2023年第3回定例会代表質問―山崎たい子
2023年9月11日 | 山崎たい子
私は日本共産党北区議員団を代表して大きく5点、ゼロカーボン北区の推進、中小企業や商店街支援、高齢者や障がい者・子どもへのケア、住宅支援の拡充について、区長・教育長に質問します。
1、本気のゼロカーボンシティ北区の推進を
はじめに、本気のゼロカーボンシティ北区の推進です。
今年は7月の平均気温が観測史上最も高くなり、連日30度を超える異常な暑さで熱中症警戒アラートが続き、気候危機による命の危機を実感する毎日です。国連事務総長も「地球温暖化の時代から地球沸騰の時代に入った」と表明し、各国のCO2削減目標を更にバージョンアップするよう要請しました。
気候危機対策は、今そして未来世代のために最優先で取り組むまったなしの課題です。北区でも2050年までCO2排出を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ北区」を宣言し、環境基本計画を改定して取組みをスタートさせていますが、2030年までのカーボンハーフ実現に向け、以下4点にわたり質問します。
(1)学校や区有施設などの省エネ・再エネによるZEB化の推進を
1つは、学校や区有施設などの省エネや再エネ利用によるZEB化(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進です。
今後、新築となる堀船中学校や児童相談所等複合施設において、ブロックプランでは省エネによるZEBオリエンテッドいわゆるエネルギー削減率40%以上が示されたのは前進です。他方、東京都は省エネ50%以上、更に品川区は環境学習施設「エコルとごし」で、再エネも加え75%以上の削減率となるニアリーZEBを実現しており、北区でもいっそうの推進が期待されます。
また昨今、学校の教室とりわけ屋上階においては天井から熱が伝わり、エアコンを入れても教室の温度が30度以下に下がらず、天井や壁に断熱材を入れ、窓に遮熱パネルや内窓を設置する自治体も増えています。
そこで、学校・区有施設において大規模改修時はもちろんのこと、既存施設でも屋根や天井、窓ガラスの断熱化、効率が高い空調機器の導入など一層の省エネ化、断熱改修をすすめること。また、再エネ100%電力の推進について、地方の友好都市とも連携したカーボンオフセットの取組みも含めお聞かせください。
まず、学校や区有施設などの省エネや再エネ利用によるZEB化の推進についてです。
区ではゼロカーボン実行計画に基づき、新築案件については、原則ZEBオリエンテッド相当以上を目指すとしており、既存施設においても、改修の機会を捉え、建物の用途、規模、費用対効果等を勘案の上、可能な限り省エネ性能の向上を検討し、ZEB実現に必要な技術を採用しています。
次に、地方の友好都市とも連携したカーボンオフセット等、再生可能エネルギー100%電力推進の取組み状況についてです。
環境基本計画の重点施策の一つである、自治体連携による森林整備の取り組みの実現に向け、地方都市との連携による森林整備とカーボンオフセットの仕組みづくりについて検討を行っているところです。
また、再生可能エネルギー電力の利用促進を図るため、電力オークション制度を利用した事業者向け再エネ電力の切り替え支援や、区内施設の一部に友好都市からの再エネ電力の導入を実施しています。
引き続き、気候変動に適応し、脱炭素を実現するまちを目指し、二酸化炭素排出量の削減に向けた様々な取り組みを推進してまいります。
(2)使い捨てプラスチックゼロをめざして
2つは、使い捨てプラスチックゼロへの取組みです。
本年4月から北区全域において、プラスチックごみ(以下プラごみとします)の資源回収が始まりました。
はじめに、回収の現状と実施前後の変化についてお聞かせください。
北区全域における8月の1か月間における回収量は180トンとなり、全区展開を始めた4月に比べ約1.5倍となっています。
清掃事務所には、「可燃ごみが減った」、また、「プラスチックの多さに気づかされた」などの声が寄せられており、リサイクル意識の高まりや、分別回収の習慣が広がりつつあると捉えております。
プラごみを分別するとその多さに改めて驚きます。資源化と共に根本的にはプラスチックそのものをいかに使わない社会のしくみをつくるかが大きな課題です。そうした観点から私はこの夏、「環境先進都市」をうたう京都府亀岡市の取組みを視察しました。
亀岡市は「プラごみゼロ」を掲げ、2021年よりプラスチック製レジ袋禁止条例を施行。エコバック持参率は現在98%を超え、レジ袋枚数は70万枚以上使用されていたものを1万枚程度まで減らしたとのこと。
