プロフィール

2012年3月26日

2012年第1回定例会 2012年度予算に対する反対討論

 

私は、日本共産党北区議員団を代表して、2012年度東京都北区一般会計予算ならびに国民健康保険事業会計、介護保険会計、後期高齢者医療会計の各予算に反対の立場から討論をおこないます。

多くの命を奪った東日本大震災から1年が経過しました。犠牲となられた方がたに、あらためて心からのお悔やみを申し上げます。

被災地では、いまなお仮設住宅などで避難生活を送る被災者が34万人にのぼり、一日も早い住宅と生業の再建が待たれています。福島第一原発の事故は、いまだ収束のメドすらたたず、後手後手にまわっている政府の対応に、いらだちが募っています。

問われているのは政治の責任です。日本共産党は、一刻も早く被災地の復旧・復興をなしとげるとともに、原発のない日本を実現するために引き続き全力でとりくむ決意を表明するものです。

さて、今回の予算審議に先立つ昨年11月、日本共産党北区議員団は花川区長に、予算編成に関する要望書を提出いたしました。区内で活動するさまざまな団体から寄せられた生の声を、5つの柱412項目の要求としてまとめたものです。新年度予算に盛り込まれた木造民間住宅耐震化促進事業の拡充、防災対策の充実、さらなる待機児解消策、全高齢者実態把握調査に基づく見守り施策などは、切実な区民要望が反映されたものとして歓迎いたします。

しかしながら、以下に述べる4つの理由から、2012年度一般会計予算に反対するものです。

 

「社会保障と税の一体改革」に対し、国の動向を注視する態度にとどまっている姿勢

第1は、「社会保障と税の一体改革」に対し、国の動向を注視する態度にとどまっている姿勢です。

民主党の野田政権がすすめる「社会保障と税の一体改革」は、年金の切り下げや支給年齢の先送り、医療費の窓口負担増、公的保育を切りくずし保育現場を市場化・産業化する「子ども・子育て新システム」の導入など、社会保障制度を大改悪した上に、消費税率を現在の5%から10%へと倍に引き上げる計画です。これは、どこからみても「改革」には値しない、社会保障切り下げと大増税の「一体改悪」にほかなりません。

国民に中止を約束した大型開発を次々と復活させるなど、ムダづかいを続けたままの消費税大増税には一片の道理もありません。そればかりか、日本経済の長期低迷と世界経済危機、貧困と格差がかつてなく広がるもとでの大増税は、日本経済をどん底に突き落として税収を大きく減らし、財政破たんもさらにひどくすることは明らかです。区民の暮らしにもはかり知れない打撃を与える消費税大増税計画には、きっぱり反対を表明すべきではないでしょうか。

その一方で、国民の中には「将来の生活や日本の財政が心配」という声があります。これにこたえて日本共産党はこの2月、消費税増税に頼らずに社会保障を再生・拡充し、財政危機を打開するための提言を発表しました。社会保障の段階的な充実と、国民所得を増やし経済を内需主導で健全な成長の軌道にのせる民主的経済改革を一体に進めるこの方針の要は、「財源」といえばもっぱら消費税とする財界や民主党政権の主張を退け、「歳入」「歳出」の段階的な改革によって18~21兆円の社会保障財源を確保することにあります。

改革の第1段階では、小泉内閣以来の「構造改革」路線で大きく削られた社会保障を再生させます。その財源は、大型開発や軍事費、政党助成金などの税金のムダづかいを一掃し、富裕層・大企業優遇税制の見直し、新たな「富裕税」「為替投機課税」「環境税」などを導入して生み出します。これによって約12~15兆円が確保できます。

改革の第2段階では、ヨーロッパ並みの社会保障への抜本的拡充を進めます。その財源は、負担能力に応じた負担の原則にもとづき、累進課税を強化する所得税の税制改革によって生み出します。これによって、約6兆円が確保できます。

