2024年第2回定例会個人質問―のの山けん
2024年6月10日 | のの山けん
1、赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画の策定について
私は、山田区長に、赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画の策定について質問いたします。
現在、2か年にわたる基本計画の策定作業が行われています。昨年7月に開かれた第1回策定検討会から検討を重ね、5月14日に開かれた直近の第5回検討会では、「中間報告」を取りまとめることが主要な議題となっていました。しかし、この検討会では、事務局である区が提案した「中間報告」案に対し、検討委員からの意見が相次ぎ、結果として「中間報告」を決定することができませんでした。
学識経験者である検討会会長は、議事のまとめとして5つの点で問題があったとして「中間報告」の再検討を提案、事実上、事務局案は撤回を余儀なくされることになりました。5つの問題点とは、(1)説明不足、(2)時間不足、(3)評価方法は見直しが必要、(4)シナリオの絞り込みは早すぎた、(5)「中間報告」決定プロセスに市民参加が必要、というものです。
北区ホームページでの結果の公開は、「会開催後1か月以内を目途」となっているため、第5回検討会の議事録や資料はまだ公開されておらず、事務局が提案した「中間報告」案がどういうものだったのか、委員からどんな意見が出されたのか、なぜ「中間報告」が決定に至らなかったのかは、ここ議場にいる議員のみなさんを含め、ほとんどの区民が知りません。
そこで、検討会を傍聴した立場から、第5回検討会での議論に焦点を絞り、基本計画策定のあり方について、以下大きく5点、質問いたします。
(1)「中間報告」の取りまとめについて
第1に、「中間報告」の取りまとめについてです。
検討会ではこれまで、5つのシナリオ、7つのパターンの案を対象に検討が行われてきました。シナリオ1、2は、市街地再開発によらず現状の町並みを残す修復型まちづくりの案、シナリオ3、4、5は、市街地再開発による大規模な建替えの案です。今回、「中間報告」事務局案が決定の合意に至らなかった要因の一つに、7つの案に対する「評価」の確定と絞り込みを、事務局が急ぎすぎたということがあるのではないでしょうか。
事務局案は、それぞれの案を30項目の個別ミッションごとに○×△で「評価」し、それを点数化して総合評価を導き出すというものでした。これに対し、委員からは、「自分たちが住む街を、○×△で単純に評価するのはいたたまれない」、「点数をつけて案を絞り込むというやり方は聞いていない」、「事務局案が送られてきたのはゴールデンウィーク前で、これに対する意見シートが送られてきたのは検討会の1週間前。こんな短い時間では意見を書くこともできない」などの意見が出されました。
そもそも、評価方法の詳しい説明もなく示された事務局案を、ごく限られた時間で委員が読み込み、意見をまとめるのは困難であり、検討会当日に意見を出さなければ、事務局案の「評価」を確定して「中間報告」を公表するという取りまとめ方に対し、「これでは事務局が一方的に評価したといわれても仕方ないのでは」との指摘が出たのは、当然といわなければなりません。
会長が「説明不足」、「時間不足」だったという以上、7つの案への「評価」を確定することは時期尚早です。事務局案はいったん白紙に戻して、会長の提案に従い、次回の検討会で「中間報告」の取りまとめ方から再検討すべきではないでしょうか。お答え下さい。
7つの案への評価は、これまでの検討会の議論を 区が事務局として整理して委員に示したものであり、評価を行って 案を絞り込むことについては、検討委員の皆様から、概ねの理解をいただいていると認識しており、これまでの検討を踏まえた 事務局案を白紙に戻すことは考えておりません。
なお、第5回検討会において 検討会の会長から指摘がされました 課題については、事務局である区として真摯に受け止め、今後の検討に活かして、丁寧に検討を着実に進めてまいりたいと考えています。
(2)評価の視点(個別ミッション)について
大きな第2の質問は、個別ミッション、すなわち評価の視点についてです。
事務局案では、7つの案を評価するにあたり、30項目の個別ミッションを設けています。しかし、何をどういう基準で比較検討するのかという評価の視点は、本来、それ自体が検討会での議論に付されるべきものです。だからこそ、会長のまとめでは、評価方法そのものの再検討が必要とされたのです。
そこで、検討会で出された意見を踏まえ、以下、個別ミッションと、その評価のあり方について、区の考えを伺います。
1つに、立体図を示して7つの案を比較検討することです。