更には、市内の飲食店に使い捨てプラスチックの使用削減をよびかけ、商品の提供には発泡スチロールや使い捨て容器などは使わない。イベントにおいても、繰り返し使えるリユース食器や、再生可能な素材の食器を使用するための補助制度を創設。また、ペットボトル削減のため、市役所や公共施設8ヵ所、小・中学校25校に給水機を設置。民間事業所を給水スポットにするなど、官民連携してマイボトル普及に取り組んでいました。そこで伺います。
マイバックを推進しレジ袋の更なる削減。マイボトルを普及し、区役所や区民施設、学校に給水機を設置し、自販機からペットボトルを削減していく。民間事業所とも連携し、給水スポットの設置やリユース食器の推進などに取り組むよう求めます。
区では環境基本計画及び北区一般廃棄物処理基本計画に基づき、使い捨てプラスチックの使用削減やプラスチックの資源化の推進に取り組んでいます。マイバッグの利用は、令和3年度の区民アンケートでは、約89%の方がすでに取り組み、今後取り組みたいとの回答と合わせると約95%となり、一定程度定着していると認識していますが、引き続きプラスチックごみ削減に関する環境教育や普及啓発活動とともに、マイバッグやマイボトル、リユース商品の推奨などに取り組んでまいります。
あわせて、プラスチックの資源がごみとして排出されないよう、分別回収の徹底を図り、資源循環の輪をつなげる取り組みを進めてまいります。
なお、給水機の設置は、きかい設備や電源の確保、また衛生面の対策なども必要であり、施設の特性や利用状況などを踏まえ検討していく必要があると考えています。
更には、環境に配慮した循環型経済(サーキュラーエコノミー)や生活様式への啓発です。北区でも、今年度から小・中学校の給食に出る牛乳からストローがなくなり、子ども達への環境教育や食育と一体に始まっています。
富士見橋エコーひろば館では、環境に配慮した製品、例えばすべて紙でできたファイル。お米でつくった歯ブラシやボールペン。使い捨てカップから作ったサーキュラーマグなどが展示され、製品をつくる段階から新たな資源の投入や廃棄をゼロに近づける企業の努力と共に、生活者が身近なところから行動変化をおこすための目に見える啓発が行われており、大変大事だなと感じました。
そこで、環境配慮型製品を身近な区民施設で展示したり、イベントでも紹介する。また、ゼロカーボンへの取組みを特集する北区ニュースの発行や動画配信など、公報の充実を求めます。
現在、区民、事業者、区職員の環境に関する意識啓発・行動改革に向けて、月1回の頻度で「ゼロカーボンCITYKITA通信」を作成し、SNSを活用して発信しています。また、子どもたちにごみの分別やリサイクルへの興味・関心を深めてもらうため、エコエコツアーの開催や、小学生及び未就学児向けの動画を区のホームページで配信するなど、様々な啓発活動を展開しています。
さらに、区民や事業者の意識の底上げを目的に、環境に関する北区の総合的なポータルサイトの構築にも取り組んでおります。
引き続き、様々な機会や広報媒体を活用し、効果的な啓発活動に取り組んでまいります。
(3)地方の友好都市と連携した環境教育について
3つは、地方の友好都市と連携した環境教育の取り組みです。
私は先日、北区の環境課が親子向けに取り組んでいる「省エネ道場」を見学しました。日本の森のひみつと題し、群馬県中之条町の杉やヒノキで、子ども達がコースターを作りながら、森の働きである、CO2を取り込み空気をきれいにする。水をため災害を防ぐ。生き物を育てる。温暖化を防止するなどを学びます。子ども達が幹や葉っぱを観察し、触り、香りを確かめ五感を使いながら、楽しく取り組む姿がとても印象的でした。中之条では今年度、廃校となった小学校校舎とグランドを活用し、木材加工やバイオマスの原料となるチップの生産、森の学校など、体験型環境学習を提供すると側聞しています。
そこで、友好都市と連携し、子ども達が森や自然体験、遊びを通じ環境について学ぶ取組みを進めてほしいと考えますが区の考えをお聞かせ下さい。
子どもの頃から環境に関心を持ち、地球にやさしい生活を習慣化できるよう、工作などの体験を通じて楽しみながら広く環境について学ぶ「省エネ道場」を実施しています。
子どもたちが木材に親しみ、森林保全について考えるきっかけを作り、森林環境に対する知識の向上をうながしていく手法の一つとして、地方の友好都市等と連携した森林整備体験事業の来年度からの導入を目指し、現在、調整を図っているところです。
(4)都市に緑を回復しゼロカーボンに寄与するまちづくりを
4つは、都市に緑を回復し、ゼロカーボンに寄与するまちづくりです。
緑を基調としたまちづくりは、先に紹介した森の働きと同様、都市のCO2吸収やヒートアイランド対策、水害対策としても重要です。北区の緑被率はH30年調査で18%と日本全体の70%に比較して改善が望まれます。区民意識意向調査による地区別の緑に対する満足度が低い地区は、赤羽東、滝野川東、そして王子地区は東も西も低い評価でした。