政治の姿勢を変えれば、消費税増税に頼らなくても社会保障拡充と財政再建の道は開かれる――わが党のこの提言に、いま立場を超えて各界から共感の声が寄せられています。

代表質問や予算審議を通じて、「社会保障と税の一体改革」の撤回を国に求めるべき、とするわが党の質問に、花川区長は「国会の場において、充分な議論が尽くされるものと考えております」と答弁しました。暮らしを襲う大増税計画を前に、これにきっぱりと反対する立場をとらず、拱手傍観する姿勢は認めることができません。

 

財調基金をゼロとする一方で、新庁舎や十条まちづくりの基金は「聖域」とする財政運営の「手法」

反対理由の第2は、財政調整基金をゼロとする一方で、新庁舎や十条まちづくりの基金は「聖域」とする財政運営の「手法」です。

今回の新年度予算編成にあたり、区は財調基金の残額約68億円を一般会計に投入し、なお足りない分の約8000万円を学校改築基金から借り入れるとした「手法」をとりました。私たちがあえて「手法」とよぶのは、現在の北区の財政状況ならば、わざわざ借り入れをしなくても済む予算が組めたはずなのに、あえて区がこの方法を選択したからです。そこには区の、あるねらいが見てとれます。

それは1つに、「区の財政が大変だ」というメッセージを内外に発することです。

予算が内示された直後、マスコミが「北区財政調整基金ゼロ 歳入不足68億円取り崩し」と報じ、衝撃が走りました。区民からは「貯金が底をつき、今後やっていけるのか」「北区は財政破たんするのか」という早合点した意見も聞かれたほどです。しかし、「財調基金ゼロ」というメッセージは、そうした誤解を生むだけのインパクトを十分持っているのです。

区の財政をどう見るのかは、予算審議でもひとつの焦点となりました。私たちは、論戦の中で「区の財政は大変だ」という見方に根拠がないことを明らかにしました。

――財調基金は見かけ上ゼロとなりますが、主要5基金の総額では依然として300億円の水準を保っています。

――さらに、5月に出納閉鎖をすれば、財調基金自体も上積みされることは、この間の経験が示しています。財調基金の年度末残高と出納閉鎖後のかい離、すなわち上積みされた金額は、2010年度が3億3000万円、2009年度が11億9000万円、2008年度が19億6000万円、2007年度が18億円となっています。

――財政を司る区担当者の見解も極めて冷静です。私たちの質疑に対し財政課長は「決算ベースでみて北区の財政は健全」と明言しました。

以上のことから、今後、歳入の見通しが不透明という要素はあっても、現時点で北区の財政が「大変」とは言い難い状況です。にもかかわらず、「財調基金ゼロ」のメッセージを発したのは、財政引き締めの「手法」ととられてもおかしくないではありませんか。

2つに、「構造改革」路線にもとづく北区の経営改革を合理化するねらいです。

「財政が大変」の次に来るのは、「だから経営改革が必要」という論法です。後で述べるように破たんが明らかな外部化路線を反省ぬきに推し進めるために、また庁内に向けてはさらなる職員定数削減、給与削減を押しつけるために、今回の財政「手法」を「効果」的に活用しています。

3つに、新庁舎や超高層の駅前開発など十条まちづくりを「聖域」とするねらいです。

予算審議の中でわが会派は、「8000万円が歳入不足となるなら、新庁舎と十条まちづくりに積み立てる20億円のうち、一部を削減すればよいのではないか」と提案しましたが、区はどうしても必要な基金であり削減はできない、との考えを示しました。しかし、毎年積み立ててきた十条まちづくりへの10億円を、今年度は財政上の判断から見送りました。2010年度には、当初予算には計上せず、財政の見通しがたった時点で補正計上しました。こうした前例もあるだけに、新年度1円たりとも削れないというのは理解に苦しみます。企画課長は、今後の財政運営が不透明とする中、「庁舎、十条といえども聖域とはしない」と発言しましたが、わざわざ学校改築基金から不足分を補うとした財政「手法」は、この2つの積立金を事実上「聖域」とするものです。

