2021年第3回定例会代表質問-山崎たい子
2021年9月13日 | 山崎たい子
区議会議員の山崎たい子です。日本共産党北区議員団を代表し質問致します。
今議会には、長年懸案だった「公契約条例」や「パートナーシップ制度」実施にむけついに補正予算が計上され、関係者の皆様からも喜びの声が寄せられています。区民の期待に応えられる北区政実現にむけ、日本共産党も引き続き努力を重ねていく決意です。
1、新型コロナウイルスから区民の命を守るために
質問の第1は、新型コロナウイルス感染から区民の命を守るためです。
(1)医療・保健所体制の強化について
はじめに、医療、保健所体制の強化についてうかがいます。
緊急事態宣言中の五輪開催は、国民への矛盾したメッセージとなり、自粛を重ねてきた人々の意識に明らかに変化をもたらしました。PCR検査は世界で143位、ワクチン接種もゆき渡らず、感染力の強いデルタ株により、「第5波」の感染爆発は「政治の人災」と指摘されています。
北区でも8月に入り感染者数の累計は5000人を突破、9月10日現在、8972人と約1ヵ月間余で4000人も急増し、保健所業務は逼迫。区内も都内もコロナ病床は満床となり、党区議団へは「保健所や医療機関にも連絡がつかない」「救急車を呼んでも入院できない」との悲痛な声や、医療機関からも「往診による点滴や、在宅では保険外の高濃度酸素を行いながら命をつないだ」との懸命な対応も伺っています。
戦々恐々の中、8月17日、党北区議団は池内さおり前衆院議員、そねはじめ都議と花川区長へ医療提供体制の強化など緊急の申しいれも行いました。
直近で北区の自宅療養者は470名、その1割強が看護師などの対応が必要だと保健所からの報告であり、今議会の補正予算には、入院待機の方への訪問看護師による健康観察、必要に応じての訪問看護と医師による往診体制に約1億円が計上されました。区民の不安に応える区の対応と意を強くしています。
しかし一方で、本来、入院治療が必要な方が都内で700人を超えて救急搬送先がなかった、中には自宅で命をおとすと言う痛ましい事態は、国民皆保険制度の下、繰り返してはなりません。「北区は決してあなたを見捨てない。全力で区民を守る」との姿勢を今こそ示す時です。そこで、以下3点質問します。
1、国に対し、原則自宅療養方針の撤回を求め、国・東京都と連携し、臨時の医療提供施設、入院待機ステーションの設置、宿泊療養施設の確保、陽性者に対する血液検査・ウイルス検査、CT検査などによる早期診断体制の確立と、抗体カクテル療法など重症化予防をすすめる医療連携体制を構築するよう求めます。
【答弁】
国の新型コロナウイルス感染症対策本部は、8月3日に事務連絡「現下の感染拡大を踏まえた患者療養の考え方について」を発出し、「入院させる必要がある患者以外は、自宅療養を基本」としたところであり、引き続き入院治療が必要な患者は、入院勧告の対象としております。
また、「入院させる必要がある患者」の判断は診療した医師の臨床的診断を踏まえて適切に行っております。
次に、国や東京都と連携して、入院待機ステーションなどの、医療提供施設や宿泊施設を確保することについてです。
東京都は、入院治療が必要にもかかわらず入院待機となった患者を、一時的に受け入れる施設として、酸素投与や投薬治療が可能な医療機能を強化した宿泊療養施設「TOKYO入院待機ステーション」を、医療機関等の協力のもとに展開するほか、宿泊療養施設の確保に取り組んでおります。
入院待機ステーションについては、東京北医療センターにも設置されたと承知しておりますが、各種施設の今後の設置の見通しについては公表されておりません。
医療提供施設等の整備は、区としても、さらなる増強を望むものであることから、引き続き、東京都へ要望してまいります。
次に、陽性者に対する血液検査など早期診断については、入院待機者や、重症化リスクのある自宅療養者に対する医療的な健康観察、症状悪化時等の、必要に応じた訪問看護・訪問診療により、必要に応じて実施することとなります。
次に、抗体カクテル療法など、重症化予防を推進する、医療連携体制の構築についてです。
抗体カクテル療法については、重症化リスクのある軽症患者に重症化を防止する効果があるとされております。
区内の、コロナ病床を有する4つの医療機関においては、すでに自院の入院患者等への投与が始められております。
区としては、自宅療養者の安全・安心な療養体制を確保する観点から、重症化リスクのある自宅療養者が、症状が発現してから速やかに投与される仕組みを北区医師会およびコロナ病床を有する医療機関と検討中であり、今週には、病診連携による北区版の体制を開始する予定です。
2、北区がイニシアチブをとり、北区医師会や区内の中小病院とも連携したコロナ医療に関する定期的な情報共有の場を設け、風通しよく医療連携ができるようにすること。
北区では、地域感染症医療体制協議会を平成28年に設置し、区内すべての病院、医師会、歯科医師会、薬剤師会に参加していただき、区内外の感染症医療体制について協議を重ねてきました。
特に、新型コロナウイルス感染症対策が喫緊の課題となった令和2年1月以降は、計13回にわたって開催し、毎回夜半まで、熱心な協議をいただいており、その成果は、区内の新型コロナ外来や、PCR検査センターの設置、診療検査医療機関の指定、新型コロナワクチン接種体制の構築などに表れているところであります。
二次医療圏単位での協議については、区西北部地域医療構想調整会議などにおいて適宜実施されております。
3、保健師など専門職を増員し、保健所体制を抜本的に強化するよう求めます。
お答えください。
保健所の体制については、新型コロナウイルス感染症の発生動向に応じて、保健師など職員の応援を行っています。
