2015年度決算に対する反対討論
2016年10月7日 | のの山けん
日本共産党北区議員団を代表して、2015年度一般会計決算および国民健康保険事業会計決算、介護保険会計決算についての反対討論をおこないます。
わが会派は、区の施策の一つひとつに是々非々で対応し、昨年度は区長提出議案の約7割に賛成してきました。他方、決算の認定については、個別の施策の評価とは別に、予算執行の全体像を視野に入れながら、区民にとってふさわしいものだったのかを判断基準として態度を決めています。
2015年度の予算執行において、木造民間住宅耐震助成の引き上げ、高齢者あんしんセンターの充実、安心ママヘルパー事業の実施、くらしとしごと相談センターの開設などは、わが会派が求めてきたものであり、評価します。しかしながら、以下の理由で一般会計決算に反対します。
区民の暮らしを応援する対策が不十分
反対理由の第1は、十分な財源がありながら、貧困と格差の是正、待機児解消など区民の暮らしを応援する抜本的対策が不十分にとどまっていることです。
(1)2015年度はどういう年だったか
昨年、2015年度はどういう年だったでしょうか。
まず、暮らしと経済の点では、「アベノミクス」の破たんが明らかになりました。「大企業ファースト」の経済政策によって大企業は空前の利益をあげたものの、労働者の実質賃金は4年連続マイナス、雇用においても非正規社員が増加し、正社員が3年間で23万人も減少しました。経済の6割を占める家計消費はマイナスが続き、消費税10%増税は2度にわたり延期せざるを得なくなりました。こうした下で、貯蓄がゼロという家庭が1890万世帯、全世帯の3分の1にまで広がるなど、貧富の差は途方もない広がりをみせています。いまや貧困と格差の是正は、まったなしの課題となっています。
「保育園落ちた」というブログの投稿をきっかけに、待機児問題が全国規模に発展しました。北区でも今年度当初で232人の待機児が出るなど、深刻な状況となっています。
平和と憲法の問題では、安倍政権が憲法9条をふみにじる安保法制=戦争法を強行しました。政府は、戦闘が激化している南スーダンPKOで、自衛隊に「駆けつけ警護」など新たな任務を付与しようとしており、戦後初めて自衛隊が海外の戦争に参加するかどうかという重大な局面を迎えています。
(2)区財政の現状について
一方、北区の財政はどうなっているでしょうか。
数年前まで区は、「財政が厳しい」「数年後には財調基金が底をつく」などと危機感をあおっていました。しかし、今年初めに花川区長は、「財政対応力は高まった」と表明、主要5基金の残高は、昨年度末で過去最高の533億円となりました。
中でも、わが会派が決算審査の中で指摘した十条まちづくり基金については、毎年定額貯金のように10億円を積み立て、今年度までに80億円を積み上げています。当座、数年後に単年度で60億円ほどの支出は予定されていますが、いったん支出したのちに、翌年度以降、都区財調や都市計画交付金で、その多くが返金されることも明らかになりました。
昨年度の当初予算は、高齢者、子育て、地震・水害対策などに重点的に予算を配分したといいますが、浮間唯一のバス路線、赤06系統に対し、わずか880万円の運行支援を区が打ち切っため、高齢者、障がい者など交通弱者の足が奪われました。商店街連合会は区民に大好評のプレミアム付き区内商品券の増冊を求めていますが、必要な経費は870万円に過ぎません。高まった財政対応力を活用すれば、もっと区民の暮らしを応援する政策が実行できるはずです。
(3)わが会派の「組み替え動議」の意義が明らかに
わが会派は、当初予算に対して、当時465億円に積み上がっていた基金の一部を活用し、年金引き下げや国保料・介護保険料値上げなどの負担を軽減する「暮らし応援手当」の創設、特養ホームと認可保育園のさらなる増設、子育てファミリー層・若年層・ひとり親家庭への就労支援と家賃補助などを柱とする予算組み替え動議を提案しました。
決算の質疑では、各会派・無会派議員から、子ども食堂やひとり親家庭への支援、就学援助の前倒し支給、感震ブレーカーの設置補助など、暮らしに密着した要望が多数出されました。今回の決算審査を通じ、議会でもいよいよ足並みが揃ってきたとの感を強くしています。いまこそその実現を強く求めるものです。
