼロ」にむけた区長の決意をお示し下さい。
国は、革新的エネルギー環境戦略の策定に向けて、昨年秋以降、関係審議会等での議論や国民的議論を経て検討を進めています。
今月、4日に開催された「エネルギー・環境会議」では、「原発ゼロ」とする場合の課題も示されたとのことですが、近いうちに、将来的な「原発ゼロ」を柱に新しいエネルギー政策が取りまとめまれるものと認識しています。
区といたしましては、今後とも、こうした動向を十分に注視しつつ、必要な時には、国や東京都に対して、全国市長会や特別区長会を通じて、対応してまいります。
消費税大増税と社会保障改悪の「3党合意」路線に対する区長の認識を問う
大きな2つ目の質問は、消費税大増税と社会保障改悪の「3党合意」路線についてです。
8月10日、消費税増税法案が可決、成立しました。「4年間は消費税をあげない」といっていた民主党は、公約に背いて増税を強行しましたが、法案成立後も反対の声は過半数にのぼっています。「やる」といったことはまともにやらず、「やらない」といったことを命がけでやるという政権党の裏切り行為は、万死に値するものです。日本共産党は、1年半後の実施までに国政選挙で審判を下し、消費税増税を中止に追い込むために全力をつくすものです。
しかし、これほどまでに国民が望まない増税法案が可決に至ったのはなぜでしょうか。それは、民主、自民、公明の「3党合意」が結ばれたからです。国民の目に隠れて交わされた「3党合意」は「密室談合」のそしりを免れることができませんが、ここでは消費税を10%に引き上げる一方で、社会保障削減の方向をはっきりと打ち出しました。消費税大増税と社会保障改悪による国民負担増は20兆円にのぼり、暮らし、営業を直撃します。景気悪化で税収が下がり、財政危機はさらに深刻になるでしょう。
歴史的にみても、この民自公「3党合意」路線は、破たんが明らかな道です。
第1に、この路線は、自公政権時代に「構造改革」の名ですすめられた社会保障の連続改悪路線を、よりひどい形で復活させようという方向にほかなりません。小泉「構造改革」路線が貧困と格差を極限まで広げ、国民の暮らしと日本経済に計り知れない打撃を与えたことは記憶に新しいところです。
第2に、この路線は債務危機から抜け出そうとしているヨーロッパでも否定された方向です。菅直人前首相はかつて、ギリシャのようにならないために消費税を上げるといいました。しかし、そのギリシャでは、金融危機を付加価値税――日本でいえば消費税――の引き上げと、社会保障の改悪で乗り切ろうとした緊縮派が、総選挙で大幅に後退しました。フランスでも、緊縮路線を掲げたサルコジ氏が大統領の座を追われ、その後、付加価値税増税は撤回、代わりに富裕層と大企業に増税しようという議論が始まっています。
日本共産党は、消費税の増税ではなく富裕層や大企業にもうけにふさわしい負担を求めること、社会保障の削減ではなく国民所得をふやす経済改革を、と提案しています。消費税に頼らないこの道でこそ、展望ある日本の未来が切り開けるものと確信します。
そこで、区長に質問いたします。
消費税大増税と社会保障改悪の「3党合意」路線は、すでに破たんが明らかな「構造改革」路線への回帰であり、区民の暮らしを窮地においやるものだと思いますが、区長の認識はいかがですか。お答え下さい。
社会保障と税の一体改革関連法については、先日、参議院において、賛成多数により、可決成立いたしました。
今回の一体改革関連法の成立については、わが国の社会保障制度を持続可能なものとする上で、避けて通ることのできない財源の確保にかんする改革として、重く受け止めております。
経営改革「新5か年プラン」を見直し、暮らし最優先の区政に
大きな3つ目の質問は、北区経営改革「新5か年プラン」を見直し、暮らし最優先の区政に転換することについてです。
破たんした「構造改革」路線にもとづく新5か年プランは見直しを
まずはじめに、新5か年プランの見直しについてです。
私が「3党合意」路線に言及してきたのは、国の進む方向が自治体行政にも大きな影響を与えるからです。とりわけ「行革」の名で進められてきた政策は、国でも地方でも、財界・大企業の利益を保障する一方、住民には大きな犠牲を強いてきました。
1980年代の「臨調行革」に始まり、小泉「構造改革」へと続く「行革」路線の結果、大企業には260兆円を超える内部留保がためこまれ、国民の側には失業と倒産、貧困が広がりました。国の「行革」と軌を一にして北区でも、1985年の「北区行政改革大綱」から現在の「新5か年プラン」まで、一貫して「行革」路線を突き進んできました。