駅周辺まちづくりでも既存の公園存置はもとより、更に緑を増やす取組みを求めます。また、都市と森林の関係において、CO2を吸収した木材を公共空間、施設、家具に多く利用することで、大気中のCO2削減に貢献するよう求めます。
2つめは、再開発によるタワーマンション建設についてです。環境面から考えると、敷地面積に対する床面積が莫大になり、冷暖房の電気使用、CO2排出量が高くなる点で環境負荷が高く、日本建築業協会の報告でも、大型ビル1棟のCO2排出はコンクリート作業など作る工程で14%、壊す時にも16%と、エネルギー排出の3割を占めていると報告されています。こうした点からも、今後、タワーマンション建設は区として抑制する必要があると考えますが見解をお聞かせください。
区では、「北区みどりの条例」に基づき、樹木や樹林等の保護指定や、緑化計画書の認定による緑化の推進など、まちなかの、みどりの保全・創出に努めています。
また、現在、緑の実態を把握し、区の施策に反映させるため、調査を実施しているところです。
今後、調査結果を踏まえ、公園・緑地等の整備や緑化に取り組むとともに、良好な自然環境の保全に努めてまいります。
また、大気中のCO2を吸収している木材の利用については、他自治体の事例を研究してまいります。
次に、再開発によるタワーマンション建設についてお答えします。
タワーマンションの建設計画が進んでいる駅周辺は、「北区都市計画マスタープラン2020」において都市機能集積ゾーンに位置付けられており、各地域の特性を踏まえた都市機能の更新や土地利用の高度化を促進し、創出した余剰地などを活用して緑地やくうち等の公益性のある施設等の形成を図ることができるものと考えています。
また、二酸化炭素の排出については、ZEBやZEHの浸透や、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の改正により、タワーマンション等にも令和7年4月から省エネ基準が適合義務となる等、脱炭素社会の実現に向けた環境政策が進んでいます。
このような状況において、区としましては、環境面からタワーマンションの建設を抑制することは、現在、考えておりません。
2、光熱費や物価高など中小業者・商店街への支援を
大きく2つ目の質問は、物価高、電気代など中小業者・商店街への支援についてです。
今議会の補正予算案では、区内中小企業がコロナや物価高対策で借りた融資の返済負担軽減のため、地方創生臨時交付金を活用して、新たな借り換え融資制度の創設が提案されています。先の第2回定例会個人質問で、会派の宇都宮ゆり議員も要望しており、区民・事業者の声が届いて本当に良かったです。今回はその上で、更なる直接支援についてうかがいます。
私は飲食店で、「1ヵ月の電気代は10万近くかかっている。コロナの協力金で課税となり、所得税や住民税、国保料の負担も増え、食材やお酒の仕入れも軒並み上がり、今が一番厳しい状況」との話を伺いました。商店街の八百屋さんも、「業務用の冷蔵庫の電気代がかかって大変」。美容院でも「お客さんが来ない時はお店を早やめに閉めている」とのこと。北区のお風呂屋さんからも、衛生用品、燃料・光熱費の値上げ、高止まりの影響は、死活問題と伺いました。
そうした中、杉並区では先の第2回定例会補正予算で、区内1万7000ある中小業者への支援として、「光熱費高騰緊急対策助成金」約17億円余を計上。今年4月~9月にかけての電気代の値上がりに対し、平均すると1事業所あたり10万円前後の助成となります。17億円のうち、地方創生臨時交付金は8億円。残りの9億円は一般財源からあてていると杉並区財政課からお聞きしました。補正予算全体では約22億円で、その7割を超える17億円を中小業者にあてる姿勢は、杉並区としての本気の営業支援が伝わってきました。そこでお聞きします。
北区でも、区内中小業者へ光熱費などの直接支援を行うよう求めます。あわせて、北区公衆浴場組合に対する北区独自の燃料費補助給付額について、増額された60万円を継続・拡充して頂くよう求めます。
次に、商店街の街路灯への支援についてうかがいます。
地域の安全・安心に寄与する商店街街路灯への北区の補助が、今年度2分の1から3分の2に引き上げられました。またLED街路灯ランプ交換に対する区の上乗せ補助が制度化され、「助かった」との声が届いています。しかし、昨今の電気代高騰により、商店街の街路灯の運営はいっそう厳しさが増している状況です。そこで、北区の補助率を更に引上げるよう求めます。お答えください。
まず、区内中小企業者への光熱水費などの直接支援についてです。
原油や原材料価格の高騰等により、区内事業者の皆さまには、コスト削減等、事業の効率化に努めていただいておりますが、依然として厳しい経営状況であると認識しており、区といたしましては、新たな制度融資の創設などを通じて支援してきたところです。
