プロフィール

2007年6月20日

2007年第2回定例会 個人質問

私は、大きく2点について質問いたします。

若者の間に広がる貧困と格差の打開にむけて

まずはじめに、若者の間に広がる貧困と格差の問題についてうかがいます。

「落ちるのは簡単だが、這い上がるのは難しい」――ネットカフェ難民の叫び

働いても働いても生活保護水準の暮らしすらできない、いわゆる「ワーキングプア」の広がりが社会問題となっていますが、いまマスコミが「ネットカフェ難民」と呼ばれる青年たちに注目しています。6月12日に放映されたNHK「クローズアップ現代」は、「街をさまよう若者たち~新しい形のホームレス~」と題し、アパート代も払えず住む部屋を失って、一晩1000円から1500円程度で利用できるインターネットカフェを渡り歩きながら寝泊りする日雇い労働者の姿を紹介していました。私もこの質問を前に、赤羽駅前にあるネットカフェに泊まってみましたが、たたみ一畳ほどに区切られた狭いブースの中に、置いてあるのはパソコン一台とソファだけ、体を伸ばすことも寝返りをうつこともできず、とても寝泊りする場所ではないと感じました。

去る5月20日、青年団体や労働組合でつくる実行委員会のよびかけで「全国青年大集会」が開かれ、明治公園に3300人の青年が集まりました。私も参加しましたが、そこで2年間ネットカフェ暮らしをしている青年が、こう訴えました。「家賃の更新料が払えずアパートを解約、しばらくのつもりでネットカフェ通いを始めたが、どんなに働いても敷金・礼金がたまらず新しいアパートを借りることができない。落ちるのは簡単だが、這い上がるのはとても難しい」。住む部屋すら持てずに、もがき苦しむ青年の姿に、胸がつまる思いでした。

登録型派遣――新しい日雇い労働者の実態は

ネットカフェ難民の多くは、その日その日で働く場所を変え、わずかな報酬を日当で得るために働く、日雇いの登録型派遣労働者です。登録先の派遣会社から前日に電話やメール一本で集合場所を告げられることから、「ワンコールワーカー」などと呼ばれています。不正請求で問題になったコムスンの親会社「グッドウィル」そして「フルキャスト」の2つが業界大手で、2社だけで登録者数は400万人を超えるといわれています。これらの会社のホームページを見ると、「空いてる時間に好きな場所で! お仕事選びも自由自在」「夢追い人応援、しっかりフォローします」など、甘い言葉が並んでいます。しかし、日雇い派遣労働の実態はこんなものではありません。

一例を紹介しましょう。

区内に住む27歳の男性は、これまでいくつもの派遣会社と契約を結び、登録型の日雇い労働者として働いてきました。

通信機器を扱う会社では、路上や店頭で端末装置の契約をとりつけるキャンペーンスタッフとして働き、日給は1万円でした。仕事があるかどうかは前日の電話で確認、その日によって仕事の場所が変わり、都内各地を転々としました。一人ひとりの派遣スタッフには厳しいノルマが課せられ、仕事中にも、どれだけ契約がとれたか点検の電話が頻繁に入ったそうです。仕事が終わると、いったん派遣先の会社に戻るのですが、ノルマを達成できなかったスタッフにはメガホンを持った社員が怒鳴り声をあげて叱責、中には泣き出す派遣スタッフもいたとのことです。ノルマに追いまくられるので、電話帳を使って架空の契約書をつくったり、わけもわからないお年よりをつかまえて強引にハンコを押させるケースまであったそうです。結局、契約をとれる派遣スタッフは、次の日も仕事がもらえるのですが、契約がとれない人には仕事がまわってこない。ごくごく短期で仕事が打ち切られてしまいます。

また、別の登録会社からはパソコン組立の仕事に派遣されました。日給8000円での契約でしたが、1000円以下の場合は交通費が出ません。その上、「データ装備費」という名目で200円が給与から天引きされており、派遣会社に「何の費用か」と尋ねてもまともな説明すらなかったとのことです。

この男性は半年前、足をけがして仕事ができなくなり、収入が途絶えました。家賃は治療費に消え、1ヵ月もすると完全な生活困窮状態に陥りました。7年近くにおよぶ日雇い労働体験を振り返って、私にこう語ってくれました。

