2008年3月21日
2008年第1回定例会 2008年度予算に対する反対討論
私は、日本共産党北区議員団を代表して、2008年度東京都北区一般会計予算ならびに国民健康保険事業会計予算、介護保険会計予算、後期高齢者医療会計予算の各予算案に反対の立場から討論を行います。
対応能力を失っている福田自公内閣
年金記録の照合、日銀総裁人事、道路特定財源――どの問題でも対応が後手にまわり、「何をやろうとしているのかわからない」といわれる福田自公内閣の支持率は、最新のマスコミ調査でも30%前後と、安倍前政権時にもみられなかった急落が続き、まさに「危険水域」に入っています。
その背景には、大企業や資産家には空前の大もうけを保障しながら、国民には増税や負担を強要し、貧困と格差を広げてきた「構造改革」路線にしがみつく姿勢があります。「企業が栄えれば、めぐりめぐって家計に波及し、国民生活がよくなる」という大企業中心のシナリオは破たんし、政府自身も「家計への波及が遅れている」と認めざるを得なくなっています。小泉内閣の「骨太の方針」以来、社会保障費を毎年2200億円も削減するとした暮らし直撃の路線はすでに限界を超え、「経済政策を『改革』する時」(「日経」2月19日付)など、経済の軸足を大企業から家計へ移せという主張が国民の声となっています。
さらにイージス艦衝突事故では、政府・防衛省の軍事優先、隠蔽体質だけが際立ち、国民の安全を守るどころか、アメリカいいなりに戦争協力へつき進もうとする自衛隊の危険な本質が浮きぼりになりました。
石原「ワンマン」都政のほころび
東京都政をめぐっては、高い人気を背景に「トップダウン」、「ワンマン」都政をおしすすめてきた石原知事のほころびが、ここにきて一気に噴き出しています。オリンピック招致問題では、特別予算まで組んでシンボルマークつきのポスター・のぼりを都内各地に設置させていますが、都民の支持は6割そこそこ。「笛吹けど踊らず」という裏には、9兆円という莫大な資金を投入する都民の税金のムダづかい、「本音は大型開発」という計画への批判があります。さらに破たん状況が明らかな新銀行東京をめぐっては、初期投資の1000億円に加え、400億円もの税金を追加投入しようという強引なやり方に、都民の怒りが集中しています。東京都は新銀行東京からの400億円の増資要請について、まともな検討もせず半日で即決していました。発案から設立、運営にまで深くかかわってきた石原知事自身の責任が問われている問題であり、「旧経営陣のせい」ではすまされません。
建設的提案で、くらし最優先の区政めざす日本共産党北区議員団
こうしたもとで、日本共産党北区議員団は、区民のくらしを最優先する区政をめざし、4つの柱、337項目からなる2008年度予算編成に関する要望書を北区に提出し、その実現を求めてきました。新年度予算において、学力パワーアップ事業、妊婦健診の公費負担の拡充、リニューアルされる赤羽しごとコーナーを活用した就労支援の強化、ワンルームマンション規制条例の制定などが盛り込まれたことは評価するものです。しかし、以下に述べる4点の理由から一般会計予算に反対します。
「貧困と格差」に具体的施策なし
1点目の理由は、貧困と格差に苦しむ区民に手を差しのべる具体的な施策が講じられていないことです。
区は、来年度予算について「健全財政を堅持しつつ、意欲的に課題解決に取り組んだ積極予算」と評していますが、総額は1300億円を超え、積立金は過去最高に迫る345億円に達しています。「危機的状況を脱した」とのべる通り、区財政が安定的な基盤を持つにいたっているいま、区に求められるのは、こうした財源を活かして区民のくらしを応援する施策に大胆にふみだすことではないでしょうか。
ところが区長の施政方針では、依然として「貧困と格差」について一言も言及されないばかりか、「低所得者」「福祉」という言葉まで消え去っています。国の税制改悪のもとで、収入階層300万円以下の区民が増加しており、貧困化の傾向は明らかです。「区民の目線」を強調しながら、目の前の現実さえ見えていないのではないかと疑わざるをえません。
わが会派は、この間、原油や物価の高騰が続くなかで低所得者に対する「福祉灯油」の実現を申し入れてきました。また、本会議質問や予算特別委員会のなかでも、障害者自立支援法の「応益負担」撤回とさらなる施策の充実、区独自の福祉ヘルパー制度の創設、ワーキングプア世帯や「ネットカフェ難民」への経済的支援など、貧困と格差に苦しむ区民の痛みをやらわげる施策を具体的に求めてきました。しかし、区は「国や都、他の自治体の動向や推移を見守る」というだけで、積極的なくらし応援策にのりだそうとしないばかりか、ホームヘルプサービス経過措置費を打ち切ろうなどという姿勢に終始しています。