今後も保健所職員の体制整備が重要と認識しており、引き続き、専門職を含め、必要な人員の確保に努めてまいります。
(2)学校や幼稚園、保育園などの運営について
2つめに、学校や幼稚園・保育園などの運営について伺います。
感染力の強い変異株は、これまで感染しにくい、重症化しないとされてきた子どもや親世代にも感染を拡げ、子ども・子育て会議への北区の報告では、8月に入り、小・中学校の在籍数で100名、学童クラブやわくわく☆ひろばで15件、保育園では職員・幼児で69人が感染し、8月末で学校が5か所、保育園が26園で休業となりました。
党区議団は、8月30日、北区教育委員会に対し、小・中学校や幼稚園の再開、保育園などの運営に向け、感染対策の強化について申し入れを行いました。
教育長からは「感染リスクを抑え、学びをとめない。子ども同士のつながりや給食の確保も含め、子ども達にとって、学校が安心・安全な居場所となるよう全力をつくしたい」とお答え頂き、保護者向けにも教育委員会としての取り組みが伝えられています。その上で、党区議団へ寄せられた保護者や教職員の声を下に、学校などの運営に関して以下、4点質問します。
1、教室・保育室でのエアロゾル感染防止のために、短時間での全換気と子どもへの不織布マスクの着用を重視し、必要に応じマスクを支給すること。
教室・保育室での換気については、北区版のガイドラインでも徹底を求めており、各校・園において適切に対応しています。
また、不織布マスクについては、夏季休業明けの学校あての通知および保護者向けのお知らせにおいてその着用を推奨しており、各校・園では、不織布マスクの予備を用意し、必要に応じて子どもたちへの配付も行っています。
なお、2歳未満のマスク着用は推奨されておらず、2歳以上であっても保護者の希望により、子どもに着用させる場合には、熱中症等に十分注意するよう周知徹底を図っています。
2、感染症対策や陽性者が出た場合の対応について、職員研修や「対応ガイドライン」を整備し、必要な人員、体制を確保すること。
北区教育委員会では、区立小中学校・幼稚園・認定こども園向けのガイドラインと、区立保育園・学童クラブ向けのガイドラインを作成し、それぞれの施設に対し、感染症対策や陽性者が判明した場合の対応を周知してきました。
また、学校での感染症対策等の人員、体制の確保については、教職員の過度の負担とならないよう検討してまいります。
保育園においては、私立保育園や指定管理園に対し、保育園が実施する感染症対策への補助事業を設け、感染症対策の徹底を図りながら、運営を継続していくために必要な経費を補助しております。
区直営保育園においても、会計年度任用職員の配置の充実を図っております。
3、子ども達が受け身ではなく、学校行事や授業の進行など自分たちの意見が反映できるよう、新型コロナウイルスと感染のしくみを学ぶ機会を保障すること。
新型コロナウイルス感染症については、養護教諭が作成した保健だより等を用いて、学級活動等の時間に活用して、感染を防止するための対策や心構え、差別や偏見につながらないような指導を児童・生徒に対して行っております。
また、小学校第6学年体育の保健領域及び中学校第3学年の保健体育の保健分野において、感染症の予防について学習しています。
さらに、令和2年3月に文部科学省から出された、「改訂『生きる力』を育む中学校保健教育の手引」追補版では、中学校保健体育(保健分野)において新型コロナウイルス感染症を扱う指導事例が示され、より具体的に学習を進めています。
児童・生徒が、このような機会を通して、感染症について学ぶことで、コロナ禍における自分の学習や生活のあり方について考え、主体的に感染のリスクを避けた行動をとることや、学校行事や授業における自校の方針や対策を理解し、今後の新しい生活様式について自ら考えられる力を身に付けていくよう、引き続き、各学校で取り組んでまいります。
4、復活した学校や保育園休業の際の、保護者への休業等対応助成金・支援金の周知をはかると共に、臨時の子どもの預かりについて対応するよう求めます。
国が実施してきた新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金・支援金制度については、8月1日以降を対象に、再開することになったと認識しており、今後、詳細が分かり次第、周知してまいります。
なお、学校や保育園が休業した際には、家庭における健康観察を基本としつつ、仕事を休むことが困難な保護者に対しては、ベビーシッター利用支援事業やファミリー・サポート・センター事業を案内しております。
(3)PCR検査の拡充を
3つめに、PCR検査の拡充についてうかがいます。
政府の新型コロナ対策分科会メンバーの国立病院機構三重病院の谷口院長は、「危機的状況を打開するため、今一度重要なのは、検査で無症状感染者を発見、保護し、感染源を減らす対策。唾液のPCR検査や抗原キットを使い、事業所や自宅、学校などでの検査を実施し、陰性であれば感染対策をして活動する。陽性であれば自宅待機してもらう。そうやって感染伝播の鎖をひとつひとつ断ち切ることだ」と強調しています。
北区では、高齢者・障害者の入所施設について、定期的なPCR検査が実施され、ワクチン接種とあわせて、現状でクラスター発生が抑えられており、今議会にも継続のための補正予算が計上されました。加えて、入所以外の介護・保育・学校現場からもPCR検査拡大の要望は強く寄せられています。そこで、以下3点質問します。
1、高齢者や障害者の通所施設、訪問介護や福祉用具事業所、ケアマネジャーへも定期的検査を拡大すること。
区では、本年2月より、高齢者入所施設等の従事者に対し、一斉・定期的なPCR検査を実施しており、陽性患者を早期に検知し、重症化リスクの高い高齢者などが入所する施設へウイルスを「持ち込まない」、「拡げない」対策を徹底しています。