日本共産党は、行政のムダを省き、真の効率化をすすめる行財政改革に反対するものではありませんが、北区の「行革」路線には、次のような問題点があることを指摘しなければなりません。
第1に、過度な職員定数の削減、賃金引き下げ、正規職員から非正規への置き換えなど、人件費の大幅削減を「効率化」と称しておしすすめてきたこと。
第2に、指定管理者制度の導入や業務委託の拡大などで、公が責任を持つべき分野にまで民間への依存を広げてきたこと。
第3に、「受益者負担」の名でサービスの切り捨て、区民負担増をすすめてきたことです。
その思想はまさに、「痛みに耐えれば明日が見える」「民間にできることは民間に」と唱えて国民生活をどん底に突き落とした小泉「構造改革」路線、新自由主義そのものです。このまま「新5か年プラン」を続けてゆけば、国がたどったと同じように貧困と格差を広げる結果にしかなりません。今こそ、この路線を転換すべきではないでしょうか。
そこで、区長にお尋ねします。
「新5か年プラン」を抜本的に見直し、区民の暮らし最優先の区政に転換すべきだと思いますが、いかがですか。お答え下さい。
北区経営改革「新5か年プラン」は、基本構想の実現、基本計画、中期計画の実施に向け、さまざまな行政課題に対応し、将来にわたり、持続可能な区政運営を確保するために、平成23年度に改定しました。
これまで、プランの推進を通じて、区民サービスの質の向上、効率的な行財政運営が実現してきたところです。
今後の社会経済情勢や行政需要の増大を鑑みますと、改革の必要性はますます高まるものと思われます。
これからも「新5か年プラン」を軸として行財政改革に積極的に取り組んでまいります。
以下、区政転換の課題について、具体的にお尋ねします。
人間らしく働けるルールの確立、官製ワーキングプアの根絶を
その1つは、人間らしく働けるルールを確立し、官製ワーキングプアの根絶をはかることです。
自公政権の下で、労働法制の改悪と規制緩和がくりかえされ、日雇い派遣など不安定雇用が拡大しました。大企業によるリストラ、派遣切り、中小企業への単価切り下げで、失業、倒産は過去最高のレベルに達しています。「人件費は削れるだけ削る方がよい」などという思想をあらため、人間らしく働けるルールを確立することが痛切に求められています。
北区でも、職員定数削減や「外部化」路線を根本から見直し、官製ワーキングプア根絶に正面からとりくむことが必要です。自治体独自の最低賃金を定める公契約条例は、23区内でもついに、渋谷区でスタートしました。北区でも、「国の整備が優先」という従来の見解から脱却すべき時期が来ています。
そこで、以下5点、質問いたします。
第1に、「働くなら正社員が当たり前」を原則とする労働者派遣法の抜本改正と、最低賃金の引き上げを国に求めることです。
第2に、これ以上、北区の職員定数削減はおこなわないことです。
第3に、非常勤職員の賃金を引き上げ、5年の雇い止めは撤廃することです。
第4に、公契約条例の制定について、区として必要性をどのように認識しているかをお答え下さい。また、中小業者や商業組織など区内関係団体に広く呼びかけ、条例制定にむけた検討会を設置することを求めます。
第5に、紹介予定派遣を活用した正規雇用化事業の成果をふまえ、区としてハローワークや区内中小企業との連携による新たな若者雇用対策にのりだすことです。
区長の前向きなご答弁を求めるものです。
まず、労働者派遣法につきましては、平成24年3月に改正法が成立し、10月1日から施行される予定となっています。
また、最低賃金につきましては、平成24年10月1日から、東京都の最低賃金は13円引き上げ、850円に改正されます。
区としては、改正後の動向などを注意深く見守ってまいりたいと存じます。
職員定数につきましては、民間活力を活用した業務委託や指定管理者制度の拡大、専門性の高い分野における非常勤職員の活用や再任用・再雇用職員の活用など可能な限りの手法を取り入れつつ、適正化に努めてきたところですが、平成23年度普通会計ベースの決算額に占める人件費の割合は、19.8%、金額で245億9000万円余となっております。
区といたしましては、厳しい経済環境が引き続く中、人件費が義務的経費であることを踏まえ、新たな行政需要に応えていくためにも、引き続き計画的な定数管理が必要であると考えています。
次に、非常勤職員にかんするご質問です。
まず、非常勤職員の報酬については、条例で上限金額が定められており、各所管課において、必要な資格の有無、職務の困難性などを勘案した上で決定しています。
