2024年第3回定例会代表質問―のの山けん
2024年9月9日 | のの山けん
私は、日本共産党北区議員団を代表して、区長、教育長に大きく3点質問いたします。
1、物価高騰、猛暑などから暮らしと営業を守る緊急対策を
第1に、物価高騰、猛暑などから暮らしと営業を守る緊急対策についてです。
日本共産党北区議員団は8月5日、山田区長に、「物価高騰などから区民のくらしを守る緊急要望」を提出し、すみやかな実現を求めました。北区の財政調整基金残高は、2023年度末で約214億円に積みあがっており、これを主な財源として、暮らし・営業を守るための緊急対策を提案したものです。
以下、要望書の内容にそって、3点質問いたします。
(1)物価高騰支援給付金事業の拡充を
1つ目は、物価高騰支援給付金事業の拡充についてです。
現在、支給されている北区エネルギー・食料品等価格高騰支援給付金は、今年度新たに住民税非課税となった世帯のみが対象で、私たちのところにも、「去年はもらえたのに、今年はもらえないのか」との相談が多数寄せられています。苦しいのは、昨年も今年も同じです。
そこで、今年度対象となっていない非課税世帯にも、区として独自に給付金を支給すべきと考えますが、いかがですか。さらに、生活保護世帯については、収入認定とならない月額8000円を区として支給してはいかがでしょうか。
また、昨年度の給付金を受け取っていない人が約5000人いるとのことです。特別な理由があって未申請となってしまった方には、今からでも支給できるよう救済措置を講じていただきたいと考えますが、区の見解をお聞かせ下さい。
今年度新たに住民税非課税となった世帯への給付は、現在実施されている定額減税、及び昨年度の住民税非課税世帯への給付金のいずれの支援も十分に受けられない世帯に対し、昨年度と同水準の支援が受けられるよう措置されているものであることから、未申請世帯や生活保護世帯も含め、昨年度の給付金の対象世帯への区独自の給付は考えておりません。
なお現在、国において年金世帯や低所得者世帯を対象とした給付金が検討されていることから、国の動向を注視してまいります。
(2)低所得者へのエアコン設置・電気代補助を
2つ目に、低所得者へのエアコン設置・電気代補助についてです。
今年も激しい猛暑日、酷暑日が続きました。エアコンをつけていない室内で熱中症となり、救急搬送される例も多発していると聞いています。生活保護世帯をはじめ、所得が低くてエアコンを設置できなかったり、電気代を気にしてエアコンをつけないで過ごす世帯には、命にもかかわる措置として、区の支援が急務です。
これまでも繰り返し求めてきた低所得者へのエアコン設置費用や電気代補助を、ただちに実施して下さい。区長の決断を求めます。
国が示した、生活保護世帯におけるエアコン購入に関する基本的な考え方では、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付の活用が示されており、これを踏まえ、区においてもご相談があった際は、社会福祉協議会をご案内しており、現時点で、低所得者へのエアコン設置費用の助成は考えておりません。
なお、令和5年度以降、特別区において低所得世帯等を対象としたエアコン設置助成を開始した区があることは承知しており、取り組みの内容、また、未実施区の今後の動向など注視してまいります。
電気代補助については、エネルギー価格などの高騰を踏まえ、住民税非課税世帯等への給付を実施しているほか、国による電気料金等の抑制のための取り組みも行われていることから、低所得者への電気代補助は考えておりません。
(3)中小事業者や医療機関・福祉施設への直接支援を
3つ目に、中小事業者や医療機関・福祉施設への直接支援についてです。
区内の中小企業や個人事業主、医療機関や介護・子育てなどの福祉施設は、エネルギー価格などをはじめとする物価高騰の影響で、苦しい経営環境が続いています。こうした中で、少なくない自治体が、支出した電気・ガス・燃料代や、省エネ設備投資などへの支援に踏み出しています。北区としても、切望されている直接支援に踏み出すべきではないでしょうか。
そこで、お尋ねします。
1、物価高騰で苦しむ中小企業や飲食店、個人事業主などを対象に、経営支援のための直接補助を実施すること。