一方、通所訪問系事業所については、東京都の共同事業を活用し、感染の疑いのある要介護者などに接触した従事者への緊急的なPCR検査を適宜、実施できる体制を構築しています。
2、教職員、保育士などへの定期的PCR検査の実施と、家庭に検査キットを配布し、簡易検査をすすめること。
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種については、体質や持病など、様々な理由から、必ずしも、すべての方が接種を望んでいるわけでもないものと理解しています。
区立小・中学校では、週1回以上、児童・生徒と接する機会のある時間講師なども含めた教職員等の接種率は、本年8月末現在で、2回終えた人が約65%であり、1回目の接種予約を含めた割合は約79%です。
また、保育園では、8月24日現在で、1回目の接種予約を含めた割合は約86%、学童クラブ及び放課後子ども教室では、8月末現在で約85%となっています。
このような状況において、教職員等や保育士などは、日々、児童・生徒や園児と活動をともにするため、感染の拡大防止を図るとともに、保護者等の不安を少しでも和らげることが求められています。
そのため、感染予防の効果や、副反応のリスクなどを周知したうえで、ワクチン接種の勧奨を行うとともに、現下の感染拡大状況をふまえた区独自の緊急対応として、ワクチン接種が2回済んでいない教職員等や保育士などを中心に、今月と来月の2回、PCR検査を実施します。
また、感染者が発生した学校、保育園、学童クラブ及び放課後子ども教室では、その都度、同様の対応を行うこととしています。
PCR検査実施の詳細につきましては、所管委員会で報告させていただきます。
なお、検査キットを用いた簡易検査は、専門家から、「症状がない者を対象にすると、精度が落ちる」と指摘されており、また、文部科学省は、「具合が悪くなった子どもは、検査キットによる検査より、すぐ帰宅させることが原則」との見解を示しています。
そのため、児童・生徒には体調不良があった際は、これまで同様、登校しないようにするとともに、毎朝の検温や、風邪症状等の確認など、児童・生徒、家族の感染対策を引き続き進めていくこととしており、現時点で、家庭に対する検査キットの配付は、考えておりません。
3、学校などで陽性者が出た場合、濃厚接触者を狭めず、実態に応じ、学級・学年など広範なPCR検査を行政検査として実施すること。また幼稚園・保育園でも同様とするよう求めます。
学校や幼稚園で陽性者が出た場合の対応については、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ひっ迫する保健所業務軽減のため、国および東京都から学校等における陽性者発生時対応方法変更の方針が示されました。
今後、当面の期間は、教育委員会と保健所が連携し、教育委員会が主体的に調査を行い、感染拡大防止に取り組んでまいります。
濃厚接触者については、2週間の自宅待機と出席停止となるため、調査に基づき、必要な対象者を適切に指定してまいります。
また、調査の結果、必要と判断した場合には、すでに実施している通り、幅広くPCR検査を実施してまいります。
保育園につきましても同様に、教育委員会と保健所が連携し、教育委員会が主体的に調査を行い、感染拡大防止に取り組みます。
濃厚接触者の指定とPCR検査については、調査に基づき、適切に実施してまいります。
(4)ワクチン接種の推進について
4つめに、ワクチン接種の推進についてお聞きします。
ワクチンについては国際的にも、当初の集団免疫の効果は低いが、個々の重症化予防に効果が高いと言われています。北区においては、高齢者の接種率が8割を超えましたが、国のワクチン供給体制の不足により、50代以下世代への接種率は未だ充分でない状況です。
そこで、
1、今後のワクチンの供給や接種率向上、接種目標との関係など、今後の取り組み、見通しをお示しください。
北区は区民の安全・安心を確保するため、全てのワクチン接種を医療機関で行い、多くの医療機関の協力により国が目標とした全国で1日100万回接種を上回る接種体制を構築し、7月には希望する高齢者への接種をほぼ達成することができました。
一方で、ワクチン供給量が当初の予想を下回ったため、現在はワクチンの供給量に合わせて接種体制を再構築している状況で、東京都が試算した職域接種における北区民への接種推計量とあわせると、10月中には対象となる区民の8割が接種できるワクチンが供給される見込みです。
今後とも,国および東京都にワクチン供給の促進を要請し、11月までの希望するすべての区民への接種完了に向けて取り組んでまいります。
また、今後の見通しについては、予想されるワクチン種類の拡充、未接種者への勧奨や追加接種等の課題について、医師会や医療機関との連携により、引き続き全力をあげて対応してまいります。
また、党区議団へのワクチン相談から、障害やくらしの困難を抱えている方、外国籍の方など、接種の希望はあるが予約がとれず、何らかのサポートが必要な方々がいらっしゃると感じています。
2、北区として、困難をかかえる方へのワクチンサポートに、きめ細かく取り組んで頂きたいと考えるがどうか。お答え下さい
今後の予約開始日に合わせて、北とぴあ、滝野川会館、赤羽会館の3ヵ所で予約支援を実施し、リスクの高い方にも迅速に予約を確保して頂くことを支援いたします。
また、接種の希望はあるが予約を取るまでには至らない方に対しては、今後はさらなるワクチンの確保を図りながら、接種方法の工夫や充実に努め、希望するすべての区民が接種できるよう取り組んでまいります。
2、貧困・格差なくし、気候危機打開、公正で持続可能な社会を