経営改革プラン・公共施設再配置方針への固執
反対理由の第2は、サービス切り捨てと区民負担増、公共施設の削減・統廃合を推し進める経営改革プラン2015や北区公共施設再配置方針に固執する姿勢です。
(1)経営改革プラン
職員の削減と外部化、受益者負担を基軸とする経営改革プランは、多くの区民にがまんを強い、切実な要求を押しとどめる役割を果たしています。
一例をあげるならば、保育園の待機児解消です。区は今年度、待機児が急増したことをうけ、年度内と来年度の開所をあわせて1090人の定員を拡大する計画を策定しました。ところが、当初237人とした年度内の整備は、現在までに60人を下回る見通しとなっています。その主な原因の一つが、あてにしていた小規模保育事業所など民間誘致の応募が少なかったことにあります。かつては区立認可保育園の建設や区有施設などを活用した区立のつぼみ保育園の整備に力を入れてきたこともありますが、最近は外部化方針に基づいて、もっぱら民間事業所の誘致が主軸になっています。区長を先頭に、関係部局あげての努力を多とするものですが、民間だのみの姿勢では待機児解消にも限界があることを指摘しておきます。
加えて、計画が進捗しないもう一つの原因が、保育士不足です。わが会派の総括質疑で、区が来年度の正規保育士を募集したところ、500人を超える応募があったことが明らかになりました。新規に80人の採用に踏み切ったことは英断と評価しますが、全職種平均より約10万円も賃金が低い民間保育士に比べ、公立の保育士には予想を超えた需要があることが明らかになりました。決算委員会での議論をふまえ、区立認可保育園の整備と保育士の処遇改善こそ待機児解消の決定打であることがうきぼりにされました。
決算審査ではまた、今年1月から導入された国保年金課の窓口民間委託の問題も議論になりました。判断業務にかかわらない窓口対応を派遣会社に委託することによって、年間500万円の「効果」をあげるとしていますが、その原資は人件費です。公契約条例が制定されていないもとでは時給932円の最低賃金が歯止めにしかならず、区がワーキングプアをつくりだすことになります。
最大5時間待ちの混雑緩和が急務となっている区民事務所も、元をたどれば15年前の出張所再編に根源があります。当時、「19ある窓口を3つに減らせば処理が追いつかなくなるのではないか」と議論されていましたが、区は職員の削減を目的に再編を強行しました。経営改革プランでは、コンビニ交付を契機に7つの分室のあり方を見直すとしていますが、分室を削減することになれば、区民事務所の混雑に拍車をかけることは必至です。
(2)公共施設再配置方針
公共施設再配置方針の下では、この間、ホールが無料で使用でき多くの区民が利用する上中里コミュニティ会館が廃止へと追い込まれ、学校改築にあわせて周辺施設の複合化が進められています。小学校への放課後子ども総合プランの導入にあわせた児童館の再編・統廃合で、地域から次々と児童館が姿を消し、機能を換えた子どもセンター、ティーンズセンターでは小学生が遊べなくなっていきます。子どもを分断する政策を見直し、志茂子ども交流会のように赤ちゃんからお年寄りまで全世代で交流できる施設を拡充することこそ必要ではないでしょうか。
区は、公共施設の面積を20年間で15%削減する目標を掲げていますが、3年たってもその「成果」は131㎡の微減にすぎないことが明らかになりました。もともとこの目標は、主にコスト面からのみ弾き出された数字であり、根拠に乏しいものです。いたずらに削減のみを強調すれば、施設の新たな建設や拡充は抑制され、合理的な公共施設の再配置が妨げられることになります。あらためて数値目標を撤回し、区民が納得できる現実的な目標に切り換えるよう求めるものです。
以上みてきたように、区民の要望と「行革」方針は相容れません。経営改革プランと公共施設再配置方針を抜本的に見直すことを求めるものです。
住民の声に向き合わないまちづくりの姿勢