2、医療機関や福祉施設へは、新型コロナの時に実施した慰労金の支給を、物価高騰対策として再度実施すること。あわせて、新型コロナ11波の感染拡大から施設内でのクラスターを防ぐための補助を行い、患者・利用者のPCR検査やワクチン接種の自己負担軽減を図ること。
3、公衆浴場の燃料費高騰対策のための支援を行うこと。
4、基本報酬の引き下げで窮地に追い込まれている区内の訪問介護事業所へ、廃業・倒産を回避するための緊急一時金を支給すること。
以上、区長のあたたかい答弁を期待いたします。
まず、中小企業や飲食店、個人事業主などを対象とした直接補助の実施について、です。
これまでも地方創生臨時交付金を活用して、特に影響を受ける中小企業への金融対策や介護事業所、障害者福祉サービス事業所、子育て施設、医療機関、公衆浴場への給付を実施してきたほか、子育て世帯への支援として小児用インフルエンザ予防接種費用の助成等を行ってきたところです。このうち、中小企業への金融対策については、長引く物価高騰対策として、一般財源を活用して支援を継続しておりますので、中小企業や飲食店、個人事業主などを対象とした直接補助については考えておりません。
次に、医療機関や福祉施設への物価高騰対策としての給付、及び、公衆浴場の燃料費高騰対策についてです。
政府は、本年6月、さらなる物価高騰対策を盛り込んだ経済対策について、今後、地方創生臨時交付金を拡充して、医療・介護、公衆浴場等への幅広い支援を行う、としておりますので、引き続き、国や東京都の動向に注視しながら、適宜、適切に対応してまいります。
また、新型コロナ感染拡大から施設内でのクラスターを防ぐための補助、及び、患者・利用者のPCR 検査については、新型コロナ感染症が5類へ移行し、医療機関による自律的な通常の対応、個人や事業者の主体的な判断に委ねるという位置づけとなっており、再度、感染症法の類型変更等があった際には適切に対応いたします。
コロナワクチン接種の自己負担軽減については、区の助成として、今年度は、国および東京都の補助金を活用し、高齢者インフルエンザ予防接種と同じく、72歳以上の方および生活保護世帯等の方は全額助成とし、対象となる疾患のある60歳から64歳までの方および65歳から71歳までの方は自己負担2500円として区民負担を軽減してまいります。
次に、区内の訪問介護事業所への緊急一時金についてです。
介護保険制度の充実は国の責任において実施するものであり、基本報酬引き下げに相当する減収分を補填することは考えておりません。
訪問介護サービスは、高齢者の在宅生活を支えるために不可欠なサービスであると認識しており、今後も必要な事項については、国へ要望してまいりたいと考えています。
2、北区で働く職員の賃金引き上げと働き方の改善を
大きな質問の第2は、北区で働く職員の賃金引き上げと働き方の改善についてです。
わが国では、「失われた30年」という長期にわたる経済の停滞と衰退が続き、日本は、世界でも特異な「賃金の上がらない国」となっています。
1991年からの30年間を比較すると、実質賃金はアメリカで1.48倍、イギリスは1.46倍、フランスは1.33倍に伸びていますが、日本は1.03倍と先進国で唯一横ばい、直近の10年間で実質賃金が年間24万円も減っています。
先月末に、すべての都道府県での最低賃金の答申が出そろいました。全国加重平均で51円の増となる1055円、労働組合などが要求している時給1500円以上にという水準からは程遠いものとなりました。東京の最賃は、1113円から50円上積みの1163円ですが、急激な物価高騰からすれば、焼け石に水といっても過言ではありません。
東京で一人暮らしをする場合、一体どれだけの賃金が必要か。東京地評が2019年に行った「東京都最低生計費試算調査」では、北区在住の25歳男性が普通の暮らしを送るためには、月額約25万円が必要であることを明らかにしました。時給に直せば、1664円となり、今回示された最賃とは500円もの乖離があります。
岸田首相は悠長なことに、最賃を平均1500円とする期限を2030年代半ばとしていますが、今すぐ引き上げなければ、生活は成り立ちません。