また、公衆浴場への燃料費補助給付額の継続・拡充については、燃料費負担が大きい区内公衆浴場を支援するため、令和4年度分として、1浴場あたり50万円を増額、今年度も継続して60万円を支給しています。
今後も、国の燃料油価格激変緩和対策や、燃料費の動向を注視しつつ、区内中小事業者の景況把握に努め、必要な支援について検討してまいります。
次に、商店街の街路灯への支援についてです。
区では、電気料金高騰による商店街の負担を軽減するため、補助金算定方式の見直しを行い、概ね2分の1であった補助を、補助率3分の2、補助上限なしに拡充するとともに、再エネ・省エネの推進によるコスト削減という観点から、LED灯交換に伴う経費の上乗せ補助を行っています。
商店街街路灯の電気料金補助のあり方につきましては、引き続き、検討してまいります。
3、高齢者や障がい者の尊厳を守るために
大きく3つ目の質問は、高齢者や障がい者の尊厳を守ることです。
(1)紙の健康保険証の存続を求める
1つは、紙の健康保険証の存続です。
私は、昨年11月の本会議質問の際、マイナンバーカードと保険証を一体化し(以下、マイナ保険証とします)、健康保険証を廃止する方針は撤回を国に求めてほしいと要請しました。その後、区内の医療機関でも、マイナ保険証では保険資格の確認ができない。全国では医療費の負担割合が誤登録など混乱は続いています。どれも、健康保険証があれば起きないトラブルであり、医療機関と患者さんは、そのつど煩雑な対応を余儀なくされ、保険診療が妨げられています。制度への信頼が大きく損なわれている中で、各種世論調査でも健康保険証の廃止は撤回・中止の声が6~7割となっています。皆保険制度を根底からくつがえす健康保険証の廃止は中止し、存続するよう国に求めて下さい。
今年6月、被保険者証とマイナンバーカードの一体化を盛り込んだ改正マイナンバー関連法が成立しました。
国は、現行の健康保険証を廃止するとともに、マイナンバーカードと一体化した健康保険証を持たない方には、資格確認書を発行し、現行の健康保険証と同じように使えるようにするとしています。
区としては、国に健康保険証の廃止を中止し、存続を求める考えはありませんが、すべての区民が安心して医療を受けられるよう引き続き努めてまいります。
(2)5類移行後のコロナ対策について
2つは、5類以降のコロナ対策についてです。
8月21日以降、全国の新型コロナの定点あたり報告数は5類移行後、連続で最多を更新しています。その背景には夏休み明け学校再開された影響や、通称「エリス」と呼ばれるオミクロン系統の変異株の増加が東京でも3割を超え、主流になっていると報告されています。9月7日、60歳以上の定点医療機関あたりの患者報告数は第8波ピーク時の約1.5倍に、高齢者施設でのクラスターも発生しており感染予防は引き続き重要と考えます。そこでハイリスクである高齢・障害施設での職員の定期的PCR検査や入院・治療体制を継続するよう求めます。
新型コロナウイルス感染症については、その感染力の強さから多くの患者が発生しておりますが、ワクチン接種がいきわたったこともあり、オミクロン系統の新たな変異株が、特に重症化しやすくなっている傾向は確認されていません。
高齢・障害施設従事者を対象とした一斉定期的PCR検査については、当面の間、継続する予定ですが、検査の終了時期については、国、東京都の動向とともに、感染拡大の状況や施設事業者のご意見等を踏まえながら検討してまいります。
なお、高齢者や基礎疾患を有する方など、重症化リスクの高い方等については、ワクチン接種やマスク・手洗いなどの感染予防策を推奨するとともに、医師会等と連携を図りながら、新型コロナ患者に対応する医療機関の拡大に努めてまいります。
(3)補聴器購入助成制度の実施にむけて
3つは、補聴器購入助成制度の実施です。
先の第2回定例会では、来年度から北区でも補聴器補助をスタートさせる旨、区長より表明があり、区民も期待をこめて待ち望んでいます。より良い制度として頂くため、以下2点うかがいます。
1つは、早期発見、早期対応となるしくみです。聴力低下は自覚しにくいのが特徴であり、区の健診や聴力検査により補聴器の必要性を確認できるよう検査費用も補助の対象として実施すること。
2つは、対象者と補助額の設定です。非課税世帯はもちろんのこと課税されている方も利用できるように、また補助額も従来の実施区より引き上げて設定するよう求めます。
はじめに、検査費用も補助対象とすることについてです。
聴覚機能の衰えは、高齢者の社会参加の低下や認知症の要因になるため、ヒアリングフレイル対策が重要であると考えており、耳鼻科健診での啓発チラシの配布やヒアリングフレイルに関する講演会の実施などにより、早期の気づきに繋げられるよう努めてまいります。