検討会では、「中間報告案で7つの案が平面図で示されているが、区民にわかりやすくするために立体図で示してほしい」、「先に開かれた第一地区の事業説明会に出たが、再開発ビルの予想図を見て圧迫されそうになった。十条駅前の39階建ては異様な光景だと思った」などの意見が出ました。
平面図では、まち全体の景観がどう変わるのかが伝わってきません。7つの案それぞれを立体図で示して比較検討することが必要と考えますが、いかがですか。
まず、立体図についてですが、立体図は本来、敷地計画や建築計画がないと描くことが難しいものです。これまでの検討はそれ以前の考え方の整理であるため、立体図を示しての検討は行っておりません。
2つに、文化的、歴史的視点での評価です。
事務局案では、修復型まちづくりのシナリオ1、2の評価が低くなっていることに対し、委員から、「景観や文化、歴史は古くなるほど良くなるという面もあるが、『古い=評価が低い』となっているのではないか」、「赤羽小学校や商店街を『赤羽の顔』として、もっと評価すべきでは」、「区が助成金を出して個別建替え、共同建替えを促進すれば、古い商店街の耐震化も早く進むのではないか」などの意見が出されました。
学校や公園、商店街など、今ある赤羽の財産について、文化的、歴史的な視点で評価することが必要ではないでしょうか。区長の考えを、お聞かせ下さい。
次に、文化的、歴史的な視点ですが、これまでの検討会の中で、「赤羽の良さの継承」という視点での検討も行っています。
3つに、タワーマンションの弊害についての評価です。
事務局案の点数配分は、ある委員が「再開発する側に有利な採点」と評したように、市街地再開発によるシナリオ4やシナリオ5-①、5-②に高い評価が与えられています。
一方、タワーマンション建設については、景観への影響とともに、「学校とマンションを一体にするのはいかがなものか。分譲マンションの多くは投資家が買って賃貸に出すので、どれだけ地元民として根づくのか。第一地区の説明会でも『風害の影響はない』と言われたが疑問だ」など、心配の声も出ていました。
昨今、樹木の伐採やCO2の排出、長周期地震動、水害時の孤立、将来的な廃墟化の恐れなど、超高層建築の問題点が各方面から指摘されています。
市街地再開発による街を一新するメリットだけでなく、タワマン建設にともなう弊害も評価として考慮すべきと考えますが、いかがですか。お答え下さい。
次に、タワーマンションに関する評価ですが、「周辺地域の生活環境」という評価の視点において、建物整備に伴う、周辺地域に対する日影や風害の影響の評価を行っております。
4つに、財政面からの評価です。
事務局案には、7つの案について、どれだけのコストがかかるかの情報や評価がありません。現在、建設資材や人件費の急騰で、北とぴあの大規模改修は中止、区民施設の建設にも黄色信号が灯っています。第一地区の再開発事業への補助金も、当初の57億円から75億円へと膨れ上がっており、この先、第二・第三地区が具体化すれば、どれだけの税金が投入されることになるのか、心配している区民も少なくないと考えます。
評価の視点として、財政面からの検討は絶対不可欠ではないでしょうか。
次に、財政面からの検証ですが、本検討会では、まちの課題から導かれる、目指すべきまちづくりの方向性の検討を中心に行っています。なお、今後検討が進む中で、区の責任において、財政面の検討もしっかり進めてまいります。
5つに、シナリオ5-③、すなわち市街地再開発の中で、赤羽小学校を地区外に移転させる案の評価についてです。
事務局案で5-③は、ミッションの2と3において、「学区域内に移転先となる適地がないため評価対象外」とされています。このことにふれて、教育振興部長の委員は、「学区域外に移転となれば、別の学区域の子どもにも影響が出ることとなり、学校を統廃合する場合の協議のように2、3年かけた議論が必要になるかもしれない」と発言しました。
赤小移転を採用するならば、隣接校との学区域の調整に時間がかかり、基本計画策定期限の来年3月までに結論を出すのは難しくなるのではないでしょうか。その場合、策定期限を延ばすのか、5-③を除外するのか、区の考えをお尋ねします。
次に、赤羽小学校の対応ですが、検討会では、現在地を含めた重点区域内で改築した場合と、学校を移転して改築した場合の両面からの課題整理と評価を行ってまいりましたが、第5回検討会における委員からの意見も踏まえ、さらなる課題整理等を行って引き続き検討する必要があると考えています。
6つに、赤羽小学校と赤羽会館の合築についてです。