長期にわたって賃金が抑えられてきた最大の要因は、財界の利益を最優先にする政治の下で繰り返されてきた雇用破壊です。労働法制の規制緩和によって、低賃金で不安定な非正規雇用で働く人は、労働者全体の4割にまで広がり、正社員には長時間・過密労働が押しつけられています。こうして賃金を削って大企業がため込んだ内部留保は、539兆円にも膨れ上がっています。
一方、公務員が働く自治体職場でも、1985年に自治省が策定した地方行革大綱によって新自由主義の「行革」路線が持ち込まれ、大規模な職員定数の削減と正規から非正規への置き換え、業務の民間委託・外部化が推し進められてきました。臨時職員やパート、アルバイトなどの非正規職員は、2020年度から会計年度任用職員となりましたが、正規職員との賃金格差は、今なお是正されていません。また、業務委託や指定管理者で働く多くの職員は、公務員より低い賃金での労働を強いられています。
今回の質問で、私は、北区の公務職場と、北区との契約によって働く職場での労働者の賃金を抜本的に引き上げるとともに、その働き方を改善することを、区長および教育長に強く求めるものです。
以下、順次、質問いたします。
(1)公契約条例の労働報酬下限額の抜本的引き上げを
まず、公契約条例の労働報酬下限額を抜本的に引き上げることについてです。
昨年度に導入された公契約条例は、北区と特定公契約を結んだ事業所の労働報酬下限額を定め、賃金の大幅アップを図ることが期待されていました。ところが、今年度の工事または製造の請負契約以外の請負契約、ならびに業務委託および指定管理協定に従事する労働者の報酬下限額は、前年度比44円増の時給1191円で、現行の最低賃金である1113円からはプラス78円、10月から改定となる1163円からは、わずか28円の上積みでしかありません。
23区内で公契約条例を持つ区では、世田谷区が100円の引き上げで1330円、中野区が140円の引き上げで1310円、新宿区が43円の引き上げで1245円と1200円以上がほとんどで、1100円台に留まっているのは10区中、目黒区と北区だけです。
そこで、質問です。
年末には、来年度に向けた公契約審議会の議論が始まります。2025年度の労働報酬下限額を思い切って引き上げるよう、区長のイニシアティブの発揮を求めます。
公契約条例では、労働報酬下限額につきまして、公契約審議会の答申を受け、区長が決定することとしております。
公契約審議会では、国の公共工事費の積算に用いるための労務単価や地域別最低賃金、会計年度任用職員の報酬額のほか、他区の状況なども資料として提供したうえで、労働報酬下限額について審議していただいております。
来年度につきましても、公契約審議会に必要な情報を提供し、審議のうえ出された答申を踏まえ、労働報酬下限額を決定してまいります。
(2)会計年度任用職員の報酬引き上げを
2つ目は、会計年度任用職員の報酬引き上げについてです。
北区の公契約条例に基づく労働報酬下限額が、なぜ1191円と著しく低い水準になっているかというと、会計年度任用職員の事務補助の時間単価と同額にしているからです。北区では約2800人の職員のうち、半数にあたる約1400人が会計年度任用職員で、その多くを占めるのが、資格を持たない事務補助の職員です。事務補助の報酬は、いわば会計年度任用職員の最低賃金にあたります。ここを大きく引き上げることは、会計年度任用職員全体の報酬を上げることにつながります。
また、事務補助を含む会計年度任用職員の報酬は、各部で定める会計年度任用職員設置要領等で規定しており、その額は、東京都の最低賃金の上昇や特別区人事委員会勧告などの社会情勢の変化を踏まえ、職員の給料表をもとに決められています。
そこで、質問です。
10月からの最低賃金引き上げに伴い、会計年度任用職員の事務補助の時間単価を大幅に引き上げること。あわせて、事務補助以外の職員の報酬も、要領の見直しで抜本的に引き上げること。区長の決意をお聞かせ下さい。
会計年度任用職員に係る報酬額の改定に当たっては、特別区共通の取扱いとして、原則、常勤職員の給料表を用いて決定することとされています。
会計年度任用職員については、制度発足以来、期末・勤勉手当の支給などの処遇改善を行うとともに、特別区 人事委員会勧告を踏まえ、事務補助をはじめ、事務補助以外についても、常勤職員同様に報酬額の引き上げを行ってきたところです。