都営住宅の使用承継制度変更問題では、入居者をはじめとする都民の声と運動で高齢者、障害者の範囲を拡大する一定の改善が図られました。わが会派は、制度の変更自体の撤回とともに、入居基準・家賃の見直しをしないよう都に求めよと迫りましたが、区の答弁は「考えていない」と冷たいものでした。
区民への増税と負担増、「行政改革」の名のもとでの人件費削減によって確保した財源を、自治体本来の仕事である区民福祉の向上にふりむけず、さらに積立金としてためこもうとする姿勢は、認められるものではありません。
官製ワーキングプア生み出す「経営改革プラン」
反対理由の2点目は、正規職員から非常勤・臨時職員へのシフト、業務委託や指定管理者制度など「外部化」によって官製ワーキングプアを生み出すとともに、自治体本来の区民サービスの質を低下させる「経営改革プラン」継続の姿勢です。
行政の効率化をはかることは重要ですが、公が果たすべき大切な仕事を放棄し、削ってはならないところまで削ることは誤りです。ましてや、区の対応によってワーキングプアを生み出すような経営改革が、果たして「改革」に値するのかどうか、検証が必要です。
この点で指摘したい問題の1つは、非正規職員の増大です。わが党の代表質問でも指摘したように、今年度、北区で働く職員のうち正規は2637人、非常勤・臨時職員は1440人、実に3人に1人が5年の雇い止めや賃金格差など待遇面でも大きな格差がある非正規職員です。いま、民間でも正規と非正規の均等待遇を求める動きが大きく広がっています。先だっても、雑貨専門大手の「ロフト」が全パートを正社員化すると発表しました。偽装請負など厳しい批判にさらされてきたキャノンも、ついに製造現場で働く1万2000人の派遣を解消する方針に転換すると伝えられています。もともと正社員をパート、アルバイト、派遣、請負など非正規へと置き換える動きは、自民・公明政権がすすめた1999年の労働者派遣法の改悪で、それまで専門業種に限定していた派遣対象を原則自由にしたことに端を発しています。その後も労働法制の改悪がくりかえされ、ゆきすぎた規制緩和で究極のワーキングプア、「日雇い派遣」を大量生産する社会が生み出されるまでになりました。いまや「労働者派遣法を改正し、『日雇い派遣』の禁止を」は、党派をこえた要求となっています。こうした流れのなかで、北区でも非正規職員の待遇について、来年度から一定の改善を図るとしていることは評価に値しますが、さらにふみこんだ抜本的な改善が求められます。労働者派遣法改正に向けても「推移を見守る」としかのべない区の姿勢は、きわめて消極的です。
2つ目に指摘したい問題は、指定管理者制度についてです。端的に4つの問題点を指摘します。
第1に、区は「外部化によって効率をはかる」としていますが、そもそも公共サービスの多くは人件費に大きな比重があり、「経費の削減」と「サービス向上」の両立は成り立ちえないものであります。そのしわよせは人件費の削減、長時間・過密労働の強要など労働条件の悪化に向かわざるを得ません。実際に、指定管理者へと移行する施設では、雇う職員の数を大幅に減らしたり、常勤から非常勤へとシフトする動きが強まっています。
第2に、人件費については、指定管理者へ移行する際におおよその額がしめされるものの、2年目以降は区としてまったく把握ができなくなってしまうことです。いわば人件費は完全にブラックボックスです。区が支払う委託料がどれくらい人件費に使われるかわからないということは、どれだけ人件費が削減されても区は関知しないということです。こうした無責任な姿勢をあらため、少なくとも、委託先の法人に対し、人件費や労働環境について定期的な報告をさせるよう改善するべきです。