今後とも、民間などの状況を見ながら、適切に対応してまいります。
また、5年の雇い止めにつきましては、非常勤職員が、長期継続雇用を前提としない期間の限られた任用であることを踏まえ、行っているものです。
この運用につきましては、国から示された考え方にも合致するものであり、妥当であると考えています。
次に、公契約条例についてのご質問にお答えします。
まず、条例制定の必要性についてですが、従来からご答弁させていただいているとおり、関係法令と条例制定権との関係などから国の法整備が優先すべきであるとの考えは、変わっていません。
また、区内関係団体などによる検討会は、今のところ設置する予定はありませんが、契約事務説明会などの機会を活用して、関係事業者・団体の意見を伺う機会を持つなど、調査・研究は引き続きおこなってまいります。
次に、若者雇用対策についてのご質問にお答えいたします。
雇用状況は、改善の動きがみられるものの、依然として厳しさが残る状況であると認識しております。
区では、ご指摘のように都の補助金を活用した若者就職支援事業を実施するとともに、ハローワークと連携し、就職面接会をおこなってまいりました。
今後も、ハローワークなどの関係機関と連携し、若者の雇用対策に引き続き取り組んでまいります。
社会保障は切り捨てではなく、拡充こそ
暮らしを守る区政への転換の2つ目は、社会保障の拡充です。以下、4点質問いたします。
第1に、高すぎる保険料への対策です。
今年度、国保、後期高齢、介護保険料がトリプル値上げとなり、区民から悲鳴があがっています。
払いたくても払えない、これら3つの保険料については、国や都に負担軽減を求めるとともに、区としてさらなる負担軽減策を講じて下さい。また、国保料については、来年度も経過措置を継続するよう求めて下さい。
第2に、生活保護についてです。
野田政権は来年度、生活保護を見直し圧縮する方針を打ち出しましたが、自らが進めてきた貧困を拡大し、生活保護受給者を増やさざるを得ない政治の中身こそ問題にするべきです。これだけ貧困が深刻化している中で生保を圧縮すれば、餓死、孤独死に追い込まれる困窮者が続出することは明らかです。
そこで、国に対しては、生活保護予算を削減しないよう強く求め、北区の窓口では受給すべき人が確実に生活保護につながるよう、相談者に心を寄せた丁寧な対応を徹底して下さい。
第3に、介護保険についてです。
今年度から第5期計画がスタートしましたが、生活援助の時間単位が60分から45分に短縮された下で、「時間内に収めるため風呂の掃除は週1回に減らした」「仕事に余裕がなくなり、利用者さんと落ち着いて話もできない」など、早くも私たちが心配した通りの事態が進んでいます。このままでは、援助をする側も受ける側も共倒れになってしまいます。
そこで、生活援助の時間区分を早急に見直すよう国に求めるべきと考えますが、いかがですか。お答え下さい。
いま一つは、入居者の死亡事故や火災などの問題が発生している宿泊デイサービスについてです。頻発する事故を防止するため、東京都は独自の基準を設けましたが、宿泊の際、職員は1人でよいという規定にとどまっています。実際に夜勤をしている職員からは、「トイレの援助やオムツの取り換えなどで、10分たりとも休むことができない」という訴えが寄せられており、基準の確立は急務です。
そこで、宿泊デイサービスについては夜間2人以上の職員を配置するなど、国基準の確立、都基準の見直しを求めるべきと思いますが、いかがですか。お答え下さい。
第4に、東京北社会保険病院の存続・拡充についてです。
医療不安をなくし、安心して医療を受けられるように、北社会保険病院の機能拡充をはかることは、区民、北区、議会の一致した願いです。これまで民間売却を目的とするRFOの下で、国立王子病院以来の安定した医療を保障する公的な病院としての存続が危ぶまれてきました。しかし、この間の世論と運動で、2年後には公的な性格を持つ地域医療機能推進機構へ移行する準備も整いました。
そうした中、厚労省が8月中旬、北社会保険病院を委託運営する地域医療振興協会が譲渡を希望すれば、売却が可能とする通知を発表し、事態は新たな局面を迎えています。
そこで、区長にお尋ねします。
安心の医療を望む区民の声にこたえ、北社会保険病院における現在の医療水準の確保と安定した病院運営を求めることについて、あらためて区長の決意をお聞かせ下さい。
まず、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料の負担軽減についてです。