質問の第2は、貧困・格差なくし、気候危機打開、公正で持続可能な社会を求めてです。
(1)法人税引き上げ、消費税減税を
コロナパンデミックにより、資本主義、新自由主義の限界が、よりいっそう浮き彫りになっています。格差拡大をみても、日本の億万長者1000億円以上の資産を保有している数十人の資産額の推移は、アメリカの雑誌フォーブスのデータによると、コロナ禍の1年間で、12.2兆円から24.4兆円と2倍の資産を増やしています。
その一方で、追いつめられているのは非正規労働者です。雇用の調整弁として75万人が職を失い、シフトや仕事が減ったという実質失業者は150万人。そのうち90万人は女性で、子どもの貧困、ひとり親家庭がいっそうの困難を抱えています。若者も、非正規雇用は2人に1人。バイトが減り、世界一高い学費で、文科省の調査でも休学・退学を余儀なくされた学生は5800人。全国各地の大学でフードバンクに多くの学生が集まる状況です。
こうした不公正な現状、一人一人の生存権が脅かされている状況は、自己責任によらない、社会の構造的問題、政治の制度設計によるものです。憲法第13条、個人の尊厳や、第14条、法の下の平等にも照らし、国、地方自治体あげて、格差をなくし、公正な社会をめざす必要があると考えます。そこで、住民のくらしに一番身近な北区が、区民のくらしを改善するため、以下4点、国に求めてください。
1つは、税金の集め方について、世界では富裕層が「我らに課税を」と主張し、アメリカのバイデン大統領は法人税引き上げを提案しました。
日本においても優遇されている大企業の法人税を引き上げる。消費税については、コロナ禍で、世界の60を超える国が税率を下げています。日本でもただちに5%へ減税すること。
法人税は、収益力拡大に向けた投資や、継続的・積極的な賃金の引き上げを可能とする環境を整えるため、国において、総合的な判断がなされ、現在の税率になったものと理解しています。
また、消費税は、持続可能な社会保障制度を構築するため、社会保障と税の一体改革において、税率引き上げによる増収分は、社会保障財源に活用するとされ、北区においても、子育て、長生きを中心としたさまざまな政策の実現に最大限の活用を図っています。
こうしたことから、法人税の引き上げや、消費税率5%への引き下げを国に求めることは考えておりません。
(2)現金給付や賃金引き上げについて
2つに、くらしを直接支援する、すみやかな現金給付や賃金引上げです。
1人10万円の特別定額給付金や、ひとり親家庭、低所得子育て家庭に対する継続的な特別手当。事業者への持続化給付金、家賃支援給付金の再支給、月次支援金の拡充、更には、非正規雇用はじめ、全国一律最低賃金を1500円に引き上げること。
まず、ひとり親家庭や、ひとり親世帯以外の低所得の子育て世帯を対象とする支援については、特別区長会より子育てを行う世帯の経済的負担軽減のため、都市部の生活実態を踏まえた、ひとり親家庭への支援の充実のほか、子どもの貧困問題を解消するための手当の創設など、金銭給付等の施策を行うよう、国に対して要請しています。
また、事業者に対する支援についても、新たな生活様式に対応した事業継続等支援や、融資等の相談体制の強化のほか、労働者に対する収入の確保や、雇用体制の確保等の施策を継続的に講じることなどを、特別区長会として、国に対して求めています。
一方、最低賃金については、本年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」において、早期の経済回復を図るために、より早期に全国加重平均1000円とすることを目指すとしており、今年度は、過去最大の引き上げ額となっています。
区といたしましては、今後の国における動向を注視してまいります。
なお、区民一人当たり10万円の特別給付金の再支給を国に求めることについては、考えておりません。
(3)若者への支援について
3つめに、若者への支援についてです。
先日も、「コロナ禍で仕事が減少し、子どもの大学学費が工面できず困った」と切羽詰まった親御さんからの相談がありました。コロナ禍の困難な時だからこそ、若者が未来を切り開くため、豊かに学問を探求する時間が保障されるべきです。
そこで、大学などの学費は半額に。給付型奨学金の大幅拡充。緊急対策として奨学金返済免除や学費の支払いを卒業後へ繰り延べ。また、教育費税額控除を新設し、大学、専門学校などに通う扶養者がいる場合に適用すること。
国は、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、アルバイト収入の大幅な減少により、学費等の支払が困難な学生を対象に、奨学金を貸与する制度や、事業主から休業させられたが、休業手当を受けることのできなかった学生アルバイト等を支援する制度を実施しています。
また、昨年4月からは、「大学等における就学の支援に関する法律」の施行により、真に必要な低所得者世帯に対し、大学などの入学金・授業料を減免するほか、給付型奨学金を拡充する制度も開始されました。
教育に関する支援や負担を軽減する税制度としては、教育資金の贈与に関する優遇措置や、特定扶養控除制度があるものと認識しています。
区としては、経済的に困難を抱える若者の進学を支えるため、大学等における修学を支援する奨学金制度の拡充や、貸与型奨学金における無利子貸し付けのさらなる拡充について、引き続き、全国市長会を通じて、国に対して求めてまいります。
(4)高齢者の尊厳を守るために
4つめに、高齢者の尊厳を守るために、
後期高齢者医療保険における窓口の2割負担や、消費税を財源とした病床の削減は中止すること。以上4点を国に求めてください。
