2009年10月9日
2009年第3回定例会 2008年度決算に対する反対討論
私は、日本共産党北区議員団を代表して、2008年度東京都北区一般会計決算ならびに国民健康保険事業会計、介護保険会計、後期高齢者医療会計の各決算の認定に反対の立場から討論を行います。
総選挙で問われたものは何か
今議会の直前、8月30日におこなわれた総選挙は、自民・公明政権が退場し、民主党中心の新しい政権が誕生するという歴史的な結果となりました。私たちは、日本政治にとって新しい歴史の一ページを開くこととなったこの結果を、心から歓迎するものです。この選挙戦で国民が審判を下したのは、麻生政権の下での個々の政策の失敗や、首相・閣僚などの個人的資質などではなく、自公政治そのものに対してでした。10年間続いた自公政治は、日本に何をもたらしたでしょうか。
国内政治では、弱肉強食の「構造改革」路線によって、貧困と格差が急速に拡大しました。年収200万円以下の「働く貧困層」は1000万人を超えています。医療、年金、介護などの社会保障制度は改悪につぐ改悪で、ボロボロにされてきました。「受益者負担」「自己責任」の名で国民に負担を強いる一方で、ごく一握りの大企業だけが巨額のもうけをあげる異常な格差社会が生み出されました。
外交では、何かといえば軍事で事を構えることしか考えない軍事同盟絶対の政治がおしすすめられました。アメリカのオバマ大統領が「核兵器のない世界」をよびかけ、アジアに平和友好協力の波が大きく広がるなど、世界が様変わりしている中で、イラク戦争の失敗から教訓を学ぼうとせず、今なお自衛隊海外派兵など軍事一辺倒の対応しかできない日本外交のあり方は、完全に時代遅れとなっています。
今回の選挙で、国民が「ノー」を突きつけたのは、まさに自公政権がすすめてきたこうした政治、外交路線そのものでした。今、民主党政権のもとで、後期高齢者医療制度や障害者自立支援法の廃止、八ツ場ダムに象徴されるムダな公共事業の見直し、日米核密約の調査、温室効果ガス25%削減の国際公約など、これまでの自公政権ではできなかった新しい政策が打ち出されつつあり、多くの国民がこれらを歓迎しています。とりわけ、長妻厚生労働大臣が全国の厚生年金・社会保険病院を「公的病院として存続させる」と言明したことは、北区民があげて要請してきた東京北社会保険病院の存続・拡充の実現に、大きな希望を開くものです。
日本共産党は新しい国会で、国民の願いにそった政策には賛成・協力するとともに、よりよい政策を積極的に提案する、悪い政策にはきっぱり反対し問題点を正すという「建設的野党」の立場で、いっそう奮闘する決意です。
都政でも、石原知事がトップダウンですすめてきた福祉切り捨て、大型開発推進の政治に、厳しい批判の目が向けられています。150億円もの税金を投入しながら、都民の心すらつかめなかった東京オリンピック招致が失敗に終わったのは当然の結果です。都議選での審判をうけた都議会では、わが党や民主党などの提案で、新銀行東京、築地市場の豊洲移転に関する特別委員会が設置されるなど、新たな変化が生まれ始めています。
こうした情勢をうけて、日本共産党北区議員団は、まちがった国の政治を正すために声をあげ行動するとともに、区民のくらしと雇用、中小企業の営業を守る区政を実現するために全力をあげてきました。2008年度一般会計決算の認定については、妊婦健診の公費負担引き上げ、赤羽しごとコーナーの拡充、学力パワーアップ事業、ワンルームマンション規制条例の制定、中央図書館や志茂子ども交流館の建設などは評価できるものの、以下の理由から反対を表明するものです。
貧困と格差に苦しむ区民にあたたかい手を差しのべようとしない姿勢
反対理由の第1は、貧困と格差に苦しむ区民にあたたかい手を差しのべようとしない姿勢です。
小泉内閣以来の新自由主義「構造改革」路線の下で毎年2200億円の社会保障予算が削減され、医療、介護、年金など、本来国民の暮らしを守るべき社会保障制度が、逆に国民に牙をむき、暮らしを破壊する制度に変質させられてきました。2008年度は、悪名高き後期高齢者医療制度が、お年寄りをはじめ圧倒的多数の国民の反対を押し切って強行された年となりました。75歳で線引きし、際限のない保険料引き上げと差別医療の導入で、厚生労働省さえ「姥捨て山」と認めざるを得なかったこの制度に対し、日本共産党は断固として廃止するよう国に働きかけよと求めてきました。しかし、区は「制度自体は必要なもの」と冷たい答弁を繰り返し、粛々と導入をすすめました。