補聴器の購入費用助成については、先行区では対象者や補助額など制度の見直しを進めている区もあると聞いています。北区では新たな制度の構築となりますので、先行区の取り組みなどを参考として、制度内容の検討をしているところです。
なお、補聴器を購入するために必要な、医師による検査費用への補助については、東京都の「高齢者対策区市町村包括補助事業」の対象とされていないことなどから考えておりません。
(4)課税世帯へのシルバーパス購入補助を
4つは、課税世帯へのシルバーパス購入補助についてです。
シルバーパスは高齢者の社会参加や環境面からも評価される施策です。一方でその負担額は、住民税課税所得が135万円を超えると、1000円から一気に、2万510円に上がるため、負担軽減を求める声が多く寄せられています。それは本来、都が責任をもって行うものですが、区民からは「区でもなんとかならないのか」との切実な声を頂いています。
北区では、2万円余を払わなければならない対象者は何人いるのか。区としてシルバーパス購入の補助を行ってほしいが区の考えをお聞かせください。
はじめに、シルバーパスの発行負担金として、2万510円の負担となっている利用者数です。
シルバーパスの更新手続きは、ふれあい館等の区有施設で行っていましたが、令和2年度より新型コロナウイルス感染症対策として郵便方式に変更となりました。郵便方式となった以降の利用状況は把握していませんが、ふれあい館等で更新手続きを行っていた令和元年度以前では、2万510円の負担をした利用者は2000人前後となっています。
次に、区としてシルバーパスの補助を行うことについてです。
シルバーパスにかかる本人負担のあり方については、事業の効果なども含め、事業実施主体である東京都において検討すべきものと認識しており、区としてシルバーパス購入の補助をすることは考えておりません。
(5)第9期介護保険料の引き下げを
5つは、第9期の介護保険料についてです。
私は昨年11月の本会議質問で、国がすすめる介護保険利用料の原則2割負担や要介護1・2の介護保険サービスを総合支援事業へ移行、ケアプランの有料化など、関係者の「史上最悪の介護保険改悪」との声を紹介しやめるよう国に意見をあげるべきと求めました。この場でも重ねて要望します。
今回は、負担の大きい介護保険料にしぼって質問します。現在第8期の介護保険料は標準月額6114円ですが、準備基金を活用し値上げはすえおきとなりました。一方で、第7期の介護給付費3年間の計画と実績値は104億円を超える乖離だったことをみれば、第8期の介護保険料は引き下げも可能だったのではないかと認識しています。介護保険料の引き下げに活用できる準備基金の現在残高は33億円余となっており、第9期介護保険料はこうした基金を積極的に活用し、介護保険料の引き下げを今度こそ実施するよう求めます。
加えて介護保険料の減額についてです。13年前の2009年度実績は71件が年々減少し、昨年度は34件と半分以下になりました。これは、新規で減額を受ける方がほとんどいないということではないか。区はどう認識していますか。近隣区と比較してみても以下、改善すべき点があると考えます。申請期間は少なくとも現状の5月までを8月いっぱいまでに延長し随時可能とする。預貯金の上限を世帯全員300万円から、単身350万円+人数で加算とする。収入上限も、生活保護基準の1.15倍という表現ではなく、年収のめやすを具体に示すなど改善を求めます。お答え下さい。
はじめに準備基金を積極的に活用し介護保険料の引き下げを実施することについてです。
区では、介護保険事業計画期間における財政の均衡を保つため、介護給付費用準備基金を設置し、剰余金が生じた際には、基金に積み立てています。
第8期の介護保険料の設定の際は、基金を17億円取り崩し、介護保険料の上昇抑制に活用しました。第9期の介護保険料の設定についても、給付費の上昇に対応するために、基金はある程度の規模を確保しつつ、第8期同様に基金の効果的な活用を検討してまいります。
次に、介護保険料の減額申請の改善についてです。
区では、毎年5月に前年度減額の対象となった方へ、「介護保険料減額のお知らせ」を送付しているほか、納付書発送の際にも案内を同封するなど制度の周知を図ってきました。また、申請期間を過ぎた後も、随時、減額等の相談や申請を受け付けるなど、丁寧に対応してきましたが、減額件数は減少傾向となっています。なお、特別区においても、減額実績は、大半の区が50件以下となっています。
世帯全員の預貯金額の上限設定の変更は考えていませんが、今後も、減額の対象となる方の申請漏れがおこらないよう、これまでのような案内の送付に加え、9月に高齢者あんしんセンターの窓口で新たに配布するチラシでは、表記を分かりやすく変更しています。
(6)国の特別障害者手当の活用推進を
6つは、国の特別障害手当についてです。