本年6月に成立した改正高齢者医療確保法では、現行制度で1割負担の後期高齢者のうち、一定の所得基準以上にある方を対象に、2割負担とする新たな制度が、令和4年度後半に施行される予定です。
なお、施行から3年間は、急激な負担増を抑制するための配慮措置も行われます。
区としましては、今後、団塊の世代が75歳に達することで、より一層後期高齢者の医療費が上昇していく中において、所得状況に応じた後負担を頂くことは、やむを得ないもの考えています。
次に、消費税を財源とした病床の削減を中止するよう国に求めることについてです。
新たな病床機能の再編支援では、中長期的な人口減少・高齢化の進行を見据えつつ、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保や持続可能な医療体制の維持といった観点から「地域医療構想調整会議」等の合意を踏まえておこなわれるものと認識しています。
引き続き、東京都や区内関係機関と協力連携し、誰もが必要な医療を身近な地域で、安心して受けられる体制の確保に努めてまいります。
(5)北区独自のくらし・営業支援の拡充を
5つめに、北区独自のくらし・営業支援についてです。
今議会に提案されている補正予算では、会派でも予算組み替えなどで提案した、プレミアム付き区内共通商品券の拡充・増額などが示されました。あわせて先にのべた若者や子育て世帯、非正規雇用や事業者への現金給付的支援について、区としても実施するよう求めます。お答えください。
現時点において、区独自の現金給付による、くらし・営業支援の実施は予定しておりませんが、引き続き、区民・区内事業者の動向等を注視しながら、区としての対応についての検討を行うとともに、国や東京都に対しては、支援策の継続や拡充について、必要に応じて要望してまいります。
(6)北区基本構想について
6つめに、北区基本構想にかかわって、うかがいます。
新型コロナウイルス感染症は、人間の経済活動、資本の論理、利益優先の活動が、地球規模での自然や環境破壊をもたらした結果と指摘され、気候危機、猛暑、豪雨、スーパー台風と同様に、人類が地球の中で生き抜けるか、岐路に立たされています。
北区も2050年までにCO2排出ゼロ、ゼロカーボンシティ北区を宣言しましたが、気候危機を止めるためには、今後10年間、2030年までに脱炭素、省エネ・再エネの実効性ある取り組みを、電力や産業、交通、まちづくり、住宅などあらゆる分野での改革が迫られます。今年度からすすめている今後20年をみすえた北区基本構想の策定は、こうした点からも非常に重要です。
新自由主義路線の北区版とも言える「北区経営改革プラン」は、規制緩和と民営化による官製ワーキングプアの推進、住民立ち退き、文化や環境を壊す道路計画や駅周辺の再開発など、今こそ根本から、見直すべきと考えます。そこで質問です。
北区基本構想策定に向け、誰もが個人としての尊厳を持ち生きられる公正な社会、ジェンダー平等、多様性が生きる北区の推進、脱炭素、省エネ・再エネへの転換で、自然との共生を第一に考える環境都市北区などを大きな視点にすえ、区民との十分な議論を保障し、策定すべきと考えますが、区長の考えをお聞かせ下さい。
基本構想は、区の将来像を定め、進むべき方向性を示す、まさに区民の憲章ともいうべきものです。
区に新たな将来像を定めるにあたっては、北区のこれまで歩んできた歴史はもとより、現在の基本構想の役割と意義を十分に踏まえた上で、今後の人口動向や、区民ニーズを的確に把握する必要があります。
また、ご指摘頂きました尊厳を持ち生きられる公正な社会、ジェンダー平等、多様性や環境共生社会の推進の視点だけでなく、AI・DXといった技術革新、SDGsの実践など、区政を取り巻く環境の変化を見過ごすことなあってはならないと考えています。
こうした環境の変化や課題を的確にとらえた上で、基本構想の策定に当たっての将来像や、それを達成するための基本目標については、激しい時代の変化の中にあっても色あせることのない普遍的な価値について定める必要があると考えています。
あわせて、区民の皆さまからの幅広い意見やアイディアを構想策定に活用するため、区民ワークショップや区政モニターなどを実施し、基本構想を策定してまいります。
3、介護・保育などケアに手厚い北区を
質問の第3は、介護、保育などケアに手厚い北区を求めてです。
コロナ禍で、感染リスクに身をさらしながらも、社会を支える人々に世界各国で光があたっています。医療・介護、保育、スーパーや輸送業者など暮らしの維持に必要不可欠なエッセンシャルワーカーと呼ばれる人達です。
けれども日本では、家事・育児・看護・介護など、多くは女性が家庭の中で無償で行ってきたものであり、日々の営みを支えるケア労働にもかかわらず、低賃金や不安定雇用で、あまりにも社会的評価が低いままです。
(1)ケアとジェンダーについて
北区で今月から始まるスペースゆう主催の「北区さんかく大学」連続講座のテーマは「ケアとジェンダー」、サブタイトルはケア役割のジェンダー不平等を見直し新たな可能性を模索するで、私は非常にタイムリーな企画と期待が膨らんでいます。そこでお聞きします。
ケアとジェンダー連続講座によせる北区の意気込みを、お聞かせください。
北区さんかく大学は、男女共同参画の歴史的背景、社会の仕組み・情勢など幅広い知識を学ぶことによって、区民の意識を高めるとともに、男女共同参画社会の実現に資する人材の育成を目的とし、毎年、ジェンダーの視点に基づき、時宜にかなったテーマを取り上げ、実施しております。
今回は、これまで多くの女性が担ってきた家事、育児、介護などのケア労働にスポットをあて、「男性は仕事、女性は家事・育児」という「性別役割分担意識」から、男女がともに仕事と家庭の分野で責任を担うことが重要であるという視点に立ち、講座を通じ意識啓発を図ってまいります。
