安くて上質の公共住宅を
東京都は、都営住宅の管理を民間業者に委任する指定管理者制度を来年度から導入しようとしています。都はその手始めに北区と武蔵野、三鷹、西東京の三市にある都営住宅(約二万六千戸)の指定管理者の公募を七日から始めました。住民からは「家賃の取り立てが厳しくなるのでは」など、さまざまな不安や疑問が広がっています。同制度の問題について日本共産党の曽根肇都議に聞きました。
都営住宅への指定管理者制度度入の問題点
曽根肇都議に聞く
指定管理者制度は、地方公共団体が施設の管理を公共団体以外にも対象を広げて指定し行わせる制度です。都営住宅への導入では、指定管理者に対し、これまで都住宅供給公社が行っていた業務のうち、①施設・設備の保守や管理②家賃の徴収③駐車場の利用の三部門を委任することになります。
サービス向上保証はない
都は指定管理者制度の導入の目的として「住民サービスの向上」を掲げていますが、その保証は示されていません。むしろ都が住宅部門の公共サービスから大きく撤退することによる弊害が心配されます。営利企業が指定されて経費削減と企業利益優先が徹底された場合、都営住宅予算のさらなる削減と管理部門の人減らしによるサービス低下につながりかねません。
また、都営住宅などは、長期にわたって計画的に維持保全していかなければなりません。指定管理者は二年とか三年ごとに更新され、頻繁に指定業者がかわる可能性もあり、安定的に管理できるかどうかは疑問です。
長年、都がつちかってきた都営住宅の管理ノウハウを民間に明け渡していくときに、どういう問題が起きるのかなどを十分見きわめながら、住民本位の対応が必要で、導入を急ぐべきではありません。
地元業者から仕事を奪う
二〇〇四年度予算で都が住宅供給公社に出している委託料は、総額で約三百五十億円あります。そのうち指定管理者の業務とする三つの業務にかかわる部分は、およそ四分の一にあたる約九十億円です。
現在、この仕事のうち、設備の維持・点検などかなりの部分は公社から地元の中小零細業者に出ています。指定管理者になれば、この仕事が指定管理を任された企業の系列企業に回される可能性が強く、地元の中小零細業者から仕事を奪うことになります。
しかし、都は指定管理者制度を、さらに広げていく方向です。安易な制度の導入は、地域の中小企業つぶしにつながりかねません。
真の住民サービス向上を目指すには、安易な営利企業参入による経費削減よりも、都民要望が強い安くて質のよい公共住宅の大量建設こそ進めるべきです。
|