「介護保険改定に関する意見書」の提案理由の説明
2008.10.10 (本会議) 福島宏紀
私は、ただいま上程された議員提出議案第17号「介護保険の改定に関する意見書」について民主区民クラブ、新社会党議員団および日本共産党北区議員団を代表して提案理由の説明を行います。
議場のみなさますでにご案内のように、来年4月には介護保険制度の3年ごとの「見直し」を迎え、そのため北区においても第4期介護保険事業計画を策定中であります。
その主な内容は大きく次の3点になります。
一つは、特養ホームやホームヘルパーなどの各種介護サービスの給付量をどこまで介護保険で提供するかを定めることです。
特に今回は2006年に具体化された介護型の療養病床の廃止および転換を盛り込むものとなります。
二つに、2003年度と2006年度の過去2回の改定で、いずれもマイナスとなった介護報酬の見直しについてです。
そして三つに、今後3年間の65歳以上の方の介護保険料を改定することです。
そうした中、この機をとらえて、介護保険の改善に向けて、区民の方や介護に係わる関係者からは、以下に述べる大きく4点の切実な要求や改善のうったえが寄せられています。
その第一は、介護報酬の引き上げで、労働条件の改善と人材不足の解消をはかってほしいということです。
一例ですが北区でも特別養護老人ホームに本年6月現在で772人の待機者がいるにもかかわらず「介護職員の確保がむずかしい」との理由で区立上中里つつじ荘が18名もの定員割れとなっています。しかもその原因の一つが区内の他の法人に引き抜かれた結果という深刻なものだったことも明らかになりました。今、決算特別委員会でも事態の改善を区に求める議論が活発に行われました。
実際、現場からはたとえば、「とにかくしんどい、先が見えない、どうすれば良くなるのかを考え前に進むべきだが、力が出ない。」
また、「働きがいがある仕事だと、この道を選んで12年たった。勉強もそれなりにがんばってきたが、仕事と賃金の釣り合いが取れず、体もボロボロになってしまった。結婚を機に転職を考えざるを得ない」など、男性の「寿退社」が後を絶たないのであります。
一方事業者も、「介護報酬の引き下げで、非正規雇用で収支のバランスを取らざるを得ない。結局介護の質を確保できなくなる。現在雇用をしているパート社員の賃金もここ数年間の据え置きで不満が出ている。」と同様の悲鳴が聞こえています。
「介護事業所の倒産、最悪のペース」と、6月25日新聞が報道したように、これは喫緊の課題です。その際、大切なことは介護報酬の引き上げが保険料引き上げにつながらないように計画的に国庫負担を引き上げることです。また、人材確保のための待遇改善についても利用料に転嫁することなく国の責任で一般財源などで手当するなどの対策が必要です。
この点については「都市部の実情にあった介護報酬とするとともに、利用者への直接的な影響を抑制するための方策を講じること」として、区長会も国に対し、同趣旨の要望をしているところであります。
第二の声は、「2009年度をメドに検討する」と、介護保険法に規定された、介護保険の被保険者と受給者の範囲の見直しです。
政府は昨年5月この問題の「有識者会議」で、障害者福祉を介護保険に統合するなどの中間報告を提出しています。しかし、この間、障害者自立支援法のもと、応益負担に苦しめられてきた障害者や障害者団体のみなさんがこぞって反対している障害者福祉と介護保険の統合は絶対に行うべきでありません。
第三は、介護が必要な高齢者の生活を支えるために誰もが納得できる認定のあり方や、これまでのような給付の抑制ではなく給付内容の充実を求める声にこそ応えるべきです。
前回の見直しでは「新予防給付」の美名の下に耳を疑うような過酷な給付抑制が行われました。「介護1」以下の方の使用していた介護ベッドと車いすを取り上げてしまうという冷淡、非情なことまで行ってきたのです。 本年5月の参議院において、舛添厚労大臣も全国で頻発している種々の「介護取り上げ」が質疑された際に、一つに「介護保険というのは何が目的かというと介護される人ないしその家族、そういう方々が快適な状況になること」、二つに「(介護は)柔軟な発想を持ってやる必要があって、何でもかんでもお金の計算だけでやることがどうなのか」と答弁しています。
さらに、認定および給付の問題で特に強調したいのは認知症の問題です。「動ける認知症高齢者」については介護認定と、実際の介護の手間とに齟齬があるとの指摘をはじめ、様々ある現行制度の欠陥をなんとしても正さなくてはなりません。認知症高齢者と家族のみなさんのご苦労に応える改定にすべきです。
第四は、今回の見直しにおける療養病床縮小・廃止問題についての不安の声です。
もともと、介護型の療養病床・医療施設は介護保険発足時に国の肝いりで整備が始まったものです。それが2011年までのわずか12年で突然廃止すると言われ関係者は戸惑っています。
日本療養病床協会の実態調査によると現在入院している35.7%が経管栄養を利用するなど手厚い医療が必要となる方で「新設された介護療養型老人保健施設にそのまま転換することは不可能で、このままでは行く当てのない高齢者が生まれると」としています。さらに国会では、この方針を強行した自民党内に元厚生労働大臣の津島雄二氏等が「療養病床問題を考える国会議員の会」を発足させました。
「会」は、一つに、厚労省の提案を現場において実行することはきわめて困難であること。二つに、介護療養型病床の有効性を再認識するものとなったこと。三つに厚労省が提示した転換推進策では病院追い出しの激化で医療・介護難民を数多く生み出す悲惨な結果を招くこと。以上が「会」としてのこれまでの議論の大勢だったとして、転換先の施設の改善要求などを掲げた三項目の「提言」を本年6月11日に発表しました。また、この提言の特記事項には、「上記が実現できない場合は介護療養病床廃止法案の撤回など重大な決意をせざるを得ない」などとして、現方針の見直しを強く求めるものになっているもので有ります。
以上、大きく4点、本意見書の提案理由をといたします。
以下、案分を朗読し提案に変えます。議場のみなさまのご賛同を心からお願いいたします。
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