引き続き、北区さんかく大学などの事業を通じて、男女共同参画社会の実現のために地域で活躍できる人材の育成に取り組んでまいります。
(2)介護職や保育士の処遇改善、制度の拡充を
次に、介護職、保育士の処遇改善、制度の充実を求め質問します。
最初に介護職です。現役ヘルパーの声を紹介致します。
「年収は150万円以下が約7割。コロナ禍で職を失った40代の女性が訪問介護事業所で働きはじめたが、この仕事では生活できないと職場を去ることに」「人手不足で有給休暇を一度もとったことがない」、「この20年間、賃金はほとんど上がっていない。このままでは、ヘルパーは本当に死に絶えてしまう」と。
国の2019年度調査でも、全産業の平均賃金より未だに9万円低い。2020年度の有効求人倍率は約15倍。平均1.1倍と比べ、人材不足の深刻さが際立っています。若い世代が就職せず、60代、70代のヘルパーが現場を支えているのが実態です。
介護事業所の経営もコロナ禍で人手不足に拍車がかかり、一段と余裕がなくなり、東京商工リサーチは、介護事業所の倒産、休廃業が過去最高のペースで推移と報告しています。
淑徳大学福祉学科の結城康博教授は、「人手不足の流れを変えないと、介護保険はサービス提供サイドから壊れてしまう。仕事に応えるだけのお金を投入してほしい」と語っています。そこでお聞きします。
1、コロナ手当支給など北区独自の助成や、住居借上げ補助など家賃負担の軽減、大学などと連携した返済免除の奨学金創設、コロナ禍における介護事業所への減収補填を行うよう求めます。
2、今年度改定の要支援者に対する総合生活支援事業の報酬については、基本単価をベースに、国基準を超える引き上げを行うよう求めます。お答えください。
国では、令和3年度の介護報酬改定において、原則すべてのサービスについて基本報酬を引き上げるとともに、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として、4月から9月まで基本報酬に0.1%の上乗せをすることとしています。
また、東京都では、新型コロナウイルス感染による緊急時のサービス提供に必要な介護人材の確保や感染症が発生した施設等の職場環境の復旧および改善にかかる経費等を補助しています。
区では、国や東京都が実施する支援について、区内の事業者専用のホームページ等を活用し周知を図っているところです。
特別区長会では、国や東京都に対し、毎年、「介護人材の確保・定着および育成にかんする継続的な施策の実施」を要望しています。
また、国に対しては、新型コロナウイルス感染症対策の充実強化として、「介護施設等の従事者に対し、慰労金の給付を行い、処遇改善を図ること」も要望しています。
今後も、特別区長会などを通じて、国、東京都に対し、介護人材の確保・定着について、必要な要望を行ってまいります。
次に、要支援者等に対する総合生活支援の報酬単価の国基準を超える引き上げについてです。
区が行う介護予防・日常生活支援総合事業の報酬は、基本分と、身体介護・入浴介助加算分に分けて設定しています。
本年4月、国から新たな基準が示されたことを受け、区では、北区ケアマネジャーの会など各関係団体のご意見を聞きながら報酬の改定を行い、基本分と身体介護・入浴介助加算分の配分を見直すとともに、国が示す基準に合わせた引き上げを行いました。
その他、口腔機能、運動機能の向上や栄養改善、事業所評価にかかる加算については、国の基準を超える区独自の上乗せを行っています。
なお、改定の詳細については、本定例会の所管委員会でご報告いたします。
次に保育について質問します。北区の会計年度任用保育士の声を紹介いたします。
「コロナ禍の1年半、感染に気を配りながらの保育で緊張が続いているが、月の報酬は約23万円。手取りで17万円程度。家賃負担を考慮すると、都内での生活は本当に大変。北区は子育て支援に力をいれているが、現場で働く保育士の待遇改善もしてほしい」と。
OECDが2018年に、9ヵ国を対象に行った保育に関する調査では、「保育士や幼稚園教諭などの勤務状況」について、日本は仕事にかける時間が最も長く、週で約50時間、もっとも少ないアイスランドでは週33時間と大きな開きがある上に、給料でも日本はワースト2位で満足度が低い結果となっています。
更に、国の保育士配置基準は40年以上まったく変わらないまま。例えば3歳児は20人に1人。4歳児以上は30人に1人と、個々の子どもにきめ細かく寄り添える状況にはありません。
その上、認可保育園は11時間開所でシフト勤務。正規保育士の他、非正規や短時間パートなど、国基準の1.8倍の保育関係者が働いているのが実態です。コロナ禍の下、保育園登園の自粛や定員未充足などにより、各月の在籍児童数を基本とする公定価格の給付費では、保育士を確保しながらの保育園運営は非常に厳しい状況になっています。そこで質問します。
1、北区の会計年度任用保育士の給与引き上げ、私立保育園保育士を含めたコロナ手当の支給を求めます。
2、私立保育園理事長園長会の要望にもある、保育士確保のための補助単価の引上げや保育士配置に要する経費補助を行うこと。
3、保育士配置基準の見直し、保育士の事務労働を加味した労働時間を基本とするよう国に求めてください。
区としましては、保育士が良好な勤務条件や職場環境で勤務することは、とても重要なことと考えております。
また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染予防策の徹底などにより、保育士への業務負担は増していると認識しております。
こうした状況を踏まえ、区では昨年度から、保育園が実施する感染症対策への補助事業を設け、私立保育園や指定管理園などへ補助しています。