会計年度任用職員の報酬額の決定については、職務の内容や責任の程度、他区の状況や東京都最低賃金の動向などを踏まえ、引き続き適切な報酬水準を確保してまいります。
(3)教員の働き方改革推進と給与特別措置法の見直しについて
3つ目は、教員の働き方改革の推進と給与特別措置法の見直しについてです。
公立小・中学校における過酷な教員の働き方は社会問題となり、すでに東京都も北区も、教員の働き方改革推進プランを策定し、それを遂行しているところです。しかし、現状は、少なすぎる人数で多すぎる業務をこなすため、体と心が疲弊し、メンタルで休職に追い込まれる教員も増えていると聞いています。北区でも担任が配置できないクラスが生まれるなど、このままでは学校が持たないという極めて深刻な事態が続いているのではないでしょうか。
そこで、まず、この間進めてきた北区での働き方改革推進プランの成果と、教員の労働時間の変化について、概略をお聞きします。
教育委員会では、毎年、事務の管理及び執行状況について、教育ビジョンなどに掲げる主要な事業を中心に点検及び評価を行っています。
「働き方改革推進プラン」の目標に対しては、ICT支援員の派遣回数を増加したほか、教員事務補助員の全校配置に向けた取組みを進めるなど、概ね達成できたと考えており、学識経験者からも区独自の取組みを中心に高く評価していただいています。
また、教員の労働時間については、「働き方改革推進プラン」策定時には、繁忙期の超過勤務が過労死ラインの80時間を超えている教員が、小学校では約4割、中学校では約5割いました。
昨年度の調査では、過労死ラインを超えている教員は数パーセントまで減少しており、全体的には改善が図られていると考えていますが、今後もさらなる働き方改革の推進に努めてまいります。
次に、今年度から実施となる教科担任制、エデュケーション・アシスタントの導入についてです。
教科担任制は、小学校高学年に専科の教員を配置するもので、担任のコマ数を減らし、負担軽減を図るための有効な手段になります。この10月から導入されるエデュケーション・アシスタントは、小学校低学年のクラスで、学級経営支援員と同等の役割を果たすとされています。
都の北学園で始まった教科担任制について、現状の評価をお聞かせ下さい。また、今後の導入計画についてお示し下さい。エデュケーション・アシスタントは、どの学校に、どれだけの配置となりますか。必要な人材の確保策についてもお聞かせ下さい。
都の北学園における小学校高学年の教科担任制は、社会科と理科の区専科指導講師の加配により実施しており、担任の持ちコマ数の削減や担当する教科の教材研究をする時間の確保など、教員の負担軽減や授業の質の向上につながっていると考えます。
今後は、東京都が進める小学校教科担任制推進事業も活用しながら、都の北学園での実施をさらに検証し、中期計画や教育ビジョンに基づき、区内の他地域に拡充してまいります。
次に、エデュケーション・アシスタントついてです。
10月から、東京都の補助金を活用して、学年副担任相当の役割を担うエデュケーション・アシスタントを計41名、小学校及び義務教育学校(前期課程)の全33校に配置をします。
人材の確保にあたっては、教員を支援し、児童にきめ細かな関わりのできる人材を確実に配置するために、人材派遣会社に委託をしてまいります。
次に、教員の基礎定数増と残業代不支給の廃止を国に求めることについてです。
この6月に、質の高い教師の確保のための環境整備について、中央教育審議会の提言が出されました。しかし、この提言は、現場から出されている教員の基礎定数増と、残業代不支給の廃止、いわゆる教員給与特別措置法の見直しという強い要望に、正面から応えるものにはなっていません。
給特法について提言は、現在4%の調整額を10%以上とするとし、文科省が13%への引き上げを要求しているとも報じられています。給与が上がること自体はよいことですが、調整額を引き上げても、残業代の代替とはならず、定額働かせ放題という本質は変わりません。
そこで、教員基礎定数の引き上げと、給特法を見直し、教員にも残業代を支給するための法改正を行うことを、北区から国にしっかりと求めていただきたい。教育長の見解をお聞かせ下さい。
先月に出された中央教育審議会の答申においては、我が国の学校教育や教師を取り巻く現状を踏まえ、教師を取り巻く環境の抜本的な改革が打ち出されました。