国保制度については、特に低所得者層に対する負担軽減策を拡充・強化するよう、全国市長会を通じて国に要請しています。
後期高齢者医療制度についても、全国市長会や全国広域連合協議会を通じて、被保険者の負担軽減を国に求めているところです。
なお、北区としても多額の一般財源を投入し、負担軽減に努めています。
また、算定方式変更に伴う国民健康保険料の特別区独自の経過措置につきましては、24年度まで2年間実施しています。
25年度以降、原則として本則適用となりますが、今後の対応については、現在、所管の課長会などで検討しています。
第5期の介護保険料につきましては、介護給付費準備基金と東京都財政安定化基金の取り崩しによる交付金を活用し、現時点で取りうる軽減策を講じ、保険料の基準月額として算定したものです。
また、合わせて段階区分の多段化化を図り、所得状況に応じた、よりきめ細やかな設定といたしました。
なお、保険料の軽減につきましては、災害などによる減免制度のほか、生活困窮のため保険料の納付が困難と認められる場合には、保険料が減額される制度があります。
今後とも国に対して、低所得者に対する介護保険料などの軽減策について、国の責任において、総合的かつ統一的な対策を講じるよう、求めてまいります。
生活保護についてのご質問に、お答えします。
福祉事務所の窓口には、様々なことが原因により生活などにお困りの方が相談に訪れます。
相談窓口では「何が原因で生活などにお困りなのか」を聞き出し、他の法律や他の施策を優先し活用しても、他に対応の手段がない場合には、申請の意思を確認し、保護申請を受けています。
福祉事務所では、ケースワーカーを経験したベテランの面接相談員を配置しております。
今後とも、相談者に心を寄せた懇切丁寧な対応に努めてまいります。
また、今後も国に対して「生活保護に係る財源負担は、生活保護が憲法に基づき、国が保障するナショナルミニマムに関わる事項であることから、本来全額国庫負担とすべきであること」など、全国市長会を通じて求めてまいります。
次に、生活援助の時間区分の見直しについてのご質問です。
国からの通知によれば、見直し後においても適切なアセスメントとケアマネジメントに基づけば、引き続き60分程度のサービスを実施できるものとされていますので、区では、事業者研修会や各種事業者がおこなう連絡会などの場において周知しております。
今後とも介護報酬の改定の際には、必要に応じ、国に対し全国市長会などを通じて要望してまいります。
次に、宿泊デイサービスについては、国基準の確立、都基準の見直しを求めるべきとのご質問にお答えします。
現在、国では宿泊デイサービスについて、そのニーズを把握するため、試行事業をおこなっており、北区もこれに参加をしております。
国は昨年度の調査事業と本年度の試行事業の結果に基づき、介護保険の事業とすべきものか判断をおこなうものと考えております。
東京都における独自基準は、高齢者が劣悪な環境におかれることのないよう安全対策を優先した運営基準におかれることのないよう安全対策を優先した運営基準であり、事業の運営にあたり都への届け出を促しているものです。
今後とも必要に応じ、国や東京都と協議などをおこなってまいります。
次に、東京北社会保険病院の存続・拡充についてお答えします。
東京北社会保険病院は北区の中核的な医療機関であり、東京都災害拠点病院にも指定され、北区の地域医療のためにはなくてはならない施設であると認識しております。
東京北社会保険病院は、昨年6月の法改正で引き続き現体制での運営が可能とされたところですが、本年8月の大臣通知では、運営委託されている者が譲受けを要望した場合は譲渡対象となる通知となっております。
この大臣通知の内容につきましては所管委員会でご報告させていただきます。
北区といたしましては、今後も医療機能の確保に向けて区議会や医師会ともご相談しながら、全力をあげてとりくんでまいります。
公的保育制度を守りぬき、子育てに安心を
暮らしを守る区政への転換の3つ目は、子育てについてです。
この間、北区が、子ども医療費無料化の拡充や認可保育園の増設による待機児解消などにとりくんできたことは、保育や子育てに対する自治体の責任を果たそうという意欲的なとりくみと評価しています。ところが先の国会で、民自公3党などの賛成で可決、成立した「子ども・子育て新システム」関連法は、国と自治体の責任でおこなわれてきた公的保育制度をおおもとから崩してしまおうというものです。
