2009.2.18付「しんぶん赤旗」より
クリントン米国務長官と中曽根弘文外相が17日に署名した在沖縄米海兵隊グアム「移転」協定-。米国領土にある米軍基地の増強のために日本国民の巨額の税金を投入するという前代未聞の措置の実施を「法的に確保」(外務省)し、強行しようとするものです。(榎本好孝)
際限なく拡大
在沖縄米海兵隊(第三海兵遠征軍)の兵員8千人とその家族のグアム「移転」については、2006年5月の米軍再編に関する日米合意(「再編実施のための日米ロードマップ」)で、日本政府が米政府に対し、28億ドルの直接的な財政支援を含め60億9千万ドルを提供すると定めていました。(28億ドル以外は民間事業者への出資・融資) 今回の協定は、この28億ドルの直接の資金提供について定めたものです。米政府が、同資金を使ってグアムでの「施設・インフラの整備」を行うと定めています。「施設・インフラ整備」とは、アジア太平洋地域全域ににらみを利かす米海兵隊の展開などを保障するため米軍がグアムで計画している基地の大増強の一環にほかなりません。
一方で、協定は、「施設・インフラ整備」のために日本側が提供した資金について、第三海兵遠征軍の兵員と家族の「移転のための事業にのみ使用する」と規定。「米国による適切な管理」(外務省)について定めたとしています。
しかし、日本政府は2009年度予算案に、28億ドルの直接的な財政支援の一環として、グアムのアンダーセン空軍基地に海兵隊の戦闘航空部隊用の作戦関連施設を建設するための基盤整備費などを計上しています。
こうした施設は沖縄からの「移転」には関係なく、日本政府も「アメリカが独自に整備する」と説明してきたものです。「移転」目的以外の使用は認めないと言いながら、実際には「移転」と関係のない予算を計上しており、グアムでの米軍基地増強のために、財政支出の対象は際限なく拡大する危険があります。二重のだまし 同時に協定は、米政府がグアム「移転」に必要な措置を進めるには、沖縄の普天間基地(宜野湾市)に代わる新基地建設(同県名護市)で日本政府が具体的な進展を図ることが「条件」だと明記しました。 06年5月のロードマップで、グアム「移転」や普天間基地に代わる新基地建設など沖縄での米軍再編が相互に切り離せない「パッケージ」だとした政治的合意に、より強い法的拘束力を持たせるのが狙いです。
グアム「移転」計画は、在沖縄米海兵隊の定数1万8千人から8千人を削減し、1万人は残すというものです。現在、沖縄に駐留している海兵隊員はおよそ1万2、3千人であり、実際に削減されるのは司令部を中心に2、3千人にすぎません。事件・事故の元凶である戦闘部隊を中心に1万人もの海兵隊員が残り、沖縄の「負担軽減」とはとても言えない計画です。
そうした計画をあたかも「負担軽減」であるかのように言い、その「条件」として、沖縄に新たな負担を強いる普天間基地に代わる新基地建設を押し付けるというのは、二重に国民を欺こうとするものです。撤去の世論を グアム「移転」の協定であるにもかかわらず、そこに普天間基地に代わる新基地建設を潜り込ませたのは、自公政権への国民の支持喪失、次期衆院選での政権交代の可能性など不安定な日本の政治情勢が続くことを見越し、計画通りに新基地建設を推進する担保をとっておきたいとの思惑が働いたからだとも指摘されています。
しかし、それは逆に、普天間基地に代わる新基地建設をストップすれば、米国領での米軍基地増強のために日本国民の巨額の税金を投入するという、世界に前例のない愚挙も阻止できることを意味します。普天間基地をはじめ沖縄の米軍基地の無条件撤去を求める国民の世論と運動をさらに大きくする時です。 |