区内の都市計画道路四区間が、特定整備路線とされ、昨年三月に事業認可されましたが、全て不服審査中で、補助86号線志茂区間は訴訟になりました。また、東京都は第四次事業化計画案を示し、三月に確定されれば、区内五路線が優先整備路線となります。改めて、区長が東京都に意見を発信するよう、五点質問をいたします。
(一)つ目は生活困難を区民にもたらす計画は見直すべきだということで二点質問します。
@点目は、生活困難をもたらす立ち退きになる方々の問題です。
現在の補償制度では、しかるべき自己資金が有るなどの土地建物を確保する能力がない人は、生活再建が困難です。木造密集地域では接道が悪いなどして、土地補償額が低くなるからです。建物についても、東京都が現在ある建物を今建てるといくらかかるかを評価し、築後三年だったら評価額の95%、30年だと60%などと用地補償のハンドブックに書かれていますが、評価額が低いので築三年で、実際の建築費の8割などという事例もあります。
その上、土地の一部が道路用地だと、立ち退きに応ずるか、改築・改修かなどの判断が迫られます。補助87号線では、都市計画図や建築指導線で示した計画線と実際に事業化する際の計画線が3mもずれました。当時東京都は、都市計画図は1/3000の縮尺の地図に、1oで計画線を引くから、6m以内は誤差の範囲だと説明しました。つまり、実際に、測量して確定するまでは動かせたのです。
そこで質問ですが、コミュニティ住宅や代替え地の提供などの生活再建ができるよう、補償制度の不足を補うことができない事業は、実施を見送り、計画を見直す必要があると考えますが区長の見解を問います。
【答弁】
はじめに、都市計画道路の計画決定・事業化は住民合意を前提にとのご質問にお答えします。
まず、「生活困難を区民にもたらす計画は、見直すべきだ」のうち、「補償制度の附則を補うことができない事業」についてです。
都市計画道路事業における補償は、物件問うの調査や用地測量、土地価格の評価等を行い、建物や工作物問うの移転費用、その他、通常生じる損失補償額を算定した上で行っております。
補償以外の面では、税金の優遇措置や生活再建のため、移転資金貸付制度などを設けるとともに、権利しゃん方のご相談に対応できる体制を整えております。
区といたしましては、都市計画道路が持つ機能の必要性をふまえ、今後とも、東京都と連携を図りながら、事業を推進してまいります。 |
A点目に立ち退き不要の近隣の方々への影響も無視できません。 昨年七月に行われた田端一丁目から西日暮里四丁目の道潅山通りまでの補助92号線の説明会でも、通過交通を吸い込むことで発生する交通事故が心配だとの声。戦前の日暮里渡辺町の有名な開発でつくった静かな環境が壊されるとの声。隣近所の絆、地域が分断されるなどの声が上がりました。道潅山通りから先の日暮里・谷中側は神社仏閣があるから廃止するというが、西日暮里・田端側には我々の生活があるとの怒りの声も噴出しました。並行して走る不忍通りを拡幅するなら、新たな道路は不要だとの意見も出ました。
もう一つは、高層ビル開発などの影響です。これは西ヶ原・駒込の補助81号線の説明会での話ですが、道路になる土地を買いあさる三菱地所など大手不動産会社の話が出されていました。こうした不動産投機・道路による土地価格の上昇が、固定資産税や地代・家賃の上昇につながります。まちの姿も変わります。
EUでは住民生活への影響と、効果を科学的な予測調査を行って、合意を得る仕組みができています。オーフス条約といいます。アメリカでも関係者が参加して行う公聴会での計画変更は常識です。 そこで質問です。二車線道路であっても、環境アセスメント、さらに土地価格やまちの姿など科学的な影響予測調査を行うこと。この調査をふまえた公聴会などを道路計画策定時や事業化の過程に盛り込むよう、国や、都に働きかけることを求めます。
【区の答弁】
次に、科学的な影響予測調査等についてお答えします。
環境に著しい影響を及ぼすおそれのある都市計画を定める場合には、当該都市計画にかかる事業の実施が環境に与える影響の調査、予測及び評価を行い、手続きを行うこととされています。
環境影響評価の対象となる道路事業の要件は、四車線以上と規定されており、二車線道路については、対象外となっております。
区といたしましては、調査および公聴会の開催等について国や東京都に働きかけることは考えておりません。 |
都市計画道路の(二)つめは、戦災復興院が告示した、決定内容が不明確な計画の見直しを求めるものです。
第四次計画で改めて優先整備路線にしようとしている補助92号線や、85号線も、戦災復興院が告示した補助線街路ですが、86号線などと同様、決定内容が不明確だという問題です。
決定の内容を示す関係図書は、国も都も持っていないとしてきました。最近になって国は、裁判資料として国立公文書館の資料を持ち出してきましたが、その資料では、92号線の起点・終点は、滝野川区西ヶ原町、田端町とされています。これでは、西ヶ原のどこかから西日暮里のどこかまでとしかわからないのです。図面もありません。その上、図面の縮尺、精度によって相当に違ってくるはずで、決まっているとはいいがたいのです。
次に住民参加です。1968年の新都市計画法では、新憲法をふまえて、土地の使い方に制限をかける都市計画決定と、事業として用地の取得や収容ができることになる決定の2回、公示・縦覧あるいは公聴会などの仕組みを盛り込みました。この仕組みも十分なものとは言えないのに、同法施行法は旧法下で決定された計画は、新法で計画したものとみなすとしました。その上、道路については、事業段階での参加手続きなしに、事業認可できることにしてしまいました。
その結果、戦災復興の補助線街路は、道路がどこなのかも不明確なうえ、事業認可前の住民の参加の機会が一度もないまま、土地の買収や収容ができる状況がつくれるのです。
これでは、認可前に、住民がその公共性を確認することすらできません。全面的に一旦見直すべきと東京都に意見を言う事を求めます。お答えください。
