日本共産党北区議員 本田正則
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2007年10月9日(火) 北区議会第3定例会にて予算反対討論 
 私は、日本共産党北区議員団を代表して、18年度一般会計並びに国民健康保険事業会計、介護保険会計、老人保健会計の決算認定に反対する討論を行います。
  この夏の選挙の結果、参議院では与野党逆転となりました。そして、安倍前首相が、所信表明を行いながら代表質問の直前に政権を投げ出すという、憲政史上かつてない事態に追い込まれたのはまさに本定例会のさなかの出来事です。

 これは、小泉内閣以来の自民党・公明党政権の基本路線が国民によって否定された結果です。それでも政権を引き継いだ福田内閣は、基本路線を変えるつもりがありません。
 その基本路線の一つ、憲法九条を変えて海外で軍事力を行使する路線は、安倍首相をはじめとする靖国派内閣のもとで、教育基本法の改悪、今年五月の「国民投票法」の相次ぐ強行で国民に大きな不信をもたらしました。そして、この路線のもとで、小泉内閣時代からの中国やアジア諸国との関係の冷え込み、日本各地の基地問題に加えて、今日、同盟国アメリカの「従軍慰安婦決議」、沖縄の集団自決をめぐる教科書問題を引き起こしています。「戦後レジームからの脱却」や「美しい国づくり」の言葉こそあまり聞こえなくなりましたが、いまだにインド洋やイラクにおけるアメリカのテロ報復戦争支援を続けようとしています。

 もう一つの基本路線、新自由主義の構造改革路線も矛盾が鮮明です。耐震偽装、一連の投資をめぐる不祥事、偽装請負、違法派遣、リストラや過労死とメンタルヘルス問題などなど国民は消費、投資、労働の生活場面で大きな損害を被り続けています。この国民に自民・公明政権が追わせた負担は、06年当初から並べると、一月の所得税の定率減税半減、三月の消費税免税点引き下げに続いて、06年度も四月の障害者自立支援法施行、介護保険料の引き上げと年金の引き下げ、生活保護の老齢と母子加算の廃止と縮減、六月の住民税の定率減税半減、高齢者非課税限度額廃止、公的年金等控除縮小、老年者控除廃止とそれに伴う国民保険料の引き上げ、九月の厚生年金保険料の引き上げ、十月には七十歳以上の現役並み所得者、医療費・長期入院者の食費及び住居費負担増、高額療養費の自己負担増、そして年明け1月の所得税での定率減税廃止が実施されました。この1月、「三位一体改革」による所得税の引き下げがあったとは言え、6月の住民税の引き上げで消えてなくなっただけでなく、住民税フラット化により低所得者により大きな打撃となっています。まさに格差拡大の象徴です。

 ところが、大企業と投資家には減税の継続と規制緩和、様々な民営化による利益追求の場の提供など大盤振る舞いです。しかもこれらの大企業や大資産家による政治献金と、政党助成金などの政治資金で私腹を肥やす政治家の金の問題も大問題となりました。
  東京都政でも、石原都知事は三月に自ら公約した豪華海外視察の自粛も、貧困に苦しむ都民への負担軽減も投げ捨てるにいたりました。都民のくらしや環境を犠牲に、オリンピックに毎年1000億円を積み立てた上、少なく見積もっても八兆五千億円をつぎ込むことをテコに、世界中から巨額の投資を引き込もうとする都政の私物化も極まっています。それに加えて、都区財政調整を通した23区の財政支配の強まりと、これと戦いきれない23区区長会の問題もありました。

 日本共産党はこの決算審査を通じて、介護保険料の引き上げをはじめとする、高齢者と区民への容赦ない増税と負担増、障がい者自立支援法による負担増、ワーキングプアなど、区民生活を脅かす格差と貧困のひろがりを明らかにし、区民のくらしをまもる区政へ、自治体本来の役割を果たすよう求めてきました。
しかし北区は、区民生活の実態から目をそらし、決算書では格差と貧困の拡がりにひと言もふれませんでした。
 18年度一般会計については、子ども医療費の中学生までの拡大や妊婦検診の拡充。学力向上にむけ、非常勤講師の中学校全校配置、環境基本条例と男女共同参画条例の制定などを評価するものですが、以下に述べる7つの理由から反対するものです。

 反対理由の第1は、清潔な区政運営が求められるにもかかわらず、区長交際費の不明朗さ、不透明な契約問題が続いていることです。
 この年、花川区長の交際費の使い道に違法、不適正な支出があること、それが23区でも突出したものであることなどがマスコミ報道で明らかにされ、国会や都議会議員の政治資金パーティー代など、判例から違法性が明らかなものへの支出については北区に返金されました。交際費については、今回返金されなかった区議会議員の活動に対する支出も含めて、今年度から政治家への交際費の支出は基本的にやめたのは当然のことです。
  花川区長は、四年前の就任直後にも、贈収賄事件を起こした企業にパーティー券を購入してもらったり、150万円の政治献金を受け取ったりしていました。
  区長の政治倫理に関する条例の基準からして、花川区長は、もらう側、支出する側、その両面で適正を欠く行動をとってきたということになります。