「どこへ行っても、まるでモノのような扱いをうける。何年働いてもお金はたまらない。明日仕事があるか絶えず不安で、将来の見通しがたたない。まわりには、いつのまにか派遣だらけ。このままでは日本はだめになってしまうのではないか」。

同じ派遣でも、仕事と賃金が一定期間、保障される常用型に対し、仕事がある時だけ呼び出され、まるでモノや部品のように「調達」される登録型は、より非人間的です。まさに、企業にとっての「究極の調整弁」です。

財界・大企業の要求うのみに、雇用破壊すすめた政治の責任は重大

問題は、こうした「ネットカフェ難民」や新しい日雇い労働が、どうして日本の社会に蔓延してきたのかということです。これは決して自然現象でもなければ、労働者の側が望んだことでもありません。財界・大企業の目先の利潤追求と、政府がおこなってきた労働法制の規制緩和による〝雇用破壊〟がもたらしたのに他なりません。1995年、日経連(現・日本経団連)が「新時代の『日本型経営』」と題する報告書を発表し、従来の終身制から派遣・パート・アルバイトなど非正規雇用へ大きくシフトせよと号令、これをうけて99年には労働者派遣事業法が改悪され、それまで専門業務に限定されていた派遣労働の対象が原則自由化に。さらに2003年には製造業にまで派遣が解禁され、一気に日雇い派遣が広がりました。「規制緩和」の名で労働法制の改悪を重ね、働くルールを破壊してきた政治の責任こそが極めて重大なのであります。日本共産党は、貧困と格差の是正へ、人間らしく働けるルールを確立するために、力をつくしてまいります。

そこで、区長に質問します。

ネットカフェ難民や日雇い労働者の現状について、区として実態調査を

その第1は、「ネットカフェ難民」や日雇い労働者の現状について、区として実態調査にのりだすことです。これだけ大きな問題となっていながら、政府もいまだ正確な統計を持っていません。「ネットカフェ難民」問題が最初に国会でとりあげられたのは、今年の3月15日、参議院厚生労働委員会でのわが党の小池晃議員の質問においてでしたが、実態調査を迫った小池議員に対し柳沢厚生労働大臣は「可能かどうか検討したい」とのべるにとどまりました。

先に紹介した「全国青年大集会」では、実行委員会が集会に先立っておこなった「ネットカフェ実態調査」の結果が報告されましたが、実に7割もの店で長期滞在者がいることが明らかになりました。日雇い派遣については、厚労省の05年度派遣事業報告で、登録型が派遣全体の75%を占めているとのことですが、北区ではどれだけの数にのぼるのでしょうか。

若者の間に広がる貧困の実態を早急に把握すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

区の答弁

若者の間に広がる貧困と格差の打開にむけて、についてお答えします。

平成18年度の総務省の労働力調査によれば、フリーターやニートの数は前年に比べ減少しています。また、景気の回復により、一部にパートを正規社員に登用する動きも出てきたとうかがっています。ご提案のありました調査については、国でも検討中とのことですので、その動向を見守って参りたいと思います。

ネットカフェ難民を生まない、広げないための緊急対策を

第2は、「ネットカフェ難民」を生まない、広げないための緊急対策についてです。

ネットカフェ難民となる主な契機は、家賃や更新料が払えなくなることです。新たな「難民」を生まず、広げないようにするための経済的支援がどうしても必要ではないでしょうか。区として賃貸住宅を確保するための若者向け生活資金貸与制度、ならびに若年単身者向けの家賃助成制度を創設するべきだと考えますが、いかがですか。区長の積極的な答弁を求めます。

区の答弁

今後も、若者の就労支援等については、ハローワーク王子や王子労働基準監督署などと引き続き連携・情報交換も含め検討・対応してまいります。

使い捨ての働かせ方やワーキングプアの根絶を

第3は、使い捨ての働かせ方やワーキングプアを根絶するために、積極的に国に働きかけることについてです。

まず、劣悪で不安定な雇用を生み出している登録型派遣を解消するよう国に迫ることです。去る3月1日、派遣社員などでつくる労働組合「全国ユニオン」が業界団体と交渉し、「登録型派遣」を原則として禁止することを求めるなどの動きもすでに出始めています。低賃金で使い捨て、保険の対象にもならない登録型派遣は解消するよう国に求めるべきだと思いますが、区長の見解はいかがでしょうか。