医療だけではありません。第3期計画の終了年度となった介護保険では、「ランク下げ」を引き起こす北区独自の厳しい認定やケアマネージャーの立ち会いを拒否する姿勢に抜本的改善が見られませんでした。その結果、私たちが警告した通り、3年間で給付費を当初計画に比べ100億円も余らせる結果となりました。
雇用についてはどうでしょうか。昨年秋、アメリカ発の経済危機が、わが国にも深刻な景気悪化を及ぼし、首都東京のど真ん中に「年越し派遣村」が出現するという事態に立ちいたりました。日本共産党は、財界・大企業に対し「派遣切り」をやめるよう国が指導することや、労働者派遣法を1999年の原則自由化以前に戻す抜本改正を迫ることなどを具体的に求めてきましたが、区の姿勢は「国の反応を見守りつつ、必要に応じて国や都に要望を行う」という、極めて消極的なものでした。年度末に補正予算を組み、緊急の直接雇用に踏み出したことは評価いたしますが、200人の募集に対し10人の採用と、残念な結果に終わりました。ここからしっかりと教訓を引き出し、次につながる施策の展開を期待します。
これほどまでに区民の暮らしが深刻になっている時に、花川区長の口からは、いまだ貧困と格差の打開にむけた断固たる決意を聞くことができません。区民の苦しみに心をよせ、あたたかい手をさしのべる区政への転換を求めます。
「構造改革」路線にしがみつく姿勢
反対理由の第2は、国民から見放された「構造改革」路線にしがみつき、「経営改革プラン」の撤回をかたくなに拒む姿勢です。
自公政権がすすめた「構造改革」路線にそって、「官から民へ」の掛け声で、地方自治体にも市場原理を導きいれる理不尽な行革路線が押しつけられてきました。北区では、これをいち早く具体化した「経営改革プラン」を錦の御旗に、一路外部化路線が推進されてきました。その中心をなす指定管理者制度の導入は、2008年度までに109施設と23区内でも突出しており、今年度以降もさらに増やす計画です。
日本共産党は当初から、公的施設を丸投げする危険をはらんだ制度そのものに否定的立場をとってきました。本格的導入から4年目を迎えている現在、「コストの削減とサービスの向上」という口実は破たんし、指定管理者制度が広げてきた矛盾はいよいよ看過できないところまできています。
その1つは、「コストの削減」がもたらす官製ワーキングプアの拡大です。決算審査で区は、指定管理者制度の導入によって、これまでに7億9000万円の効果がもたらされたとのべました。この効果額のうち、圧倒的な部分は人件費の削減によるものです。一例をあげましょう。来年度から導入予定の袋児童館では、常勤と非常勤の合計職員数を10人から13人に増やす一方、3年間の人件費を1億8600万円から1億3900万円へと引き下げる計画です。職員は3割増、人件費は4分の3――これで、果たしてまともな仕事が保障されるでしょうか。私たちの会派は、指定管理者となった施設を直接訪問し、賃金をはじめ労働条件についても詳しく調査をおこなう中で、指定管理をとるために労働条件を厳しくせざるを得ない実態や、正規職員と非正規職員に激しい格差をつけている事例なども目にしてきました。今や全職員の約4割を占める区の非正規職員の待遇改善も急がれていますが、指定管理者で働く多くの労働者は、それすら下回る労働環境におかれていいます。区が誇る「効果」の裏で、人件費切り下げによる官製ワーキングプアが生み出されて続けていることに根本的な反省が必要です。