こうしたねらいを持った財政運営の「手法」はとるべきではありません。

なお、わが党は、積み立てた基金は必要に応じて区民の暮らしを支えるために活用すべきであることを繰り返し主張してきました。昨年の区議会議員選挙では、高齢化率が23区で1位となった北区で、高齢者一人あたりの予算が17位であることや、主要5基金の合計が過去最高の450億円に達したことを指摘し、「積立金は暮らし応援に」と政策を訴えました。その結果、今年度は90億円の財調基金を取り崩し、「長生きするなら北区が一番」の諸施策が充実できたことなどは、積極的に評価しています。今後も、必要な基金をふさわしく区民のために活用することを求めるものです。

 

指定管理者制度に対する無反省

反対理由の第3は、指定管理者制度に対する無反省です。

今議会が開会する直前に、区立浮間東保育園での新たな職員大量退職と、運営を任されている社会福祉法人宮原ハーモニーの指定管理者2期目継続意思撤回という事態が明らかになりました。年度末ぎりぎりに発覚したこともあって保護者の中からも心配の声があがり、6日に開かれた保護者説明会では予定時間を大幅に超える質疑が交わされたと聞いています。

健康福祉委員会や予算審議を通じて明らかになったのは、次の事実です。

1つに、現法人には区立保育園を運営するにふさわしい力量がないことです。

宮原ハーモニーは、指定管理の初年度にも職員18人が退職する事態となり、議会でも大きな問題となりました。4年目となる今年度も10人が辞め、4年間の通算で常勤職員が38人も退職したことになります。子どもに寄り添い、ともに成長してゆくことが求められる保育園で、保育士など職員が次々と職場を去ってゆくのは明らかに異常です。

私たちは、関係者からの内部告発や独自の調査によって、1年目から管理者によるパワーハラスメントが横行していた事実をつかみ、区もメンタルヘルスに関する退職者がいることを認めました。

区は法人に対し、大量退職という事態の改善を求めましたが、法人側は「退職は止められない。職員を管理できないのは私たちの力不足だ」と、継続辞退を表明してきたとのことです。こうした法人に、区立保育園の運営をまかせることはできません。

2つに、残り1年の任期となる2012年度については、区が直接の支援をしなければ、保育園としてのまともな運営ができないことです。

現在の園長と主任が年度末でともに退職となり、トップが総入れ替えとなることから、法人側の求めに応じ、区は副園長を派遣するとしました。また、再び大量退職などの事態が起きないよう、区として日常的なモニタリング体制を強化するとしています。わが会派としても、新年度の1年間を無事に、そしてよりよい保育の運営ができるよう、あらゆる協力をおこなってまいります。

これらの事実は、本来、公がおこなうべき区立保育園の運営を、民間法人に任せてしまうという指定管理者制度そのものの破たんをしめすものです。区は、数ある法人の中から最もふさわしい運営主体を選び、施設の運営を任せるとしていますが、非公開の選定委員会による現在の審査では、今回のように最もふさわしくない法人を選んでしまう危険があることは制度上、避けられないことです。議会としても、公開された審査結果の資料だけでは、責任をもったチェックができません。

さらに区は、これまで指定管理者制度の問題が指摘されるたび、モニタリング体制を強化すれば大丈夫だと説明してきました。しかし、宮原ハーモニーの件では、これまでわが会派が再三にわたって問題点を指摘してきたにも関わらず最悪の事態を招いたことで、モニタリングの効果自体が疑われることになりました。