さらに、働く貧困層を生み出す温床となっているのが、世界と比べても異常に低い日本の最低賃金制度です。最高の東京でも時給719円、全国平均では時給673円という水準で、フルタイムで働けたとしても月収十数万円程度にしかならず、これではとてもまともな生活は送れません。現在、国会では最低賃金法の改正について審議されていますが、少なくとも時給1000円以上に引き上げることが必要ではないでしょうか。北区議会では、先の第1回定例会で、最低賃金の引き上げを求める意見書が全会一致で採択されています。都道府県別ではなく、全国一律最賃制の確立とあわせ、国に強く迫ることを求めます。お答え下さい。

区の答弁

次に、使い捨ての働かせ方やワーキングプアの根絶を、についてお答えいたします。

近年の産業構造の変化により、就労形態・就労意識の多様化、少子化の進展など雇用・労働関係を取り巻く状況も変わってきています。現在、国の労働政策審議会においても、雇用・労働に係る検討をおこなっておりますので、雇用対策・就労対策の充実について、機会をとらえて国や東京都に要望してまいります。

若者の就労支援へ、北区がイニシアチブの発揮を

第4は、若者の就労支援へ、北区が積極的なイニシアチブを発揮することについてです。

その1つは、仕事に関するあらゆる悩みの相談窓口となる「北区若者雇用サポートセンター」(仮称)を開設することです。足立区では、国がおこなう「地域における若者自立支援ネットワーク整備モデル事業」を活用した「あだち若者サポートステーション」が、仕事をしていない若者への就労支援に一定の成果をあげていると聞いています。こうした例も参考に、あらゆる悩みに対応できる「若者雇用サポートセンター」を開設するよう求めるものです。

2つめに、「就労育英基金」の設立や職業訓練中の生活費補助など就労のための経済的援助を実現することです。働きたいという意欲はあっても、実際には就労する上でさまざまな困難を抱えた青年が多いのも事実です。「自立塾」などに通ったり、職業訓練をうけるための経済的支援を求めます。

3つめに、経験の浅い青年労働者が、サービス残業や偽装請負など違法な働かせ方の犠牲とならないよう注意を喚起するとともに、成人式で「ポケット労働法」をすべての新成人に配布するなど、労働者の権利と雇用主の義務を知らせる広報活動を抜本的に強化するべきだと思いますが、区長の見解をお示し下さい。

区の答弁

次に、若者の就労支援へ、北区がイニシアチブの発揮を、についてお答えします。

北区では、本年6月11日に、雇用の専門機関であるハローワーク王子と、労働条件を確保する王子労働基準監督署、そしてその2所を管轄する厚生労働省東京労働局をはじめ、区内の各産業団体も交えて、「北区地域雇用問題連絡会議」を設置し、その1回会議を開催したところでございます。会議では、今後、国の施策と地域的な重要課題について協議をし、地域の特性に応じた労働施策の展開を図ることが確認されました。区といたしましては、今後、赤羽しごとコーナーを移転拡充するとともに、こうした場を積極的に活用して、関係機関との情報交換を図り、できる限りの取り組みをしてまいりたいと存じます。

赤羽・志茂地域のまちづくりについて

大きく2点目に、赤羽・志茂地域のまちづくりの課題について質問します。

赤羽駅周辺の放置自転車対策について、JR東日本に応分の負担を求めよ

第1の質問は、赤羽駅周辺の放置自転車対策についてです。

先日、東京都青少年・治安対策本部が発表した「都内における駅前放置自転車の現況について」という調査結果で、JR赤羽駅が放置自転車の多い駅の第1位と報告されました。すでに区は、南口に開設予定のエコー広場館への駐輪場設置、800台を収容できる新しい自転車移送場の整備を打ち出し、先日も花川区長を先頭にクリーンキャンペーンにとりくんだとのことですが、「都内ワースト1」の汚名を返上するためにも、放置自転車を減らすための全面的な対策は急務です。

同時に、放置自転車対策には少なくない区民の税金が使われていることに、着目しないわけにはゆきません。平成17年度の放置自転車対策事業の収支状況をみると、自転車整理や移送の委託料、事務費など支出が約1億5000万円、一方、収入は移送手数料と指定自転車置場利用登録手数料で約7000万円、差し引きで約8000万円が持ち出しとなっています。自転車放置者の負担については昨年度、移送料が3000円から4000円へと引き上げられていますが、赤羽駅については自転車を放置する人の約8割が駅の利用者であるとの調査もあるように、大量の自転車を呼び込む原因となっている鉄道事業者にも応分の負担をしてもらうことが必要ではないでしょうか。

