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2005年10月11日 通算641号

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だまし討ちサラリーマン増税
(「しんぶん赤旗」 日曜版10月9日付の特集記事から
1人10万円しめて5兆円

 「サラリーマン増税はやらない」と公約しながら 総選挙が終わったとたん、手のひらを返したように増税宣言。“国民も増税を容認″した? 冗談じゃない、小泉内閣のこんなだまし討ちを許していいのか。
今田真人記者
  総選挙で自民党はどういっていたか。マニフェスト(「政権公約」)は、「『サラリーマン増税』を行うとの政府税調の考え方はとらない」と明記。候補者もビラで「サラリーマン増税断固阻止!!」と宣伝しました。
 それが一転。総選挙が終わるとすぐ谷垣槙一財務相が「(与党圧勝の選挙結果の背景には)かなり多くの国民の間に、どこかで増税も必要という気持ちがあったと感じる」(9月13日)と言いだし、定率減税については「戻していく」と廃止を明言。消費税増税も「考えていく」とその方針を表明しました。
 「定率減税の廃止に踏み出すことは、自らの『政権公約』を踏みにじる、文字どおりの公約違反ではないか」(9月28日の衆院本会議)
 日本共産党の志位和夫委員長が追及したように、公約違反そのものです。
 ところが、小泉首相の答弁は「定率減税はサラリーマンのみならず自営業者などすべての所得税納税者を対象とするものだから、いわゆるサラリーマン増税とは異なる」。サラリーマン以外も増税の対象になるから「サラリーマン増税」ではないというのは、まったくの詭弁(きべん)です。

公約は「空約束」

 この詭弁を正面から突いたのが衆院予算委員会 (9月30日)の質問です。
「自民党が政権公約で『やらない』と約束した『サラリーマン増税』とはいったい何か」、また、サラリーマンだけでなく自営業者なども対象となる配偶者控除や扶養控除の廃止も「『サラリーマン増税』ではないというのか」
 小泉首相は「(配偶者控除や扶養控除の廃止も)サラリーマンだけを標的にする税制ではない」「いわゆるサラリーマン増税という考えではない」と答弁。
 首相答弁が通用しないことは政府税制調査会の石弘光会長の雑誌発言からも明りょうです。
 「所得税の納税者の95%がサラリーマンです。所得税を改革したら全部サラリーマンに影響します」(『公研』9月号)
 実際、定率減税の廃止による増税3・3兆円のうち、8割以上がサラリーマン世帯への増税となります。
 配偶者・扶養控除の廃止で3・1兆円の増税、うち8割以上はこれもサラリーマン世帯への増税です。
 定率減税の廃止、配偶者控除・扶養控除の廃止を合わせると6・4兆円の増税です。
 このうち8割がサラリーマン世帯を直撃ということになると増税額は5兆円です。日本のサラリーマンは5千万人ですから単純計算で1人当たり約10万円の増税をかぶせようというもの。これがどうして「サラリーマン
増税」でないといえるのでしょうか。
  結局、自民党の公約は「まったくの空約束」(志位委員長の記者会見)です。

最大の既得権益

 予算委質問のもう一つのハイライトが、ゆがんだ小泉税制追及です。
 小泉内閣の4年間は、庶民増税3・5兆円、大企業・大資産家減税2・2兆円(表)でした。首相は「06年度をめどに抜本的な税制改革の結論を得たい」といいます。抜本的に見直すならこの″庶民に増税、大企業・大資産家には減税″という路線にこそメスを入れるべきです。
 小泉首相は「一国だけ法人税が高いと、その企業は(海外へ)逃げていく」と答弁しました。
 これは言い逃れにすぎません。
 トヨタ、ホンダ、松下電器など研究開発減税の恩恵を受けている大企業6社の自民党への献金は1億9889万円(04年)。この6社がこの2年間(03・04年度)に受けた研究開発減税は1708億円。献金の見返りに減税の恩恵という構図です。
 志位委員長はこの事実を示したうえで指摘しました。
 「総理は『既得権益を打破』するというけれど、ここに最大・最悪の財界権益という『既得権益』があるのではないか。ここにメスを入れないのでは、『改革』の名に値しない」

カネ余り大企業に公正負担を
「エコノミスト」誌で企業の資金余剰82兆円と試算した 熊野 英生さん

 所得税も消費税も、その多くはサラリーマンが負担する税金です。その両方を増税すれば、サラリーマンにとっては往復ピンクのような、大き過ぎる痛みです。
 とくに、所得税の控除というのは事実上、衣食住医という生計費に課税しない役割を果たすものです。これを廃止するのは、いわば「サラリーマンの再生産コスト」に課税することになり、生活の維持を脅かします、)
 私が、日銀統計を使って試算したところ、大企業のリストラなどによる大もうけで、国内の企業部門の余剰金(金融資産残高)は04年末に、82兆円という空前のカネ余り状態になっています。
 このように能力があるのに法人税をまともに払わない企業が増えている一方、中立公正な法人税のあり方を問わずにサラリーマン増税を強化するのは、税制の信頼を脅かすものです。

(第一生命経済研究所・主席エコノミスト)


このゆがみただせ


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