反対理由の第3は、住民の声に向き合おうとせず、駅前再開発、道路事業などを一方的に進めるまちづくりの姿勢です。
(1)十条駅西口再開発
十条まちづくりでは、駅西口再開発組合の設立がいまだに見通せていません。都市計画決定から4年が経過しているのに、なお3分の1を上回る地権者が同意しないのは、閑静な住宅街に40階の超高層ビルを建設する再開発計画そのものに問題があるからに他なりません。多くの地権者が合意できる計画に見直すよう求めます。
(2)補助85号線計画変更
決算審査では、JR埼京線の立体交差化と抱き合わせで進められている補助85号線の都市計画変更問題をとりあげました。3月の予算特別委員会では、今年1月に開かれた素案説明会後の勉強会で、道路幅員18mから30mへの拡幅によって壊滅状態に追い込まれるいちょう通り商店街のみなさんから厳しい意見が出ていたことを紹介し、「一刻も早く丁寧な説明を」と求めました。
ところが区が説明をしないまま3ヵ月が過ぎ、6月にはいちょう通りを含む5つの商店街が加盟する十条地区商店街まちづくり連絡会が区に要望書を提出しました。そこには、次の要望が書き込まれています。
―「計画地の権利者へ正確な情報を提供するとともに事業内容を理解できるよう、より丁寧な対応をお願いしたい」
―「埼京線を高架化する都市計画案が発表され、踏切解消を目的とする道路拡幅の必要性はなくなったが…拡幅線形をほぼそのまま踏襲している。拡幅の目的が変わったにもかかわらず、なぜ拡幅する区間や幅員、線形が見直されないのか権利者が納得できるご説明をしていただくよう東京都へ働きかけていただきたい」
―「北区は地元住民の客観的な意向調査やヒアリングを丁寧に実施し、我々の要望をしっかり東京都へ伝えるようお願いしたい」
決算の質疑では、この要望に対して正式な回答と説明をおこなったのかを質したところ、区は「まだ説明していない」と答弁しました。年度内にも都市計画変更案が正式決定されようとしているのに、道路拡幅計画によって撤退を迫られる商店街のみなさんに半年以上もまともな説明をしない、丁寧な対応を求める要望書が出されても足を運びさえしないというのは、行政の怠慢としか言いようがありません。猛省を促すものです。
まちづくりの事業には多くの利害がともないます。公共事業であればこそ、公共の福祉にどう資するのかという丁寧な事業説明が必要です。計画に異議を唱えたり反対する住民を排除、敵視するのではなく、その声に耳を傾け、納得をかちうるまでねばり強く説明する責任が区にはあります。区は、まちづくりは住民合意が大前提という原則に立ち戻るべきであります。
国や都の政策に批判的立場をもたない
反対理由の第4は、国や都の政策に批判的立場をもたず、区民に不利益な施策も能動的に受け入れる姿勢です。
(1)安倍政権の暴走政治を是認
区は、社会保障の大改悪を推し進める安倍政権の暴走に、「推移を見守る」、「国において適切に審議されるもの」などと、傍観者的な立場を表明しています。
国民健康保険をめぐっての質疑では、毎年のように引き上げられる保険料が、低所得者などにとって、もはや支払い限度を超える水準に来ていることを指摘しました。北区では加入者の3割、約2万3000世帯が保険料を滞納しており、そのうち22%にあたる5000世帯余に短期証が、1%にあたる240世帯余に資格証が発行されています。全国でも正規の保険証を手にできできないまま「手遅れ死」となるケースが起きるなど、加入者の命が脅かされる事態が進んでいます。保険料は来年度も値上げの見通しとなり、2018年度から始まる国保の都道府県化では、自治体一般財源からの繰り入れが禁じられ、国費の投入が不十分な規模となれば、保険料のさらなる引き上げか医療抑制、さもなくば徴収強化の道しか残らなくなります。
介護保険では、一定の所得がある人の利用料引き上げや、要支援1・2と認定された人の保険給付はずし、特養ホームへの入居を要介護3以上に限定するなどの改悪を進めた第6期事業計画に続き、2018年度からの第7期計画では、要介護1・2のデイサービス、ホームヘルパー、介護ベッド・車イスといった福祉用具貸与などの保険給付はずしが具体化されようとしています。要支援1・2、要介護1・2を合わせ、北区では実に7割にものぼる加入者を保険給付からはずすなどということになれば、「国家的詐欺」といわれてもおかしくないではありませんか。