そこで区長に質問します。JR東日本に対して、放置自転車対策について応分の費用を負担してもらう、あるいは新たな駐輪場建設のための土地を提供してもらうなど、積極的な協力を求めるべきだと思いますがいかがでしょうか。お答え下さい。

区の答弁

赤羽駅周辺の放置自転車対策について、お答えします。

この度、平成18年度の都内における放置自転車台数が多い駅の第1位に、JR赤羽駅が位置づけられました。不名誉な結果であり、大変残念であります。早期に汚名を返上できるように、取り組んでまいります。

放置自転車をなくすための基本は、まずは、自転車利用者のマナーを向上していくことですが、鉄道事業者など、関係機関の協力を得ながら、対策を進めていくことも必要であると考えます。

JR東日本が、現在おこなっている赤羽駅周辺の協力としては、自転車駐車場用地の提供だけではなく、クリーンキャンペーン実施時の、自治会や商店街のみなさまとの共同活動への参加や、駅構内において、自転車の放置防止を呼びかける放送などもあります。

区といたしましては、今後、赤羽駅周辺の放置自転車台数の減少に向け、自転車駐車場の整備推進、放置自転車の撤去の強化に取り組むとともに、既存の駐輪施設の利用促進のために、施設の案内・誘導の強化をはかってまいりますが、これらに対しても、JR東日本の一層の協力を求めてまいります。

志茂小学校跡地整備をすすめるにあたっては、住民の意見を十分に反映させるシステムをつくれ

第2の質問は、志茂小学校跡地整備についてです。

志茂小学校の跡地は現在、体育館を残して建物すべてが撤去され、広大な空地となっています。この跡地については、防災拠点としてのオープンスペース、子育て関連施設として活用することが確認され、昨年7月に設立された「志茂まちづくり協議会」を中心に、具体的な整備・活用計画がすすめられています。私も、一会員として協議会に参加させていただいておりますが、この間の話し合いでは、体育館や校庭の暫定利用についてのルールが決められ、利用団体のみなさんによる自主的な管理運営がスタートしています。また、志茂子ども交流館建設についての説明がおこなわれ、次回の協議会では防災広場の整備が議題とされるなど、跡地の具体的な姿も浮かび上がってくる段階に入りました。

一方、街の声はというと、跡地についての関心は高いのですが、何になるかは知らない人が圧倒的に多いように思います。私の経験でも、周辺のお宅を訪ね歩くたびに「あそこには何が建つの?」と聞かれることがたびたびでした。2ヵ月に1回ほど開かれているまちづくり協議会に参加すれば、それなりの進行状況もわかり意見も言えるのですが、残念ながら毎回の参加者は20~30人前後と決して多いとはいえません。

防災広場の整備や子ども交流館の建設は、周辺住民のみなさんにとっても大きな関わりのある事業です。まさに具体化にすすみゆこうというこの時期に、できうる限り地元の声を聞き、生かしてゆくことが大切だと考えます。私は協議会のなかで、「跡地整備にあたっては、住民の声を反映させる場を保障してほしい」と要望してきましたが、区側の答えは、志茂小跡地問題のワークショップの開催を検討するなどでした。

そこで、区長に質問します。

志茂小学校の跡地整備をすすめるにあたっては、住民の意見を十分に反映させるシステムが不可欠だと思いますが、いかがですか。明確な答弁を求めます。

以上をもって、私の質問といたします。ご清聴、ありがとうございました。

区の答弁

志茂小学校跡地整備と住民意見の反映についてですが、小学校跡地は平成20年以降、(仮称)志茂子ども交流館、防災広場整備を主体に、また、敷地に隣接する区道は、主要生活道路として拡幅整備する予定です。

志茂地区では、学校跡地が区域の中心となる志茂4・5丁目で、平成18年度に密集事業に着手し、「志茂まちづくり協議会」を設立して地域まちづくりの話し合いを進めています。

この活動状況や開催日程などは、協議会ニュースを発行し、町会を通じて回覧配布するとともに、隣接する町会の掲示板での情報提供、またホームページにも公開し、周知を図っています。今後とも、まちづくり協議会をはじめ、地域のみなさまと十分な意見交換ができるよう、取り組んでまいります。