これは、ミッション3「公共施設の効果的効率的な更新策の検討」の前提として出てきている問題です。第4回検討会では、会長から直々に、「赤羽会館の複合化は計画の前提なのか。合意が取れているのか」と問われ、事務局は、「公共施設再配置方針が区の考え方。区の思いは資料にしっかり反映させている」と答えています。しかし、多くの委員の中で合築は合意となっておらず、なぜ初めから合築ありきなのか、戸惑いもあるのではないでしょうか。
そこで、赤羽小学校と赤羽会館を合築する、しないの判断は、区の考えを前提とするのではなく、検討会自身の議論に委ねるべきではないでしょうか。お答え下さい。
次に、赤羽小学校と赤羽会館の合築ですが、「公共施設等総合管理計画」では、学校などの建替え等の際には、可能な範囲で周辺施設の集約化・複合化を図ると定める一方、地域の実情や区民ニーズにあわせて見極め、方針を検討していくこととしており、公共公益施設の再配置の現状や課題を区民と共有し、ご理解をいただきながら、区として判断するものと考えています。
7つに、個別ミッションの見直しを、検討会の中で行うことです。
ここまで紹介してきたように、今回の検討会の中で出された様々な意見を踏まえ、個別ミッション、すなわち評価の視点自体の見直しを、検討会の中で行うことを求めます。区長の見解をお示し下さい。
最後に、評価の見直しですが、評価の視点や評価内容については、これまでの検討会で検討して設定したものであり、第5回検討会での委員の意見も踏まえた必要な修正等を行ったうえで、今後の検討に活かすべきものと考えており、評価の視点自体を見直すことは考えておりません。
(3)基本計画に地域住民、子どもの意見を反映させること
大きな第3の質問は、基本計画に地域住民、子どもの意見を反映させることについてです。
これまで5回の検討会が開かれてきましたが、検討されている7つの案について、地元住民をはじめ、学校や商店街関係者など地域住民が意見を述べる機会は一度もありませんでした。
「中間報告を決定するプロセスに、市民参加を位置づけることが必要」という会長の指摘を受け、この先、広範な地域住民の声を「中間報告」や基本計画案に反映させるための真摯な努力を求めるものです。
その1つは、地域住民の声を聞く場の保障です。
今回の事務局案のような、「評価」を確定した「中間報告」が出されれば、地域住民の意見を聞かないまま、基本計画を1つの方向に誘導することになります。
地元の住民団体からも要望書が提出されていますが、「中間報告」を決定する前に、区として地域住民の声を聞く場を保障することを求めます。
まず、地域住民の声を聞く場を設けることについては、「赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画策定検討会」には、地域の諸団体の代表の方も検討委員として参加しており、検討会の場でご意見をいただいております。
また、区としては、これまでの検討会の議論の経過のまとめの報告について、幅広く区民の意見を聞いてまいりたいと考えています。
2つに、子どもの意見の聴取です。
この4月に施行された北区子どもの権利と幸せに関する条例は、「子どもを権利の主体として尊重するとともに、子どもに関係のあることについて、子どもにとって最も善いことは何かを第一」とすることを基本理念とし、子どもの意見表明権を保障しています。基本計画の策定検討においては、その中心に赤羽小学校や赤羽公園など、子どもたちの学びや遊びの場があり、その更新は、子どもたちにとっても極めて重要な関心事です。
そこで、子どもの権利と幸せに関する条例に基づき、当該地域の子どもたちの意見を聴取し、「中間報告」の策定に反映させるよう求めます。
次に、子どもたちの意見を聴取することについては、赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画の策定にあたっては、赤羽小学校の児童をはじめ、子どもたちの声をしっかり聞いていくこととしており、子どもたちが意見を出しやすい、適切な時期を捉えて、そのような場を設けてまいります。
3つに、赤羽駅東口地区まちづくり全体協議会への働きかけです。
当初の予定では、基本計画の策定検討が開始される前に、協議会が「まちづくり提案」をまとめ、検討会に提示することになっていました。しかし、昨年9月の総会で幹事会案が否決された後は、協議会の活動が事実上休止状態となり、現在、会長、副会長からは、中間報告が出るまで検討会での推移を見守るとする趣旨の通知が出されていると聞いています。
まちづくり協議会ではこれまで、長期にわたり、地域住民による議論が積み重ねられてきました。その成果をしっかりと検討会の議論に反映させるため、区として協議会に対し、まちづくり懇談会を開催し、あらためて「まちづくり提案」の取りまとめを行うよう強く働きかけて下さい。区の見解を問います。