この事業では、感染症対策の徹底を図りながら運営を継続していくために必要な経費として、消毒液等の備品購入費のほか、非常勤職員を雇いあげた場合の賃金や、感染症対策業務の実施に伴う職員手当なども対象にしています。
また、私立保育園や指定管理園に対しては、保育士確保や処遇改善に資するものとして、「保育士宿舎借上げ支援事業」や、「保育士等キャリアアップ補助」などを実施するほか、「保育補助者雇上げ強化事業」など、保育士等の職員配置に要する経費を補助しております。
今後も、私立園長会と意見交換しながら、国や東京都の補助制度を積極的に活用し、保育士確保や処遇改善に向けた支援策を検討してまいります。
なお、会計年度任用職員の保育士給与を引き上げることは考えておりませんが、引き続き、保育士確保やさらなる処遇改善を図るための支援を、全国市長会を通じて、国へ要望してまいります。
次に、保育士配置基準の見直しを国に求めることについて、お答えいたします。
保育士の配置基準につきましては、国が、子どもの安全を確保し、保育サービスの質を維持するために必要となる保育士の配置数を定めたものです。
区では、国が定めた基準により運営しておりますが、一部の歳児においては、区独自の基準を設け、職員配置の充実を図っております。
区としましても、保育士の勤務条件の緩和や業務負担の軽減を図るために、基準を適切に見直すことは必要なことと考えており、引き続き、全国市長会を通じて、国へ要望してまいります。
4、社会的養護が必要な子ども・若者への支援について
(1)児童相談所の先行自治体の取り組みについて
質問の第4は、社会的養護が必要な子ども・若者への支援についてです。
私はこの夏、子どもの居場所「ピノッキオ」が主催した「みんなの児童相談所を考える会」に参加し、昨年から開設された江戸川区の児童相談所の取り組みを学ぶ機会をえました。
お話を伺い、身近な基礎自治体である区が、住民も含め、関係機関との顔が見える関係性の中で、児童相談所を運営できる良さを改めて感じることができました。
そして何より、子ども自身が自らSOSを発し、リュックを背負い児童相談所に足を運ぶ状況も生まれていると聞き、子どもにとっての安心と信頼、居心地の良い場所となっていることに感銘を受けました。
一方、課題としては、運営に区独自の経費負担がある。一にも二にも職員の確保・育成があるとお聞きし、23区全体でも共有化し取り組むことが必要だと改めて感じました。そこで質問します。
先行自治体の取り組みについて、どのような前進面や課題があると認識しているか、また北区の取り組みにどう活かしていくか、検討状況をお聞かせ下さい。
令和3年4月現在、特別区の中で4区が児童相談所を設置しました。
先行区においては、東京都からの引継ぎ事務、職員の育成など様々な課題がある一方で、これまで以上に住民が児童相談所を身近に感じて相談がしやすく、虐待等の未然防止につながっていると聞いています。
区は、令和2年7月、児童相談所等複合施設基本構想を策定し、現在基本計画策定に向け、検討を進めています。
児童相談所開設に向け、他自治体の視察やヒアリングを通して課題を把握するとともに、他自治体へ計画的に職員派遣を行うなど職員の育成に努めてまいります。
また、派遣職員の現場での経験を定期的な意見交換会などを通じて把握し、今年度策定予定の基本計画等に生かしてまいります。
(2)里親制度について
次に、里親制度についてうかがいます。
社会的養護の必要な児童の大半は施設での処遇が行われていますが、家庭での養育をどう拡げていくか「里親」の取組は、どの自治体も大きな課題です。
先にご紹介した江戸川区では、担当副参事を置き、事業を推進。家庭での養育を10年後には、現在の5倍とする目標をもち、児童相談所開設にあわせ、里親ステーションを開設、独自ホームページの立ち上げ、民間里親養育機関とも連携し、普及啓発、里親の開拓や支援に取り組んでいると伺いました。
私自身の受けとめでも、日本は親になることの責任やプレッシャーが大きい中で、制度を拡げていくためには、自分でもできるかもしれないと感じられる学びや支援が必要と感じています。
江戸川区では、チーム養育というあり方、ファミリーホームの誘致、週末・季節限定の里親事業、区職員も実践できるよう里親休暇も制度化したと伺いました。そこで、北区の里親制度の取り組みについても現状と課題をお聞かせください。
区は、東京都北児童相談所と連携し、里親制度の普及啓発に取り組んでいます。
月に一度、里親に関心がある方を対象にした養育家庭相談日を設けるとともに、年に一度、里親による養育体験発表会を行っています。
東京都によると、北区の里親登録者数は、令和3年4月現在18人と、平成30年度に比べ2倍に増加しましたが、登録者数は必要な子どもに対して十分とは言えません。
また、里親を普及・定着させる上で、里親ならではの子育ての悩みを相談する環境として、里親同士のつながりも必要です。
そのため、今後とも児童相談所設置に向け、里親全般を支援するフォスタリング業務について、民間活用を検討するとともに、近隣区と連携し、共同で里親サロンを開催するなど、普及啓発を推進してまいります。
(3)民間団体との連携について
3つめに、民間支援団体との連携についてうかがいます。
江戸川区ではこれまで、女性相談、DV相談の一部を、女性と子どもを支援しているNPO法人に委託してきました。児童相談所開設にあたっても、虐待とDVは表裏一体との立場で、NPO法人と連携し、地域の中で孤立しているDV・虐待家庭への支援に取り組んでいます。
今後に向けては、虐待通報があってからかけつけ、相談という待ちの支援ではなく、DVの認識がない母親、子どもへの影響についての情報提供、母親の気持ちに寄り添ったカウンセリング、アウトリーチの活動がますます求められるとの提起もありました。そこでお聞きします。