ところが、区は今回の事態を一法人内部の問題として扱い、「指定管理者制度そのものには問題がない」との立場を表明。議会や保護者説明会で意見が上がっているさなかに、早々と次の指定管理者を公募する手続きに入ってしまいました。これではまた、同じことを繰り返さないとも限りません。6日の説明会では、保護者から「『箱が公立、中身は私立』という実験的な取り組みにより、安価な予算で運営を任せようとしたため、職員の勤務状況が良くなかったということにも原因があったのではないか」との指摘がありましたが、こうした声を真摯に受け止めるべきです。

区が、指定管理者制度の破たんを認め、経営改革「新5か年プラン」に基づく今後の導入計画を抜本的に見直すことを強く求めておきます。

 

低所得者に対するふさわしい対策がとられなかった

反対理由の第4は、低所得者に対するふさわしい対策がとられなかったことです。

新年度は、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料が一度に値上げとなり、とりわけ75歳以上の高齢者の負担は、年間で平均2万円以上も増すことになります。このままトリプル値上げが強行されれば、保険料を払いたくても払えない区民がさらに増えることは火を見るより明らかです。

とりわけ国保料の負担は、今年度から算定が旧ただし書き方式に変わったことに加え、新年度は年少扶養控除が廃止され、さらに過酷とも言うべき負担となります。予算審議でも紹介しましたが、今年度と来年度、2年限りとした経過措置がなくなると、標準の4人世帯で、年収200万円の方が年間20万4379円の保険料、年収250万円で23万4164円、年収300万円で29万6109円と、いずれも年収の約1割が国保料に消えてしまいます。

私たちは、国や東京都にも正面からはたらきかけるとともに、区の減免制度を最大限活用し、保険料の負担軽減をおこなうべきと求めました。しかし区の答弁は、すでに軽減策は講じられており、これ以上の対策は必要なしとするものでした。その一方で、税金や保険料などの未納者に対する大掛かりな収納対策をすすめ、財産の差し押さえをも辞さない徴収攻勢に、区民の困惑の声も耳にするようになりました。

どんな所得階層の人でも安心して生活できる、暮らし応援の区政こそ求められているのに、新年度予算には低所得者に対するふさわしい対策がとられていません。「払いたくても払えない」区民に対する、あたたかい対応を強く求めるものです。

 

いくつかの要望について

なお、予算審議の中で焦点となったいくつかの問題について、あらためて要望をしておきます。

1つは、福島第一原発事故の影響による放射線対策です。

空間放射線については、子ども関連の施設以外でも高い数値が検出される場所が見つかっています。基準を超えるすべての地点で除染対策をおこなうよう求めます。また、内部被ばく対策では、保育園や学校給食の食材検査を、東京都とも連携をとりながら、区独自に進めることを要望します。

2つは、介護保険第5期計画についてです。

ヘルパーの生活援助時間を60分から45分へ短縮することは、介護現場の実態を無視した制度改悪です。方針の撤回を強く国に求めるとともに、必要な介護が削られることがないよう区としての対策を求めます。また、高齢者への紙おむつ支給事業は、要介護度4・5に限定することなく、必要な方への支給にふみきることを要望します。

3つは、区の非常勤職員について、5年で雇い止めとする制度を、早急に見直すことです。

4つは、浮間東保育園の新たな指定管理者の選定についてです。

私たちは、指定管理者制度を抜本的に見直し、2013年度以降、浮間東保育園は直営にもどすことが最良の道と考えていますが、すでに公募も始まっているという現状もふまえ、現実的な提案をいたします。新たな法人の選定にあたっては、現在の職員の継続雇用に配慮すること、また、今回の事態を十分に理解した信頼のおける法人が選定されるよう、区としても最大限の努力をおこなうことを求めるものです。

 

特別会計への態度

最後に特別会計予算についてですが、国民健康保険事業会計、介護保険会計、後期高齢者医療会計予算については、保険料負担増となったことなどから反対します。

中小企業従業員退職金等共済事業会計予算には賛成することを申し添え、討論を終わります。

ご清聴、ありがとうございました。