次に、まちづくり協議会への働きかけについては、協議会幹事会としては、「まちづくり基本計画の検討が進んでいることを踏まえ、その検討会がまとめる中間報告の公表を待って、何らかの活動を行う方が望ましい」と判断しているものと理解しており、区としては協議会の意向を尊重するとともに、検討会の委員でもある協議会の会長とは、引き続き必要な情報交換等を行ってまいりたいと考えています。
(4)情報公開について
大きな第4の質問は、情報公開についてです。
まちづくりにおいては、住民合意とともに、情報公開が最も重要な課題となります。基本計画の策定検討でも、情報公開を拡充するための手立てとして、以下3点提案します。
1つに、検討状況の周知です。
現状では、検討会の議事録や資料が公開されるまでに1か月の時間を要し、地域住民への周知が遅れ遅れになっています。区は、これまで、赤羽駅周辺地区まちづくりの情報を知らせる「赤羽PRESS」を2回発行し、対象地域へのポスティングを行ってきましたが、検討が佳境に入る今後は、少なくとも検討会が行われるごとに、その結果や内容を広く地域住民に広報すべきです。
検討状況のすみやかな周知のために、「赤羽PRESS」などの媒体を通じて、広く地域住民へ発信することを求めます。
赤羽駅周辺のまちづくりについては、区は、これまでも、赤羽まちづくりだより「赤羽PRESS」やホームページなどを活用した情報発信を行ってまいりましたが、今後とも、そのような媒体などを活用して、積極的な情報発信に努めていきたいと考えています。
2つに、検討会のオンライン配信です。
赤羽のまちづくりには、多くの地域住民が関心をもっており、検討会の傍聴を希望する区民も多数にのぼります。ところが、毎回の検討会は傍聴の定員が30人に限定されており、それ以上の応募者があった時には抽選を行うことになっています。希望者の中には、定員が限定されていることから、応募自体を躊躇する方もいらっしゃいます。傍聴の制限は取り払うべきではないでしょうか。
区長は、今年の年頭あいさつで、駅周辺のまちづくりについて多くの方々の意見と理解を得られるよう、会議のオンライン配信を活用していくと表明しました。
そこで、人数を制限することなく、全員が検討会を傍聴できるようにすること。また、会場に行かなくても、オンラインで検討会を視聴できるようにすることを求めます。
次に、傍聴人の人数制限とオンライン配信についてです。赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画策定検討会では、できるだけ広い会議室を確保し、その中で用意できる座席等を最大限活用した傍聴人定員を設定しておりますが、用意できる会場も限られますので、無制限とすることは難しい状況にあります。
オンラインによるライブ配信につきましては、区民参画や開かれた区政を推進するという観点から、引き続き対応について検討してまいります。
3つに、教室型による「中間報告」説明会の開催です。
区は、第5回検討会で「中間報告」が決定されていれば、7月に中間報告説明会を開催する予定で、その説明会はオープンハウス形式が想定されていました。オープンハウス形式というのは、参加者の都合に合わせて会場に足を運べるメリットがある一方、説明は一人ひとりに対し個別となるので、まとまった説明を受けて、全体の場で質疑応答をしながら理解を深めていく教室型と比べ、双方向での情報交換がしにくいというデメリットがあります。
今後、「中間報告」が公表される段階になった時に説明会を行う際は、オープンハウス形式の他に、教室型説明会もあわせて複数回実施することを求めます。
これまでの議論のとりまとめの報告につきましては、一人一人により丁寧な対応ができる、オープンハウス形式が望ましいと考えており、そのような実施形態を予定しております。
(5)今後の検討スケジュールについて
最後の質問は、今後の検討スケジュールについてです。
第5回検討会で「中間報告」がまとまらなかったことも一因に加わり、基本計画の策定作業は、当初の予定より遅れている状況です。
事務局である区として、今後の基本計画策定検討スケジュールをどう考えているのか、お答え下さい。
以上で、私の質問を終わります。ご清聴、ありがとうございました。
第5回検討会では、これまで進めてきた3つのミッションによる評価の整理と取りまとめの考え方について、事務局である区から説明し、ご議論いただきました。
今後は、これまでの検討会の議論は尊重したうえで、改めて、委員の皆様とまちづくりの課題を再確認し、これまで以上に事務局からの丁寧な説明も行い、検討会の正副会長とも十分な意見交換を行ってまいります。そして、本年中には、区民の皆様に、検討会の議論の経過のまとめを報告できるよう、引き続き検討を進めてまいりたいと考えています。