新法では児童福祉法第24条、市町村の保育実施義務は残りましたが、自治体は認定こども園や小規模保育などのサービスについては実施責任を負わないとされています。保育を「自己責任」にしてしまおうというねらいです。同時に、株式会社などの参入で保育の営利化に道が開かれます。実際に、ある経営コンサルタントは、保育の分野を「不況期でも急成長し続ける貴重な業界」と位置づけ、「投資リスクが小さ」く「収益性も高い」と、金もうけのチャンスとみています。
そこで、安心の保育、子育てをすすめるために、以下5点、質問いたします。
第1に、公的保育制度の解体につながる「子ども・子育て新システム」は実施の中止を国に求めることです。
第2に、保育園への指定管理者制度導入についてです。
昨年度末、職員の大量退職を繰り返した指定管理園が2期目の受託を撤回するという事態が起きました。新たな法人の見通しがたち最悪の事態は回避できたものの、公が責任を持つべき保育園を民間法人に任せる危険性が浮き彫りになりました。今後、保育園への指定管理者制度の導入は中止すべきだと考えますが、いかがですか。
第3に、児童館のあり方についてです。
区は、放課後子どもプランの拡大にあわせて児童館のあり方を見直すとしています。しかし、放課後子どもプランは、モデル実施が今年度ようやく始まったばかりです。その検証結果も出ないまま、年度内に児童館のあり方を決めてしまうのは拙速ではないでしょうか。現場の意見をふまえ、時間をかけて慎重な検討をおこなうことを求めます。
第4に、来年度の保育料、育成料については、値上げをおこなわないことです。
第5に、現在、保育園と小中学校で1施設につき年3回おこなっている給食の放射線検査については、区として独自に測定器を購入し、検査回数を増やすなど拡充をはかることです。
以上、区長の前向きな答弁を求めます。
まず「子ども・子育て新システム」についてです。
子ども・子育て関連3法は、幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進するものであり、実施主体となる北区は地域のニーズに基づき計画を策定し、給付・事業を実施することとなるなど、今まで以上に責任は重くなると考えています。
今後、計画策定のための調査や子ども・子育て会議の設置など、施行に向け準備を進めるとともに、制度の詳細については、必要に応じて全国市長会・特別区長会を通じて要望をおこなってまいります。
次に、保育園への指定管理者制度導入です。
これまで9園に指定管理者を導入しましたが、公立保育園としての保育の質を確保しつつ、保護者の多様なニーズに応えるべく2時間延長保育、休日保育、病後児保育など新たな保育サービスを開始するとともに、一定の財政的効果を生み出してまいりました。
今後とも北区経営改革「新5か年プラン」に基づき、指定管理者制度の導入を進めるとともに、効率的・効果的な区政運営に資する保育園運営のあり方について、引き続き検討してまいります。
次に、児童館のあり方についてお答えします。
「放課後子どもプラン」は、「北区基本計画2010」において、全小学校に導入することとしており、本年4月からモデル実施している東十条小学校を皮切りに、計画的に導入を進めてまいります。
放課後子どもプランの実施により、小学生の新たな安全・安心な活動場所が、現在の25児童館から全小学校へと拡大することから、主に小学生の居場所だった児童館の今後のあり方について検討していくべきものと考え、次世代育成支援対策地域協議会などでご意見をうかがいながら、議論を重ねてきたところです。
今後は、さらに現場の職員の意見も聞きながら、検討を重ね、基本方針案を作成し、パブリックコメントを実施します。
さまざまな方々からご意見をいただき、北区らしい、魅力ある子どもの居場所、子育て支援の拠点づくりをめざしてまいります。
なお、検討状況については、所管委員会において、ご報告させていただきます。
次に、保育料と学童クラブ育成料については、北区経営改革「新5か年プラン」に基づき、適正な受益者負担のあり方について、引き続き検討してまいります。
なお、来年度の保育料と育成料の引き上げについては、考えておりません。
次に、給食の放射線検査です。
北区では、区内の公私立保育園、区立小中学校、自園調理を実施している私立幼稚園を対象に、専門検査機関に委託して、検査を実施しており、7月末までに終了した第1回目の検査では、すべて検出限界値未満という結果でした。
食品に含まれる放射性物質については、東京都も流通食品の検査結果を公表しており、これらの状況を踏まえれば、現時点で測定機器を購入し、検査回数を増やす必要性はないと考えます。