特別障害者手当とは、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の方に、月2万7980円が支給される国の手当で障害者手帳がなくても受給できます。その手当があれば介護保険の利用料負担も大きく軽減されるので、対象となる方にはもれなく受給して頂きたいと、会派として幾度となく制度の周知と推進を求めてきました。私自身もこの間、在宅療養されている方には声をかけるようにして、何人かの方が受給につながり、ご家族からは「本当に助かった」「知らせてくれてよかった」との言葉を頂いています。
北区はケアマネや介護事業所などを通じても周知を図りたいとの答弁でしたが、現在の取組み状況や実績の推移はどうか。また医師の意見書が必要であり医療機関に対しての働きかけも重要です。更なる制度活用の検討を求めます。
特別障害者手当について、区では、「障害者福祉のしおり」やホームページ、北区ニュースのほか、高齢者あんしんセンター連絡会で制度の周知を図りました。
区の特別障害者手当受給者のうち、障害者手帳を取得していない方は、令和3年2月1日時点で1人でしたが、令和5年9月1日時点では7人となっています。
東京都は、特別障害者手当について「対象となる方に広く周知されることが重要」としており、区としても取り組みを進める必要があります。
手当の対象となりうる方で、障害者手帳を取得していない方を把握することについては、高齢者あんしんセンター等の協力を得ながら、今一度、制度の周知を図ってまいります。なお、医療機関への周知につきましては、他区の取り組みについて、研究してまいります。
(7)重度障がい者の入所施設など早期建設を
7つは、重度の障害をお持ちの方の入所施設など早期建設についてです。
都営桐ヶ丘団地建替事業では、団地建替えにより創出された用地があり、そのうち創出用地Bについては、東京都と区が連携を図りながら、福祉施設などの公共公益施設の導入を図る計画となっています。そうした検討があれば、障害者団体から強い要望があり、議会も全会一致で採択した、重度障がい者の入所施設や、重度の方が入所できるグループホームを含め、生活介護の通所施設、短期入所施設、緊急一時保護機能を、周辺に整備することは北区の計画にもそう内容と考えますが、区の考えをお聞かせください。
都営桐ヶ丘団地建替計画における創出用地Bの活用については、ご案内の通り、東京都と区が連携を図りながら、誰もが地域で安心して暮らせる環境形成を図ることを目的に、福祉施設などの公共公益施設の導入を図る計画となっています。
創出用地Bは2つの区画に分かれますが、区が必要とする福祉施設の整備が図れる区域は、この間の東京都との協議で約5000平方メートル程度であることを確認しています。
一方、大きな区画については、東京都が今後土地利用を検討していくものと思います。
区としましては、この敷地条件の下で、「北区基本計画2020」に位置付けた福祉施設等、整備を図る施設の検討を進めるとともに、民間活力を活用した整備を誘導するための協議を東京都と進めているところです。
ご提案の施設を含め、区が活用できる創出用地Bの活用策の整理には今少しお時間をいただきたいと考えますが、区内初の入所施設整備は、「150の政策」の中にも掲げており、今後、新たな「北区基本計画」に計画事業として位置付けるなど、施設整備に向けた本格的な検討を開始してまいります。
4、子どもの学び・育ちを全力で支えるために
大きく4つ目の質問は、子どもの学び・育ちを全力で支えるために5点うかがいます。
(1)高等教育の給付型奨学金制度創設にむけて
1つは、高等教育の給付型奨学金についてです。
先の第2回定例会で北区としてはじめて「有効性を認め検討する」と答弁したことを心から歓迎します。国の給付型奨学金は、所得制限や成績要件などの条件により限られた学生しか受けることができません。北区ではそうした条件を緩和する方向で実施するよう求めます。
区独自の給付型奨学金制度については、若い世代の方が、北区に住み続けていただく仕組みの一つとして、有効な施策と考えていますので、引き続き、対象要件、給付条件、財源確保策などの具体的な制度設計について、国の動向も注視しながら、研究、検討を進めてまいります。
(2)高校生などの体験の機会を保障するために
2つは、高校生の体験や経験の機会を保障することです。
2021年度国が行った「子どもの学習費調査」では、低所得者層と中間層では学校外活動費の支給額に平均4万8500円の開きがあったとして、足立区では今年度から課税世帯の低所得世帯や税額控除前の区民税所得割額が、年間2万5000円以下の高校生約300人程度に対し、部活動や資格取得を支援するため年間5万円を支給する事業を始めました。ぜひ北区でも実施するよう求めます。