2つに、「サービスの向上」をうたいながら、コンプライアンスもモラルも欠如した民間法人の参入を許してきたことです。2008年度は、この点でも重大な問題が浮き彫りになった年でした。今年度から十条台パノラマプールなどを運営している株式会社サンアメニティは、区内の別の施設で公金の着服、プールの水漏れ事故、契約違反で雇った未成年の社員による傷害事件という3件もの不祥事を起こしていたことが事前に明らかになっていました。これだけ問題の多い企業を指定管理者に選定するにあたり、賛成した会派からの提案で「コンプライアンス」の付帯決議がつけられましたが、本来、企業にとって当たり前の「法令遵守」をわざわざ評価項目に書き加えなければならないところに、指定管理者制度の危うさがあると言わざるを得ません。また昨年度、1年間で常勤保育士の半数が入れ替わるという異常な大量退職が問題となった浮間東保育園では、わが党の調査で、これまでの保育方針を勝手に変更したり、パワーハラスメントまがいの嫌がらせが横行している事実が発覚、すべての職員が辞令により「1年契約」と通告されているなど雇用関連法違反の疑いも判明しました。コミュニケーションが命の保育施設で、「コミュニケーション不足」によって大量退職などの問題が生まれるというのはまさに致命傷であり、公が責任を持つべき子育て施設を民間に任せることで生まれる弊害の大きさを痛感させられるものでした。「サービス向上」どころか、コンプライアンスもモラルも欠如した民間法人の参入を許すことになったのは、指定管理者制度そのものに欠陥があるからであり、今後は気をつければよいという態度ではすまされません。また、「問題はあったが改善されたからよいではないか」との意見は、事の本質を直視しないばかりか、区民への影響をあまりに軽く見る反省のない立場からのものです。日本共産党は、指定管理者制度の検証と抜本的見直しを求めてきましたが、区はかたくなにこれを拒み、一路推進の立場にたってきました。この姿勢は断じて認められるものではありません。
現在、基本計画とあわせ、「経営改革プラン」の改定作業がすすめられています。総選挙で国民は、貧困と格差をひどくした「構造改革」路線にきっぱりと審判を下しました。この際、「構造改革」路線の北区版である「経営改革プラン」は、潔く撤回すべきであることを厳しく求めておきます。
なお、これに関連し、今決算審査の中で新たに発覚した自転車駐輪業務委託の問題について一言しておきます。北区から放置自転車の移送と管理の事業委託を受けている株式会社東宝クリーンサービスで、契約違反の公金管理をおこなっていることが、内部告発によって明らかになりました。区が調査にのりだした矢先、この会社は経営難を理由に突如業務委託を辞退、会社自身も破産手続きに入ってしまいました。さらに重大なのは、この会社で働く労働者に支払われる賃金が時給770円、交通費すら支給されておらず、実質的には最低賃金以下の水準で働かされていた上、2ヵ月分の賃金が今なお未払いとなっていることです。この会社は、一昨年の時点ですでに16億円もの負債を抱えていたとのことですが、こうした実態を事前に把握することなく業務を委託した区の責任が厳しく問われます。
千葉県・野田市では先月の29日、全国で初めて「公契約条例」が制定されました。官製ワーキングプアの根絶にむけて、北区でも「公契約条例」を一刻も早く実現することが求められています。
庁舎問題で区民意見をないがしろにする姿勢
反対理由の第3は、「区民とともに」といいながら、庁舎改築問題で区民意見をないがしろにする姿勢です。
2008年度は庁舎改築のために10億円を基金に積み立てました。今年度はさらに10億円を積み増し、庁内の検討組織である「庁舎のあり方専門委員会」と議会の「庁舎のあり方検討特別委員会」が始動して、庁舎問題も本格的な検討に移っています。日本共産党はこれまで、庁舎問題について、①庁舎の耐震性に問題があることは明白であり、暫定的な耐震補強工事をすぐにでもおこなうべきこと、②庁舎改築は多額の費用を要するプロジェクトであり、将来的な庁舎のあり方については区民合意を大前提に慎重かつ十分な論議が必要であること、③区がA案からD案まで4つの案を示しながら、あらかじめ1つの案だけに丸印をつけて誘導するようなやり方は戒めるべきこと、という立場を表明してきました。