「財源確保」の名によるサービス切り捨て、区民負担増計画は再検討を
暮らしを守る区政への転換の4つ目は、サービス切り捨てと区民負担増計画の再検討です。
経営改革「新5か年プラン」には、区民にとってかけがえのないサービスを廃止したり、新たな負担を求めるメニューが盛り込まれています。
「安くて景色もきれい。温泉も楽しめる」と喜ばれているはこね荘を、効率が悪いからと今年度で休館としてしまうことには、たくさんの区民の方から「残念でならない」との意見をいただいています。
家庭ごみについては、先に開かれた資源循環推進審議会で、有料化に道を開くアンケートの実施が提起されました。多くの区民は、滝野川地域でおこなわれている家庭ごみの戸別収集を全区に広げることは望んでいますが、有料化は望んでいません。
こうした方針をすすめる理由として区は、「財政が大変」だからといいます。しかし今年度当初予算で、財調基金の年度末残高を「ゼロ」と予測しても、3カ月後には26億円も新たな財調基金が積み上がっているではありませんか。まさにわが党が指摘した通りの結果です。「決算ベースで健全」と胸を張る財政状況の下、サービスの切り捨て、区民負担増計画は再検討すべきです。
そこで、3点質問します。
第1に、はこね荘については、区民の強い要望にこたえて存続させることです。
第2に、家庭ごみの有料化計画は中止することです。
第3に、財源確保には各種基金の適切な活用をおこなうこと。必要ならば、庁舎建て替えの繰り延べや、十条まちづくり計画の見直しも大胆に検討することです。
以上、お答え下さい。
はこね荘の休館は、地方自治体が特定の保養所を維持して住民に提供する必要性は薄れてきたという認識、ピーク時と比較して4割減という利用者数の低下、他区の動向などに基づいて判断したものです。
次に、家庭ごみの有料化計画についてです。
本年7月に、北区資源循環推進審議会を設置し、「更なるごみの減量化のための具体策について」審議をお願いしたところです。
今後、ごみ減量化の具体策を検討していく中で、家庭ごみの有料化も、1つの課題として審議がなされるものと考えております。
次に、各種基金の活用につきましては、中長期的な行政需要に留意しつつ、安定した財政運営をおこなうため、適切な積み立てや取り崩しに努めております。
なお、新庁舎の建設や十条まちづくりについては、区の重要な行政課題であり、多額の経費を要することから、基金の活用などにより計画的に財源を確保して、着実な事業の実施に向けた準備が必要と考えております。
災害から命を守る防災対策の拡充を
大きな4つ目の質問は、災害から命を守る防災対策の拡充についてです。
高層ビルでの地震被害を防ぐために
その第1は、高層ビルでの地震被害を防ぐ対策についてです。
区内でも10数階から20階を超える高層ビルが増えています。昨年の「災害対策のあり方検討会」では、東海・東南海・南海の3連動地震が起きると、東京では長周期振動によって共振現象が発生し、高層階で揺れ動く家具が凶器になる恐れがあることが指摘されていました。港区では高層ビルでの被害を防ぐため、区として「高層住宅の震災対策に関する基本方針」を策定し、ホームページで公表しています。
そこで、区として長周期振動の影響について調査・研究をすすめ、高層ビルでの震災対策方針を策定することを求めます。また、家具転倒防止器具の無料取り付け事業は、高層階の居住者も対象にしてはどうでしょうか。お答え下さい。
はじめに、高層ビルでの地震被害を防ぐために、についてです。
現在、国では南海トラフ連動型地震についての検討をおこなっており、その結果を見極めつつ、東日本大震災の観測データなどを踏まえた検討をおこなったうえで、長周期地震動への対策をまとめる予定とのことです。
区といたしましては、引き続き、国からの情報収集に努めてまいります。
なお、高層ビルでの震災対策方針の策定ですが、北区における高層ビルの建設状況を注視しながら、他区の状況をみて研究してまいります。
また、区で実施している家具転倒防止器具の無料取り付けは、災害時要援護者対策として実施しており、高層ビル居住者には、自助の観点から入居者ご自身で対処していただきたいと考えます。
今後も、家具転倒防止対策などの必要性については、高層ビル居住者も含めて区民のみなさまに周知してまいります。
「木密地域不燃化10年プロジェクト」について
防災対策についての第2は、「木密地域不燃化10年プロジェクト」についてです。