 また、この年、北とぴあで前年度より8千万円も安く受注した協同組合が、組合内の担当企業の切り替えを行うのに伴って、同じ職員を新たに雇用する条件を切り下げようとして、労使間のトラブルが発生し労働基準監督署や北区など様々な機関に相談が持ち込まれるという問題が発生しました。
 区長をはじめとする職員の倫理の確立と、厳正適正な入札、契約のルール確立の弱点が、今年度の談合疑惑や、談合に参加してペナルティを受けている企業との38億円にものぼる契約という恥ずべき事態につながっています。労働条件や下請けとの関係なども含めて詳細に監査・検査を実施するとともに、限度額に収まらず落札されない場合の随意契約を行わないなど、契約の適正化が求められます。

 反対理由の第2は、負担増に苦しむ区民の負担をやわらげるための具体的な対策が講じられなかったことです。
 この年、北区の財政は、区民からの増税による収入増をはじめ借金は大幅に減り、基金はバブル時のピークに匹敵する水準まで増え、危機を脱出し健全化が進んだと自ら評価しました。
  しかし、新宿区などで実施された、高齢者の増税・負担増の影響の独自の軽減策もとらず、この年四月からの障害者自立支援法による負担増に対する軽減措置も10月からのわずかな措置に止まりました。

 これまで、区民の暮らしを独自財源を投入して応援してきた様々な助成策、支援策を削るだけ削ったまま、基金積立金はまだまだ十分でないと膨らませる一方であり、積み立て至上主義と言われて当然の状況です。23区の積立金総額が1兆円を超し、財源吸い上げのターゲットになりかねないほどの状況です。にもかかわらず低所得者、障害者、高齢者に対して温かい対応に欠けている北区の姿勢は認められません。自立支援法のように国も負担増見直しの動きが出てきていますし、他区も区民支援を行っています。基金の活用により、緊急の負担軽減は実施可能であり、その実現を改めて求めるものです。

 反対理由の第3は、経営改革プランが着々と進められ、かついっそう過酷な見直しが行われたことです。これまで学校・保育園の給食調理や学童保育などで民間委託が進んできましたが、18年度までに区立58施設での指定管理者制度導入がされました。それに加えて、19年度も28施設での導入が計画されました。あわせて、子育て支援の場に、営利を追求する株式会社の参入を許したことも認められません。

 学童クラブ、保育園、児童館などの子育て支援事業の蓄積は、区民の財産です。また、図書館や、障がい者、高齢者などの対人サービス、処遇を行う労働者には、不断の研鑽と経験による蓄積が不可欠です。ところが外部化によって、こうした労働者の研鑽と経験によって継承される専門性や、様々な技術が北区からも、外部化法人からも失われる危険性が明らかになってきました。例えば、指定管理者になった、かつての受託法人で大幅に賃金水準が下がり、人員の維持、確保など将来の仕事の継続に大きな不安が生じています。

 あわせて、事務事業評価で非常勤学校栄養士の退職後の補充に困難があることが明らかになるなど、非常勤職員の賃金の低水準も相変わらずです。「構造改革路線」の具体化そのものであり、認められません。
  公契約条例を制定して、北区の仕事を行う労働者、下請け企業の仕事の内実・労働条件までキチンと把握、監査できるようにするとともに、安易に外部化せず、北区の組織の中に専門的技術と知見を維持・蓄積する努力こそ求められます。

  反対理由の第4は、民間任せの住宅対策です。
  若年層をはじめ低所得層が増大しています。一方で、投資型のワンルームマンション建設や、15万円から30万円という外大跡地の都市機構による民間賃貸住宅建設のように、高家賃の賃貸住宅は増えても、低所得層が支払い可能な、家族向け、高齢者向け賃貸住宅は増えません。そんな中で都営住宅増設を求めないことや、民間賃貸住宅建設への支援も行わない姿勢が続く限り、高齢者が安心して住み続け、若い子育て家族が定住する北区にはなりません。
 
 反対理由の第5は、少人数学級を求める多数の声に応えようとしない教育行政です。
 東京都の少人数学級敵視の姿勢に屈服し、これまで23区の一員として少人数学級の導入を求めてきたにもかかわらず、少人数指導一本槍へと方向転換したことは断じて認められません。フィンランドでは少人数学級を確立した上で、学習の遅れた子どもを特別に支援する教員を配置する体制まで作っています。隣接区で、35人学級実施にむけた動きが具体化している中、40人学級のままでよしとする北区の姿勢は教育先進区とはとても言えません。
  統合問題でもこの年、清至中学校の生徒たちがキチンとした説明を求めたのに対し、子どもが意見を言うのは筋違いなどの答弁もありました。入学者0、1人という統合対象校も出てしまいました。子どもたちの意見にも父母の意見にもしっかりと耳を傾け、こうした事態を無くしていく努力こそ求められます。