学校における働き方改革の更なる加速化を図り、学校・教師が担う業務の適正化を進めつつ、学校の指導・運営体制の充実や、処遇改善に向けた取組みを進めることとされています。
給特法については、調整額の改正が実現すれば、50年振りの引き上げになるものであり、まずはこうした取組を着実に進めていくことが必要だと考えています。
教職員定数の引き上げについては以前より、全国都市教育長協議会を通じて、給特法については全国知事会議を通じて、改正等による教師の処遇改善について要望をしています。
(4)指定管理者制度の見直しについて
4つ目に、指定管理者制度の見直しについてです。
北区は、先行して16の公園で実施してきた指定管理者の導入を、来年度からは区内全ての公園に広げるとし、今議会にも指定管理議決が提案されています。
この間、私たちの会派が告発してきたように、16の公園のうち、比較的規模の大きい飛鳥山公園や清水坂公園では、シルバー人材センターに委託している清掃業務の勤務体制、賃金が大幅に切り縮められてきました。この間も職員から、「以前は4人組で行っていた清掃業務を、今は2人でやっている。4人の時は時間内に公園をきれいにできたが、2人になってからは、隅々まで手が届かなくなった」との声を聞いています。
このまま全公園に指定管理を導入すれば、これまで直営で委託していた清掃業務の勤務体制や人件費が大幅に引き下げられることになりかねません。まずは、先行16園での実態を検証するとともに、直営での水準を維持することを指定管理者に求めるべきと考えます。清掃にあたる職員の処遇が守られないならば、いったん全公園への指定管理の導入は見送るべきではありませんか。
以上、職員の賃金と働き方の問題について、前向きな答弁を求めるものです。
北区では、公園に指定管理制度を導入したことで、これまで実施していない民間ならではのキッチンカーや、利用者向けの様々なイベント・ワークショップが開催され、公園の魅力と区民サービスが向上した公園管理が進められていると認識しております。
また、特に拠点事務所を構えた飛鳥山公園や清水坂公園での清掃業務では、所長や副所長、現地事務所職員が園地の状況を把握しながら効率的な作業員の配置計画により適切に実施されております。
今後、全ての公園・児童遊園での指定管理においても、シルバー人材センター及び福祉作業所による清掃実績がある施設は、熟知した体制と雇用創出の観点で契約を継続する旨の提案を受けており、引き続き公園管理の質が向上し、区民サービスの向上につながる、最適な清掃業務がされるものと考えております。
3、まちづくりは住民本位・市民参加で
大きな質問の第3は、まちづくりを住民本位・市民参加で進めることについてです。
(1)駅前の開発事業と商店街振興について
その1つ目は、駅前の開発事業と商店街振興についてです。
北区基本構想の策定に向けて行われた2021年の区民意識・意向調査では、北区の魅力を問う設問に約7割が「便利で住みやすい」と答え第1位となりましたが、続く第2位は33.2%の「商店街がある」でした。
一方、区内の商店街は、この10年で商店街数が92から72へ、加盟店舗数が3119から2079と激減しており、基本計画2024では現状について、「大型店・コンビニの進出、インターネット通販の普及による顧客離れにより、商店街を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあります」と指摘しています。
こうした中、駅周辺のまちづくりの進展に伴い、開発事業や大型商業施設の出現による既存商店街への影響が懸念される事態が生まれています。
例えば、十条駅西口市街地再開発では、この年末、再開発ビル低層棟内に、高品質なプライベートブランドを持つ食品専門のスーパーマーケット、クイーンズ伊勢丹がオープンします。これに加え、テナントとして入る小規模な店舗が、低層棟の1、2階部分に並ぶ予定となっています。
こうした商業拠点が出現することによって、顧客が増え、新たなにぎわいを創出するという側面がある反面、十条銀座商店街や富士見銀座商店街、仲通り商店街、演芸場通りなど、既存の商店街の売り上げには一定の影響を及ぼすことは避けられません。