先日、東京都は、不燃化特区先行実施地区として12地域を指定しました。十条地区も選ばれましたが、今回選定された地域は、これまで密集事業をおこなってきた上十条1・3・4丁目、中十条1・2・3丁目とは別の十条駅西側区域です。区は、賛否も分かれている十条駅西口再開発と「連動させ」ると説明、これを機に、反対の声があがっている補助73号線も復活させようとしています。
一方、「燃え広がらないまち」を実現するための特定整備路線は、現在、都から23の候補区間が示されていますが、この中には地元からの反対も強い補助81号線や、計画中止の声も出ている補助86号線も含まれています。
木密解消をスピードアップさせることは重要ですが、地元住民が望まない計画では本末転倒です。
そこで、10年プロジェクトに関する今後の対応について区長にお尋ねします。
十条地区について、従来の密集事業対象地域と今回の不燃化特区との関係をどうとらえていますか。また、地元から反対のある路線については、特定整備路線から除外することを都に求めるつもりはありますか。お答え下さい。
次に、「木密地域不燃化10年プロジェクト」についてお答えします。
まず、十条地区についてです。
今回選定された十条駅西地区や、これまで密集事業をおこなっている上十条3・4丁目地区などは、ともに東京都の防災都市づくり推進計画の重点整備地域内の事業地区となっております。
従来の密集事業では、高齢化や権利関係の複雑さなどから、木密地域の改善が進みにくい状況にありました。
今回の不燃化特区では、従来よりも踏み込んだとりくみをおこなうこととしており、重点整備地域である十条地区の不燃化の促進を一段と加速できるものと考えております。
次に、特定整備路線に関するご質問にお答えします。
市街地の延焼を遮断し、避難や救援活動の空間ともなる、防災上、効果の高い主要な都市計画道路を整備していくことは、重要であると考えております。
東京都の木密地域不燃化10年プロジェクトの特定整備路線については、今後、すべての候補区間が公表され、生活再建などのための特別の支援策についても、年内には公表される予定と聞いています。
区といたしましては、制度の内容も含め、地域のみなさまへの定年な説明をおこなうよう、東京都に対し、強く求めてまります。
地域ごとの防災マップ作成と普及について
防災対策についての第3は、地域ごとの防災マップ作成と普及についてです。
大規模な災害が発生した時、被害を最小限に抑えるためには、どこに避難すればよいかを普段から住民に周知徹底しておくことが重要です。北区の防災マップは全域を網羅していますが、実際に活用するには地図が細かすぎるという難点があります。その点、志茂五水門自治会と志茂まちづくり協議会が独自に作成している防災マップは、志茂5丁目地域内の避難場所、消火器、病院などの位置がわかりやすく示されており、大変実用性のあるものです。
そこで、区として町会・自治会などにはたらきかけて危険箇所の点検をおこない、地域ごとの防災マップの作成と普及をすすめてはどうでしょうか。お答え下さい。
次に、地域ごとの防災マップ作成と普及についてお答えします。
区では、地域の特性に応じた防災力の向上を図ることを目的として、防災マップづくりの方法を学ぶ地域防災力パワーアップ講座を実施しています。
また、過去には、阪神淡路大震災を契機に防災マップを作成した地区防災会議もありました。
区といたしましても、避難場所や危険箇所を平時から把握しておくことは大切と考えますので、地域ごとの防災マップ作成を地区防災会議などで提案できないか検討してまいります。
被害をくりかえさない水害対策の抜本的強化を
防災対策についての第4は、水害対策の抜本的強化です。
北区では、ここ数年の間に石神井川で2回、浮間の堤防沿いで1回、ゲリラ豪雨による大規模な水害に見舞われています。首都高や国交省には再発防止にむけた抜本的対策を期待するものですが、東京都は近々、これまでの50㍉対応では不十分とし、区部河川で65~80㍉対応の新たな中小河川整備計画を打ち出すとしています。
そこで、都の50㍉を超える対策も視野に入れながら、区としては被害をくりかえさない水害対策の強化をどう進めようとしているのか、お示し下さい。
以上、4点について、区長の前向きな答弁を期待するものです。
次に、被害をくりかえさない水害対策の抜本的強化を、とのご質問についてお答えいたします。
東京都では、昨年12月に「東京都内の中小河川における今後の整備のあり方について」中間報告書をまとめております。