【区の答弁】
次に原簿、原図など決定内容が不明確な計画は見直しとのご質問です。
ご指摘の都市計画道路の都市計画決定について、東京都からは、「その関係図面については、現在、不存在であるが、都市計画決定された区域は、他に決定された都市計画区域も合わせて図示した資料に継承し、適切に管理されている」と聞いております。
「都市計画については、当時の法律に基づき適切な手続きにより決定されたと認識している」とのことですので、区といたしましては、東京都に見直しを求めることは考えておりません。 |
(三)つめに、道路の必要性の検証を、科学的なデータで住民参加で行うことです。
東京都は、1981年の見直しで廃止しなかった都市計画道路は全て必要なものとして、事業化をめざしました。その後国が、既存道路の再整備など、一定の抑制に舵を切ります。そこで東京都は、2004年の第三次事業化計画で、一日6000台以上の交通量があるものは全て必要性があるとしました。しかし、6000台未満でも、十項目の必要性検証項目に該当するものは必要としました。補助92号線は、ただ一つ、まちづくりに資するという項目だけで優先整備路線にしていました。しかし、住民のための区画整理とする上では、この道路計画は邪魔なもので、この検証は道路を作るための検証でした。第四次事業化計画案は、さらに検証項目を増やし、どれかに引っかかれば事業化できるようにするものです。
そこで質問です。必要性を検証した科学的データを公表し、各優先整備路線の選定に住民参加の公聴会を行うよう、東京都に主張すべきだと考えます。お答えください。
【答弁】
次に、道路の必要性、優先性の選定基準を見直すべきとのご質問についてです。
都市計画道路につきましては、計画的、効率的に整備を行うため、おおむね十年間で優先的に整備路線を定めた「事業化計画」を策定し、事業を推進しています。
第四次事業化計画案では、東京都および区市長の会議や学識経験者の意見を踏まえ、検証項目を考慮し、必要性の検証を行っており、検証内容等については、東京都で一元管理しています。
第四次事業化計画の策定に当たっては、「中間まとめ」および「案」の公表時にパブリックコメント等を実施しておりますので、区といたしましては、東京都に公聴会の開催等を求めることは考えておりません。 |
(四)つめは、合意のない道路の事業は中止・見直しを改めて求めることについてです。
特定整備路線は延焼遮断効果が確認できないと各路線で指摘を受けています。志茂1丁目の補助86号線は、第二次の優先整備路線から外れたのに特定整備路線とされ「当分は道路は作らないというから3階建てを建てたら、ローンも終わらないうちに、立ち退きを求められた」と怒る住民もおいでです。様々な問題を指摘して裁判になっています。赤羽西の86号線、十条の73号線、西ヶ原の補助81号線でも、多くの問題があるので膨大な不服審査請求が出され、審査が未だ終わらないのです。合意のない道路事業については、国に認可取り消しを、東京都に事業中止を求めるべきではないでしょうか。改めて質問するので現時点での区長の考えを聞かせてください。
【答弁】
合意のない道路事業は中止・見直しを改めて求めるべきとのご質問です。
道路など都市施設の都市計画は、年の将来像を見据えて、長期的視点からその必要性が位置づけられています。
区といたしましては、合意の有無のみをもって、事業の実施や中止を判断することは適切でないと考えておりますので、国に事業認可の取り消しを求めることや、東京都に事業の中止を求めることは考えておりません。 区といたしましては、合意の有無のみをもって、事業の実施や中止を判断することは適切でないと考えておりますので、国に事業認可の取り消しを求めることや、東京都に事業の中止を求めることは考えておりません。 |
都市計画道路の(五)つめは、長期未着手路線の全面的見直しを東京都に求める事です。
低成長時代に入り国の方針転換を受け、多くの自治体で長期未着手路線を見直し、名古屋市、神戸市などは総延長の二割以上を廃止してきました。
大阪市でも8割が50年以上経過している上、今後70年を要することから、30年で完了をめざし、450q中34キロを廃止しています。
京都市の場合は、2002年に10路線、5.7q廃止したうえで、2010年に改めて、都市計画決定後20年を経過した路線を見直し、結果的に総延長535qのうち43路線55q余を廃止しました。
一方東京都は、3次4次あわせても見直しは最大でも36q、2004年から2025年までで3207`中1%程度の廃止です。おまけに、膨大な事業費増額なしにはあと50年近くかかります。計画決定から120年もかかる可能性も残り、ここで大幅見直しをすべきです。
そこで質問ですが、京都市のように計画決定から20年以上経過した路線は全て見直す。名古屋市のように@文化財等に影響を及ぼす、A公園や緑地を分断する、B商店街の存続に影響を与える、C木造住宅密集地内に存在する、D一定の道路機能が確保されている、E代替ルートの考えられる、F道路構造等に問題のあるような路線についてはすべて見直しを行うよう、東京都に意見を出していただきたい。答弁を求めます。
【答弁】
次に、長期未着手路線の全面的見直しを都のご質問についてです。
東京における都市計画道路の「事業化計画」は、これまで過去三回、社会経済情勢の変化に応じて、検証項目を設定し、適時適切に路線の必要性の検証などを行ってまいりました。
第四次事業化計画の策定にあたっては、中間まとめに対するパブリックコメントや学識経験者の意見を参考に、長期未着手都市計画道路も含め、将来都市計画道路ネットワークの検証を実施しています。
また、このネットワークの検証により、必要性が確認されなかった都市計画道路については、策定後に計画廃止を含めた検討を行うとしておりますので、区といたしましては、東京都に全面的な見直しを求めることは考えておりません。 |
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