さらに、東十条駅周辺まちづくりでは、駅の東側にある広大な敷地、JRが所有する下十条運転区跡地の利活用が、今後策定されるガイドラインや整備計画の大きな焦点となっています。直近の第5回検討会の資料では、「駅周辺での大規模な土地利用転換においては、既存の商店街と協調・連携し、地域住民の生活の質の向上に資する施設などを充実させることが望まれます」と記されており、既存の東十条商店街と連動する商業施設の誘致に含みを持たせています。
JR東日本は、東京を中心とした関東周辺の駅で、駅構内の敷地にはエキュートなどのエキナカ商業施設を、駅構外にはアトレなどの駅ビル内商業施設の展開を図っており、この3月期の決算では、エキナカ事業による店舗の売上が大きく伸び、ショッピングセンター事業がコロナ前比100%を回復するなど、連結営業利益が総じて増収増益となっています。
駅ビルに展開するアトレは、田端駅のような小規模なものもありますが、大きな施設では、成城石井や東急ハンズ、ユニクロ、スターバックス、無印良品などが入る巨大なショッピングモールとなっているところもあります。こうした大規模な商業集積施設が駅前にできれば、東十条商店街の売り上げへの影響は不可避となるでしょう。
赤羽駅東口のまちづくりでは、第二・第三地区の市街地再開発が事業化されれば、一番街やOK横丁、シルクロードといった内外に人気の飲食店街が撤退に追い込まれることになります。
これら駅周辺のまちづくりの中で、区民が魅力と感じている既存商店街を衰退させることなく、新たな商業拠点と共栄共存を図るための区としての支援について、以下、質問いたします。
1、十条駅西口再開発によって生まれる新たな商業施設によって、周辺の既存商店街はどのような影響を受けるとお考えですか。新たな店舗と商店街との競合を避けるための協議は進んでいるでしょうか。現在、商店街連合会や再開発組合も参加する協議体が、新たな商業拠点と既存商店街の活性化を図る施策を実施しているとお聞きしていますが、その取り組みや教訓をお聞かせ下さい。
2、東十条駅周辺まちづくりでは、現時点でのJRとの協議の到達点に立って、下十条運転区跡地にアトレなどの商業施設が誘致される可能性はあるのか、見通しをお示し下さい。また、仮に駅前に大規模な商業施設が誘致されたとしても、東十条商店街のにぎわいを保ち、さらに活性化させていくための区としての商店街支援策をどうお考えですか。
3、千葉県では、商店街の現状を把握し、今後の商業振興を図るための基礎資料を得る目的で、概ね5年ごとに県内商店街実態調査を行っています。北区でも、今後進んでいくまちづくりの中で区内商店街の振興を図るために、定期的な実態調査を実施することを求めます。区長のお考えをお聞かせ下さい。
まず、十条駅西口再開発についてです。
再開発ビル内には、権利者の意向により、新たな商業施設の展開が計画されていますが、各施設間の連携・協力や、周辺商店街との共存共栄を図ることは、十条のまちのさらなる賑わいづくりに重要であると考えます。
また、新たな商業施設は、来街者の増加や新たな顧客獲得など、周辺商店街におけるビジネス機会の拡大にもつながるものと期待しています。
既に昨年2月、再開発事業による商業施設と商店街との共存共栄に向けて、商店街、再開発組合、区の3者で設立した「十条地区 賑わいづくり準備会」において、十条地区の魅力発信や商店街の回遊性を高める取組みとして、「十条裏通りおさんぽマップ」の作成などを行っており、本年度も「ジェイトエル」のオープンに合わせたイベント実施の準備を進めています。
区としては、この準備会の活動を支援するとともに、各商業施設の商店街加入など、商店街との共存共栄の取組みについて、引き続き、協議を行ってまいります。
次に、東十条駅周辺まちづくりについてです。
土地所有者であるJR東日本からは、下十条運転区跡地の利活用に向けた検討を進めていると聞いておりますが、現時点で具体的な計画等は示されておりません。
本年3月に取りまとめた「東十条駅周辺まちづくりガイドライン(中間まとめ)」においては、駅周辺の大規模用地の土地利用転換を図る場合には、活力と賑わいのある拠点の形成を図るという考え方を示しており、区としては、この考え方に基づき、引き続き、JR東日本などの関係機関との協議を継続するとともに、地域の賑わい向上に資する取り組みとして、エリアマネジメント手法等の活用も検討しております。