国保も介護保険も、制度がまともに機能しなくなっているのは、政府が社会保障費抑制に大きく舵を切っているからです。わが会派は、切り下げられてきた国庫負担を思い切って引き上げるよう国に求めよと追及しましたが、区の答弁は迫力に欠けるものでした。
(2)東京都に対し目に余るほどの協力姿勢
一方、区は東京都に対しても、目に余るほどの協力姿勢を示しています。
現在開かれている学校施設跡地利活用検討委員会で、都が旧赤羽中学校跡地に補助86号線など道路事業の代替地を要求していることが明らかになりました。86号線については、防災の費用対効果は薄く、志茂地域の環境を悪化させないとした北清掃工場建設時の公害防止協定にも違反する疑いがあることから、地権者の約半数が計画に反対しています。地域住民らは現在、国を相手どり、事業認可取り消しを求める裁判をたたかっています。こうした中での都による代替地要求は、志茂の地域に新たな火種を投げ込む提案でした。
区は当初、こうした重大な案件を、検討委員会の中での口頭報告で済まそうとしていました。しかし、直近の検討委員会では、計画に反対する住民団体が委員に宛てた文書が参考資料として配られ、代替地の受け入れを含めた区の提案に対し、委員長から「住民の納得が得られるよう、都と十分に協議するように」という注文がつけられました。委員会終了後には、傍聴していた住民から区に対し「東京都の方ばかりではなく、私たちの方を見て下さい」と声がかけられました。
同じ補助86号線の赤羽南地区用地説明会では、事業の必要性についての説明もまともにおこなわないまま土地や家屋など財産の提供を求める都の説明に、参加した住民から次々と疑問や怒りの声が寄せられ、事実上、説明会が流会する事態となりました。とりわけ、事業の根拠とされる1946年、70年前の都市計画決定については、決定原簿も図面も内閣の認可すらなく決定は無効ではないかと追及されると、都の担当者は、「詳しいことは都市整備局がやっていることなのでわからない。事業としてやらざるを得ないので用地説明会を開いている。これ以上は説明できない」と音を上げてしまいました。こうした説明会ですら、区は、「説明会の目的にそった説明だった」「他でやっているのと同様の説明会だった」と都を擁護しています。
本来、区民の利益に反する政策には、自治体として体をはって抵抗するのが地方自治の精神です。国や都に唯々諾々と従う姿勢からの転換が必要です。
以上が、一般会計決算の認定に対する反対の理由です。
特別会計への態度
次に、特別会計決算についてですが、先にのべたように、保険料の値上げや「持続可能にする」といいながら制度の根幹を壊す改悪を是認する姿勢から、国民健康保険事業会計と介護保険会計に反対いたします。
なお、中小企業従業員退職金等共済事業会計と後期高齢者医療会計には賛成することを申し添えておきます。
早期実現を求める課題について
最後に、決算審査を通じて明らかになった以下の諸課題については、早期に実現することを要望いたします。
1、浮間唯一のバス路線赤06系統の休止をうけて、早急にコミュニティバスの新規路線をふくめた交通手段確保の検討をおこなうこと。
2、最大5時間待ちなどの混雑緩和が急務となっている区民事務所については、分室の機能拡充も含め、抜本的な対策を講じること。
3、プレミアム付き区内商品券については、発行枚数を増加すること。
4、桐ヶ丘中ブロックの学校適正配置協議では、学校数の現状維持も視野に入れ、可能性をくみつくした協議をつくすこと。
5、シニアクラブをはじめとする区内各団体からの財政支援の要望にこたえること。
6、精神障がい者が、身体・知的障がい者と同様、障害者医療助成を受けられるよう都に求めるとともに、精神障がい者の心身障害者福祉手当を身体・知的障がい者と同水準の支給にあらためること。また、民間の障がい者施設へ防災備蓄整備のための財政支援をおこなうこと。
以上で2015年度決算に対する反対討論を終わります。ご清聴、ありがとうございました。