 第6の理由は、国民保護法を無批判に受け入れたことです。
 国民保護法は、武力攻撃事態法などに根拠を置いています。アメリカ軍と自衛隊の軍事行動に国民、地方自治体、民間組織に対し強制的に協力義務を負わせるところに問題があります。そして政府が言うように武力攻撃に対応するとすれば、区内にある十条の陸・海・空補給統制本部は、日米共同作戦の兵站の中枢ですから、当然攻撃の標的になります。区民の生命、財産、人権を守るには、区民を戦争する国づくりに動員していく、かつての道を拒否し、憲法九条を守り、武力によらない平和秩序の構築に力を注ぐことではないでしょうか。国民保護法を無批判に受け入れる態度は、北区平和都市宣言にも反するものであることを強調しておきたいと思います。

 反対理由の第7は、ゆがめられた「都区制度改革」に屈服し、追従する姿勢です。
 大都市事務の役割分担も、清掃事務関連、小中学校改築経費、都市計画交付金も未解決であったにもかかわらず「一応の決着」とされて、18年度に先送りされたあげく、「三位一体改革」の影響などは19年度協議にまで先送りされ、調整率55%で決着という結果になりました。元々財調財源だけで、三位一体改革の影響を措置するのでは東京都側の負担は全くないことになります。手当てできない区については、特別交付金を5%にして対処することも、18年度中から論議されていたことが明らかになりました。

 北区でも、敗北した都区制度改革のその総括が全くされていない。したがって、23区各区が自立した基礎自治体となっていく上で解決しなければならない、いわば新たな都区制度改革の課題を示すことができないのです。もともと23区の都民のための都区財源を、本来東京都の独自財源で実施すべき事務にまで回して恥じない東京都の横暴にたいし、区民のための財源確保のために戦いきれず追従する姿勢も認められません。
 以上の理由から、一般会計決算の認定に反対いたします。

 次に、特別会計に入ります
 まず、最初は国民健康保険事業会計についてです。
 この年、定率減税の半減、高齢者のための各種控除の廃止縮小、そして住民税非課税措置の廃止にともない、国民健康保険料が大幅に上がりました。3年間に分けて引き上げる、激変緩和措置が執られましたが、それでも、とりわけ低所得の高齢者にとって、その影響は大変大きなものでした。
  その中で引き続き二割減額制度はあるものの、低所得者にさらなる負担増を押しつける均等割の引き上げが行われたことから反対致します。

 なお、資格証明書発行は医療機関窓口では10割の支払いがネックとなり、症状を悪化させる事態が全国的に大問題になっています。北区が、特別の事情を考慮に入れながら対応していることは十分承知をしておりますが、所得の格差が命の格差となる国民皆保険制度の根幹にかかわるもので、区が東京都及び国に対して、社会的弱者や経済的な配慮が必要な世帯からの保険証取り上げは行わないよう強く働きかけることを要望いたします。

 第二に、老人保健特別会計についてですが、昨年十月から70歳以上の現役並み所得者が三割負担となったことは認められません。
  加えて、この年6月政府は医療制度を改悪し、08年四月からは70歳から74歳までの方が二割負担となります。さらに、75歳からの後期高齢者医療制度が創設され、その保険料も、東京では平均で月々1万5千円にもなる可能性も指摘されています。こうした残酷極まりない国の医療制度改悪を黙々と受け入れる姿勢から反対をいたします。

 第三に、介護保険特別会計についてです。この年、4月から、軽度の方々を、介護給付の対象から外し、予防給付の対象とする法改悪が施行されました。
 まず一つに、こうした、制度改悪をとらえて、北区の介護認定調査がゆがめられてきたいわゆる「ランク下げ」が続いていたことです。この問題は17年度中から指摘されてきたにもかかわらず、18年度最後の月の研修会での対応で、ようやく一定の是正の方向示され改善されつつあります。
  しかし未だに、障害を持つ方々が、介護保険の対象となる65才を境に、介護認定の結果によって、それまで受けてきたノーマライゼーションのための支援が削減されています。必要な介護サービスを受けられるように、さらに改善を求めます。また、保険制度の不足は、北区の障がい者、高齢者施策の充実で進めることを改めて求めるものです。

 二つに、介護保険事業計画によって保険料を3割も値上げしながら、実際の運営では、介護給付が平成17年度で27億円、18年度も24億円が当初予算比で削減され、2年間で北区介護保険事業計画からみると51億円もかけ離れた給付になっていたことです。つまり、高齢者からは保険料を高く取ったうえ、介護を必要とする方からは必要な介護を取り上げるという、二重の高齢者いじめをして来たことになり、これは保険者たる花川区長の失政です。
  以上の理由により反対致します。
  中小企業従業員退職金等共済事業会計と用地特別会計に賛成することを申し添え、討論を終わります。
 


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