次に、定期的な商店街実態調査の実施についてです。
これまでも産業振興にかかる計画策定時には、施策の基礎資料とするため、区内中小企業や商店街等に実態調査を実施し、商店街には景況や活動状況のほか、直面している課題等を伺ってきました。
現在、新たな産業活性化ビジョン策定に向けた検討を進めており、その中でも商店街への実態調査を行ってまいります。
(2)赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画の策定について
2つ目に、前定例会での個人質問に続き、赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画の策定について、3つの角度からお聞きします。
第1は、現在、実施している区民アンケートについてです。
区は、8月の第6回検討会で、地域住民を対象にしたアンケートの実施を提起しました。アンケート調査そのものは、計画策定に有効な手立てのひとつと考えますが、赤羽の魅力や課題について一般的に問うその内容については、検討委員からも具体的な改善意見があがっており、会長も必要なら検討会で協議すると述べました。しかし、区は次回の検討会での議論を待つことなくアンケートを実施し、結果を取りまとめた上で次の検討会に示すとしています。
そこで質問です。
住民アンケートはいかなる目的で実施をしたのでしょうか。なぜ、基本計画策定検討会で十分に内容を吟味しないまま実施に踏み切ったのか、区の考えをお聞かせ下さい。また現在、検討会では5つのシナリオ、7つの案という具体的な方向性を示しての議論が進められています。アンケートでは、7つの案を示し、どれが望ましいのかを問うべきではなかったでしょうか。
区民アンケートにつきましては、第5回検討会における検討会会長からの意見等を踏まえ、一定の方向性を取りまとめる前に、広く地域住民の声を聞くことも大切であると考え、区として実施の判断をしたものです。
アンケートの内容については、第6回検討会で検討委員にご議論いただいた、「赤羽のまちの課題や魅力」、「今後のまちづくりで大切にしたい価値観等」と同レベルの項目をお尋ねすることで、検討委員からの意見を補完することにもつながるものと判断しました。
なお、アンケートの内容については、1名の検討委員から複数の意見をいただきましたが、一部の意見はアンケート実施にあたって反映しており、また、「7つの案を示してどれが望ましいかを問うべき」との意見はありませんでした。
第2は、現在の街並みと魅力を残しながら課題を解決していく修復型のまちづくりか、タワーマンションを誘致する市街地再開発計画のまちづくりかに焦点をあてた議論を進めることです。
年度内の基本計画策定を前提とすれば、大詰めを迎えている検討の中で、今議論すべきことは、修復型まちづくりのシナリオ1、2の手法を取るのか、市街地再開発の手法でまちづくりを進めるシナリオ3、4、5を取るのかの選択です。
すでに区は、第5回検討会で、それぞれのシナリオに点数をつけた「評価」案を中間報告案として提案し、「その定性的評価はそのまま生かす」としています。その「評価」案に5人の検討委員から意見シートが提出されましたが、第6回検討会では資料として提示されたのみで、区としてのコメントも、それについての議論もありませんでした。
さらに、検討会の内容も、アンケートと同じ赤羽の魅力と課題という一般的なテーマでのグループワークとなり、これまで議論をしてきた5つのシナリオ、7つの案の議論が後継に追いやられたことには、私自身も違和感を持ちました。
先週末、赤羽を中心に活動する2つの住民団体が共同で、「赤羽のまちづくりに私たちの声を 住民懇談会」を開催、のべ65人が参加して熱心な議論を行いました。その中では、神戸市が三宮など都心部でのタワマン建設を規制する条例を制定していることや、世田谷区の太子堂などで修復型まちづくりの取り組みが進められてきたことが報告され、多くの参加者から、赤羽でもタワマン誘致ではなく、現在の街並みを残し、魅力を生かしたまちづくりを進めるべきとの声が寄せられました。
そこで質問です。
赤羽の魅力を守り発展させ、課題を解決するために、市街地再開発によるまちづくりと修復型まちづくりのどちらが有効なのか、それぞれのメリット、デメリットも示して検討会で議論を深めることを求めます。さらに、地元住民にも5つのシナリオをわかりやすく周知し、赤羽のまちづくりにとって、どちらの案が良いか意見集約を行うことを求めるものです。
