しんぶん「赤旗」2008年12月13日付
景気悪化の今だからこそ暮らしを支える税制を-。多くの国民の願いです。麻生内閣与党の自民・公明両党が12日に発表した2009年度税制「改正」大綱はこの願いに真っ向から反するものとなりました。大綱の三つの異常を見てみます。(山田英明)
個人消費活性化が必要なのに/消費税増税打ち出す
第一の異常は、景気悪化のもとで、将来の消費税増税を打ち出したことです。
米国発の金融危機を受けた世界的な景気後退の中、世界各国は、内需拡大策に取り組んでいます。ポイントの一つは、内需の中心である個人消費をどう活性化させるかです。 欧州連合(EU)は11月26日、「欧州経済回復計画」を加盟国に提案。個人消費を後押しするため、付加価値税(消費税)の税率を引き下げることを盛り込みました。
ところが、日本では麻生内閣・与党が、逆に個人消費を冷やす庶民増税に踏み切ることばかりに熱心です。
与党税制「改正」大綱は、消費税増税の時期を「2010年代半ばまでに」と明記しました。麻生太郎首相や与謝野馨経済財政担当相は、「3年後」の消費税増税に固執しています。
1997年、橋本内閣時代の消費税の3%から5%への引き上げなど9兆円負担増が、日本経済を失速させました。当時は、経済が持ち直そうとしていた時期です。今は、経済が失速している最中です。「3年後」であろうが、「10年代半ば」であろうが、消費税増税を打ち出すことは、消費者心理をさらに悪化させます。「景気対策」としては、まさに異常です。
「減益」口実に大リストラ/大企業減税いっそう
第二の異常は、大規模な人減らし・リストラを進める大企業へのいっそうの減税に熱中していることです。 自動車・電機など輸出大企業は、米国の「好景気」やアジアの経済成長に支えられ、空前の利益をあげてきました。
金融危機に端を発する世界経済の減速のもとで、輸出大企業を中心に「減益」を口実に、大規模な人減らしを進めています。
自民・公明両党は税制「改正」大綱に、省エネ設備投資減税や海外子会社の利益の非課税化などを盛り込みました。
さらに与党は、税制の「抜本改革」で法人実効税率の引き下げも実施する構えです。
麻生政権は「減税先行」というものの、大企業向けの減税を先行させているにすぎません。その穴埋めは、将来の消費税増税に頼るというのですから、異常な「減税先行」です。
マネーゲームは破たんなのに/なお貯蓄から投資へ
第三の異常は、マネーゲームの破たんが明らかになっているときに、依然として「貯蓄から投資へ」と、個人のお金をマネーゲームに誘い込もうとしていることです。しかも、中身の実態は高額所得者優遇税制です。
自民・公明両党は税制「改正」大綱に、08年末で期限となる証券優遇税制の3年延長を盛り込みました。上場株式等の譲渡(売買)益や配当にかかる税金は、サラリーマンの給料や預金の利子にかかる税金と比べて優遇されています。与党は株取引で大もうけをあげる大資産家への減税を延長するとともに、「貯蓄から投資へ」の掛け声で、庶民の虎の子である預金を、証券市場に呼び込もうとしています。
金融危機で、投資のプロですら「証券市場は危なくて手が出せない状況」(相沢幸悦埼玉大教授)。なのに、庶民をバクチ経済に巻き込もうとするのは、異常です。
庶民応援の減税策こそ
景気悪化のもとで今必要なのは、税制の面からも暮らしを応援することです。
個人消費が伸びれば、企業や地域経済も元気になります。落ち込んだ税収も回復し、社会保障拡充や財政再建の道筋も開くことができます。
日本共産党は、消費税の増税には絶対反対です。食料品にかかる消費税を非課税にすることや、年金課税強化などの高齢者増税をもとにもどすことなど家計を応援する減税を主張しています。証券優遇税制 上場株式等の譲渡益と配当に対する税金の税率は、本来20%のものが、現行、10%(所得税7%、住民税3%)に軽減されています。期限は08年末。減税規模は年間総額で約一兆円に達しています。
◇海外子会社の利益非課税 企業が海外子会社から受け取った配当などについては、その子会社が国外で納めた税金を控除(=外国税額控除)した上で、日本の法人税率で課税されています。政府・与党はこの制度を改め、法人課税の対象を国内所得に限定する方針です。大企業が海外でどれだけ大もうけをしても、海外子会社からの配当には、課税されなくなります。 |