しかし、この間の区の検討のすすめ方には、率直にいって大きな疑問を持たざるを得ません。その1つは、区民アンケートの実施方法です。区は7月25日付「北区ニュース」で区民に初めて庁舎の実態を明らかにし、同時にアンケートで区民意見を求めました。ところが、わずか1ヵ月で募集を締め切り、寄せられた意見は区民から537件、職員からは139件にとどまりました。しかも、締め切った翌日には専門委員会を開催し、4案のうちから建て替えとなるC・D案に絞り込みをおこなっています。区民の意見は、専門委員会の結論を裏づける「参考」程度とされ、アンケートの最終集計がまとまった頃には専門委員会としてどの案を選択すべきかについて、早々と結論を下していました。
問題点の2つは、専門委員会と特別委員会の関係です。今年度に入り専門委員会は4回、特別委員会は3回開催されていますが、専門委員会で議論されたことが、約1ヵ月遅れて特別委員会に報告されるという運営が繰り返されています。直前に開かれた専門委員会の議事録もまとまらないうちに特別委員会が招集されるためです。これでは、議会の側は、専門委員会が決めた結論を事後承認するだけの役割しか与えられていないことになってしまいます。
区民や議会を「置いてきぼり」にし、専門委員会だけが決めた結論を押しつけるような進め方は認められません。庁舎改築にあたっては、徹底した情報公開と能動的な意見の集約で、区民合意の形成に全力をあげるよう改善を求めるものです。
公的住宅の新規建設に消極的な姿勢
反対理由の第4は、公的住宅の新規建設に消極的な姿勢です。昨年末以降、大企業による「派遣切り」などで、仕事のみならず住む場所さえ失う労働者が急増しています。また、生活保護を受給している高齢者などをターゲットにした一部の無届け有料老人ホームや無料低額宿泊所など「貧困ビジネス」の問題が社会問題になっています。いまほど低家賃で提供できる都営住宅、区営住宅など公的住宅の新規建設が求められている時はありません。ところが区は、これらの住宅建設に不熱心な態度を続けるばかりか、来年4月からの区営住宅家賃値上げを本格的に強行しようとしています。こうした姿勢は認められません。
少人数学級にふみださない姿勢
反対理由の第5は、いまだに少人数学級にふみだそうとしない消極的な姿勢です。すでに少人数学級を実施していないのは、全国で東京都だけとなっていますが、その東京でも新たな変化が生まれています。日本共産党は、先の選挙で民主党や自民党も少人数学級実施を公約にかかげるようになったことをふまえ、都議会において30人学級をはじめとした少人数学級にふみきるよう迫りました。これに対し都の教育長は「学級編成のあり方について適切に判断をしてまいります」と従来にない答弁をおこないました。いよいよ東京でも少人数学級実現にむけた機運が高まっている時に、区はいまだ実施に後ろ向きです。1日も早く実施計画をしめすべきです。
以上のべた理由から北区一般会計決算の認定に反対します。
「北区平和都市宣言」を「非核」宣言に
なお、本決算審査において、私たち日本共産党を含む複数の会派から「北区平和都市宣言」を「北区非核平和都市宣言」にするよう要望が出されました。来年開催されるNPT(核不拡散条約)再検討会議に向けて、全世界から核廃絶の世論と運動が沸き起こっています。9月24日に開かれた国連安保理首脳級特別会合では、「核兵器のない世界」をめざすとする決議を全会一致で採択するという画期的な成果も生まれています。唯一の被爆国として、また日本国憲法第9条を持つ国として、日本の役割はこれまで以上に重要となることは間違いありません。こうした情勢をうけて、草の根の自治体から非核の世論と運動を大きく広げてゆくために、すみやかに北区の平和都市宣言を「非核」宣言とするよう強く要望するものです。
特別会計への態度
次に、特別会計決算の認定についてです。国民健康保険事業会計決算については、低所得者を直撃する保険料値上げがおこなわれたことから反対します。介護保険会計決算については先に述べたとおり、事業計画と大きくかい離した異常な運営などから反対します。後期高齢者医療会計決算については、保険料負担増と差別医療の害悪が明らかになった制度そのものを認めることができず、すみやかな廃止を求める立場から反対します。
用地特別会計、中小企業従業員退職金等共済事業会計、老人保健会計の各決算の認定には賛成することを申し添え、討論を終わります。
ご清聴、ありがとうございました。