その中で、整備手法の考え方として、時間50㍉を超える部分の降雨対策は、地下式や掘込式の調節池による対応を基本として効果的に整備を進めるのが望ましいとされております。
区といたしましては、東京都の動向に注視するとともに、引き続き、水害発生ヵ所に近接する公園、道路などにおいて、雨水貯留施設の設置を検討してまいります。
中国、韓国との友好・親善のために
大きな5つ目の質問は、中国、韓国との友好・親善をはかることについてです。
領土問題の解決にむけて
第1に、領土問題についてお尋ねします。
尖閣諸島や竹島をめぐって中国、韓国との緊張関係が高まっています。領土問題の解決は、もちろん国が責任を負うべき問題ですが、地方議員が尖閣諸島に強行上陸したり、23区内の自治体で親善事業が中止に追い込まれるなど、自治体レベルでも対応の求められる事態が発生していることをふまえて、区長の見解をお聞きするものです。
私は、領土問題の解決にあたっては、次の2つの点が大事だと考えます。
1つは、国同士の緊張を高めるやり方をお互いの国が自制し、冷静な外交努力をつくすことです。
日本共産党は、尖閣諸島が日本の領土であることは歴史的・国際的にも明瞭だという立場を表明していますが、政府がこのことを外交交渉の中で、中国側に道理を尽くして伝えることが必要です。
2つは、日本が侵略戦争と植民地支配への反省の上にたって問題の解決をはかることです。
竹島について日本共産党は、日本の領土と主張することには一定の根拠があると考えています。しかし、日本への編入がおこなわれた1905年は、日本が韓国を武力で植民地化していく過程にあり、韓国の外交権が奪われていたことも考慮する必要があります。過去の植民地支配への反省に立って、韓国側の主張にも真摯に耳を傾ける姿勢が大事ではないでしょうか。
こうした立場での解決を国に求めるとともに、北区においては日中友好、日韓親善のとりくみを、前向きに発展させる努力が大切だと考えます。この7月、北区日韓親善協会は日韓の親睦を目的に4日間の韓国ツアーをおこないました。親善協会の理事長でもある山田副区長や民団のみなさんと一緒に、私も参加させていただきました。先日、北とぴあでおこなわれたツアーの報告会には、花川区長も出席され、日韓親善を深める立場からのごあいさつがありました。両国関係がどうあろうと、区内での友好・親善事業が中断するようなことがあってはなりません。
そこで、領土問題については、中国や韓国との歴史的問題を十分ふまえた上で、冷静な外交交渉での解決をはかるよう国にはたらきかけていただくとともに、区内の日中友好、日韓親善事業についてはこれまで通り積極的に推進するよう求めますが、区長の見解をお聞かせ下さい。
中国などの近接諸国をはじめとした諸外国との交流を推進することは、アジア、そして世界の平和を守り、社会の発展を促していく上で必要不可欠なことであり、それは、北区の平和都市宣言の主旨を実現することにもつながるものと認識しております。
北区としては、国際化推進事業については、これまで同様、積極的に推進してまいりたいと考えております。
領土問題につきましては、国の専権事項であり、その対応を見守りたいと考えております。
永住外国人の地方参政権を国に求めること
中国、韓国との友好・親善の第2は、永住外国人の地方参政権の実現についてです。
長く日本に住み、暮らし、税金も納めている永住外国人が、地方自治に参加する権利を奪われていることについては、国政の場でもたびたび問題とされてきました。日本共産党は、永住外国人の地方参政権実現は民主主義の発展につながるとして、14年前の1998年に投票権だけでなく、被選挙権も認める「地方参政権法案」を国会に提出し、一貫してその実現を求めてきました。
永住外国人に地方参政権を認めることは世界の流れです。1995年の最高裁判決も「地方自治の担い手は住民であり、外国人に地方参政権を認めないという法的根拠はない」としています。
参政権を付与するのは国会ですが、選挙権を行使するのは地方自治体で暮らす外国人です。北区でも、党派を超えた運動で、地方参政権実現への機運を広げてゆきたいと思います。
そこで、区長に質問いたします。
永住外国人の地方参政権を一日も早く実現するよう国にはたらきかけるべきと考えますが、いかがですか。
区長の積極的な答弁を期待して、私の質問を終わります。ご清聴、ありがとうございました。
永住外国人の地方参政権については、さまざまなご意見もあり、また、地方自治制度、選挙制度の根幹にかかわる問題であることから、国会をはじめとする国の動向を注視してまいります。