北区でも虐待やDVなど女性と子どもを一体に支援している民間団体とも連携し、地域の中に気軽に相談し、話せる居場所、18歳以上の若年女性も含め、北区のアウトリーチ相談や安心の居場所づくりを進めて頂くよう求めます。
子ども家庭支援センターにおいて、子どもの虐待や、養育困難等の通告を受けて調査を進めると、複雑な家庭環境の背景にDVが認められる事例があります。
その場合、子ども家庭支援センターでは、スペースゆうのDV相談などと連携し、必要に応じ、シェルターを運営する民間団体を紹介するなど、関係者で情報共有を図っています。
また、関係機関が連携し継続的にかかわるとともに、当事者同士の横のつながりをつくり、居場所となるピアグループの存在が欠かせないものと認識しています。
今後も、先行区の取り組みを注視するとともに、個人情報の取り扱いにも留意した上で、民間団体との連携も含め、相談しやすい環境づくりを検討してまいります。
(4)施設退所後の支援について
4つめに、児童養護施設などで暮らした子ども・若者の施設退所後の支援について伺います。
今年5月、厚生労働省は、児童養護施設などで暮らした子どもが、進学や就職で退所した後の全国実態調査を始めて実施しました。その結果、「施設を退所した年齢」は18歳が6割と最も多く、その後、施設や公的な相談機関からサポートを受けたのは6割あったものの、5人に1人は、「サポートは受けていない」と回答。
「困っていることや不安なこと」については、「生活費や学費」「将来のこと」がいずれも3割を超え、月々の収支では、「収入と支出が同じ」「支出の方が多く赤字だ」との回答を合わせると5割を超え、生活に困窮する実態が浮き彫りとなりました。
「今後、利用したいサポート」については、「奨学金や生活費の貸付など金銭面の支援」や「住居や食事面の支援」、「悩みやメンタルヘルスの相談」、「退所者同士が交流できる場や催し」などの回答が寄せられています。そこでお聞きします。
北区でも、児童養護施設退所後や頼れる家族がいない困難を抱えた若者に対し、学費や生活費など経済面やすまい、健康面など重層的な支援を具体化するよう求めます。お答えください。
区には児童養護施設が1ヵ所あり、現在もショートステイ事業を委託するなど連携して事業を進めています。
児童養護施設退所後の課題として、自立に向けた支援・相談体制の充実があげられますが、区内の児童養護施設のヒアリングによれば、退所後も困ったことの相談ができる環境構築が一定程度できていると認識しています。
今後とも、区内の児童養護施設と定期的に意見交換を行うとともに、国や東京都等が実施する施策を注視し、必要な支援のあり方について検討してまいります。
5、「フェミサイド」をなくすために
最後の質問は、「フェミサイド」をなくすためにです。
国連の「女性に対する暴力」特別報告者は、「性別を理由にした女性の殺害」を「フェミサイド」と定義し「女性に対する暴力の最も極端な形態であり、女性に対する差別と不平等の最も暴力的な兆候である」としています。
2021年8月6日夜、小田急線内で男性が見ず知らずの乗客に刃物で切りつけ、重軽傷を負わせた事件がおこりました。犯人は「幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」との報道から、女性を狙った憎悪犯罪「フェミサイド」だと言われています。
私自身もこの事件報道に接し、女性という属性で命が狙われるとしたら、自分や家族の身に起こることだと戦慄を覚えました。また、事件後に声をあげた女性達に対し、ネット上でも男性中心に批判があがっている状況にも、社会の中にある構造的な性差別を容認するカルチャーを感じました。
日本には、女性への暴力やDVについて、禁止条項や法的拘束力を明記した法律が未だに制定されていません。これは、日本社会がジェンダー差別にもとづく暴力、加害を日常に生み出すことに繋がっていると認識しています。
私は、2018年の区議会本会議で、2011年に欧州評議会が採択した「イスタンブール条約」女性に対する暴力及びDVの防止と撲滅に関する国際人権条約をとりあげました。この条約で、女性に対する暴力は、女性と男性の間に歴史的に存在する不平等な力関係の表れであり、従属的な立場を女性に強要する決定的な社会機構のひとつである。女性は家庭や社会生活において、暴力を受けずに自由に生きる権利があり、障がいや性的マイノリティ等いかなる属性にあっても差別されてはならないとしています。
こうした立場にたって、女性への差別・暴力や女性憎悪を個人の問題としてとどめることなく、政府や自治体が社会全体の問題として、「フェミサイドは許さない」と声をあげることが重要だと考えます。そこでうかがいます。
北区が、性暴力やDVに加えて、「フェミサイド」についても、「女性に対する暴力をなくす運動」として啓発に取り組むよう求めます。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
男女がともに個性と人格を尊重し合う社会をつくるためには、固定的な性別役割分担意識を解消するとともに、暴力は重大な人権侵害であるとの認識の下、あらゆる暴力の根絶に向け取り組むことが重要です。
区では、これまでもスペースゆうにおいて、女性に対する、あらゆる暴力の防止に向けた情報提供や講座など普及啓発に努めており、令和元年度にはホワイトリボンキャンペーンの一環として、男性の立場、視点から暴力防止に取り組む意識啓発講座「フェアメンになろう」を開催しました。
区といたしましては、男女ともに犯罪の被害者にも加害者にもならないためにも、引き続き、暴力を許さない社会の形成に向けた普及啓発に努めてまいります。