第3に、株式会社の参入による営利主義の持ち込みです。東京都が保育への企業参入を拡大するために導入した認証保育所の現場では、職員の架空申請など不正疑惑が発覚、保育内容や施設整備にも重大な問題点があることが、わが党都議団の調査で明らかになりました。問題となった荒川区の「じゃんぐる保育園」は本日、東京で初めて認証保育所の資格取り消し処分を受けることになりましたが、この保育園を経営する株式会社・日本保育支援協会の三谷忠士代表取締役は、自らの著書『誰も教えてくれない保育所ビジネスの始め方・儲け方』でこうのべています。「儲けるという発想がなければ…認可外保育所はやっていけません」「認可外保育所の経営者は、まず『保育は福祉』という考え方をあらためて、『保育はサービス業』という考えをもつようにすることが必要です」「開園に当たって募集するスタッフは…あまり厚遇で迎え入れるのは園の経営を圧迫することにつながります」。始めから終わりまで、保育園経営でいかに儲けるかの指南書であります。わが会派が昨年まとめた区民アンケートでは、保育園や児童館の運営について、区や実績ある社会福祉法人にまかせるべきとの声が約8割をしめ、「株式会社でもかまわない」と答えたのはわずか1割でした。区も、こうした声に配慮し、保育園の場合は応募資格に条件をつけて株式会社をはじめから排除しています。一方、児童館ではこうした制限をつけていません。そのため、すでに1館で株式会社が参入しているほか、再来年度から指定管理者導入予定の十条台児童館では、応募した6法人すべてが株式会社という状況です。子ども育成の場に、営利主義を持ち込むことは許されません。児童館についても、応募の段階から株式会社を参入させない対応が必要であることを強く求めておきます。
第4に、専門性が求められる部門では、指定管理者への移行で、これまで北区が研鑽と経験によって積み上げてきた財産を失いかねないという危険があります。飛鳥山博物館をめぐっては、学芸員のあり方もふくめ指定管理者への移行が検討継続となっているということも予算特別委員会で紹介されました。
来年度までに指定管理者への移行が決まっている施設は98にのぼります。一路「外部化」という「経営改革プラン」のあり方について、公的責任を守りぬくという立場からこれを見直すことこそ必要だと指摘するものです。
医療大改悪を「避けて通れない」と容認する姿勢は認められない
反対理由の3点目は、後期高齢者医療制度をはじめ、国の進める医療改悪に対し、「避けて通れない」と肯定している姿勢です。
この4月から実施が予定されている後期高齢者医療制度は、「医療費抑制」の名のもとに高齢者を差別し、さらなる負担を国民におしつける医療制度の大改悪です。政府は、75歳以上を別建ての医療保険に強制加入させる理由について、「後期高齢者」は病気になりやすく認知症が出始め、いずれ避けることができない死を迎えるなど心身の特性をもっているとし、今後増大する医療費の適正化が必要とのべています。とどのつまりは、先が長くないお年寄りにはなるべく医療費をかけないようにしようということではありませんか。
国会で、わが党の小池晃議員が「なぜ75歳以上を健診の対象から外すのか」と質問したのに対し、舛添厚生労働大臣は「予防効果が特定健診でどこまであるか…本人の"残存能力"…をいかにするか(が問題だ)」と平然とのべました。お年寄りをつかまえて、"残存能力"とはひどい話ですが、高齢者のみなさんに「早く死ねということか」「この国に生まれてこなければよかった」などといわせる社会に未来はありません。
これまでも自公政権のもとで医療費の窓口負担の引き上げ、病院のベッドや医師数の抑制、診療報酬の引き下げなど無慈悲な医療費抑制策がすすめられてきましたが、後期高齢者医療制度の導入はその目玉ともいえるものです。政府は、2025年までに8兆円の医療費を削減するとし、そのうち5兆円の削減を後期高齢者で見込んでいます。
あまりにひどい内容に、全国で3割近くの自治体が中止・見直しを求める意見書をあげ、政府は制度の一部「凍結」を打ち出さざるをえなくなっています。岐阜県・大垣市では後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書を、公明党をのぞく全会派の賛成で可決。この意見書を提案した自民クラブは、「後期高齢者医療制度に断固反対」「国に対し制度の廃止を強力に要望してまいります」というチラシを配布しています。国会では、わが党をふくむ野党4党が「後期高齢者医療制度廃止法案」を提出しており、与野党を超えて中止・見直しを求める声が広がっています。
わが会派は、後期高齢者医療制度をふくむ医療「改革」の撤回を国に求めるよう迫りましたが、区長の答弁は「医療制度の改革は必要」と、国の政策を容認するものでした。こうした態度は断じて認められません。