第5回検討会までは、現在の土地利用を基本とした、シナリオ1、2と、第一地区と同様の市街地再開発事業による土地利用を想定したシナリオ3から5の7つの案を示し、赤羽駅周辺のまちづくりについて、様々な課題を整理して議論してまいりました。
しかし、第5回検討会では、事務局である区が示した評価案に対し、検討委員から様々な意見が出されるとともに、検討会会長からもいくつかの指摘をいただきました。
そのため、区としては、委員の意見を総合的に判断した結果、それまでの進め方がやや拙速であり、検討委員には、より丁寧な説明と意見交換が必要であると考え、正副会長と相談のうえ、第6回検討会は、ワークショップ形式での意見交換等を行うことといたしました。
この第6回検討会の意見交換は、委員からも好評であり、正副会長からも評価をいただき、とても有意義なものであったことから、区としては、このような手法での検討を継続することで、結果として、赤羽駅周辺のまちづくりの方向性は、検討会の中で定まっていくものと考えています。
第3は、市民参加での検討を進めるために、「これまでの議論の経過のまとめの報告」の前に、住民意見を聴取する場を設けることです。
5月の第5回検討会では、区が示した中間報告案に対し、検討委員からの意見が相次ぎ、会長の仕切りで中間報告の発表が見送られることになりました。その際、会長からは、「(中間報告の)プロセスにもやっぱり市民参加が必要であるという意見もあると思います。…この委員会のメンバーだけで決めて出せないというご意見がありましたので、中間取りまとめをする前の段階でどのように市民参加をすべきか、ということも課題として残ったと思います」との発言がありました。
これまで区は、中間報告の際には区民への説明と意見を聞く場を設けるとしてきましたが、中間報告がなくなったことで、年末までは区民意見を聴取する場がなくなってしまいます。住民の意見の取りまとめを進めてきた赤羽駅東口地区まちづくり全体協議会も、中間報告が出るまでは検討会の推移を見守るとしており、まちづくり懇談会の開催や、まちづくり提案の練り直しの議論を進める動きが見えません。
区は今後、あと2回の検討会を経て、「これまでの議論の経過のまとめの報告」を発表するとしていますが、地元住民や学校、公園を利用する子どもたちの意見を一度も聞かないまま、議論をまとめあげていくのは会長が指摘した市民参加のプロセスにも反するやり方ではないでしょうか。
そこで、質問です。
年末に「まとめの報告」を発表する前に、地域住民の意見を聞く場を保障するとともに、北区子どもの権利と幸せに関する条例に規定された子どもたちの意見を聞く機会を設定することを求めます。また、「まとめの報告」の際は、オープンハウス形式の説明会に加え、双方向で理解を深めあう教室型やワークショップ型の説明会を開催するよう要望します。さらに、まちづくり協議会には、区からあらためて住民懇談会の開催や、まちづくり提案の取りまとめを行うために活動を再開するよう提言していただくよう求めるものです。
以上で、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
本年、第2回定例会でご答弁させていただきましたが、区としては、年末に予定している「これまでの議論の経過のまとめの報告」について、幅広く区民の意見を聞くこととしており、また、基本計画策定にあたっては、適切な時期を捉えて、子どもたちの声を聞く場を設けてまいりたいと考えています。
なお、先程ご答弁させていただいたとおり、検討委員の意見を補完する意味でも、先月、地域住民を対象としたアンケート調査も実施しており、区としては、検討会会長の意見も踏まえた丁寧な対応に努めています。
「これまでの議論の経過のまとめの報告」を区民に説明する際の実施方法については、一人ひとりに丁寧な対応ができるオープンハウス形式が望ましいと考えていますが、その他の形式の併用については、引き続き、検討してまいります。
赤羽駅東口地区まちづくり全体協議会への働きかけについては、本年、第2回定例会でご答弁させていただいた考え方に変更はございません。