高校生等を養育している世帯への支援につきましては、今年度から東京都により018(ぜろいちはち)サポートが実施されるほか、国においては児童手当の対象年齢を拡大するなどの検討が進められています。
ご提案の支援策につきましては、このような状況を踏まえ、他自治体の取り組みを、調査、研究してまいります。
(3)障がい児への手当について所得制限の撤廃を
3つは、特別児童扶養手当や障害児福祉手当など、障害を持つ20歳未満の子どもを育てている保護者などに支給される手当についてです。
現行では支給の条件に扶養親族の人数に応じて所得制限があり、基準所得を超えると手当を受給することはできない制度となっています。しかし一方で、児童手当については、2024年度から所得制限が撤廃される改正となります。
児童手当同様、障害児の手当についても所得制限をなくしてほしいとの声が寄せられています。国に対し所得制限をなくすよう求めて下さい。
国会においては、「障害のあるこどもに係る公的給付の所得制限の撤廃のために早急に講ずべき措置に関する法律案」が提出され、特別児童扶養手当や、障害児福祉手当等に関する所得制限のあり方について、今後、議論が進むものと認識しています。
児童手当同様、障害児への手当につきましても、国において適切な判断がされるものであり、国の動向を注視してまいります。
(4)産後デイケアや地域子育て支援拠点について
4つは、産後デイケアや地域の子育て支援の充実についてです。
私は先日、北区から産後デイケアを受託しているNPO法人のお話を伺いました。現在の委託費ではデイケアを受け入れた実績での出来高補助ですが、助産師や保健師の常駐に対し、専門職の確保に合わせた補助があると安定した運営ができるとのこと。ぜひ改善を求めます。
また、利用者のママが赤ちゃんの他、上のお子様を一緒に連れてくる場合に、一時預かりの託児料金が1時間1250円と保護者負担が大きいが、他自治体では民間法人が「地域子育て支援センター」として受託すると一時預かりは1時間500円となり保護者負担を軽減できるとのこと。北区でも対応するよう求めます。
現在、産後デイケアの補助については、東京都の補助制度を活用して、利用実績に基づき、事業者に対して利用者負担額の9割を補助しています。
この秋には、事業者との意見交換を予定しておりますので、改めて、運営状況の把握に努めてまいります。
次にお子さんの一時預かりの対応についてお答えいたします。
現在、区では利用者のニーズに応じた一時的な預かり事業として、ファミリー・サポート・センター事業、乳幼児・子どもショートステイ事業の他、保育園における一時預かり保育、ベビーシッター利用支援事業などを実施しているところです。
ご提案の保護者負担軽減につながる取り組みにつきましては他自治体の取り組みを参考にしながら研究を進め、引き続き地域の子育て支援の充実を目指してまいります。
(5)子どもへの性暴力をなくすために
5つは、子どもへの性暴力をなくすことです。
子どもとの関係をつくりながら、徐々に性的関係をすすめる。性的手なづけ・グルーミングという言葉が注目されています。子どもが支配・コントロールされていく中での性被害について、子どもの側から身を守ることは難しい。被害だと認識できない場合もあり、子どもは長い間、一人で抱えて苦しむことになります。その前に、子どもに関わる職種の大人が、「おかしい」と被害に気がついてあげられることが重要です。
また、加害者は子どもが黙って受け入れてくれる。性教育を優しく教えている。これは愛情表現。この程度は犯罪ではないなど自分の行動や認知の歪みを正当化していく。その背景には、子どもを性の対象として消費する社会、家族や学校、メディアもそうした考えを持っていると指摘されています。
本年7月13日より、新たな性犯罪刑法が施行となり、同意のない性行為は罰せられる。不同意性交等罪が創設されました。そこで、質問です。
「性的同意」とは何かや、1次予防としての科学と人権にもとづいた「包括的性教育」について、大人自身も学び身につけられる講座やワークショップの開催、子ども関連施設の援助者である職員が、性虐待に対する知識を深め、被害を受けた子どもへの理解とその立場に徹底して立ち、2次被害を防ぐ研修など進めるよう求めます。お答えください。
区では、性暴力の被害に遭う子どもを一人でも減らすため、性暴力の防止に向けた啓発事業として、性暴力の被害者や加害者になる可能性がある中・高校生を対象とした「デートDV講座」の開催のほか、DVに関するパンフレットを作成して、中・高校生をはじめ、区民の皆さまに配布する等の取り組みを積極的に行っています。
なお、大人の方を対象とした「性的同意」やいわゆる「包括的性教育」に関する講座につきましては、今年度、男女共同参画推進事業「北区さんかく大学」において、「包括的性教育によって実現するジェンダー平等」と題した講座を1回開催する予定です。
