日本共産党の小池晃参院議員が入手し、2日に公表した厚生労働省の内部文書は、介護を取り上げ、給付費を抑制する道具として要介護認定制度が使われている事実を白日の下にさらしました。こうした疑いは制度の発足前から指摘されてきましたが、同省自身の言葉でこれほどはっきり裏付けられたのは初めてです。 (杉本恒如 )
介護保険では要介護認定を受けなければ必要なサービスを受けられません。認定者数調整/財政的な思惑 今回の内部文書は、要支援2と要介護1の認定者数が「当初想定していた割合(概(おおむ)ね7 ‥ 3)にならず、概ね5 ‥ 5となっている」と指摘。その原因は「(二次判定を行う)介護認定審査会委員が判定基準を拡大解釈している」ことだと分析しています。
コンピューターによる一次判定を全国の審査会が重度に変更するせいで軽度者の割合が想定通りに増えない、という嘆きです。
ここから明らかなのは、認定者の割合を同省があらかじめ決め、その割合に分かれるようにコンピューターによる一次判定の仕組みを調整している、ということです。
利用者の状態にふさわしい認定を行うのではなく、認定者数を政府の手のひらに乗せて操ることが認定制度の目的になっているといえます。
認定者数を調整する背景に財政的な思惑があることも、明白になりました。
内部文書は「認定の適正化」などによって2百84億-3百84億円を「縮減」できると書いています。
介護労働者の待遇改善を求める現場の声に押され、報酬引き上げに踏み込まざるを得なくなった同省が、「財源確保策」として認定切り下げを狙ったことも明記されています。
政府は2002年度から社会保障費の自然増分を毎年2千2百億円(初年度は3千億円)削減してきました。問題の根っこには、このことに象徴される社会保障切り捨ての路線があります。真の意図明白/新制度中止を 内部文書が挙げた認定制度変更の課題は、 ▽ 要介護1と要支援2の区分けをする役割をコンピューターに移して審査会の関与を減らす ▽ 審査会に提出する参考資料を削除して重度変更率を引き下げる ▽ 認定調査の定義(判断基準)を「明確化」する ▽ 調査項目を削除する-など。これらはすべて、4月から始まった新制度に取り入れられています。(図) 「要介護」からより軽い「要支援」に認定が落ちれば施設入所の対象から外されます。「非該当」と認定されれば介護保険のサービスを使えません。利用者にとっては、生死にかかわる問題です。
政府はこれまで、認定制度をいじることで必要な介護まで取り上げ、費用を抑制するという意図を否定してきました。ひた隠しにせざるを得なかったのは、その発想があまりに醜悪だからです。
真の意図が明らかになった今、制度改悪は直ちに中止すべきです。さらに、介護取り上げの道具になっている認定のあり方を検討し直す必要があります。日本共産党は、機械的な判定の仕組みをやめて、ケアマネジャーなど現場の専門家の判断で適正な介護を提供する制度に変えることを提案しています。要介護と要支援 要介護度は要支援1、2、要介護1-5の七段階に分かれます。要支援の人が受けられるサービスは、要介護の人と比べ大きく制限されます。施設への入所が認められず、訪問介護の利用も厳しく限定されます。 |