いま北区では、区内最大規模の350床を有していた東十条病院が患者、住民らの願いに反して強引に廃院を決定し、区西北部二次医療圏内のベッド数は基準に照らし600以上も足りないという状況です。社会保険庁解体を前に今年10月以降、保有主体を失う東京北社会保険病院、独立行政法人の整理統合で委譲方針が打ち出されている印刷局東京病院、三菱商事にPFIで運営をまかせる契約を結んだ都立駒込病院など、北区周辺の2次医療機能そのものを揺るがす事態も広がっています。予算特別委員会の中で、区は副区長を責任者とする医療対策委員会をたちあげたことを明らかにしましたが、いまこそ公的病院機能を守り、区民の医療不安にこたえる区の積極的な対応が求められています。
全国に例を見ない異常な介護保険運営はいまだ改善されず
反対理由の4点目は、この3年間に84億円も介護給付費を余らせた異常な介護保険運営に対し、抜本的な改善策がしめされていないことです。
これまでわが会派は、北区が独自の厳しい認定基準を持ち込んで、介護認定の意図的なランク下げをおこなってきたこと、認定調査の場において他の自治体では当然のように認めているケアマネージャーの立会いを認めていないことを厳しく批判してきました。区は認定調査について「一定の改善が図られている」とのべていますが、平均要介護度は23区内でも依然最下位クラスです。改善の成果がほとんどあらわれていないことは、介護給付費の執行残をみても明瞭です。一昨年度は27億円、昨年度は24億円、そして今年度は33億円、あわせて3年間で84億円もの使い残しが生じています。介護保険事業計画に照らして、これだけの剰余が出ている自治体が他に見当たらないことは、区も認めています。まさに異常の極みであります。
06年には予防介護が導入されましたが、北区ではランク下げの影響で、最下位の「要支援1」が事業計画値をはるかに超えて突出しています。本来介護を必要としている人が、必要なサービスを受けられないために、自費を投入してヘルパーをお願いするなどのケースも常態化しています。84億円も使い残しておいて「そういう方がいれば、お気の毒」では、区民は声も出ません。経済的負担から、自腹をきれない区民はさらに救われません。これではいったい何のための介護保険か、と問わざるをえないではありませんか。保険者である花川区長の責任が問われる問題であることを、厳しく指摘するものです。
来年度は介護保険第3期事業計画の最終年度です。これまで使い残し、積み立ててきた基金を活用して、すみやかに保険料を引き下げるよう求めます。また、このままの事態を放置すれば、事業計画全体で給付費の使い残しは100億円の規模に達してしまいます。独自基準の撤廃をふくむ認定調査の抜本的改善をはかり、事業計画にそくした介護サービスを提供するよう要求します。加えて、介護福祉用具経過措置費は廃止でなく、継続するよう求めておきます。
以上のべた理由から北区一般会計予算に反対します。
庁舎建設、教育問題について
なお予算審議でも論議となった庁舎建設と教育の問題について、わが会派の立場を明らかにしておきます。
庁舎については、耐震性をしめすIS値が0.3~0.6の箇所があると初めて報告されました。まず、この数字が正確なものならば、耐震補強工事がすぐにでも必要です。危険回避のための緊急対応を求めるものです。その上で、大規模な財源を必要とする庁舎建設については、住民合意が前提でなければならないと考えます。耐震性に不安があるとわかっていながら、10数年間にわたってなぜ事態を放置してきたのか、いまになって急に10億円を積み立てるとする理由はなにかなど、区としての説明責任が果たされているとは到底思えません。議会や区民のなかでの議論が十分尽くされていないなかで、10億円の基金を先行して積み立てる姿勢は改めるべきと指摘しておきます。
次に、教育の問題では、学力パワーアップ事業は評価しつつ、本来的にはわが会派がくりかえし主張してきた30人学級こそ、すみやかに実現すべき方向だと考えます。同時に、特別支援教育やいじめ・不登校・学級崩壊対策についても必要な人員を補充するよう求めます。加えて、学校改築にあたっては、国に対して必要な補助金をつけるよう強く求めることを要望しておきます。
特別会計への態度
国民健康保険会計予算については、低所得者直撃の均等割値上げがおこなわれたこと、賦課限度額が6万円引き上げとなったことから反対します。介護保険特別会計予算については先に述べたとおり、介護保険事業計画と大きくかい離した異常な保険運営から反対します。後期高齢者医療会計予算については、保険料負担増と医療内容の低下による差別医療制度の創設から反対します。
用地特別会計予算、中小企業従業員退職金等共済事業会計予算、老人保険会計予算には賛成することを申し添え、討論を終わります。
ご清聴、ありがとうございました。