今後の講座等の実施につきましては、教育委員会とも連携しながら、他自治体の取り組み状況を研究してまいります。
次に子どもの性暴力をなくすことについてのご質問のうち、子ども関連施設の援助者に対する研修についてお答えいたします。
現在、区では子ども関連施設職員を対象に虐待防止研修の中で子ども自身への2次被害防止の重要性について取り上げています。具体的には子ども自身に深く聴き取ることをしない、また、軽い疑いでも速やかに児童相談所につなぐなどの周知啓発を行っているところです。
今後も引き続き、子どもたちの心と体を守る取り組みを推進してまいります。
5、住まいは人権、住宅支援の拡充を
大きく5つめの質問は、住宅支援の拡充についてです。
区民からのご相談の中には、家族関係の悪化、DVや虐待により家族と離れて暮らしたいが収入もなく、家を出てアパートで暮らす初期費用も用意できないという若者や女性が少なくありません。また、シングル家庭、中高年の非正規雇用やフリーランス、年金が少なく家計に余裕がない女性から、「せめて1万でも2万でも家賃の負担が軽くなると助かる」との声も頂いています。
おりしも横浜市では2021年に、「単身女性の住まいの調査」を実施しました。その結果、非正規など男女の賃金格差があり、単身女性は貧困で、高い居住負担やリスクを抱えているとまとめ。次の年の2022年には、全ての性別の31~60歳で就労中、年収180~600万円の約500人のWEBアンケート調査を実施しました。結果は生活費における住居費の負担率が男性25.7%、女性29.1%と女性の負担が大きいことが示され、日本の住宅政策は、「男性稼ぎ主型を前提にした持ち家政策」であり、若い世代や女性が支援制度からこぼれ落ち困窮している。家賃補助や単身の公営住宅の入居条件緩和が必要と指摘しています。
北区では今年度、住宅セーフティネット法による家賃低廉化補助事業として、UR団地を含む民間住宅を活用し、4万円の家賃軽減を2戸実施する予算が組まれました。現状のニーズに応え、スピード感をもってすすめて頂くよう以下3点お聞きします。
(1)家賃軽減住宅の充実を
区のセーフティネット住宅の取組み状況を具体的にお示しください。また、量的にも抜本的な拡充を求めます。
北区では、住宅確保要配慮者のみが入居できる専用住宅への家賃低廉化補助事業を今年度から実施し、民間賃貸住宅への円滑な入居をうながすとともに、入居者の家賃負担の軽減を図っているところです。
また、専用住宅として、UR賃貸住宅等を活用することが可能になったことから、セーフティネット住宅の供給を促進するため、昨年度からUR都市機構と協議を重ね、本年9月に協定を締結しました。
また、公社住宅における専用住宅の供給について、今後、東京都住宅供給公社と協議を開始してまいります。
区としましては、引き続き、セーフティネット住宅の確保に向け、UR都市機構や東京都住宅供給公社と連携を図るとともに、居住支援セミナーなど様々な機会を捉え、民間賃貸住宅のオーナー等へ制度の周知に努めてまいります。
(2)「困難女性支援法」との関連整備を
先に紹介した経済的に困窮状態にある若者や女性への住まいの確保について、シェルターや一時宿泊施設、伴走的な生活支援とあわせたしくみを構築すべきと考えますがいかがですか。また困難女性支援法の具体的計画にも位置づけて推進を求めます。
区には単身女性の生活保護受給者が緊急一時的に利用できる施設として「浮間ハイマート」があるほか、困窮状態にある方への一時的な住宅支援としては、東京都が実施する東京チャレンジネットなどを利用できるため、現時点では、区独自に伴走型支援可能なシェルターを設置することは考えておりません。
なお、来年4月施行の「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」に基づき、現在、東京都が策定中の基本計画の内容を踏まえて、区では計画策定を予定しています。新法では、困難な問題を抱える女性の住宅の確保についても触れられていることから、引き続き国や東京都の動向に注視してまいります。
(3)家賃補助の実施や公営住宅の入居要件緩和を
ハード整備と並行して「家賃補助の実施」や「公営住宅の入居要件」を、単身や現役世代に緩和するよう求めます。
以上で私の質問を終ります。ご清聴ありがとうございました。
家賃補助につきましては、住宅確保要配慮者のみが入居できる専用住宅において実施しており、拡充することは考えておりません。
また、公営住宅の入居要件の緩和につきましては、都営住宅では、原則として市場で適切な住宅を確保することが困難な同居親族のある世帯を入居対象としており、単身者は、特に居住の安定を図る必要のある高齢者世帯や障害者世帯に限り入居の対象としていると聞いております。
区営住宅につきましては、募集戸数が少なく応募倍率も高いことから、入居要件の緩和は考えておりません。