婦人保護施設「慈愛寮」を訪ねて

 様々な事情で、産前産後の時をひとりで迎えることになった方が、安心して赤ちゃんを産み、子育てができるよう支援する施設である婦人保護施設「慈愛寮」をお訪ねしました。

 様々な事情とは、胎児の父が逃げて、いなくなってしまう。
性暴力、性虐待、生育家庭での困難。家出。風俗。身寄りがない。親族や友人に頼れない。妊婦健診未受診。とびこみ出産した後、もどるところがない等の困難を抱えている状況です。

 都の措置施設であり、窓口は区市の福祉事務所(母子・父子相談員)、東京女性相談センターが入所を決定し、妊娠36週から受け入れ、出産後2~3か月を目途に、最大6か月まで入所することができます。
部屋は20室あり、定員は40名(母と子)。

 施設長より、最初に施設の概要や支援内容などについて、お話をうかがった後、施設内を見学させて頂きました。

「慈愛寮では、妊娠・出産を契機に支援を受けることにより、生活再建がはかられ、人生の大きなターニングポイントになるような支援をめざしています。入所する女性の抱える生活困難の多くは、貧困、暴力、虐待・性虐待などの生育環境に起因することが多く、これまでの生育歴の中で、心身ともに深く傷ついており、自尊感情がもてず、生活技術も獲得できずにきた場合が多いです。

 短期間ですが、社会的支援に頼っていいと実感できる支援を行っていきたい」とのお話に、私自身、強く感銘を受けました。

 7年前に立て替えとなった施設内は、木調で明るい色彩、ステンドガラスや窓からの陽光がやわらかく射し込み、優しさ、ぬくもりが感じられる仕様です。お部屋は花の名前と愛らしいイラスト。
沐浴室やシャワー室、食堂、談話室などにも、母子が安心してくらし、くつろげる空間への心配りが感じられます。

 生まれたての赤ちゃんの泣き声が、時折、耳に聞こえてきます。
見学途中ですれ違った女性達は皆とても若い!
小さな命をかかえながら、施設を退所した後も一歩一歩、自らの歩みをすすめていくことができますようにと願わずにはいられません。

 施設長さんは、「退所先は、母子支援施設につなげられるようにしたいが、実際は過半数にとどかない状況。23区の広域連携が機能するようにしてほしい。


慈愛寮でも、退所後、24時間の電話相談、月1回の面談、離乳食交流会など、フォローの取り組みを行っています。地域の保健師、女子相談員、ケースワーカー等とも連携し、つながり続けることがとても大事です。」と、課題を述べておられました。

  婦人保護事業の根拠法が、いまだに1956年制定の売春防止法であり、売春する恐れのある女性を罰し、取り締まる法律のたてつけのままとなっています。
2018年度、厚生労働省も「困難を抱える女性たちの支援のあり方検討会」を開催し、公的女性支援機関と、民間の女性支援団体の代表らがテーブルを囲んで、熱心な議論を交わしています。

困難をかかえている、居場所、行き場のない女性への中・長期的支援を、北区でも取り組んでいくと共に、法的根拠としての新法である「女性自立支援法」の制定にむけて、私自身も働きかけていきたいと思います。

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